A 事務局であるエネ庁が提示した資料は、前半がガスシステム改革の歩みやファクト整理、後半が将来の人口推移やカーボンニュートラル(CN)化の進展、さらに地方事業者の取り組みなどを中心に構成されていた。このことから、事務局の関心は、法的分離や競争環境整備といったテーマにとどまらず、地方を含めた今後の都市ガス事業全体の在り方と持続的発展をどう図るかにあるのではないか。とはいえ、初会合の様子を見る限り、議論のゴールはまだ明確には定まっておらず、まずは論点を幅広く出していく段階だろう。
検証作業が始まったが、議論のゴールは見えていない
B 今回のWGは、17年の小売り全面自由化から大きく事業環境が変わったことを受け、単なる検証ではなく「総仕上げ」の位置付けで開催されるものと考えている。自由化以降、ロシアによるウクライナ侵攻や米国でのトランプ第二次政権誕生など、国際情勢は激変した。加えて、政府がGX(グリーントランスフォーメーション)戦略を打ち出し、eメタンや水素といった脱炭素化技術が登場した。エネ庁としては、こうした複合的変化を踏まえた上で、ガス事業の将来像を一度整理しておきたいということだろう。
C 人口減少の波が押し寄せ事業継続が困難になることを簡単に「仕方がない」で済ませてはならない。最近では、AIを活用した営業手法も出てきている。人口減少や業務の担い手不足への対応としてAIは非常に有用であり、その戦略を明確にWGの論点に組み込むべきだ。地方特有の競争環境を踏まえた上で、地元経済の活性化といった要素も視野に入れながらエネルギー企業がどう振る舞うべきか考える必要がある。
A 地方における競争という点では、やはり自由化前からオール電化やプロパンガスなどとの激しい競争が行われていると理解している。新規事業者がそのエリアで採算を確保することが難しいと判断すれば、ガス小売りには参入せずオール電化を選択することが合理的だし、新規参入実績だけでは競争環境を適切に評価できない。また、電力とガスは同じ枠組みで語られることが多いが、ガス会社の大半は事業規模や企業体力において新規参入者である電力会社に遠く及ばない。そういった構造の違いにも十分留意して、WGの議論を進めていただきたい。
B ガスシステム改革は大きな問題もなく、おおむねうまくいったと評価している。本来、自由化されれば業界の集約化が進んでもおかしくないが、そこまでには至らなかった。現状は都心部を中心としたガス小売市場で新規参入と競争が進み、地方の市場構造は自由化前から大きく変化していない。人口減少に伴い家庭の調定数が減少し、結果として業務用・大口需要向けの比率が高まっていることだけが変化した点だ。結局のところ、大手、準大手のエリアだけ自由化すれば十分だったのではないかとすら思う。
A ガスシステム改革は、安定供給と保安を確保しながら競争原理を導入して需要家の利益を増進することを目的としており、競争促進による事業者間の「弱肉強食」までは意図していなかったと思う。もともとガスは他燃料と競争していたこともあり、規制なき独占が起きる懸念も小さかった。その中で、ガス小売りの競争を促進しつつ、安定供給や保安を損なうことなくこの8年間を乗り切れたことは評価していいと思う。
C 一つ気がかりなのは、スタートアップ卸など競争促進策の効果だ。競争環境整備で重要なのは供給量の確保と卸ルートの充実であり、初会合でも松村敏弘委員(東京大学教授)が同様の指摘をしていた。どうしても、この部分の評価が問われることになるだろう。加えて、都市ガス導管の延長もまだまだ議論される余地があるのではないかと見ている。これまでも、ニーズの把握などからの議論が行われても、なかなか思うように延伸が実現しないということはあった。延伸の目標をどの水準に設定するべきか、議論の焦点となるのではないか。
A ガス事業は気体を輸送しているため、圧力をかけて送る必要があり、届く範囲が限定される上、ガス導管を地中に埋めることから敷設できる地域にも制約がある。供給網を形成することはもちろん重要だが、投資コストが大きく、定期的なメンテナンスを要すため、需要と供給をセットで構築するなどの経済合理性を考慮する必要がある。