【コラム/10月10日】英国保守党も脱・脱炭素へ 日本はいつまで続けるのか

杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

英国保守党が、明確に脱・脱炭素を党の方針として打ち出した。10月2日付けで発表された「気候変動法の廃止」という文書だ。(まだ公式の保守党HPには掲載されていない。筆者はこのサブスタックから入手した)。

イギリスの「気候変動法」は、2050年CO2ゼロ(同国ではネットゼロという)に向けて、直線的に5年ごとの国全体の排出枠を決めて割り当てるなど、ネットゼロの根幹を成してきた法律だ。それを廃止するということは、ネットゼロを放棄することである。

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気候変動法の廃止

要約:2025年10月2日、保守党は気候変動法の廃止計画を発表した。

気候変動法は機能していない。この法律は閣僚に、国民を貧困化させ、家庭や企業のエネルギー料金を上昇させ、英国の産業を衰退させる政策を採用させている。

だからこそ、われわれの努力にもかかわらず、世界の排出量は増加している。機能しないものは機能しないと認めるべきだ。だからこそわれわれは気候変動法を廃止し、安価なエネルギーを最優先とするエネルギー戦略に置き換える。

これは気候変動対策の放棄を意味しない。安価なエネルギーに焦点を当てた戦略で同法を置き換え、家計に合えば排出削減可能な電気製品を採用できるようにし、自然を保護し、世界的な排出削減につながる製品を革新する。これが地球規模の気候変動に与えるわれわれの最大の影響だからだ。

労働党は実現計画もなく目標を掲げ、国民を貧困に陥れる。改革党は見せかけだけの政策しか提案しない。明確な計画を策定する困難な作業に取り組んでいるのは保守党だけだ。

英国は現在、労働党政権だが、支持率はわずか19%しかない。支持率1位はブレクジット運動の後継にあたる新興政党「改革UK」で何と31%もある。この改革UKはScrap Net Zero、つまり脱炭素を潰せ、と明言してきた。なお支持率の数字はpoliticoによるもので、9月18日現在のもの。

今回は、これに加えて、議席数では今なお最大野党であり、伝統的な二大政党の一つだった保守党が、はっきりとネットゼロ廃止に舵を切ったことになる。なお保守党の支持率は凋落して今は17%とどん底に落ちている。

もうこの段階で、ネットゼロは、もはや国民の多数の支持を受けているとは言い難くなったことが判明した。
英国は、もはやネットゼロを放棄するか否かではなく、いつするのか、という問題だ。

【覆面ホンネ座談会】始動したシステム改革検証 地方ガスの持続性が焦点か

テーマ:ガスシステム改革検証

資源エネルギー庁は8月27日、ガスシステム改革を検証するガス事業環境整備ワーキンググループ(WG)の初会合を開いた。
2022年の導管部門の法的分離から3年、検証のポイントは何か。

〈出席者〉A 大手都市ガス関係者   B 地方都市ガス関係者   C 学識者

―事業環境整備WGが始まったが、特に注目している点は。

A 事務局であるエネ庁が提示した資料は、前半がガスシステム改革の歩みやファクト整理、後半が将来の人口推移やカーボンニュートラル(CN)化の進展、さらに地方事業者の取り組みなどを中心に構成されていた。このことから、事務局の関心は、法的分離や競争環境整備といったテーマにとどまらず、地方を含めた今後の都市ガス事業全体の在り方と持続的発展をどう図るかにあるのではないか。とはいえ、初会合の様子を見る限り、議論のゴールはまだ明確には定まっておらず、まずは論点を幅広く出していく段階だろう。

検証作業が始まったが、議論のゴールは見えていない

B 今回のWGは、17年の小売り全面自由化から大きく事業環境が変わったことを受け、単なる検証ではなく「総仕上げ」の位置付けで開催されるものと考えている。自由化以降、ロシアによるウクライナ侵攻や米国でのトランプ第二次政権誕生など、国際情勢は激変した。加えて、政府がGX(グリーントランスフォーメーション)戦略を打ち出し、eメタンや水素といった脱炭素化技術が登場した。エネ庁としては、こうした複合的変化を踏まえた上で、ガス事業の将来像を一度整理しておきたいということだろう。

事業環境の変化には、地方のガス会社が人口減少という厳しい課題に直面していることが含まれ、将来生き残りが困難なケースが出てきてもおかしくない。事業継続には経営の多角化が不可欠であり、事務局資料にもガス会社による地域密着の取り組みが多数紹介されていた。自由化前から地方はオール電化やプロパンガスとの激しい顧客争奪戦を繰り広げていた。大手、準大手とは違い、第3、4グループに属す地方ガス会社のエリアの小売り事業に新規参入を促しながらインフラ整備を促す目論見は現実的ではなく、むしろ、何も手を打たなければ潰れてしまう地方ガス会社をどう残すかが、今後の議論の焦点になるのではないか。

C 人口減少の波が押し寄せ事業継続が困難になることを簡単に「仕方がない」で済ませてはならない。最近では、AIを活用した営業手法も出てきている。人口減少や業務の担い手不足への対応としてAIは非常に有用であり、その戦略を明確にWGの論点に組み込むべきだ。地方特有の競争環境を踏まえた上で、地元経済の活性化といった要素も視野に入れながらエネルギー企業がどう振る舞うべきか考える必要がある。

A 地方における競争という点では、やはり自由化前からオール電化やプロパンガスなどとの激しい競争が行われていると理解している。新規事業者がそのエリアで採算を確保することが難しいと判断すれば、ガス小売りには参入せずオール電化を選択することが合理的だし、新規参入実績だけでは競争環境を適切に評価できない。また、電力とガスは同じ枠組みで語られることが多いが、ガス会社の大半は事業規模や企業体力において新規参入者である電力会社に遠く及ばない。そういった構造の違いにも十分留意して、WGの議論を進めていただきたい。


業界の集約化は進まず 競争は首都圏限定で地方は無風状態

―22年の導管部門の法的分離でガスシステム改革が完了したわけだが、安定供給確保、競争環境の整備や料金抑制、導管事業の在り方、CNへの対応などから、ガスシステム改革をどう評価するか。

B ガスシステム改革は大きな問題もなく、おおむねうまくいったと評価している。本来、自由化されれば業界の集約化が進んでもおかしくないが、そこまでには至らなかった。現状は都心部を中心としたガス小売市場で新規参入と競争が進み、地方の市場構造は自由化前から大きく変化していない。人口減少に伴い家庭の調定数が減少し、結果として業務用・大口需要向けの比率が高まっていることだけが変化した点だ。結局のところ、大手、準大手のエリアだけ自由化すれば十分だったのではないかとすら思う。

A ガスシステム改革は、安定供給と保安を確保しながら競争原理を導入して需要家の利益を増進することを目的としており、競争促進による事業者間の「弱肉強食」までは意図していなかったと思う。もともとガスは他燃料と競争していたこともあり、規制なき独占が起きる懸念も小さかった。その中で、ガス小売りの競争を促進しつつ、安定供給や保安を損なうことなくこの8年間を乗り切れたことは評価していいと思う。

中立性の観点では、導管部門と小売部門の情報共有などの問題は、ガスの分野では発生していないし、近年のLNG需給がひっ迫した際にも供給制限には至らず、これまでに安定供給面でも支障はなかった。ただし、ガスは料金に占める原料費の比率が高く、LNGの価格高騰による影響を受けたことから、料金の抑制の点では、消費者が十分に実感し難い8年間だったかもしれない。

C 一つ気がかりなのは、スタートアップ卸など競争促進策の効果だ。競争環境整備で重要なのは供給量の確保と卸ルートの充実であり、初会合でも松村敏弘委員(東京大学教授)が同様の指摘をしていた。どうしても、この部分の評価が問われることになるだろう。加えて、都市ガス導管の延長もまだまだ議論される余地があるのではないかと見ている。これまでも、ニーズの把握などからの議論が行われても、なかなか思うように延伸が実現しないということはあった。延伸の目標をどの水準に設定するべきか、議論の焦点となるのではないか。

A ガス事業は気体を輸送しているため、圧力をかけて送る必要があり、届く範囲が限定される上、ガス導管を地中に埋めることから敷設できる地域にも制約がある。供給網を形成することはもちろん重要だが、投資コストが大きく、定期的なメンテナンスを要すため、需要と供給をセットで構築するなどの経済合理性を考慮する必要がある。

【イニシャルニュース 】新潟県知事選の構図は? 気になるY氏の動向

新潟県知事選の構図は? 気になるY氏の動向

立憲民主党のY衆院議員の動きが関心を集めている。

Y氏は柏崎刈羽原発の再稼働を巡り、新潟県の花角英世知事が県民の信を問う「出直し知事選」を選択した場合、野党候補として立候補するのではとうわさされていた。ただ「出直し」の可能性は低くなり、知事選は任期満了に伴い来年6月実施が濃厚だ。再稼働の是非が主要争点ではない限り、Y氏は出馬しないと考える関係者は多いが、自民党関係者が異を唱える。

「彼は首相や県知事など組織のトップをやらないと気が済まない人。だから知事選に出るのではないか。負けたら、2年後の参院選で国政に戻ればいい」。花角氏はもう1期で退任というのが大方の見方だ。その上で「参院議員で食いつないだら、また次の知事選に出ればいい。新人同士の対決になれば、経験のあるY氏が有利になる」。いずれにせよ、新潟はY氏と付き合い続けなければならない。


宮城知事選で現職批判 太陽光開発計画など巡り

10月26日に行われる宮城県知事選挙が、注目を集めている。5期20年知事を務め、今回も出馬を表明した村井嘉浩知事への評価が焦点だ。知事は自民党県議出身で、経済活性化の政策を打ち出した。ところがその政策を巡って保守派からの批判が聞こえている。

知事は建設規制を強化するが……

一つの例が、温泉地として知られる仙台市秋保地区でのメガソーラー建設計画だ。実は宮城県は2022年に太陽光条例を施行しメガソーラーの建設規制を強化しているのだが、知事に批判的な保守系新興政党のSやNの支持者が7月の参院選前後から、この計画を巡り「知事の対応が鈍い」などと批判を強め始めた。こうした状況を受け、村井知事は9月初旬の定例会見などでこの計画に対し「大反対」を表明したが、事業の中止には至っていない。

またS党のN代表をはじめとする保守派は、知事による、イスラム教徒の土葬墓地の県内建設容認と外国人労働者の受け入れ姿勢のほか、水道など公共事業の一部売却と外国資本の活用を問題視している。9月中旬現在、自民党から出馬し前回参院選で落選、知事選に出馬表明したW氏への新興政党のあいのり推薦の可能性がささやかれている。

立憲民主党は同党の県議が辞職して出馬し、共産党も支援の意向だ。村井知事は自民党が支持してきたが、地元の保守系政治家は「分裂選挙で左派が当選するかもしれない。仙台市長も左派で厳しい状況になる」と頭を抱える。 宮城県知事選では、右も左も関係なく、誰が当選したとしても、面倒な問題と対峙することになる。メガソーラーはその象徴だ。


動き出したリプレース UPZへの対応欠かせず

関西電力が7月下旬、美浜発電所で廃炉となる1号機の建て替えに向けた調査の再開を発表した。革新軽水炉を視野に入れた具体的な動きが始まったことで、関係者の期待は大きい。

続けて8月下旬には、福井県と立地町の地域振興のための新たな仕組みを発表した。関電が年50億円を基準に信託銀行に毎年度資金を拠出し、そこから県・町が寄付を受けるという「あまり聞いたことがない仕組み」(電力関係者)。使用済み燃料の県外搬出先が決まっていないといった課題は残りつつも、立地地域の関係者からは前向きな反応も示されている。

併せて重要なのが、発電所から30㎞圏内のUPZにかかる自治体への対応だ。一部がUPZ圏内となるS県M知事は、美浜の調査再開のリーク記事が出た際、「事前に聞いていない」として立腹。県内首長からは、安全対策の徹底と市民への説明責任を果たしてほしいといった要望が出た。後日M知事は「現実的な選択肢かよく見ていかなければならない」とくぎを刺すコメントも出した。

柏崎刈羽や東海第二などの再稼働を巡っても、むしろ周辺自治体で理解醸成に苦労する傾向がある。直接的な資金支援がないという事情はありつつも、これまで電力供給の恩恵を受けてきた消費地ができる協力の形もあるはずだ。

KK再稼働議論が最終局面 〝新潟スペシャル〟の行方は

柏崎刈羽原発の再稼働を巡る動きが大詰めを迎えている。今夏以降、新潟県の花角英世知事が県民の意思を見極める「最終ステップ」として、8月末までに公聴会と首長との意見交換を実施。県民意識調査は9月末までに終えた。

同県の再稼働同意プロセスは、知事が再稼働を容認し、その判断について県議会が追認する形が想定されていた。しかし、ここにきて順序が逆になる可能性が出てきた。

原子力閣僚会議は前年に続き柏崎刈羽再稼働を議論した(8月29日)

つまり、まず県議会が再稼働を求める決議を可決し、それを受けて知事が容認するパターンだ。県議会が「お膳立て」することで、知事の負担は減る。既に再稼働している原発では、この形式を取ることが多かった。

ただ、新潟県は事情が異なる。県議会で過半数を握る自民党は、県議によって再稼働に対する姿勢の温度差が大きい。「東京はそういう筋書きを描いているのだろうが、党内をまとめるハードルは相当高い」(自民党関係者)。また花角氏は初当選時の知事選から、最初に自身が再稼働の認否を示した上で、県民の意思を確認するとしてきた。県議会の決議を先行させることは、従来方針の転換を意味する。

政府は8月末、立地地域の財政支援の対象範囲を従来の10㎞から30㎞に拡大し、官房副長官をチーム長とする監視強化チームを設置した。東京電力も地域経済の活性化に向けて、資金的な貢献を行う方針を打ち出した。〝新潟スペシャル〟とも言われる支援策が打ち出される中で、本格的な冬の需要期を前に再稼働する未来はやってくるのだろうか……。

エネルギー分野でも活躍中 新たな専門人材が開く未来

【気象データ活用術 Vol.7】加藤芳樹・史葉/WeatherDataScience合同会社共同代表

気象データのビジネス活用というテーマは、実は古くて新しい。飛行機の運航計画作成、船舶の航路選定、高速道路の管理など、交通分野では古くから気象情報を活用して業務を行っている。より身近なところでは「気温が何度以下でおでんが売れ始め、何度以上でアイスの売り上げが上がる」という経験則も以前から知られており、コンビニなどの事業で活用されている。これらは古い、というより古くから現代まで続く気象データのビジネス活用の代表例だ。

一方で近年はコンピューター技術が発達したことで、企業が大量のデータを蓄積して高度に解析し、ビジネスに有効活用できるようになった。このような流れの中で気象データとビジネスデータを掛け合わせた分析も行われるようになり、今では(気象予報士ではなく)データサイエンティストが気象庁ウェブサイトからアメダス観測データをダウンロードする、ということも増えてきた。

気象データアナリストの仕事のイメージ

では気象データをビジネス活用する流れが十分に広がってきたかというと、そうとは言えないのが現状だ。気象庁が国内企業向けに行った2019年の調査では、自社の事業が気象の影響を受けると考えている企業は6割を超えていた。しかし実際に気象データを分析してビジネス活用している企業は1割にとどまった。気象の影響を受けると認識していながら気象データを活用した対策をしていない企業にその理由を尋ねたところ、多くの企業から「気象データの使い方が分からない」「気象データを扱える人材がいない」との回答を得た。つまり専門人材不足が原因ということだ。

そこで、気象データに関する深い専門知識を持ち、データ分析を通して企業におけるビジネス創出や課題解決ができる人材として、21年に新しく登場した職業が気象データアナリストだ。これが気象データのビジネス活用の新しい側面だ。気象データアナリストは気象データ×ビジネスデータの分析を行い、商品需要予測や混雑予測、物流の最適化などを通じて、気象の影響を受ける事業の利益アップ・コストダウンを実現する役割が期待される。エネルギー業界でも電力需要や再エネ発電量の予測技術開発などで活躍できる。

気象データアナリストは気象庁の認定制度に基づくものだが、気象予報士のような国家資格ではない。厳密には気象データアナリスト育成講座の認定制度であり、気象庁は一定の要件を満たす講座を気象データアナリスト育成講座として認定し、その講座を修了した者が気象データアナリストと名乗って仕事ができる―という仕組みだ。現在四つの法人が認定講座を開講しており、これまでに約150人が修了している。 気象データアナリストは先述のアメダス観測データにとどまらず、数値予報データや気象衛星データなど、より専門性の高いデータも活用してビジネスを推進することが期待される。筆者も含めてエネルギー分野で活躍する気象データアナリストも誕生しており、ぜひ一緒にエネルギー分野のビジネスを盛り上げていけたら幸いだ。

かとう・よしき/ふみよ 気象データアナリスト。ウェザーニューズで気象予報業務や予測技術開発に従事。エナリスでの太陽光発電予測開発などの経験を生かし、2018年から「Weather Data Science」として活動。

・【気象データ活用術 Vol.1】気象予測を応用 電力消費や購買行動を先読み

【気象データ活用術 Vol.2】時をかける再エネ予測開発⁉ 三つの時間軸を俯瞰する

【気象データ活用術 Vol.3】エネルギー産業を支える 気象庁の数値予報モデル

【気象データ活用術 Vol.4】天気予報の信頼度のもと アンサンブル予報とは

【気象データ活用術 Vol.5】外れることもある気象予報 恩恵を最大限に引き出す方法

・【気象データ活用術 Vol.6】気象×ビジネスフレームワーク 空間・時間スケールの一致とは

新研究開発拠点が9月稼働 「CNリサーチハブ」の新たな目玉に

【大阪ガス】

大阪ガスは、大阪市酉島地区の「カーボンニュートラルリサーチハブ」に新たな研究開発拠点を設立した。カーボンニュートラル(CN)に向けた研究開発を集約し、情報発信や、オープンイノベーションなど社外との共創を強化し、同社独自技術の社会実装の加速を狙う。

新拠点は約2・7万㎡の敷地に建設した新研究棟「Daigas Innovation Center」と屋外フィールドからなる。新研究棟は、9月末に先端技術研究所の機能を移転し稼働を始める。600㎡超の大空間ラボや高耐薬性ラボなどを有する。これに先駆け、6月には、屋外フィールドにSOEC(固体酸化物形電解セル)方式でe―メタンを製造するSOECメタネーションのベンチスケール試験施設が竣工した。

テープカットを行う藤原社長(中央)ら

研究面では、従前から取り組む①メタネーションなどのCN技術、②ガスインフラ保全や天然ガス高度利用など既存事業の高度化に資する技術、③シミュレーションやバイオ、新素材など独自技術を事業創造につなげる技術―の開発をさらに進展させる。

特にSOECメタネーションについては、ラボスケール(一般家庭2戸相当)からベンチスケール(同約200戸相当)へと拡大。2025~27年度はベンチスケール、28~30年度はパイロットスケールでの検証を予定する。SOECはサバティエ反応を大幅に上回るエネルギー変換効率が期待でき、同社は30年代後半~40年ごろの実用化を目指している。


空間設計にこだわり ZEBレディを取得

研究以外の施設の空間設計にもこだわりが。ワークエリアではオープンな議論、あるいは1~2人でアイデアを深めることに適した特徴的なスペースを配置。そして共創エリアには、多目的ホールや、社外との多様な交流に適したスペースを設けた。

環境性能も重視し、太陽光パネルやガスコージェネレーション、ジェネリンク、全熱交換器、クールチューブ、外皮断熱など多様な創・省エネ対策を導入。基準一次エネルギー消費量から50%以上の省エネを達成し、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)レディを取得した。

9月2日の新研究棟竣工式で藤原正隆社長は、研究開発の歴史を振り返りつつ、「創業から120年を迎えるこの年に当社研究開発の聖地・酉島でDaigas Innovation Centerが新たにスタートすることは感慨深い。今後ともDaigasグループをけん引する研究開発拠点として、CNをはじめ中長期の研究開発に取り組み、未来の社会課題の解決に貢献できるよう進めてまいりたい」と強調した。

暫定税率廃止は排出量に影響? 環境省が試算公表し警鐘鳴らす

ガソリン暫定税率の年末廃止に向けて与野党協議が進む中、「待った」をかけるのが環境省だ。先月28日に行われた2026年度概算要求に関する会見で同省は、「暫定税率が廃止されればCO2排出量が増加し、政府の削減目標の達成に支障を来す」と指摘し、来年度の税制改正で新税などの代替案を検討する必要性を訴えた。

国立環境研究所の試算によると、仮に26年に暫定税率が廃止された場合、CO2排出量は30年に610万t増加すると見込まれる。これは同年の全体排出量の約1%に相当する規模で、会見では「かなりインパクトのある数字」と強調された。

暫定税率の廃止がCO2排出量に与える影響はいかに

一方、運輸部門の排出量は23年度時点で13年度比15・2%減にとどまり、政府目標である30年度に35%減の達成は現状でも不透明な状況にある。廃止によりガソリン価格が低下すれば、運輸部門だけでなく他部門の排出量も増加しかねず、これらを相殺する「代替措置」が講じられなければ、目標の達成は一段と厳しくなる――というのが同省の主張だ。

ただ、これには懐疑的な見方も。石油関係者は、「生活必需品であるガソリンは価格弾力性が低く、暫定税率の廃止が長期的な需要増につながるとは考えにくい。需要動向は人口の推移といった構造変化に左右されるもので、税制などの価格政策による影響は限定的だ。試算が示すほど排出量は増加しないのでは」と指摘する。  

要は、話題のカーボンプライシングも効果薄ということか。

廃止を巡っては、恒久財源の確保など論点が多いだけに、 一層丁寧な議論が求められる。

「2025石化再編」を考える 経済と環境の両立で最適化を

【業界紙の目】山形優斗/石油化学新報 編集部記者

石油化学業界で石化の分離・再編の機運が高まっている。

これまで多角化で事業を強靭化してきた石化が、なぜ今独立する必要があるのかを分析する。

石油化学業界に大きな再編の波が押し寄せている。この業界の再編自体は珍しくなく、古くはオイルショック後の再編から、2010年代のクラッカー統合までさまざまな動きがあり、またその時期かと見る目もあるだろう。しかし、これまでが〝経済性〟を理由とした再編であったのに対し、今回は〝環境性〟という視点が追加されている点が異なる。

まず、業界を知らない方のために説明すると、石化とは石油から化学品を製造する産業である。もう少し踏み込むと、石油から分離したナフサと呼ばれる原料を、エチレンやプロピレンなどに分離する。そこからポリエチレンやポリプロピレンといったプラスチック、あるいはアセトアルデヒドやアセトンといった化学品へと誘導させる産業である。つまり、プラスチックのみならず接着剤や塗料、繊維や合成ゴム、さらには半導体製造や金属加工まで幅広く広がっており、これがエッセンシャル産業と呼ばれるゆえんである。

ナフサクラッカーのイメージ


経済重視なら分離は悪手 韓国勢の苦境が示す教訓

石化はエッセンシャル産業としての安定需要でキャッシュフローは大きいが、エッセンシャルであるが故の難点もある。それは、原油価格に連動して商品価格までもがフォーミュラで決まり、受払差によって利益が数十億円単位で上下することだ。原料購入から化学品の出荷までに数カ月というのもざらで、その間に市況が急落すればスプレッドは消し飛ぶ。一方で、急騰した場合には利ざやを得るが、その後は価格交渉が待っている。つまり石化産業とは、お金は流れるが手元に残る利益は不安定、という宿命を背負った産業だ。

この不安定なビジネスモデルから脱却するべく努力を重ねてきたのが、今日の総合石化企業である。エッセンシャルな汎用化学品に加えて、スペシャリティケミカルと呼ばれる高付加価値製品を組み合わせたポートフォリオ経営によって、経営の強靱化を進めてきた。その結果、失われた30年の間に〝失われた産業〟となることを回避し、むしろ半導体材料など超高付加価値領域で世界トップクラスの地位を築いたのである。

一方で、この間に汎用化学品のシェア拡大を図ったのが韓国勢だ。もちろん韓国にもスペシャリティ品を持った企業は存在する。しかし、各種統計を見れば分かるように、韓国石化は汎用化学品を中国・東南アジアに輸出することで成り立っており、生産したエチレンの半分を輸出している。そうした中、化学品の自給にかじを切った中国が輸出ポジションへと立場を変え、より安価な化学品を東南アジアへ輸出し始めた。これにより韓国石化は苦境に立たされ、政府高官が再編は「死即生の覚悟で」行うべきと発言するまでに追い込まれている。そしてさらにはその中国でさえも、スペシャリティケミカルの重要性を説いているという。

このように石化事業の単独運営は困難というのが経済界の常識であり、20年代初頭の三菱ケミカルの石化事業のカーブアウト撤回はその証左だ。にもかかわらず、石化事業を分離する動きは活発化しており、レゾナックや三井化学が事業分離を推し進めている。この行動は、これまでの常識であれば最悪の一手である。

争点は原子力から再エネに 総裁選候補者のエネルギー観は

10月4日に投開票を迎える自民党総裁選には高市早苗、小泉進次郎、林芳正、小林鷹之、茂木敏充の5氏が立候補した。石破茂首相が約1年で退任となり、「昨年の敗者復活戦」(立憲民主党の野田佳彦代表)という様相だ。

思い返せば、石破氏は昨年の出馬会見で反原発に触れ、エネルギー関係者を驚かせた。ただ、首相就任後は建て替えを容認した第7次エネルギー基本計画を閣議決定。その後の国政選挙でも再稼働推進派の国民民主党や参政党が躍進するなど、原発活用はすでに「日本の常識」となった。

出馬会見で過剰な太陽光開発への反対を表明した高市氏 提供:時事

代わりに争点となるのが、再エネ政策だ。メガソーラーや洋上風力などへの疑念が高まる中で、再エネに対する姿勢は候補者ごとに温度差がある。高市氏は出馬会見で「これ以上、私たちの美しい国土を外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことには猛反対」と訴え、エネ自給率向上や安価で安定的な電力供給に言及した。小林氏は「太陽光パネルは限界に達している」と述べ、再エネ政策の見直しを主張。両者は経済安全保障相を経験し、核融合に強い関心を寄せる点でも共通している。茂木氏は電力供給地の近くに戦略事業を立地し、雇用を創出するビジョンを描く。小泉氏と林氏は、高市・小林両氏ほどエネ政策の優先度は高くなさそうだ。

連立候補と目される国民民主党の玉木雄一郎代表は「エネルギーではどの党とも全面的に協力する」と語っており、新総裁との連携に期待する声がある。新政権でエネ政策のさらなる前進はあるのだろうか。

エリア間の分断進む電力市場 恒常化するリスクに打つ手とは

【マーケットの潮流】佐藤祐輔/enechainリサーチ&データデスクディレクター

テーマ:電力スポット市場

電力スポット市場は近年、さまざまな要因を背景にエリア間の分断が鮮明化している。

市場参加者である事業者は、リスクを可視化し適切に管理する必要がある。

日本の電力スポット市場では、かつて北海道や九州と本州を隔てるエリア間、あるいは西日本と東日本といった大きなブロック間で顕著な価格差が見られてきた。しかし近年、その構図は大きく変わりつつある。これまで分断がほとんど生じていなかったエリア間、例えば東北―東京、中部―関西、中国―関西といった本州主要エリア同士でも値差が顕在化している。


恒常的な値差につながる エリア間の電源構成の違い

従来は一体的に動くと考えられてきたエリア間で新たに乖離が見られるようになったことは、市場構造が変化していることを示しており、今後の電力事業運営においても重要な論点となると考えられる。

本稿では、この変化の背景にある要因を整理するとともに、エリア値差により生じるリスク、および対応としてどのような手法が必要かを考察する。

エリア値差を拡大させる最大の要因は、再生可能エネルギーや原子力の偏在による電源構成の地域差である。太陽光発電の導入が進んでいる九州、四国、中国など西日本のエリアでは、出力抑制が生じるほど再エネ比率が高まっており、他エリアとの価格差を生む一因となっている。また、東北エリアなど東日本の一部地域においても、再エネ比率の上昇が価格の下押し圧力となり、周辺エリアとの値差の一因となっている。

一方、関西を中心とした西日本、九州では原子力が再稼働しており、ベースロード電源として市場価格を下支えている。対して東京や北海道では原子力が再稼働しておらず、ベースロード電源を欠く分、需給ひっ迫の際には価格が高騰しやすい。こうした再エネの偏在と原子力の有無が複合的に作用することで、エリア間の恒常的な値差につながっている。

もう一つの要因は、送電網の制約である。北海道―本州や九州―本州の連系線は依然として容量が限られており、余剰電力を十分に送電することができず分断の要因となっている。

さらに近年では、電源構成の変化に伴い、従来は分断が限定的であった東北―東京、中部―関西、関西―中国といった主要連系線においても容量が十分ではなく、混雑が発生している。結果、「安いエリア」と「高いエリア」が慢性的に分断されやすい構図が形成されている。

加えて火力電源、特にガス火力の入札における限界費用の考え方がエリアごとに異なることも、値差発生の一因となっている。例えば関西や九州エリアなどでは、長期契約LNGや保有在庫の実コストが反映されやすい。一方で、東京をはじめとする他エリアでは、ガススポット価格による追加調達コストが入札価格に織り込まれる。結果、同じガス火力発電であっても、エリアごとにスポット入札価格が乖離する。

以上の要因から、各エリアでスポット価格の傾向が異なるため、値差が発生している。 例えば、原子力比率が低く、かつ燃料の追加調達が考慮される東京、中部、北海道といったエリアでは、需給状況や燃料市況の変化に応じて価格が大きく変動しボラティリティが高まる傾向があり、特に需給ひっ迫時には非連続な価格上昇が起こりやすい。一方で、関西や九州のように原子力が稼働しており、燃料スポット価格の影響が相対的に小さいエリアでは、価格は低位で安定しやすい。結果として、各エリアの天候や需給バランス、燃料価格の変化に応じて値差が生じやすい市場構造となっている。

東京/関西と各地域のスプレッド価格
出典:電力データサービス「eCompass」

次世代エネルギーの受託分析を強化 水素・アンモニア実用化を促進

【JFEテクノリサーチ】

JFEテクノリサーチは、親会社であるJFEスチールの品質保証部門から独立する形で設立された分析・評価・解析・調査を行う受託会社だ。従業員約1400人のうち博士号取得者が約70人。材料・化学・機械の各分野で高い専門性を発揮している。2004年の設立時は鉄鋼製品の成分分析や強度試験が中心だったが、10年以降は他分野にも進出。近年、エネルギー分野では、水素・アンモニア関連やリチウムイオン、硫化物系全固体電池など最先端の研究をサポートしている。

次世代エネの液体アンモニアを試験できる

発電設備では、鉄鋼の知見を生かし、コンバインドサイクル発電のタービン・ブレードなどの重要機器の耐久性・余寿命の解析評価、高温・耐熱・雰囲気下での試験・評価などを長年手掛けてきた。瀬戸一洋社長は「高温耐久性能の向上によって、発電効率の向上に加え、発電所を長寿命化しリプレース時期の延長などにも貢献する」と語る。このほか、原子力発電のシビアアクシデントを想定した機器などの試験を請け負ってきた。


分析で実用レベルに引き上げ 材料挙動など適切に評価

次世代エネルギーでは水素・アンモニア関連の受託研究に注力する。電気と水から水素を製造する水分解装置は実用化に向けて開発が進んでいるが、依然課題が多い。「実用レベルまで引き上げるには、長期安定稼働など解決が必要な面がある」とのことだ。

今年7月には、福山地区(広島県福山市)に「液体アンモニア環境材料評価試験設備」を導入し、液体アンモニア環境下における評価試験サービスの受託を開始した。アンモニアは、燃焼時にCO2を排出せず、液化しやすく高いエネルギー密度を持つため、次世代のエネルギーキャリアとして火力発電所での混焼・専焼燃料、水素キャリアとしての輸送・貯蔵媒体、各種産業用プラントの熱源などの用途で利用拡大が見込まれている。

その半面、アンモニアは強い腐食性を有し、特に液体状態では鉄鋼、銅合金などの材料に対し、応力腐食割れのリスクが懸念される。「液体アンモニア環境下での材料の挙動を適切に評価する技術を確立した。ぜひ、エネルギー関連企業に試してもらいたい」と瀬戸社長。

50年カーボンニュートラル実現に向け、JFEテクノリサーチの「研究支援力」ニーズがより一層高まってきそうだ。

停滞する暫定税率廃止協議の死角 運送業界が注視する軽油問題の行方

自民党政局でガソリン税の暫定税率廃止を巡る与野党協議が停滞している。

野党が求める11月1日廃止は実現するのか。そして軽油の暫定税率の行方は……。

11月1日の廃止を求める野党、恒久財源の確保が先だと譲らない与党─。8月1日に始まったガソリン税のいわゆる「暫定税率」廃止に伴う与野党協議は、石破茂首相の辞意表明を受けた自民党総裁選で休戦状態だ。

いっそのこと、年末に腰を据えて自動車関係税制や代替財源の整理をした後、来年4月1日の廃止でよいのではないか……。このようなことを言うと、「物価高に苦しむ国民の気持ちが分かっていない」と野党議員の批判を買いそうだが、少数与党下でなかなか結論が出ないのは事実だ。

9月まで立憲民主党で政調会長を務めた重徳和彦衆議院議員は、早期廃止を求める理由についてこう説明する。

「現に廃止時期については、与野党が『今年中のできるだけ早い時期』で合意している。物価高対策として必要だし、課税根拠を失っているからだ。自公と国民民主は昨年末に廃止を決めた。いつまで引きずるのか」

課税根拠を失っている点は否定しようがない。暫定税率を導入したのは1974年のこと。道路整備の財源を確保するための臨時措置だったが、2009年に一般財源化した。この時点で「道路整備のため」という目的が消えたにもかかわらず、税率は維持され続けた。だからこそ、自動車・石油業界も廃止に異論はない。

問題は廃止の時期だ。石油業界からはこんな声が聞こえる。「税制なんだから、基本的には年度で切り替わるのが事務負担は最も少なくて済む。ましてや、1・5兆円という巨額が動く話だ。消費税のように4月1日に廃止を決め、実施は10月1日にするくらいの猶予期間があってもいい」(業界関係者)

軽油価格の上昇は物流コストに直結する


取り残される軽油 補助金増額で対応か

もう一つ気掛かりなのは、ガソリン税ばかりが取り沙汰され、軽油引取税が〝無視〟され続けたことだ。軽油は主にトラックやバスなど業務用車両の燃料として用いられ、軽油引取税には17・1円の暫定税率がかかっている。

当然、軽油価格の上昇は物流コストを押し上げる。全日本トラック協会の試算では、軽油価格が1円上がると業界全体のコストは150億円近く上昇するという。野党が「物価高対策」の名の下にガソリン税の暫定税率廃止を訴えるなら、軽油も対象にするのが筋ではなかったか。

だが、自公国の幹事長合意でも、野党7党が今年の通常国会と8月上旬の臨時国会に提出した廃止法案でも、対象となっていたのはガソリン税だけだった。なぜなのか。

太陽光拡大に立ちふさがる壁 地域共生やリサイクル制度で足踏み

8月29日の浅尾慶一郎環境相の会見では、太陽光発電の導入拡大に伴う二つの弊害への言及があった。

一つ目は、太陽光パネルのリサイクル義務化断念だ。今後パネルの大量廃棄が見込まれる中、同省は経済産業省と合同でリサイクル制度の在り方を取りまとめ、先の国会で法案を提出する予定だった。しかし費用負担など主要論点を巡り、内閣法制局が他のリサイクル関連法との整合性から検討が必要と指摘し、5月に提出を見送っていた。

釧路湿原周辺のメガソーラー(8月20日撮影)。さらなる開発が物議を醸している
提供:共同

それから3カ月あまりで結局断念へ。浅尾環境相は内閣法制局の指摘について「現時点では合理的な説明が困難」「制度案の見直しを視野に入れて検討作業を進める」と説明。また、次年度概算要求でリサイクルの技術実証や設備補助の予算を計上し、注力する方針を強調した。

ただ、これに環境9団体が即座に反応。「リサイクル義務化が遅れることは再エネ導入拡大の大きな阻害要因」として、義務化を求める共同声明を出した。

二つ目は地域トラブルだ。最近、北海道釧路市のメガソーラー開発が耳目を集めている。タンチョウをはじめとする希少生物への影響などの懸念が高まり、6月には市が全国2例目の「ノーモア・メガソーラー宣言」を行った。浅尾環境相は、本省職員を現地に派遣した上で、「関係する法律を所管する省庁が多岐にわたることから、当該省庁とも緊密に連携し取り組む」とコメント。他省庁との連絡会を設置する方針だ。

固定価格買い取り(FIT)制度導入から13年を経てなお、導入拡大への障壁は高いままだ。

リユースパネルで再エネ発電 新たな資源循環モデルを目指す

【中部電力ミライズ】

IGアリーナは名古屋のシンボル、名古屋城を臨む名城公園の一角に位置する多目的施設だ。特徴的な木組みの外観は、現代日本を代表する建築家・隈研吾氏の設計に特徴的なもので、温かみのある都市と自然の融合をテーマにしている。こけら落としとなった今年7月の大相撲名古屋場所に続き、来年は世界的な一大スポーツイベント・アジア大会の舞台にもなる。活気あふれる名古屋の新たなランドマークとして、今まさに注目されているスポットだ。

今年7月にオープンしたIGアリーナ

中部電力ミライズは、このIGアリーナのファウンディングパートナーとして、オープン当初よりCO2フリー電気を供給してきた。9月8日には、さらなるカーボンニュートラル(CN)への取り組みとして、リユースパネルを用いた再エネ電気の供給を発表した。

パネルの合計出力は約90‌kWで、年間発電量約7・5万kWを見込む。これはアリーナ内のデジタルサイネージおよそ1年分の消費電力に相当する。


30年以降の大量破棄見据え 環境負荷軽減に貢献

太陽光発電パネルの一般的な寿命は20年程度と言われ、法定耐用年数は17年だ。30年以降、大量の太陽光パネルが廃棄されることが想定されているが、処理場の不足、有害物質の流出などの懸念に加え、パネルの廃棄や新たな製造に関しても環境配慮の観点から大きな課題となっている。

実物のリユースパネル

今回の取り組みでは、自然災害の被災などにより利用できなくなった太陽光パネルを点検し、リユース可能なパネルのみを調達。今年度中にIGアリーナ専用のオフサイト太陽光発電所の運開を目指す。

IGアリーナで開催された記者発表会で挨拶した同社の三谷建介名古屋営業本部長は、「今回の取り組みにより、パネルの廃棄、新たな製造に伴う環境負荷軽減に貢献できる」と述べた。脱炭素の一歩先を行く、資源循環の新たなモデルとして今後の展開が期待される。

期待集めた3海域が宙ぶらりんに 洋上風力撤退劇の顛末と教訓

洋上風力公募R1を総取りした三菱商事が決定から3年半後、撤退を決断した。

政策や地域経済を揺るがす事態なだけに、同社の判断や公募決定プロセスの徹底検証が欠かせない。

三菱商事が秋田・千葉の洋上風力3事業の減損損失計上を表明してから半年。うわさ通り同社は撤退を決断した。それもラウンド1(R1)の3海域全て断念という最悪の形で―。これで2030年までに10‌GW(1GW=100万kW)、40年までに30~45‌GWの案件形成という政府目標の達成は相当難しくなった。

「入札時に見込んだ金額と比較して建設費用は2倍以上の水準まで膨らんでいる」。8月27日の会見で中西勝也社長はこう弁明した。インフレや金利・為替など世界的に洋上風力の事業環境が激変し、関係者は皆苦心している。そうした中、同社はサプライチェーン見直しなどを検討の上、政府が投資完遂に向けた制度措置案として示した事業期間の延長や、固定価格買い取り(FIT)から市場連動買い取り(FIP)に転換しても、挽回は不可能と説明した。

武藤経産相と面談する中西社長(左)と岡藤常務


政府や地元の期待裏切る 中西氏は続投明言

同日、中西社長らから報告を受けた武藤容治・経済産業相は「信じられないというのが正直な気持ち。洋上風力の導入に後れをもたらすもので大変遺憾」「撤退は地元の期待を裏切るもの。洋上風力全体に対する社会の信頼を揺るがしかねない」と批判した。また、9月3日に専門紙記者団の取材に応じた村瀬佳史・資源エネルギー庁長官は「やり切ってもらえるとの期待があったが裏切られる結果となった」としつつ、「第7次エネルギー基本計画で示した方針は揺らぐことなく進めていきたい」と強調した。

地元関係者からも「県も地元も準備していて振り回された形。会社としてどう責任を果たしていくのか」(熊谷俊人・千葉県知事)、「国家肝いりのプロジェクトで、よもや撤退はないだろうと思っていたので大変な衝撃」(鈴木健太・秋田県知事)と、追及・戸惑いの声が上がる。

3海域は着床式の中でも特に有望な海域であり、その開発期間を大きくロスした責任は重い。一民間企業の撤退がエネルギーや産業政策の根幹を揺るがす事態となり、さらに地域経済への影響も避けられず、「エネルギー企業であれば当然経営責任を問われる」(大手電力OBのA氏)案件といえる。

だが、会見で中西氏は後続企業につなげる対応を行うとして「引き続き社長としての責務を全うする」と明言した。記者からも、中西氏や、共に公募参加を主導したとされる岡藤裕治常務の責任を問う質問はほとんど出なかった。これほど注目された案件にも関わらず、会見での質問は1人1問限定で、予定通り1時間であっさり終了したことには違和感を覚える。

では、R2以降の事業にはどう波及していくのか。今のところ各事業者は表向き、当初運開予定の旗を降ろしてはいない。政府は三菱商事の二の舞を避けるべく、さらなる制度措置の検討の詰めに入る。「さまざまなアイデアが俎上に載るが、とにかく予見可能性が重要。最低限の利潤が確保できるよう、現在FIP電源は対象外である長期脱炭素電源オークションの対象としてほしい。ハードルは高くともぜひ実現を」(洋上風力事業関係者B氏)といった声は根強い。

他方、そもそも予見可能性が低く、民間の経営努力で吸収できるようなものではないとの見解もある。「競争促進や規制緩和を重視するエネ庁内は、電気事業への公益性の意識が薄れつつある。このままでは原子力新増設や水素や送電インフラ整備なども同様の事態になりかねない。国の関与こそが重要だ」前出の(A氏)