【北陸電力 松田社長】能登の復興に注力 安定供給と脱炭素化で北陸の発展に貢献する

令和6年能登半島地震の発生から2年。地域に根差したエネルギー事業者として、グループ一丸となって復興を後押ししてきた。

能登を含む北陸地域全体の発展に貢献するべく、ビジネスの拡大と経営基盤の強化を着実に進める。

【インタビュー:松田光司/北陸電力社長】

まつだ・こうじ 1985年金沢大学経済学部卒、北陸電力入社。営業推進部長、エネルギー営業部長、石川支店長などを経て、2019年6月に取締役常務執行役員。21年6月から現職。

井関 「令和6年能登半島地震」の発生から2年が経過しました。復興状況をどう見ていますか。

松田 2024年元旦に発生した能登半島地震と、それに続く9月の奥能登豪雨により能登半島は大きな被害を受けました。着実に復興の歩みを進めていますが、完全な復興にはまだまだ時間がかかります。

北陸電力グループは配電設備、送変電設備、発電設備などに660億円にも及ぶ損害を被りました。停電については、発災後、1か月以内に復旧することができましたが、豪雨と併せて約3300本の電柱の建て替えが必要となりました。今年度中に3分の2の対応を終える予定ですが、残りの1100本は、道路の復旧状況などに合わせて進めて行く必要があるため、地元自治体などと連携して可能な限り早急に工事を進めていきます。

井関 今後の復興に向けどう取り組みますか。

松田 これまで、被害を受けた地域への移住促進や雇用創出、なりわい再建などを目的とした割引料金メニュー「こころをひとつに震災復興応援でんき」の創設や、災害により発生した流木や家屋などの解体がれきのバイオマス燃料としての活用などに取り組むことで、復興を支援してきました。割引メニューの申込件数は家庭・企業合わせて計1600件に上り、復興の後押しになると好評の声をいただいています。

また、地震により大量に発生した廃瓦(能登瓦)を有効活用するため、当社が開発した石炭灰に太陽光パネルガラスを混合し廃瓦も加えた「インターロッキングブロック」は、大阪・関西万博に出展したパビリオン「電力館」敷地の構内舗装に採用され、当社から提供させていただきました。閉幕後は全て持ち帰り、万博のレガシーとして、当社の本店ビル西側緑地帯などに再利用していく予定です。

また、自治体施設などでも活用のニーズがあれば使っていただきたいと考えています。これらの取り組みにとどまらず、廃瓦を復興事業に活用することを目指し、石川工業高等専門学校と共にフライアッシュコンクリートの活用方法についても共同研究を進めています。


災害の知見を全国に共有 レジリエンス強化に貢献

井関 和倉温泉における復興プロジェクトにも参画しています。

松田 地元の方々を中心に、単なる復興ではなく、能登に暮らす人、働く人、訪れる人全てが幸せになれる創造的復興を目指して和倉温泉のまちづくり協議会が発足しました。当社もこの取り組みに積極的に参画し、専従の社員が「脱炭素エネルギーによる地域連携プロジェクト」のリーダーを務めています。

単なる再生ではなく、将来のカーボンニュートラル(CN)にどうつなげるかや、和倉温泉の貴重な温泉熱エネルギー(温泉排熱)を活用できないかなどを目的としており、エネルギー事業者としての知見を生かし、先進的な温泉地となるよう、地域の未来を見据えた取り組みをけん引していきます。

井関 震災で得た知見の活用にも積極的に取り組んでいます。

松田 未曽有の激甚災害を経験した事業者として、ハード面のレジリエンス強化はもとより、道路状況の把握や、資材や水・食料の調達、トイレや宿泊先の確保などのバックヤード業務、そして自治体などとの連携、規制上の課題など、いわゆるソフト面が非常に重要であると強く感じました。災害で得た知見や対策を全国の関係機関に共有・展開しレジリエンス強化に貢献することが使命、責務だと認識しています。レジリエンスの強化には、ハード・ソフト両面の知見の活用が欠かせません。現在、後方支援などにかかわるソフト面の知見については、実際の災害対応に当たり体験した課題や対応案を集約し、整理を行っているところです。

道路復旧に合わせて能登半島で進む電柱建て替え

例を挙げると、地震直後、能登半島全域が緊急用務空域(=事前の現地確認・申請が必要)に指定されたことで、迅速なドローンによる巡視・点検の妨げになったほか、避難所に電気を供給する電源車の軽油燃料取り扱いにおいて消防法による事前承認が必要になるなど、規制面での壁があることに直面しました。また、1日最大1400人もの復旧作業員が使う仮設トイレのし尿処理など、さまざまな困難があった訳でありますが、当時は一つ一つ、それぞれ関係機関と調整しながら解決を図ってきました。こうした経験を踏まえ、平時のうちに、遅滞なき災害対応、課題解消に向けて、国、地元自治体などの行政機関、災害時連携協定を締結している関係各所への働きかけ、防災訓練の強化などを通じて対応の実践的なブラッシュアップを図っていくことが重要であり、引き続き取り組んでいきます。

【中部電力 林社長】電力需要増に対応 産業集積地中部の持続的な発展に貢献

洋上風力第1ラウンドから事業撤退したものの、引き続き全国で各種再エネ開発に注力するとともに、浜岡原子力発電所の早期再稼働へ取り組みを着実に推進。

DX・GXの進展に伴う電力需要の増加に対応し、産業集積地である中部エリアのモノづくりを支え、地域の発展に貢献していく。

【インタビュー:林 欣吾/中部電力社長】

はやし・きんご 1984年京都大学法学部卒、中部電力入社。2015年執行役員、16年東京支社長、18年専務執行役員販売カンパニー社長などを経て20年4月から現職。

井関 2025年度中間期の連結決算は減収増益でした。

 中間期は、洋上風力発電事業撤退損失として136億円を計上するなど収支悪化要因がありました。一方で、夏季の高気温影響に加え、中部電力ミライズにおける電源調達ポートフォリオ組み替えによる費用削減効果の拡大などグループを挙げた収支向上努力により、通期の連結経常利益は2300億円(期ずれを除き2100億円)と、中期経営目標である「2000億円以上」を上回る見通しとなりました。金利の上昇や物価高といったマイナス面を打ち消す「稼ぐ力」を付けられたこと、そしてコストダウンが実行できたことは、何より社員の努力によるものです。


選択と集中を徹底 資本効率の向上図る

井関 今年度は「経営ビジョン2・0」の達成を見据えた中間地点であり、現行中期経営計画の最終年度です。経営目標達成への手応えはいかがでしょうか。

林 最終年度に2000億円の経常利益の確保を目指してきた中、(期ずれを除き)2100億円程度となる見通しとなり、計画は順調に推移していると実感しています。ROIC(投下資本利益率)も3・3%程度と、目標の3・2%以上を上回る見込みです。一方で、当社を取り巻く事業環境・投資環境は、米国関税政策をはじめさまざまなリスクがあり、先行き不透明な状況が継続することが想定されます。さらなる市場対応力の強化やコストダウンに加え、各事業のモニタリング、投資案件の評価などのリスク管理を徹底することにより利益水準の確保に努め、確実な目標達成を目指していきます。

ミライズはソリューション提案に力を入れている

井関 26年には次期中期経営計画を策定することになりますが、何がポイントになるでしょうか。

 物価・労務単価・金利の上昇など、当社を取り巻く事業環境は厳しい状況が続きます。そうした中で、限りある経営資源を最大限活用し資本効率を高めるため、「思い切った選択と集中」を踏まえた新しい事業ポートフォリオやその実現に向けた工程などの検討を進めており、次期中期経営計画で新たな成長戦略を示す方針です。エネルギー事業のみならず、海外事業や不動産事業、資源循環事業など多角化を進めてきた中で、いずれかの分野をなくすというわけではなく、それぞれの分野の中で選択と集中を進め、将来性のある取り組みに注力しつつ、撤退基準に抵触するものについては撤退を判断していきます。

経常利益、ROICは現行の中期経営目標を達成できる一方、ROE(自己資本利益率)は6%程度となる見込みで、その改善は当社にとって最重要課題の一つです。次期中期経営計画では、資本市場から期待されている8%を意識して目標を設定することを検討しています。

井関 25年6月に公表された電力広域的運営推進機関の需給シナリオで、電力需要が大幅に増大する将来見通しが示されました。中部電力エリアの足元の動向と将来見通しはいかがでしょうか。

 25年度の電力需要は前年度並みの水準で推移しています。米国の関税政策による電力需要への影響については、先行きの輸出産業関連の生産動向に懸念はあるものの、足元において生産計画の見直しを行った企業は少ないものと認識しており、現時点では大きな影響は生じていませんが、引き続き状況を注視していきます。

また、広域機関の見通しでは、中部エリアの24年から10年間の電力需要の伸びは全国平均に比べると下回っています。ですが、中部エリアはモノづくりが盛んな産業集積地であり、AIやロボティクスを前提とした自動化などのDX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)に伴うポテンシャルは高く、デジタルインフラの拡大や、カーボンニュートラル実現に向けた電化が進展することによって、電力需要が増加する可能性が高いと考えています。DX・GXの動向は需要想定に与える影響が非常に大きいことから、エネルギー政策やエリアの産業動向などに目を配り、適切に需要見通しに反映していきます。

グループ全体でのデータセンター(DC)などの大型需要誘致に加え、ミライズのソリューション活動の一環としてGX実現に向けた電化提案などにも取り組むことで、さらなる電力需要の創出につなげるとともに、モノづくりが盛んな産業集積地である中部エリアの持続的な活性化に貢献していきます。

給電設備の最適配置を導出 EVの利便性向上に貢献

【技術革新の扉】EV走行充電の最適化/東京大学 生産技術研究所

東京大学の本間教授らは、EVの「走行充電」の実現性を数理解析で検証した。

その結果、最小限のコストで同技術を社会実装できることが明らかになった。

電池残量を気にすることなく、充電なしで無制限に走り続ける―。一見、未来都市のようだが、電気自動車(EV)が走行中に道路に埋め込まれたコイルから無線で給電を受ける「走行中ワイヤレス給電システム」(DWPT)が普及すれば現実となり得る。EVにとっては、利便性が大幅に向上する技術だ。

走行充電のイメージ図

ただDWPTを敷設するには莫大なコストがかかる。そこで、東京大学生産技術研究所の本間裕大准教授らによる研究グループは、最先端の数理モデルを用いて、コストと利便性を両立できるDWPTの「最適配置」を導出。特に市街地では、利用者が一度も充電することなく走行できる「無限走行」を提唱した。


懸念は膨大な建設コスト 高速はスタンド併用が鍵

本間氏は元々、特定の制約条件の下で最も効率的になるような値を、変数を整数で表すことで計算する「離散最適化」という分析手法を用いて水素ステーションやEV充電網の最適配置といった課題に取り組んでいた。そうした中で、「充電スタンドだけではEVインフラは成立しない」ことを示唆する試算結果に直面したことがきっかけとなり、DWPTの可能性に注目し始めた。

DWPTを実装する上での懸念は初期投資が多額となる点だ。そこで、利用シーンを「高速道路」と「市街地」に分け、DWPTを無駄なく敷設する配置パターンの模索に乗り出した。

高速道路のシミュレーションでは、東京~大阪間を結ぶ「新東名・名神」(計965㎞)、東京~青森を結ぶ「東北自動車道」(計1359㎞)のデータを基に、EV普及率を30%、1㎞当たりの設備費用を2・5億円、DWPTの受益者が1kW時当たり50円を追加負担するという条件で検証を行った。

仮に全てEVの移動需要をDWPTで賄う場合を想定したところ、費用収益面のマイナスが大きく出たため、DWPTに加え、既存の充電スタンドの利用も想定した最適配置をシミュレートした。その結果、EV移動需要の95%をDWPTが、残り5%を充電スタンドで賄う構成が最も合理的であることが分かった。EVバッテリー容量が30‌kW時の場合、どちらも敷設量は200㎞程度(いずれも往復)に収められ、車両からの収益がコストを上回る。

「東京から富士、御殿場といった短~中距離移動が最も多く、長距離移動は少数だった。多数(95%)をDWPTで、残り(5%)の長距離移動をスタンドで賄うというのが、距離ごとの利用分布からも最適配置といえる」と本間氏は説明する。


2万以上の変数から算出 市街地では無限走行可能

では市街地の場合はどうか。

高速道路との違いは、赤信号で止まっている時に充電できる点だ。本間氏は市街地において、赤信号で止まる、もしくは、右左折で徐行することが多い「交差点」付近に配置するのが効率的だと考えた。

ただ、重要になるのは交差点の付近に配置する上で、何をもって最適とするかだ。そこで本間氏が設定したのが、最も厳しい条件―ほかの充電設備を使わずに、町中のDWPTだけで走行し続けられる―という「無限走行」モデルだ。この究極的な条件でさえ、必要敷設量が現実的な範囲に収まるものであれば、DWPTの実用性を証明できる。背景にはそうした考えがあった。

市街地における最適配置で重要となるトレードオフ構造


実際に市街地での無限走行をシミュレートするためには、さまざまなトレードオフを考慮する必要がある。例えば、交通量の多い交差点では、青信号の時間が長く設定されており充電への効果は限定的だが、赤信号の時間が長い細い路地の交差点では車両の数が限られる。

こうしたトレードオフを加味しながら、離散最適化を用いて、コイルを埋める場合を1、埋めない場合を0とし、各地点の組み合わせを膨大なパターンから選び出した。対象としたのは交通シミュレーションの実績がある埼玉県川越市。総延長約15

0㎞の道路を7mで分割した約2万1千個の「0―1変数」を計算した。その結果、全道路のうち、わずか2359m(1・6%未満)の敷設で、市内の全車両が無限に走行し続けられることがわかったのだ。

本間氏はこの結果について「おおよそ半数の交差点にDWPTを2個設置すればいいという水準で、現実的に実装可能な数字だ」と強調する。

本間氏は現在、高速道路、市街地において国内外問わず他エリアでも同シミュレーションを応用すべく準備を進めている。脱炭素時代のモビリティインフラは、大きな転換点を迎えつつある―。

3町村にとどまる文献調査 地点拡大に向けた突破口は

【多事争論】話題:「核のごみ」の最終処分地選定

日本が避けて通れない高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定プロセスが遅滞している。

事態打開に向け、調査を受け入れたトップランナーと専門家はどう考えるのか。

〈「手挙げ方式」はもう限界 メディアの責任も重大〉

視点A:片岡春雄/寿都町長

高レベル放射性廃棄物の最終処分場建設を巡り、寿都町では2020~22年にかけて、原子力発電環境整備機構(NUMO)が文献調査を実施した。昨年11月にはNUMOから調査報告書を受け取り、今後法律に基づき、政府から次のステップである概要調査に進むかどうか意見を聴取された場合には、住民投票を実施する予定だ。既に住民投票条例は制定済みで、中断している町民向け勉強会は雪が解けた来春以降に再開する。この冬に政府からアクションがあった場合は、もう少し待ってもらうことになるだろう。

さて、私自身は今年10月の寿都町長選で7度目の当選を果たすことができた。今回の選挙は最終処分場問題というよりは、町民の皆さんが「10年後の寿都町をどうするのか」という点に重きを置いて判断してくださったのだと思う。

寿都町の現実は厳しい。この5年間で町は一段と疲弊し、何とか首の皮一枚でつながっているような状況だ。もともと高齢者が多い中で、年間30~40人が亡くなり、出生数は10~15人しかない。さらに高校を卒業すると多くの人が町外に出ていくため、人口は毎年40人程度減っていく。10年に3443人だった人口は今年2558人にまで減少した。基幹産業である水産加工業も打撃を受けている。水揚げ量が減り、新たに養殖を始めようとしても、資金が必要だ。

この疲弊を打開し、今後の街づくりを進める上で、概要調査の実施で受け取れる最大70億円の交付金は非常に有効だと考えている。町長選で対立候補は「交付金に頼るな」と主張したが、地域を活性化させる代案を提示できなかった。


北海道ではなく日本全体の問題 国の原子力政策は言行不一致

日本はこれまで原子力発電所の恩恵を受けてきたし、今後も活用する方針だ。そうである以上、最終処分場は絶対に必要となる。建設地選定プロセスを前進させるために最も重要なのは、文献調査の実施地点が全国的に広がることだ。20年にこの問題に一石を投じる気持ちで文献調査に応募した時、トップランナーである私たちの後ろからほかの自治体が付いてくると期待していた。しかし、この5年間で文献調査を実施したのは寿都町と同時にスタートした北海道神恵内村と、24年6月に開始した佐賀県玄海町の3町村にとどまる。玄海町こそ、原発立地自治体の矜持を持って調査に手を挙げたが、全国的な広がりはなく、「北海道の問題」として見られる状況は変わっていない。

プロセスが進まない大きな要因の一つは、メディアの報道姿勢ではないか。マスコミは読者が「自分ごと」として前向きにとらえるような報道を行っていない。推進派と反対派の意見を同じ割合で併記することは少なく、基本的には反対派の意見に多くの紙幅が割かれている。町の分断や私に対するリコール運動ばかりが報道され、本来議論すべき本質が埋もれてしまった。最終処分問題は扇動的にならず、冷静な議論を行うべきだ。

メディアを通じて、寿都町の現状を見聞きした全国の首長は何を思うだろうか。「文献調査に協力しよう」とはならないだろう。こうした状況になった以上、調査に協力する自治体を待つ「手挙げ方式」はやめた方がいい。

原子力政策は「国策」だ。国策への協力が首長の進退を賭けるような重大決断であってよいのか。責任を首長に被せるやり方は間違っている。国は第7次エネルギー基本政策などで「前面に立つ」としているが、行動が伴っていない。高市早苗首相の所信表明演説でも、最終処分問題は一言も触れられていなかった。そんな中で今国会、参議院予算委員会で国民民主党の榛葉賀津也幹事長がこの問題に触れた。国が主体的に解決に向け取り組むため、一歩前進した感はある。

プロセス前進のために、今後は二つの協議体の動きが重要になるだろう。一つは「高レベル放射性廃棄物等の最終処分に関する議員連盟」の活動再開だ。特定の政党や政治家に負担を押し付けることなく、機運を高めてもらいたい。もう一つは今年設置された全国原子力発電所所在市町村協議会の「バックエンド問題に関する検討委員会」の進展だ。立地自治体が最終処分問題を真剣に考え始めており、動きに期待している。

フィンランドやスウェーデンの事例を見ても、プロジェクト成功の鍵は国が前に出たことにある。スウェーデンでは政府が多くの地点に調査をお願いし、最終的に残った2地点が誘致合戦を行ったほどだ。日本も最終的にはこうした形になるのが望ましい。

かたおか・はるお 1949年北海道旭川市出身。71年専修大学商学部卒業。75年寿都町役場入庁。2001年寿都町長選で初当選。20年高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地選定に向けた文献調査に応募。全国初の調査実施を実現した。現在7期目。

【エネルギーのそこが知りたい】数々の疑問に専門家が回答(2025年12月号)

LNG基地の第三者利用の実態/灯油需要が根強い理由

Q LNG基地の第三者利用は進んでいるのでしょうか。

A LNG基地の建設には多額の投資が必要です。また、LNG船や消費地との適合性を踏まえると、適地は限られており、新規参⼊者がLNG基地を建設することは容易ではありません。

こうした背景から、既存のLNG基地を第三者に利用させる制度が創設されました。電力・ガス取引監視等委員会からの建議を踏まえ、2019年1月に「適正なガス取引についての指針」が改正され、ガス製造設備の余力およびLNG貯蔵余⼒の見通しの適切な開示、LNGタンクの占有状況を適切に反映する課金標準、競争促進に資する課金標準を用いることなどが「望ましい行為」として定められたのです。しかしこの制度は全国で2件の利用実績があるのみです。どこに課題があるのでしょうか。

上記「指針」が示す内容は、もともとLNG基地が所有者のオウンリスクにより建造される競争材であることから、所有者による運用を阻害しない余力の範囲において第三者に利用させるためのもので、その利用には限界がありました。このため、LNG基地の第三者利用にどれほどニーズがあるのかを徹底検証することが有効です。LNG基地の第三者利用により、その卸取引は多様化されることが期待できます。リロード機能を持つLNG基地では、いったんLNG船からタンクに注入したLNGを別のLNG船に移して国内外に転売することが、物理的に可能です(契約内容を含めた法的制約はあり得ます)。

LNG基地から小規模なLNGサテライト基地にLNGを運ぶことを前提とした第三者利用をするといったこれまでにない展開があってもよいでしょう。競争促進に資する制度の深化が望まれます。

回答者:草薙真一/兵庫県立大学国際商経学部 教授


Q 北海道の家庭ではなぜ、灯油需要が根強いのでしょうか。

A 北海道では、家庭用エネルギーとして灯油の需要が長年にわたり高い水準を維持しています。その背景には、寒冷な気候、住宅事情、生活文化、インフラ整備の状況、そして経済的要因が複合的に関係しています。

まず、北海道の冬は長く厳しい寒さが続き、平均気温が氷点下になる期間が他地域よりも長いため、暖房の必要性が高くなります。灯油は熱量が高く、効率的に室内を暖めることができるため、寒冷地において適した燃料とされています。

住宅事情も影響を与えています。北海道では戸建て住宅の割合が高く、個別暖房が主流です。灯油ストーブやボイラーは設置が容易で、初期費用も比較的安価、ストーブは移動が簡単にできるタイプや炎が見えるタイプなどが多くの家庭で導入されています。また、冬期間は外気温が極端に低くなる分、室内を極端に暖かく保つという生活スタイルが一般的です。これは石炭暖房が主流だった時代のなごりであり、当時は温度調節が難しかったため、家全体を暖める習慣が定着しました。灯油暖房はこの文化と親和性が高く、現在も多くの家庭で受け継がれています。

さらに、都市ガスのインフラが十分に整備されていない地域も多く、電気やガスに比べて手軽に入手・使用できるという利便性も需要を支える要因です。灯油は配達サービスが充実しており、地域の販売店による安定供給が確保されていることも、利用継続の一因です。地域によっては灯油価格に対する補助制度や価格調整が行われることもあり、経済的な面でも灯油が優位に立っています。これらの要因から灯油は家庭の主要な暖房エネルギーとして、現在も根強い需要を維持しています。

回答者:沼田常好/北海道燃料団体連合会 会長

【空本誠喜 日本維新の会 衆議院議員】新増設の青写真を描け

そらもと・せいき 1964年広島県生まれ。87年早稲田大学理工学部卒業、92年東京大学大学院工学系研究科原子力工学専攻・博士課程修了。93年東芝に入社し、原子力事業部に配属。2009年衆議院議員選挙で初当選(広島4区)、現在3期目。

東芝の原子力事業部を経て衆議院議員となり、福島第一原発事故では影で官邸を支えた。

現在は日本維新の会の経済産業部会長として、政権与党の政策を主導する。

1964年、広島県生まれ。幼稚園児の頃から「将来はロケット博士と総理大臣になってノーベル賞を取る」と親戚のおばあさんに豪語していた。この会話は言霊となり、人生の目標へと変わった。

小学生になると『宇宙戦艦ヤマト』のテレビ放送に夢中になった。放射能で滅亡寸前の地球を救うため、ヤマトが14万8000光年彼方のイスカンダル星に放射能除去装置を取りに行く物語だ。そこで「自分も将来は放射能除去装置を作ろう」と誓った。

高校生になり、今後の世界はエネルギーと食料が大きな問題になると考えた。物理が得意だったので、科学者・技術者を目指して早稲田大学理工学部、東京大学大学院原子力工学専攻へと進んだ。「東大の原子力の研究施設は茨城県東海村にあって、高速加速する陽子ビームを使って高速中性子を発生させたり、トリチウム(三重水素)を含んだターゲットにデューテリウム(二重水素)を加速衝突させる核融合実験を行ったりして研究を楽しんでいた」

その後は東芝に入社し、原子力事業部に配属された。「原子炉は『釜の底』まで見ている」と言う通り、沸騰水型原子炉(BWR)の炉内に水中ロボットを入れ、炉底の確認作業などのマネジメントを行った。発電所の寿命延長や保全技術に関する業務、高速増殖炉「常陽」の開発・共同研究といった原子力関係の仕事はほぼ全て携わった。毎年数件の特許明細書の申請も担当した。

30代になると、放射能除去装置開発と並ぶもう一つの夢、総理大臣に向けて動き出した。東芝在籍中の98年、旧自由党の国会議員一般公募に合格。旧自由党は民主党と合併し、2003年と05年の衆院選に民主党公認で出馬した。しかし、内閣官房長官などを歴任した自民党の中川秀直氏に敗れた。その後、3度目の正直で挑んだ09年の衆院選で初当選を果たした。


誕生日に発生した東日本大震災 エネルギー安全保障にこだわる

福島第一原子力発電所事故は国会議員として迎え、〝影武者〟として事態収束に奔走した。当時の菅直人首相は原子力安全委員会に不信感を募らせており、空本氏が官邸直轄の緊急助言チームを組織した。昼夜を問わず、低レベル汚染水の海洋放出とモニタリングの実施、避難者へのニュースレターの発行、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の活用などを官邸経由で東京電力と関係省庁に指示。東日本全滅という「最悪シナリオ」の作成も検討した。「3月11日は私の誕生日で、因縁を感じずにはいられない。放射能除去装置がこの世にあればと心底思った」

現在は日本維新の会の経済産業部会長(兼エネルギー安全保障分科会長)を務め、政策論議をリードする。「石油は国家備蓄などで約1年分を確保しているが、地政学リスクと発電コストが高い。天然ガスはリスク、コストともに低いが、長期貯蔵が難しい。石炭はCO2を多く搬出するが、コストは低く、貯蔵が容易だ」。こう整理した上で、エネルギー自給率を高めるために重視すべき電源について「ベースロード電源として最も期待できるのは原子力。次に高効率で温室効果ガス(GHG)排出を抑制した火力発電、その次に再生可能エネルギー」と分析する。さらに地球規模でGHGを大幅削減するために最も効果的なのは、新興国の石炭火力を日本の優れた火力技術に置き換えることだと訴える。

原子力分野でもリアリズムを追求する。「革新軽水炉の新増設と高速炉の開発・実用化による核燃料サイクルの確立が現実的」として、「どこに立地するか、具体的な青写真を示すべき時にきている」と政策の前進を望む。一方、技術開発は否定しないが、小型炉は分散化による核セキュリティ問題、高温ガス炉は核燃料サイクルの実現性、核融合は事業成立性が課題だとの評価だ。

再エネや新エネルギーについては、「国土が限られる日本でグリーン水素の大量生産は難しい。将来的には『液化グリーン水素』を輸入することになるだろうが、輸送コストが課題。アンモニア専焼は技術的にも経済的にも実用化の可能性は低い。CCS(CO2回収・貯留)も地元合意や経済性の観点で有効なら開発すべきだが、50年カーボンニュートラルには間に合わない」と鋭く切り込む。

地元ではドブ板活動を徹底する。瀬戸内海に面した離島が多い選挙区で、島内を自転車で駆け回る。1日12時間、100㎞以上走る日もあるという。夢のノーベル賞については「あと30年、90歳くらいまで研究に没頭できれば可能性はあるかもしれない。新たな蓄電技術を発明したら間違いない」と笑みを浮かべる。原子力の専門家が連立与党のエネルギー政策を支えているのは心強い。

エネルギーの羅針盤構築へ トリレンマ解消に向け支援強化

【巻頭インタビュー】アンジェラ・ウィルキンソン/世界エネルギー会議事務総長 兼 CEO

政治的緊張が続く世界において、エネルギートリレンマの解消は一層複雑化している。

世界エネルギー会議初の女性事務局長に、今後の展望と日本の役割を聞いた。

アンジェラ・ウィルキンソン ロイヤル・ダッチ・シェルやブリティッシュ・ガス、経済協力開発機構(OECD)など、多様なセクターで上級職を歴任。2017年に世界エネルギー会議に参画し、エネルギー転換に向けたツール構築や戦略的洞察プログラムを主導。19年より現職。

―世界エネルギー会議(WEC)の特徴を教えてください。

ウィルキンソン 1923年に設立され、非政府組織・非営利組織の立場から、エネルギーに関する幅広い問題について、関係者が意見を交換することができる唯一の世界的機関です。私は6代目の事務総長であり、創設以来初の女性としてこの役職に就任しました。

WECでは20年前、エネルギートリレンマという新しい枠組みを導入しました。エネルギーをうまく管理していくためには、安全保障、手頃な価格へのアクセス、環境の持続可能性の視点が必要です。これに対し、われわれは、解決策を提示するのではなく、支援する立場を貫いてきました。

現在、世界は政治的な緊張の中にあり、われわれは、ソフト面での支援を維持・発展させることに力を注いでいます。そして、多様でつながりを重視した現代のエネルギー社会の実現に向けた「新しいエネルギーコンパス」を構築していきます。


次の危機を見据えた議論を 包括的な視点が不可欠

―ロシア・ウクライナや中東での紛争が続き、エネルギー資源価格がそれぞれ値動きを見せました。ボラティリティや不確実性がここ数年のキーワードかと思いますが、今後の見通しや注目点をお聞かせください。

ウィルキンソン 世界各国のエネルギー業界のリーダーたちの声を聞く中で、懸念点に関していくつかの共通認識があります。第一に、現在のマーケットは極端なボラティリティの中にあり、コモディティ価格の不安定さが大きな課題となっています。第二に、エネルギー安全保障への関心が再び高まっていること。そして第三に、世界的なインフレや気候変動の影響を受けながら、エネルギーが「手頃な価格」であるかどうかという点が重要視されています。

エネルギートリレンマは常に存在していますが、今改めて見直す動きが拡大しています。ただ、国によっては政治的理由で、一つか二つの要素しか見ていない場合もあります。ここで見逃している要素が、次の危機につながることになります。安全保障か脱炭素か、手頃な価格か気候変動か―といったどちらかを選ぶのでなく、全ての要素を包括し「オア」でなく「アンド」でつなげる考え方が重要です。

―データセンターなどによる電力需要の急増が見込まれています。このトレンドについての課題認識や、今後の対応方針を考える上で必要な視点は。

ウィルキンソン 「需要の津波」は昨年から登場した話題であり、背景にはさまざまな要素があります。中でもAIの電力ニーズが急増している点は重要です。また、人材開発・発展の動きも大きく関わります。この組み合わせで需要が生まれており、発展途上国で顕著です。そしてデジタルのチャレンジには二つの側面があります。AI向けの電力需要増と、エネルギーをより効率的に管理するためにAIを活用するという面です。

ただ、今後こうしたスマートインテグレーションが進むと、サイバーセキュリティも重要となります。デジタル化はある意味で諸刃の剣と言えるのです。

―需要トレンドもあり、原子力ニーズが再び高まっています。

ウィルキンソン 原子力ルネサンスは世界で今話題の議論です。ただ、ある特定の技術についてではなく、さまざまな技術のルネサンスが起きているという認識です。例えば、再生可能エネルギーをある程度の規模に増やし維持するには、安定した調整力が必要で、それは原子力やガス火力から生み出されます。そして、多様でクリーンなエネルギー源の規模拡大が必要です。

日本では、既存の原子力を今後も継続して使い、同時に洋上風力の開発にも力を入れていますね。他にバイオガスやeメタンなどのクリーン燃料の開発も進み、そこにCCS(CO2分離・貯蔵)の実装も視野に入れています。どの技術も良い・悪いと一概に言うことはできず、あらゆる技術の可能性を検討する必要があるはずです。ただ、原子力に対する見方は政治的な影響を受けており、だからこそ、各国で見方が異なります。最善の結果を得るためには、パーフェクトを求めないことが重要だと思います。


高市新政権に期待感 エネ安保に新たな視点を

―日本の第7次エネルギー基本計画についてどう評価していますか。

ウィルキンソン 日本のエネルギー政策が高い成熟度に達していることを示していると感じています。安全保障、手頃な価格へのアクセス、持続可能性といった多様なニーズに対して、エネルギーシステムをいかに適切に管理していくかという視点が反映されています。また、他国の政策と共通する要素も見受けられ、エネルギートリレンマのバランスをどう取るか、そして急速に変化する国際情勢の中で、柔軟かつ迅速に対応していく姿勢が計画に盛り込まれている点は非常に重要です。

―日本初の女性総理が誕生しました。高市早苗新首相は、安全保障を特に重視しています。新政権に果たして欲しい役割は。

ウィルキンソン 高市新政権には、既存のエネルギー安全保障の枠組みにとらわれることなく、新たな視点を持ち込んでもらいたいです。これから、エネルギー供給の多角化を図るだけではなくレジリエンスの強化もさらに重要になってくるでしょう。新たな価値を生み出し、エネルギー安全保障という言葉を書き換えて欲しいと思います。

【需要家】非化石価値の転換期 国内外で制度見直しへ

【業界スクランブル/需要家】

再エネ価値評価の適正化の観点から、非化石価値取引市場の見直し議論が動き始めた。短期的な対応策として、FIT証書の市場取引に関わる下限価格の引き上げと上限価格の撤廃、非FIT証書の需給バランス引き下げが提案され、審議会ではこの方針が全面的に賛同された。また、2030年度以降を視野に市場の在り方を抜本的に見直す方針も合意された。

時を同じくして、30年頃の本格運用開始が見込まれるGHGプロトコル改定版の検討作業も進展をみせており、スコープ2の算定基準が大きく見直される方向だ。パブコメで示された改定案では、GHG排出量削減に用いる証書に①時間的、②空間的な同時性―を求めている。①はいわゆるアワリーマッチング、②はTSOエリア内や広域同期系統エリア内での需給マッチを求めるもので、証書の活用要件が厳格化される方向だ。

またFIT制度について、改定案では「標準供給サービス(公的支援や規制によるコスト回収などを伴う供給)」に該当するとし、FIT証書の価値を一定の比率を超えて特定の需要家に帰属させることはできないと整理されている。適用除外や経過措置も検討されているが、改定案に沿えば、非化石証書活用の前提は大きく変容する。

従来、FIT制度により供給主導で進んできた日本の再エネ導入だが、脱・卒FITの下では需要が導入を律速することになる。その上で前述のような変化を見据えれば、国内の再エネ電力の取引環境はさらに複雑性が増すとみられる。需要家は、電源確保へのコミット強化や、環境価値に対する対価の考え方を再考する必要があろう。(P)

【再エネ】簡単ではない国産化 新政権の出方に注目

【業界スクランブル/再エネ】

高市早苗首相が「私たちの美しい国土を外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことは猛反対」と明言した通り、メガソーラー開発の規制強化がなされる見込みだ。筆者も国費の流出につながる再エネ支援には否定的だが、再エネの急速な普及拡大に安価な中国製太陽光パネルが貢献してきたことは事実である。

再エネ産業の国産化は容易ではなく、意欲的な導入目標を掲げながらも外国製品を規制する施策は、国民や企業の経済的負担を増やすことに他ならない。競争力のあるクリーンなエネルギーが求められるが、国産の新技術として期待されるペロブスカイト太陽光や核融合の早期実用化には、技術開発や価格競争力に課題があると言わざるを得ない。恐らく短期的にはLNG調達や原子力の活用が現実解になると思う。

最近、北海道の釧路湿原のメガソーラーを巡る反対運動が活発化しているが、この問題の本質は規制種調査範囲や開発面積の境界線の認識のずれといった手続き上の不備にある。こうした事例をもってメガソーラーが無秩序に開発されてきたと総称するのは言い過ぎだろう。釧路市は国に規制強化を申し入れたが、既に国定公園など開発禁止エリアは整理されており、地域ごとの上乗せ規制は各自治体に委ねてきた。この方向性は悪くない。

2030年以降には太陽光パネルの大量廃棄時代が到来する。海外製品との価格競争に陥らないよう、国内のリサイクル技術開発や体制の構築、運用維持など、再エネ設備から運用面に補助金を振り向けるべきではないか。高市政権でエネルギー政策がどう変わるか注目したい。(K)

仏主導で対米自立に向かう欧州 核シェアリングの実現へ課題山積

【原子力の世紀】晴山 望/国際政治ジャーナリスト

米国の「核の傘」が揺らぎ、欧州は自衛の道を本格的に模索し始めた。

「欧州の核」構想は希望か幻想か。米国頼みの安全保障体制が転機を迎えている。

欧州がロシアとの戦争に巻き込まれても、米国は助けてくれないのではないか─。米国第一主義を掲げるトランプ氏が1月に米大統領に復帰して以後、欧州諸国は疑心暗鬼に陥っている。トランプ氏は時に、欧州と敵対するロシアのプーチン大統領に接近を図ろうとまでするからだ。欧州諸国は真剣に「自立」を探り始めている。

欧州は安全保障で自立できるのか


核兵器の数と種類が不足 ロシアとの圧倒的な戦力差

最初に動いたのはフランスだ。マクロン大統領は3月5日のテレビ演説で「フランスが保持する核兵器による抑止力を、欧州全体で使うための議論を始める」と表明した。これまで欧州の安全保障を支えてきた米国の「核の傘」が破れ傘となっても、フランスがその代役を果たそうという宣言と言える。

マクロン氏は2020年2月にも、フランスが欧州の集団安全保障で中心的な役割を果たすと提案し、欧州諸国に戦略的対話を呼びかけた経緯がある。今回はさらに踏み込み、フランスを中心とする「欧州の核」構想を打ち出した。

この発言をドイツが強く支持した。2月の総選挙で勝利を収めた中道右派「キリスト教民主同盟(CDU)」のメルツ党首は「欧州を自力で守るために、あらゆる努力をしなければならない」と発言、マクロン氏が持つ危機感を共有した。さらに、ロシアと国境を接する東欧諸国もマクロン氏の提案に賛同する。

ポーランドのトゥスク首相は「米国は信用できない」と不信感をあらわにしたほどだ。

マクロン氏はその後、核兵器を搭載するフランス戦闘機を欧州各国に派遣する考えを含め、欧州の核抑止力を向上させる考えを示した。米国は現在、ドイツ、オランダ、イタリア、ベルギー、トルコの5カ国に核爆弾約100発を配備し、有事の際は各国の戦闘機に載せる「核共有(シェアリング)」を実施している。フランスもそれと似たようなことをする準備があるという提案と言える。

ただ、「欧州の核」構想には課題も多い。最大の問題は、核兵器の数と種類が絶対的に足りない点だ。

ロシアは5580発と世界最多の核兵器を保有する。大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など威力の大きな戦略核兵器だけでなく、戦場で使う戦術核兵器を約2000発持つなど種類も豊富だ。

一方、フランスの核兵器数は290発とロシアの約20分の1に過ぎない。仮に、英国が「欧州の核」に加わっても、合計で500発足らずだ。保有する核兵器の種類も少なく戦術の幅も狭い。英仏両国の主力はSLBMで、両国はこれを4隻ずつの原子力潜水艦に載せる。だが、戦闘機搭載用の核兵器はフランスしかなく、それも54発にとどまる。ありていに言えば、仏英両国の核戦力は米国の「核の傘」を補完する力はあるが、代替する力は備えていない。米国がソ連(ロシア)に対抗するため長年かけて築いてきた「核の傘」は、「欧州の核」にそうやすやすと置き換えられるほど柔なものではない。

【火力】kW時確保の盲点 設備運用面での弊害

【業界スクランブル/火力】

現在議論されている「小売事業者に対し、実需給3年前に想定需要の5割、1年前に7割の電力量(kW‌時)を確保させる」という制度案は、燃料調達の予見性を高める狙いがあるものの、電力システム全体の実運用に深刻な影響を及ぼす恐れがある。

電力需要は時間とともに大きく変動し、同時同量が常時求められるが、今回の対策により想定需要の一部を確保させることは、発電設備の運用を矩形的に固定してしまうことになる。これまで需給調整を供給力全体で行ってきたが、7割が固定化されることで、変動対応を残余の設備だけで担うこととなり、すでにひっ迫している調整力不足を一層深刻化させる懸念がある。さらに、調整力としての運用が特定設備へ集中すれば、過度な稼働やメンテナンス制約を通じて設備信頼度を低下させかねない。結果として、燃料確保の予見性を高めるはずの制度が、むしろ予備力や調整力の確保を困難にし、供給信頼度を損なう形で発電事業者の首を絞める恐れがある。

問題の本質は、議論の当事者である国、有識者、送配電、小売り、さらには発電事業者までもが、燃料確保に意識を奪われ、発電設備の運用現場で行われている調整力確保の対応に思いが至っていない点にある。燃料調達リスクの低減を図ることも重要だが、その施策が周囲にどのような影響を及ぼすのかについて、より慎重な検討が求められる。

発電設備の運用を巡っては複数の市場が乱立し、再エネ優先給電ルールも相まって整合性を欠く事例が散見される。今回の検討が制度間の齟齬を整理する契機となるのか、それとも一層の混乱を招くのか、注視が必要だ。(N)

業界の歩みから未来を展望 万博に続く成功の道を探る

【リレーコラム】平 慎次/ボストンコンサルティンググループマネージング・ディレクター&パートナー

 プライベートを含めて大阪・関西万博を数回訪れることができた。各国の建築物や大屋根リング、また、25年後の将来世界の体験などを純粋に楽しんだ。自然との調和を重視しつつ、AI・ロボットなどの技術進化と共生する生活は、今取り組んでいるGXとDXの進みが結実する世界を示唆していた。

激動の25年を歩んだ電力業界一方で過去に目を向けると、個人的には約25年の間、電力・エネルギー業界に携わってきた。新卒で東京電力に入社した当時、非常用電源の建替工事で漏電を起こしてしまい、深夜に超高圧変電所がブラックアウトして何も役に立たなかった情けない思い出がある。

この間、業界では多くの変化が起きた。原子力データ改ざんなどの不祥事、新潟県中越沖地震などの災害、東日本大震災と福島原子力発電事故、小売り全面自由化・送配電法的分離、再生可能エネルギーの大量導入、脱炭素化・サステナビリティの潮流、そしてAI・データセンターによる電力需要増など、なんと大きなイベントが起きる業界かと思う。これに加えて、国際情勢・地政学の影響、燃料ボラティリティリスク、安全保障などにも配慮が必要になっている。

インフラ・公益事業で安定と思われがちだが、電力・エネルギー会社の経営マネジメントは難度が高いと感じる。現場での設備の保守・メンテナンスや災害時の緊急対応もこなしながら、不透明な事業環境下で暗中模索しつつも経営をかじ取りしなければならない。2000年前後には、世界のインフラ・公益事業会社の時価総額ランキングで東京電力がトップ10に入っていたと記憶するが、今年にはトップ30にも日本企業の名前が見当たらない。時価総額で全てを語るつもりはないが、経営力に差が出たのは否めない。

未来を見ると、今後の電力需要増に対応するため、電源開発の拡大をはじめとする令和のインフラ大構築時代に入る。一方で、ヒト・モノ・カネが足りない社会構造上のボトルネックにも直面している。高齢化や労働人口減少による技能者不足、地政学・インフレが相まったサプライチェーンの混乱、企業の財務体力の弱体化もあり、高度経済成長期のインフラ構築よりも立ちはだかる壁は高い。本当にできるのかと疑念もわくだろう。

これらのチャレンジングな状況をポジティブに捉えると、エネルギー会社にとっては活躍と成長のチャンスとも言える。万博で描かれたような将来を実現するために、そして万博の成功に続くように、日本企業の経営力向上に少しでも貢献すべく志高く取り組みたい。

たいら・しんじ 東京電力で技術マネジメントを経験後、ボストンコンサルティンググループに入社。エネルギー企業を中心にシナリオプランニングなどで支援する。脱炭素・水素アンモニア・データセンター分野などに精通する。

※次回は、GX推進機構の重竹尚基さんです。

【原子力】原潜の保有を検討せよ 核兵器と原子動力は別物

【業界スクランブル/原子力】

日本の周辺には隣国の防衛力が自国の軍事力より低いと見れば、平然と侵略するような国連安保理の常任理事国がある。国民を守るには抑止力として世界の最先端防衛力を持つことが必須だ。

自民・維新の連立政権合意書には「次世代の動力を活用したVLS搭載潜水艦の保有にかかる政策を推進する」とある。既に米英豪の軍事同盟「AUKUS」では米英から豪への原子力潜水艦の提供が決まっており、さらに米大統領は韓国の原潜保有を認めた。北朝鮮が原潜の開発に乗り出す中、わが国も保有を検討すべきである。

被爆国日本は核拡散防止条約を批准し、国際原子力機関(IAEA)に加盟しているため核兵器の保有は厳禁だ。しかし、位置を特定されにくい原潜で通常兵器による反撃能力を保有することは、防衛力として極めて効果的である。日本の原潜は米露のように世界中を相手にする必要はない。守備範囲は日本周辺だけだから高濃縮ウランは不要。低濃縮ウランで数年持てば十分だ。原子力船「むつ」も低濃縮ウランだった。

同船の失敗は原子力開発初期に背伸びし過ぎた検討不足にあったが、その経験はその後の全ての原子力・放射線関連施設に反映されている。舶用に使える小型炉の研究は原子炉メーカが続けており、繰り返し製造してコストダウンに結び付けば、海上運輸の脱炭素化も目指せる。原子力技術と人材の確保にもつながる。原子力基本法、日米原子力協定、IAEA保障措置協定などとの関係は精査・検討が必要だが、手続きや整理の問題に過ぎない。過去の政府見解など気にせず、時代の流れに対応することが重要だ。(T)

【シン・メディア放談】さまざまあった2025年 揺れる世界で試される日本

〈業界人編〉電力・石油・ガス

今年も国内外で大きな変化があった。日本のエネルギー政策は荒波を乗り越えられるか。

─初の女性首相誕生から1カ月が経過した。安全保障や財政を巡る国会答弁が話題を呼んだが、エネルギー政策はどう見ているか。

石油 正直、まだよく分からない。原子力は再稼働と次世代炉開発の推進、メガソーラーは規制すると言っているが、具体的な方策はまだ出てきていない。

電力 原子力には前向きなので、大手電力会社は期待しているだろう。一方、自前の再生可能エネルギーを展開する新電力などは、どんな規制になるのかと懸念を抱いている。いま表に出ている話は、核融合やSMR(小型モジュール炉)、再エネ国産化、メタンハイドレート開発といった中長期的な話ばかり。どれも重要だが、任期中にどんな成果を上げられるかは未知数だ。ガソリン税の旧暫定税率の廃止や電気・ガス料金補助を実施するが、これは「物価高対策」としての位置付けだ。

石油 暫定税率の財源問題はどうなるのか。今年は埼玉県八潮市で痛ましい道路陥没事故があった。インフラの修繕費用は足りていない。恒久財源を赤字国債で賄うのはあまりに無責任だ。

ガス 赤沢亮正経済産業相はエネルギーの専門家ではないが、政策の飲み込みがかなり早いらしい。それにアメリカのラトニック商務長官との関係性を見て分かるが、冗談を言って場を和ませるのも得意だ。まずは原発再稼働をしっかりと進めてほしい。それが物価高対策にもなる。

石油 柏崎刈羽原発の再稼働が秒読み段階に入ったが、朝日が11月7日に1面で県民意識調査の結果を報じた。3面には「柏崎刈羽、県民意思とは 30キロ圏内、『拒否感が強い』」とあったが、この見出しはおかしい。確かに野党系県議は再稼働に「拒否感が強いことが分かった」と言っているが、調査結果は拮抗している。再稼働に反対という「意思」を強く感じさせる見出しだ。毎度言っているが、再稼働させない場合にどう安定供給を実現するのか、現実的な対案を出してほしいね。


サハリン2は大丈夫か NOと言える日本

─2025年度上期の中間決算が出そろった。皆さんの業界はどうだった?

石油 堅調だが先行きの不透明さは増している。ENEOSは合成燃料(eフュエル)の商業化計画を一時的に見合わせた。1ℓ当たり700円では採算が合わないからだ。『選択』11月号の記事で話題の宮田知秀社長はその辺りの判断がシビアだ。

ガス 電力・ガスは為替や期ずれの影響で好決算が目立つ。ただ、余力が生まれたところで、投資先がなかなか見当たらない。水素もアンモニアも収益化が見えてこない。

【石油】政治的必要性が優先 暫定税率の年内廃止

【業界スクランブル/石油】

12月31日に暫定税率が廃止される。財源を巡って抵抗してきた自民党も、総裁・税調会長の交代で、あっさり年内廃止に同意した。国会対策もあるから野党への譲歩は必要だし、高市トレードで円安も進んだから輸入物価対策は必要なのだろう。首相が財政規律を重視しないこともあるかもしれない。1バレル当たり65ドルの原油は、1ドル=100円なら1ℓ当たり41円、150円なら同61円だから、円安で自動的に約20円値上がりした。政治的必要性は全てに優先する。

しかし、暫定税率・道路特定財源は、田中角栄の国土建設の「夢」であり、「知恵」であった。また日本の自動車社会成長の原動力であり、同時に金権政治と〝土建屋国家〟の基礎だっただけに、そのガソリン税を半減するというのは感慨深い。それだけに、国土インフラの維持管理のための安定財源を見つけることは大変だろう。

軽油引取税は地方税・地方財源で、知事会から暫定廃止に反対する声も強かった。野党も沈黙してきた。なぜか高市首相は総裁選から廃止を主張し、来年4月の廃止となった。確かに、物流コストの引き下げ効果はあろう。地方財政への影響から、新年度実施ということなのだろう。

ただ、ガソリン税の減税分である1ℓ当たり25・1円が値下がりするわけではない。補助金10円の同時廃止で差し引き15・1円と、二重課税分2・5円の値下がりにとどまる。さらに混乱防止のため、補助金は12月11日まで3回にわたり約5円ずつ段階的に増額、実質的な減税分の値下げは年内には実施される。逆に、減税による値下がり感は、薄まるかもしれない(H)