「12日間戦争」さなかの産消会議 不確実性に対する役割確認

今年のLNG産消会議は奇しくもイスラエル・イラン間の「12日間戦争」さなかの開催となった。テーマは「世界の不確実性に対処し経済成長を導くLNGの役割」。ロシア・ウクライナ戦争などの地政学リスク、エネルギー需要の増大、新エネルギー導入などに加え、今回の12日間戦争と、不確実性の要素は増える一方だ。そうした中、引き続きLNGがエネルギー安全保障に不可欠で、経済成長のドライバーとして重要であることに加え、供給網全体の低炭素化の必要性を確認した。

JERAとウッドサイドの調達契約の発表などがあった

経済産業省と国際エネルギー機関(IEA)が6月20日に開き、対面で30カ国、約470人が参加した。閣僚級セッションではいくつか発表があり、一つがJERAと豪・ウッドサイド社による冬季のLNG調達契約だ。日本の需給がひっ迫する冬季に2027年度から5年間、必要に応じて追加的に年間約20万t調達するもので、通年供給とは異なる珍しい形となる。なお、JERAはこれに先立ち、米国の4プロジェクトから新たに年間最大550万t、仕向け地フリーの長期契約を締結している。

新興輸出国の積極姿勢も目立った。参加したカナダ関係者は、同国初の大型LNG事業であるLNGカナダについて、日本に対する地理的優位性や、LNGの中でも温室効果ガス排出量の少なさをアピール。年間生産能力は1400万tで、現地時間6月30日に出荷が始まり、事業に参画する三菱商事が年間約210万t引き取る予定だ。

不確実性が高まる中、産・消ともに動きが活発化している。

季節外れの電力需要急増 スポット価格の上昇は一時的

【マーケットの潮流】金子将人/ENECHANGE営業統括部 統括部長

テーマ:電力価格

全国的に暑い日が続いたにもかかわらず、JEPX価格上昇は限定的だった。

こうした中で電力危機の教訓を風化させないためにも、適切なリスク判断が求められる。

今年2月、JEPX(日本卸電力取引所)市場はシステムプライス13・94円/kW時と高値を付け、その後6月中旬までは落ち着いた動きを見せていた。この背景には、北東アジア向けスポットLNG価格(JKM)が3月以降、月平均で1ドル弱ずつ下落したことに加え、需要に対し供給力が十分に確保され、需給バランスが保たれていたことがある。しかし、この平穏な電力マーケットが6月に大きな変調を迎えた。

電力需要は急増したが、スポット価格の上昇は一時的だった
エネチェンジインサイトマーケットより


需要期前のひっ迫常態化 地政学リスクを注視

電力会社は、年間で最も需要の多い夏季(7〜9月)と冬季(12〜2月)を避ける形で発電所の定期検査を計画的に行っている。これ以外のいわゆる端境期は、各エリアで電源の稼働率を抑えることで、需要期の安定供給体制を確保しつつ、過剰供給による市場価格の下落や小売価格が調達価格を下回る「逆ザヤ」状態を避けている。

しかし6月は、梅雨時期で太陽光発電が少ない中で、想定外の気温上昇に見舞われた。供給力が低い端境期と急激な需要増加が重なったことで需給バランスが崩れ、特に夕方の点灯帯においてJEPX価格が高騰した。

全国的に見ても、6月は気象庁による統計開始以来最も平均気温が高く(前年同月比1・04度高)、電力需要は4・7%増加し、真夏日を記録した県庁所在地は最多を更新した。

特に東京エリアでは、同時期に予備率がマイナスを記録するなど供給力不足が顕著となり、送配電事業者からも供給準備指示が発信された。これは、従来の「需要期」と「端境期」の期間設定が、現実の気象パターンと乖離するケースの状態化を示唆している。

結果的に、電力需要増で需給はひっ迫しJEPX価格は一時高騰したが、容量市場によりkW(容量)が確保されていたこともあり、6月の市場は比較的秩序が保たれたと評価できる。

これと同時期、中東情勢の緊張によりJKMは一時14ドル後半まで高騰したが、その後の停戦発表とアジア需要の低迷で下落に転じ、6月の月間を通した市場全体のひっ迫度に大きな変化はなかった。夏季に突入する7月以降は、計画停止していた電源が徐々に稼働するため、JEPX価格も落ち着くと予想される。

今年も法人需要家の電力切り替えが集中する4月を迎えたが、大手電力を中心に年度契約への転換が進んだことで、例年以上に集中した。

22年の電力危機後の混乱期には、最終保障供給契約からの切り替えニーズが多数存在したが、そのニーズは一巡している。足元でJEPX価格が落ち着いていること、加えて契約形態の変化(特に長期契約の増加)を背景に需要家の電力切り替えニーズは低下している。事実、法人需要家向けの電気代見直し一括見積サービス「エネチェンジBiz」への1〜3月のオンライン問い合わせは前年比で約30%減少した。一方で、新電力各社は顧客獲得活動を活発化させており、競争環境は激化している。

参議院で与党過半数割れ 原子力巡る思想対立に終止符

7月20日に投開票が行われた参議院議員選挙は、自民、公明両党の獲得議席が47議席にとどまり、非改選を合わせた参議院の過半数に3議席とどかなかった。1955年以降、衆参ともに与党が少数になるのは初めてだ。野党では参政党が躍進、国民民主党が勢いを維持し、立憲民主党や日本維新の会が伸び悩んだ。

原子力推進を鮮明に打ち出す国民民主は目標だった16議席を上回り、勢いを維持した

現職のある衆議院議員は「参政は主張こそ右派的だが、風を味方につけて政権批判票が流れ込んだ。国民民主は候補者選定で一悶着ありながら、昨年の衆院選に続いて大幅に議席数を伸ばし、東京でも2議席を獲得した。勢いだけでなく、地力をつけてきた証拠だ」と振り返る。

柏崎刈羽原発を抱える新潟選挙区は激戦となったが、約1万票差で立憲民主の現職が自民の新人を破った。2016年に1人区となって以来、同区では与野党の接戦が続いていたが、保守票を奪ったとされる参政の候補者が20万票を獲得した中での僅差に、大善戦と見る向きがある。ただ自民関係者に覇気はない。「小選挙区で全敗した衆院選に続いての敗戦で、再稼働推進の勢いはなくなった。もう新潟は〝立憲王国〟で、今のままでは年内再稼働は難しいかもしれない。自公国連立などで勢いが出ればいいが、とにかく今後の政局次第だ」


国民・参政は原発推進 政策の中身を競う時代に

エネルギー政策はどう変わるのか。国民民主は比例区の候補者と原発の必要性を認める確認書を交わした。公約では、電力システム改革の必要な見直しや原子力規制委員会の審査プロセスの合理化・効率化など、現実的な提言が目立つ。参政も次世代炉の開発には前向きで、パリ協定の離脱やカーボンニュートラルの必要性の検証など従来の政策の大幅転換を狙う。一方、比例の獲得票数で野党3位に甘んじた立憲民主は「50年再エネ100%」を掲げ、「核燃料サイクルの中止」を盛り込んだ。中道の野田佳彦氏が代表を務めるとはいえ、党内は相変わらず左へのウイングが広い。

こうした点から、福島伸享衆議院議員は今回の結果を「エネルギーを巡るイデオロギー対立の終焉」と前向きに捉える。「原発か、脱原発かという対立が終わり、今後は原子力の活用を前提としてエネルギー政策の質を競う時代になる。現実的なベストミックスや規制、研究開発をどう進めていくのか。業界はこれまでのように反原発に対するカウンターではなく、政策を磨いた方がいい。第7次エネ基の原子力の方針転換で一息ついている場合ではない」

今後、与党としては秋の臨時国会までに補正予算を成立させられる状況を作る必要がある。仮に自民党総裁選となれば、候補者ごとに異なる連立の枠組みを提示する異例の展開となる可能性も……。一体どんな政治風景で秋を迎えるのか、現時点では想像がつかない。

アフリカで広がるビジネスチャンス 電力セクターで民間投資活況

【国際協力機構】

人口増と経済成長を追い風に、アフリカがビジネスマーケットとしての存在感を増している。

電力セクターでは投資環境が整い、欧米勢などの民間企業による参入が活発化している。

既存技術を経ずに最新技術に進展することを 「リープフロッグ」という。通常は数十年かかる変化がわずか数年で起こることから、「カエル跳び」になぞらえこう呼ばれている。近年、この現象を体現しているのがアフリカ諸国だ。1990年代のアフリカはグローバリゼーションの波から取り残され、国際社会で支援対象国として見なされていた。しかし、人口増加と経済成長を追い風に、いまや自立的なビジネスマーケットへと姿を変えつつある。中でも、民間投資を原動力にエネルギー分野での変化は著しい。

左からJICAの高畠氏、吉澤氏、杉岡氏


BtoBが本格化 民間主導で電源開発進む

長らくアフリカ諸国では、発電所や送電網の開発を公共事業として進められてきたが、2010年代半ば以降、国際機関の主導で、電力インフラ分野への民間投資を呼び込む仕組みづくりが活発化した。 

電力市場の予見性が低いアフリカでは、民間資本の参入には高いリスクが伴う。そこで公的機関が全量を買い取るPPA(電力購入契約)を外貨建てで契約する仕組みを整備。外資系IPP(独立系発電事業者)の参入が一部で急伸した。

しかし、この手法は公的な負担も無視できず、各国が持続性に課題を抱えた。20年代前半には、買い取りを制限する国も一部で現れ始め、民間投資が停滞した。

そうした中、民間企業同士が独自にPPAを締結できる環境も整備されたことで、BtoB(企業間取引)による取引が本格化。民間主導の電源開発が各国で活況を呈するようになってきている。一連の変化について、南アフリカ共和国に駐在しエネルギー事業に携わってきたJICA(国際協力機構)の杉岡学氏は、「ここ2~3年でBtoBの契約件数が急増した。産業向けや経済開発向けの発電・送電事業において、公共部門の役割が変化した数年だった」と語る。

一方で、家庭部門では、国営の送電網が届かない農村部で、ミニグリッド(小規模電力網)や、家庭用の太陽光発電システムといった分散型電源などが、普及拡大している。この動きを後押ししているのが、携帯電話の普及とフィンテック企業の台頭だ。モバイルマネー決済が利用できるため、支払い履歴を信用情報として活用できる。これにより、従来は公共事業のサービス対象外だった低所得層に民間がアプローチ可能となった。

欧米出身者のベンチャー企業や、社会的課題の解決を重視するインパクト投資家が、アフリカ電力市場への参入を加速させている。日本勢は商社など取引経験のある企業が、現地の市場動向や投資ノウハウを生かして、スタートアップとの連携やベンチャーキャピタルを活用した投資を始めている。ただ、日本企業による参入は限定的だ。

杉岡氏は、「日本ではアフリカを依然として支援の対象と見る意識が根強い。しかし実際には、各国がアフリカを投資対象として注目している。現地では、リープフロッグな発展が次々と起きており、予想を超える市場としての魅力がある。他の日本企業にもぜひ、こうした視点でアフリカの市場性を捉えてほしい」と力を込める。

地域公共交通の再構築がモデルに!? 地方ガス事業の生き残り策を探る

人口減少・過疎化の荒波が、地方の都市ガス事業に押し寄せつつある。

地域公共交通分野で進むリ・デザイン(再構築)の取り組みから、再生の鍵を探った。

青森県の中央部に位置する黒石市。人口減少や高齢化が進む地域の一つだ。1955年の約4万2000人をピークに徐々に減り、2023年には約3万1000人となった。同市で都市ガス事業を展開する黒石ガスもそのあおりを受ける。需要家数は、16年度の4274から23年度には4145と、緩やかではあるが減少傾向を見せる。

国立社会保障・人口問題研究所の人口推計(中位推計)によれば、生産年齢人口(15~64歳)は今後40年で約1100万人減少する。地方から都市部への人口流出の傾向を踏まえると、地方におけるガス需要の減少がますます加速していくことは避けられない。事業を担う人材確保も含めた都市ガスインフラの持続可能性が揺らぎ始めている。

資機材や運搬費、人件費、原料費などの高騰が、これに追い打ちをかけている。目下、こうした要因を背景に全国でガス料金の改定が相次いでいる。東北地方では、釜石ガスが6月検針分から値上げしたのに続き、盛岡ガスと東部ガス秋田地区が9月検針分から引き上げる。11年3月の東日本大震災で大きな被害を受けた東北では、被災地の支援を優先し、ガス料金を据え置いていた。だが、断続的な諸経費の上昇に耐えられなくなった格好だ。料金値上げをしなければ、経年埋設管の更新など安定供給に不可欠な設備投資に支障が出てしまう。事業を取り巻く環境の厳しさを物語る。

他分野に先駆け、交通分野は協調路線に切り替えた


地域公共政策を転換 競争から協調へ

こうした傾向は、都市ガスに限らない。バスやタクシー、鉄道といった交通インフラも同様だ。需要の減少で採算が取れず、運営継続が困難となる地域が全国に広がっている。近くに利用可能な交通手段がない「交通空白」地域の拡大は、まさにその象徴だ。さらに運転業務の担い手不足は深刻だ。ドライバーの確保がままならず、「2024年問題」として社会的に注目を集めたことは記憶に新しい。

こうした交通インフラの危機に対して、国土交通省は地域公共交通政策の転換を図ってきた。

その起点とされるのが、07年に施行された「地域公共交通活性化再生法(地域交通法)」だ。市町村が主体となって、地域の交通政策に関する協議会の設置や計画の策定が可能となった。その後、同法は、20年までに2度改正され、都道府県による協議会の設置や計画の策定が認められたほか、計画づくりは自治体の努力義務とされた。

20年には、「独占禁止法特例法」が施行された。かつてバス事業者同士が運賃やダイヤ、路線構成を調整することは、独禁法上の「カルテル(不当な取引制限)」に該当するとした法解釈が存在した。市場競争の阻害要因とみなされたからだ。

それが一転、特例法により、共同経営が実現可能となった。21年には熊本市が特例法適用の第1号として、同市のバス事業者5社と、共同経営方式を導入した。その後、共同経営は全国的な流れとなっていった。

【JERA 奥田社長CEO兼COO】時代の変化に合わせ新たなモデルを模索し 地方創生にも本腰

脱炭素への現実的な歩みを着々と進めつつ、急拡大するDX需要に応えるべく、新たな供給モデルを提案する。

GXによる地方創生にも本腰を入れ、エネルギー事業者という殻を破りつつある。

【インタビュー:奥田久栄/JERA社長CEO兼COO】

おくだ・ひさひで 1988年早稲田大学政治経済学部卒、中部電力入社。グループ経営戦略本部アライアンス推進室長、JERA常務執行役員、取締役副社長執行役員などを経て2023年4月から代表取締役社長CEO兼COO。

井関 6月下旬の会見で、地方創生・ 産業高付加価値化と一体となるGX(グリーントランスフォーメーション)開発に向けた新たな試みを発表しました。まさに産業政策とエネルギー政策は絡め合いながら考えるべき問題であり、注目しています。

奥田 例えば英国は製造業主体から、金融とデジタル主軸のモデルに脱皮し、エネルギーは原子力と再生可能エネルギー、天然ガスで賄い、電気料金が上がってもこの産業構造で世界と伍していく戦略です。われわれも相応のコストがかかる脱炭素を現実的に進めていくには、環境価値の高いエネルギーを使っても競争力が落ちないような産業・社会構造の変革が必須です。そして、GXは地域の関係者との連携なしには成し遂げられないと思います。

井関 洋上風力や水素・アンモニアの拠点で地域の産業振興を図る方針ですが、具体案は?

奥田 地方創生や工業地帯の再開発とセットで、各地域のニーズをくんだGXで地方も潤う流れを定着させたい。既に、各地には付加価値の高い製品が存在します。一から新しいモノを作るのではなく、既存のモノを適切な価値で売れる仕組みづくりが有効ではないか、という仮説に基づき、今後ショーケースを順次お見せする予定です。

例えば当社の洋上風力開発拠点である秋田県は魅力的な食の宝庫ですが、国内ではその利益が地元へ十分に還元されていません。日本で売られている日本酒が、欧州などでは数十倍で売られていることがあり、その差額は欧州側の利益となります。マーケティングやブランドストーリーの工夫によって、利益が日本の生産者に還元される仕組みを作り上げることが必要です。その点、ピュアな地産地消のクリーンエネルギーである洋上風力を使って製造し、付加価値をさらに高めれば良い循環が生じるのではないか。また、人手不足の問題には最新のデジタル技術による支援も考えています。

井関 地方創生を重視する現政権の方針にも合致しますね。 奥田 地方で開発した再エネの電気を全て東京に持ってくるという昭和のモデルのままでは、地方で持続的な雇用が生まれません。これでは地方での再エネ開発は行き詰まるでしょう。


着々と火力リプレース 袖ケ浦はアセス準備中

井関 それにしても今年は6月から連日の猛暑続きで、需給への影響が懸念されます。元々、端境期は定期点検中の火力が多いですが、足元の運用ではどんな工夫を行っていますか。

奥田 ここ数年、夏の需要ピークが早まる傾向にあり、冬もピークが早まる、あるいは長期化しています。定検の時期をなるべく前倒し夏冬フル稼働できるよう工夫していますが、それでも需給が厳しくなる場面があります。一方で再エネが大量に普及し、出力変動に応じて日常的に火力の起動停止を行っており、それに伴って故障が増え、計画外停止につながっています。古い設備はどうしても金属疲労が起きやすく、リプレースを着実に進めることがやはり重要です。JERA設立以降、リプレースを経て営業運転に至った設備は700万kW以上、計画中も含めると1000万kW以上です。多くが計画より前倒しで運開し、需給ひっ迫の際には試運転の設備も含めて供給力としてできる限り提供してきました。

リプレースが完了した五井火力

井関 再エネの拡大により、火力の運用は様変わりしましたね。

奥田 五井や姉崎はコンバインドサイクル発電ですが、ガスタービン単体のシンプルサイクル運転も可能で、実はこれがミソ。太陽光の出力変動に合わせる上で、スチームタービンも動かすと迅速性に関しては劣ります。供給力としての役割はもちろん、しわ取りとしてのガス火力の機能をフルに発揮できるよう、時代に合った火力発電所に変えていくことを意識しています。

井関 デジタル技術の活用にも力を入れていますね。

奥田 起動停止が頻発する中、機器の傷み度合いを正確に把握することが重要です。「予兆管理」と呼んでおり、AIで予兆を見つけ、早めに部品を交換することで計画外停止を防いでいます。こうしたDPP(デジタルパワープラント)化は、姉崎など最新鋭設備から導入し、徐々に拡大しています。

井関 6月中旬には袖ケ浦のリプレースに向け環境アセスメントの準備を開始。2032年度以降の運開を目指しています。

奥田 運転開始から50年たち計画外停止の蓋然性が高まる中、現役で稼働する2~4号機の計300万kWを260万kWの最新鋭に入れ替えました。引き続き安定供給に貢献していきます。

井関 近隣では東京ガスの袖ケ浦火力の新設も進行中ですが、今後両者が連携する可能性は?

奥田 今はまだそこまで考えていません。アセスの準備を始めたばかりで、その結果を踏まえてから、さまざまな可能性を考えることになるかと思います。

揺らぐ日本人の常識 エネルギー巡る犯罪が多発

【今そこにある危機】石井孝明/ジャーナリスト

在留外国人の存在がエネルギー産業に新たな課題を突き付けている。

企業はどのようにリスクを管理し、共存の道を模索すべきか。

日本に住む外国人の数が増えている。在留者は昨年末の時点で、約376万9000人と前年比10%増で、過去最高になった。彼らの行動が、これまでの日本で通用した常識では想定できない形で、エネルギー産業に影響を与え始めている。

けんかで集結した中東系外国人(埼玉県民提供)


電気を止められて放火 海外では「盗電」も

4月4日の早朝、東京電力パワーグリッドの山梨総支社甲府事務所が放火された。犯人は電子レンジを投げて窓ガラスを破り、灯油を浸した布を投げ込んだ。幸いなことに、火は広がらず、けが人はいなかった。警察が防犯カメラの映像を追跡したところ、犯人は南アルプス市で飲食店を経営するスリランカ人だった。料金未払いで電気を止められたことに腹を立てたという。この男の自宅では大麻が見つかった。

日本の電力会社は顧客に優しく、なかなか電気を止めないので逆恨みの可能性がある。この程度の動機で犯罪に走るのは異様だ。この犯人が「外国人だから犯罪をした」と、差別的なことを言うつもりはない。しかし外国人全てが善人ではないし、「日本の常識を知らない人がいる」ことは念頭に置いて向き合った方がいいだろう。

日本の太陽光発電は事業に容易に参入でき、管理が各所で放置されている。そしてここ数年の金属価格の高騰で、そこから銅の電線を盗む事件が多発している。その実行犯、また買い取りをする古物商が外国人である例が多い。例えば5月に茨城県警が逮捕した事件では、同県在住のタイ人3人が太陽光発電所のケーブルを1年にわたって盗み続け、被害総額は4億円程度になった。

建設業・解体業でも、外国人労働者が目立つ。そして外国人の運転免許の取得が容易になりトラックを動かしている。そんなトラックには多くの場合、缶から車のタンクに液体を入れる石油ポンプが見られるとの指摘がある。

灯油は軽油より税金が安い。灯油でディーゼルエンジンを動かせるが、エンジンを傷め有害ガスが出やすくなる。これまで日本では、石油業界と警察の努力でそうした自動車への灯油の使用は減った。しかし外国人が値段の安さのために、やっているらしい。

ただし外国人問題を批判的に取り上げると、人権問題として批判を集めかねない。一例を示そう。埼玉県南部には、トルコ国籍のクルド人が集住し、迷惑行為で地元住民とトラブルになっている。メディアは報道しないが、SNS主導で社会に知られ話題を呼んだ。

IoT活用の独自手法を構築 低コストな水素量産に挑む

【技術革新の扉】廃棄物水素化技術/BIOTECHWORKS―H2

複数素材から構成される廃棄物は従来、再資源化が困難とされてきた。

廃棄物の水素化技術は、これらの課題の突破口になり得る。

廃棄物から水素に変え、あらゆるごみを「資源」にする―。一見、荒唐無稽にも思えるようなこのアイデアを実現すべく奔走するのが、2020年に創業したスタートアップ、バイオテックワークスエイチツーだ。代表取締役の西川明秀氏はこれまで、アパレルのODM・OEMを手がけ、サステナブルな素材の開発に注力してきた。

長年同業界に身を置く中で、強く問題意識を抱いていたのが、処理困難な廃棄衣料の急増だった。ポリエステル、ナイロン、コットンなど、複数素材から構成される衣類は分解が難しく、大半がリサイクルされずに焼却されるか海外に送られる。この現実を前に、「廃棄される衣類を水素に変え有効活用できないか」と考えた西川氏は共同パートナーを求め渡米。現地で技術開発と実証を進めてきた。

廃棄物前処理の最適化図


水素生成には前処理が必須 低負荷へ「燃やさずに」処理

廃棄物はプラント内で溶融され混合ガスとなる。細かな不純物を除けば、ガスは主にCH4(メタン)、H2O(水蒸気)、CO(一酸化炭素)から構成され、このメタンと水蒸気に熱を加えることで水素を取り出す仕組みだ。これらは吸熱反応であるため、高濃度の水素を生成するには、プラント内を一定の高温に保つ必要がある。ただ、成分が不均質な廃棄物をそのままガス化すると、温度の安定維持が難しく、水素の収率が低下してしまう。つまり、効率的な水素生成には、溶融の前段階で廃棄物の成分を均質化し、安定させる「前処理」が不可欠となる。

この工程において、同社は独自開発のIoTプラットフォームを活用する。廃棄物をシュレッダーにかけた後、デバイスで成分分析を行い、AIが最適な組成バランスを計算。そのデータをもとに、廃棄物を効率よく処理できるようブロック単位に分類する。さらにプラントでガス化する前に混合処理を行い、再度成分を分析して最終調整を施す。この一連の工程により、安定したガス化反応と効率的な水素生成が可能になる。

この前処理工程の構築ついて、西川氏は「廃棄物処理を担う事業者は処理の効率性を追求するため、成分分析の工程に割けるリソースは限られる。その中で当社はいかに安く、大量の水素を作り出すかを重点目標に据えていたため、同工程に投資することができた」と説明。誰も手を出せない領域にこそ、大きなチャンスがある―。こうした信念の元で積み重ねた試行錯誤が実を結んだ形だ。

また、同社のプラントはCO2排出量の低減にも寄与する。前処理から水素化までのプロセスにより、焼却処理と比べて最大80%のCO2排出削減が可能とされている。また、発生したCO2はドライアイスや飲料用途などへの転用も検討されており、低環境負荷な水素生成モデルの構築が進んでいる。「従来のように燃やすのではなく、『燃やさずに活用する』というアプローチにこだわっている」と西川氏は強調する。

eフューエル用途の水素製造も視野に入れる


紆余曲折を経た道のり 次は国内での商用化実証へ

ここまでの道のりは、決して平坦ではなかった。水素化プロジェクトを立ち上げた当初、国内で共同パートナーを探すも、事業の難易度の高さから門前払いされる日々が続いた。それならば国外で進めるしかないと、コロナ禍の2020年に渡米。現地で200社以上にアプローチし、プラント会社との提携にこぎつけた。実証は提携先が所有するガス化溶融炉を活用しながら、一連の工程を細分化して進めた。それぞれのパートで想定される技術課題を一つひとつ確認し、検証と改良を進める地道なプロセスだった。

こうした経緯から、これまでは米国を拠点に開発と検証を行ってきたが、次のフェーズでは、日本国内でのフルスケール商用化実証に移行する。現在は国内での提携先を拡大しており、27年内の実証完了を目指す。また、将来的にはeフューエル用途の水素製造も視野に入れる。

西川氏は今後に関して、「ゆくゆくは47都道府県すべてに当社のプラントを展開したい。資源の乏しい日本だからこそ、廃棄物を水素という形で再資源化する技術は一層重要になる」と意気込む。同社の挑戦の先には、持続可能な社会の未来像が浮かび上がっている。

地熱発電に高まる期待 導入拡大への課題は

【多事争論】話題:地熱発電のポテンシャル

地熱発電の次世代技術早期実用化へ、官民による議論が活発化している。

実現性に疑問の声も上がる中、今後重視すべき視点とは。

温暖化と資源問題の解決手段に 若年層への訴求が普及の鍵

視点A:江原幸雄/NPO地熱情報研究所代表・九州大学名誉教授

「地熱発電(地下から取り出した高温・高圧の蒸気によってタービンを回して発電)」は、多くの関係者が期待するほどには進展していない。日本の地熱発電が始まって60年近く経過しているが、発電所の出力規模が1万kW以上(1万kWで約2万世帯を賄える)の地熱発電所は20カ所程度ある。

さて、国内地熱発電の可能性を開くためにはいくつかの課題がある。まず、「自然公園・温泉地域」との競合による不都合の解消。わが国は火山が多く地熱資源(世界3位)に恵まれ、また地熱開発技術も世界の先進国であるが、国内設置の地熱発電設備容量は約55万kWで世界10位、電力シェアは0・3%で、政府の2030年度導入計画150万kWに対し、現在の達成率は37%と、十分には進んでいないのが現状だ。原因として、自然公園内の地熱開発に環境省の協力や地元の合意が得られず、調査断念に至る例が少なくないことなどがある。加えて、地熱発電の利点(国産、安定性、環境性、経済性など)が国民に十分に理解されておらず、国内のエネルギー問題やグローバルな地球温暖化問題において、「地熱発電が解決手段になり得る」ということが、国民に十分に浸透していないことがある。


明らかになった超臨界流体の存在 想定出力は1000万kW以上にも

次世代地熱発電「超臨界地熱発電」の実現も重要である。火山の近くにある従来の地熱資源は浅部(地表~地下数100m)に「温泉帯水層」がある。ここから温泉水が取り出される。その下にある中浅部(地下数100m~3㎞)には「地熱貯留層」があり、ここから高温熱水・蒸気が生産され、通常の地熱発電(1万~3万kW)に利用されてきた。さらに、より深部(3㎞~10㎞)に高温の岩石が溶けた「マグマ貯まり(800~1200℃)」がある。マグマ貯まりの熱を利用する「マグマ発電」はさらに先の将来に向けた課題だ。(なお、わが国ではマグマ貯まりから熱抽出を行う「坑井内同軸熱交換器(DCHE)」がすでに開発されている)

そのような中で、ここ10数年、「地熱貯留層」と「マグマ貯まり」との間(3~7㎞)に、高温・高圧(温度400~600℃、圧力300~500気圧)の超臨界流体の存在が新たに知られるようになってきた。アイスランドでは、掘削によって400℃を超える岩石の微小粉体を含んだ流体が噴出した。わが国でもこのような流体を利用した「超臨界地熱発電」の開発が進行しており、日本列島の火山下に10個以上のこのような「超臨界地熱資源」が存在し、超臨界流体の水熱力学的高特性と規模の大きさから1カ所当たりの出力は10万kW程度と推定されており、日本の活火山を120個とすれば、総出力は1000万kW以上が想定される。

一方、国内地熱発電を大きく開くために、技術の進歩だけでなく、地熱発電の国民へ周知、特に若者への期待がある。以下では若者の活動が比較的短期間に国外あるいは国内の注目を浴びた2例を紹介する。1例目として「スウェーデンの女性環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの活動」がある。当時8歳であった21年に気候変動問題を知り、女性学生環境活動家になり、国内だけでなく、国連はじめ、世界各国で地球温暖化問題の解決を訴え、それまで保守派から、むしろ否定されてきた「地球温暖化問題」を、「個人の危機感」から、一気に「人類共通の危機感」へと引き上げ、世界の人たちに問題解決の重要さを広めた。2例目として「10~20代の日本の男女学生活動家16人による火力発電の停止を求める集団訴訟」がある。日本の若者は、24年8月、気候変動の悪影響は若い世代の人権を侵害しているとして、CO2排出量の多い火力発電事業者10社を相手取り、CO2排出量を削減するよう求めて名古屋地裁に提訴した。判決はまだ出ていないが今後日本各地の裁判所でCO2排出量削減の判決が出ると期待できる。

さらに、日本政府の誤った地球温暖化対策を抜本的に変える可能性が十分にある。地球温暖化が急激に進む中で、人類の苦難を解決する「脱炭素化」。また資源小国ゆえ、国際紛争の影響を受け続ける「資源の安定確保」の課題にさらされ続ける日本。だが、日本にはそれらの問題解決手段として「地熱発電」がある。この重大な事実を国民に浸透させることで、これらの問題に立ち向かうことができる。

なお、地熱発電に関する詳細を述べられなかったが、疑問に関しては以下を参考にしていただければ幸いだ(地熱エネルギーの疑問50、日本地熱学会編、成山堂書店、2022年10月発行)。

えはら・さちお 北大大学院博士課程修了後、北大助手、九大助教授、教授を経て2004 年工学研究院教授、12年年退職。その間日本地熱学会長2期、国際地熱協会(IGA)理事2期歴任。

【エネルギーのそこが知りたい】数々の疑問に専門家が回答(2025年7月号)

GX-ETSと民間クレジットの関係/濃縮ウランの調達先

Q 改正GX推進法の成立を受け、排出量取引制度(GX-ETS)への参加が義務化される中で、今後のボランタリークレジットの位置付けや民間で活用されている現状にどのような影響を与えるでしょうか。

A 来年度から本格稼働するGX-ETS第2フェーズの具体案に関して検討を行っていた「GX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループ」は昨年12月、「法定化後の制度においては、海外ボランタリークレジットの活用は認めず、J-クレジットやJCMの方法論拡大を優先して進めることで、(DACCS、CCSなどの)先進的な技術の導入インセンティブを高めていく」とし、ボランタリークレジットの活用は認めないことにしました。

GX-ETSの2023~25年度の第1フェーズでは、自主的な枠組みであることを踏まえ、DACCS、BECCSなどの将来NDC達成に貢献し得る方法論による民間クレジット(ボランタリークレジット)の活用も一部許容されていたのが、第2フェーズでは変更になりました。

ただ、DACCS、CCSなどに関する海外ボランタリークレジットは、現時点ではまだ実際に適格になったものがなく(国内では、Jブルークレジットが適格になっています)、この需要がなくなったとしても、ボランタリークレジット市場への影響はほとんどないと考えられます。

世界のボランタリークレジット市場をみると、21・22年をピークに取引量も発行量も大きく減少している一方で、償却(活用)量はほぼ変わらないことから、ボランタリークレジットへの需要自体は堅調と見られます。償却されるクレジットは、再生可能エネルギーと森林・土地利用が大部分を占めていますが、再エネは減少気味です。

回答者:田上貴彦/日本エネルギー経済研究所気候変動グループマネージャー


Q ロシアによるウクライナ侵攻後、世界の濃縮ウラン調達先はどう変化しましたか?

A 2022年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、原発用の濃縮ウランをロシアに依存する危険性が認識されましたが、調達先の変更はあまり進んでいません。

原発の燃料製造には、ウラン濃縮が必要です。天然ウランは、核分裂して熱エネルギーを放つウラン235の含有量がわずか0.7%であり、残りは核分裂しないウラン238で構成されます。235を238から分離し、割合を3~5%に高めて核燃料にします。このウラン濃縮で、ロシアの原子力国策会社「ロスアトム」が45%の世界シェアを持ち、他国産への切り替えは容易ではありません。

特に危機感が強いのが米国です。数々の制裁をロシアに科してきましたが、原子力分野は例外でした。濃縮ウランの25%を依存しているためです。昨年8月、米国はロシア産ウラン輸入禁止法を施行し同時に濃縮ウランでロスアトムに次ぐ世界シェアのウレンコ(英独蘭の連合事業体)に、米国本土内での濃縮ウランの増産を要望しました。

今後は小型モジュール炉など、次世代炉用の高純度低濃縮ウラン(HALEU)の国際競争が激しくなりそうです。HALEUは現行の通常原子炉用に比べ、特殊な工程が必要です。米国は将来をにらみ、HALEUの自給体制構築を急いでいます。

こうした動向は日本にも影響を与えます。日本はロシア産に依存していません。また、世界市場には進出していませんがウラン濃縮技術を有しています。ウラン濃縮には遠心分離機が必要で、自前の分離機で濃縮を行っているのは世界でロスアトム、ウレンコ、日本原燃のみです。米国は今後、日本原燃にも協力を求めると予想され日本の濃縮技術が世界進出する可能性があります。

回答者:小林祐喜/笹川平和財団安全保障・日米グループ主任研究員

【需要家】若者の環境意識に変化の兆し 行動促す体験を

【業界スクランブル/需要家】

消費者を対象とした環境意識調査では、若年層ほど環境への関心が低いという結果がしばしば見受けられる。これは、若年層が中高年層に比べて社会問題への関心が低いことが一因と考えられる。一方で、近年は環境教育の充実により若者の意識にも変化が生じている可能性も考えられるが、実際のところはどうなのだろうか。

筆者は昨年、大学生数名と環境意識について意見交換を行う機会があった。その中では、気温上昇など気候変動の影響を実感し、不安を抱く声が多く聞かれた。また、身近な範囲で省エネ行動を実践している学生もおり、若者が気候変動に無関心というわけではないことが把握できた。

一方で、「自分一人の行動では何も変わらない」との声もあり、環境・エネルギーといったグローバルな課題が自分事として捉えられていない実態も浮かび上がった。

博報堂生活総研のコラム〈「若者論」座談会~大学生篇~〉では、大学生へのインタビューを通じて、環境問題は「自分が少し気を付けた程度では解決しない」といった意見が紹介されている。また、30年前の若者と比べて、現在の若者の方が環境配慮行動への意識が低下している傾向が示されており、大きな社会課題に対する無力感が以前より強まっている印象を受ける。

ただし、大学生との意見交換の場では、サークル活動などを通じて気候変動への関心や知識を深めている学生もいた。これは自身の体験が環境意識の変化につながる好例であり、今後は若者が気候変動をより身近に感じ、自らの行動と結びつけられる体験の場の提供が重要になると考えている。(K)

【コラム/7月24日】“壊国”日本、今どきの政策を考える~参院選物価対策を振り返る

飯倉 穣/エコノミスト

1、テーマ選択の不思議

猛暑が続く。参院選があった。公約は、憲法・外交安保、経済財政、社会保障、多様性等で、各党各様である。その中で耳目に届く主張は、「物価問題、給付か減税か」という争論だった。

報道もあった。「参院選公示20日投票 石破政権を問う 物価高対策 現金給付か減税か」(朝日25年7月4日)。「与野党「分配」鮮明に インフレ対策現金給付や減税訴え 社会保障改革保険料減や年金底上げ 規制改革や貿易成長戦略乏しく」(日経同)。選挙中報道は、主として物価を追いかけた。物価問題の基本を考えた場合、この話題の選択と各党主張は、如何だろうか。金融政策不全、国債残高、財政赤字で困窮する国が、借金で散在する。賢明な大人の候補者の主張なのか。この風景を見て国が壊れると嘆息する著名ジャーナリストもいた。

改めて、選挙を巡る経済論議の低調さ、現在も継続する物価問題の扱いとあるべき政策を考える。


2、物価・賃金・成長率の状況

近年の物価の動きをどう捉えるか。それが政策立案の前提である。輸入物価、企業物価、消費者物価、賃上げの動きの再確認が必要だ。今次の状況は、コロナ中のロシア侵略・エネ資源価格上昇に始まる。

輸入物価指数前年比(2020年=100、円ベース)は、20年△10.3%下落後、ロシア侵略ウクライナ戦争で21年21.6%、22年39.1%と高騰した。その後エネ価格の落ち着きで23年△4.7%、24年円安で2.7%だった。25年に入り第1四半期△0.5%、第2四半期△10.0%と低下した(契約通貨第1四半期△0.6%、第2四半期△4.6%)。つまり21年、22年のエネ・資源価格に起因する上昇が一段落し、為替の影響も小幅で、安定化している。

この効果で企業物価指数前年比(同)は、コロナで落ち込んだ後(20年△1.2%)、21年4.6%、22年エネ価格の影響で9.8%と上昇、23年4.4%、24年2.3%と沈静化した。ただ本年に入り25年第1四半期4.2%、第2四半期3.4%と水準が高い。要因は円安の他に有りそうだ。

消費者物価はどうか。総合指数前年比は、20年0.0%、21年△0.2%の後、エネ価格等上昇で22年2.5%、23年3.2%、24年2.7%だった。その後25年第1四半期3.7%、第2四半期3.4%と高めで動いている(生鮮・エネ除く総合25年第1四半期2.5%、第2四半期3.0%)。つまり22年以降エネルギー・食料関係で上昇し、その後、加えて工業製品等の値上げの影響が続いている。

賃金はどうか。民間主要企業の賃上げは、20年2.0%、21年1.86%、22年2.20%の後、23年3.60%、24年5.33%、25年は5.25%(連合7月3日集計結果)と直近3年間高率だった。政経労の合言葉「物価見合いの賃上げ」の影響が大きい。

そして経済成長率は、依然低迷している。実質GDP前年比は、20年コロナで落ち込み(△4.2%)、その後21年2.7%、22年0.9%、23年1.4%、24年0.2%、25年度政府見込1.2%である(名目20年△3.3%、21年2.5%、22年1.3%、23年5.5%、24年3.1%、25年度政府見込2.7%)。

物価対策の基本は、この指標の関係をどう見るかで方向が決まる。

事業承継を軸に業界再編加速 長期戦略見据えた課題とは

【論点】LPガス業界のM&A〈前編〉/中原駿男・スピカコンサルティング代表取締役

LPガス業界では昨年、大型のM&A案件が相次ぎ、この流れは今後も続くと予想されている。

円滑な事業承継に何が必要か。M&Aコンサルのスペシャリストが3回にわたって解説する。

2024年、LPガス業界は顧客件数が1万件を超える企業の譲渡が相次いで行われた。過去10年を見た時に、顧客件数1万件超え企業の譲渡は1年に1社、もしくは2年に3社程度のペースであった。しかし、昨年は6社がM&Aを選択。事業承継だけの理由ではない、長期戦略のためのM&AがLPガス業界にも到来したと言えるだろう。こうした業界進化の兆しはありつつも、未だ後継者不在による事業承継型M&Aが件数の大多数を占めていることに変わりはない。そして、今後も水面下でM&Aの件数は増え、業界再編は加速していくであろう。

LPガス事業の経営者がM&Aを検討する上で、取引先卸との関係を懸念することは想像に難くない。しかし、これ以外にもこの業界のM&Aには他業界とは異なる特徴がいくつかある。今回はLPガス業界のM&Aの特徴と難しさについて解説していく。

LPガス業界のM&Aが活況だ


空前の売り手市場 他業種上回る営業権相場

まずM&Aの手続きや進め方は、業界によって大きく異なることはない。しかしながら、M&Aは案件ごとにぞれぞれの事情や目的があり、一つとして同じものはないという認識を持つべきだ。

業界の特徴や担当する会社・経営者の特性を踏まえて、円滑に交渉が進むようあらかじめ議論となりうる論点を整理してまとめていくのが実績のあるM&Aコンサルタントである。M&Aの目的を達成するための最善の判断をしていくには、やはり経験と業界の知識が不可欠だ。LPガス業界のM&Aは他業種と比べていくつか特徴的な点がある。

現状のLPガス業界のM&Aは空前の「売り手市場」であり、買い手である譲渡先候補は実に多い。また、LPガス事業はもともと粗利率が取れて安定性も期待できることから、常に新規顧客獲得コストが高騰していた。だからこそ営業権の相場は他業種の常識をはるかに超えるものとなっている。

こうした事情を知らずに一般的な営業権査定を行うと、業界内の「相場」を大きく下回ることになるだろう。M&Aスキームについては「営業権譲渡」や「事業譲渡」が耳馴染みある言葉かもしれない。この二つは売り手の事業の一部または全部を売却するという意味で、実質的には同じだ。事業承継の方法には、商権譲渡を含む事業譲渡のほか、会社分割や株式移転・株式交換などがある。

LPガス販売店、とりわけ小規模店では、従来型の「顧客1件当たりいくら」の商権譲渡や事業譲渡が大半だ。新規獲得時の単価が営業権相場に影響するのである。さらに、顧客数を前提とした譲渡契約であるため、譲渡後に顧客減が生じると譲渡対価の返金スキームが発生する点も業界特有のアクションだ。また、営業権に対するLPガス事業以外の収益の影響が小さいのも特徴だ。

こうしたことは、業界を知らなければ分からないことであり、売り手と買い手双方に理解を得る営業権査定が難航する要因となる。他にも、LPガス販売業は販売登録や業務に各種の資格が必要であることから、同業者、とりわけ取引先卸会社に譲渡することが他業種に比べて極めて多く、反対に、他業種とのマッチングの事例はほとんど見られない。 いずれにしても、こうしたLPガス業界のM&Aで特有とされる事柄の多くは、過去から長く続いた「顧客1軒いくら」という卸会社による商権買収が事業承継の主流であることに起因している。とはいえ、時代は変化しており、こうした価格設定や習慣は見直すべきタイミングが来ていると考えている。


中立的な条件の調整 欠かせない仲介者の存在

卸会社と小売販売店とが密接な関係にあれば、事業承継についてまず取引先の卸会社に相談することが浮かぶかもしれない。しかし、現実はそう簡単ではない。もちろん、長年取引をしてきた卸会社にそのまま進むことは、卸と小売りの関係性的にも、円滑な引継ぎという点でも優先すべき相手である。

ただ、売主の希望と卸の希望は必ずしも一致するものではない。例を言うと、売主は法人そのものを残したい要望が一定ある。従業員の雇用はそのまま守られ、かつ株式譲渡スキームであれば金融所得課税の優遇を受け取れる。

一方で、卸先は近隣に拠点を持っているが故に、顧客のみを受ける商圏買収を希望することが多い。卸会社側はコストを抑えることができ、かつ営業権を償却することによって将来的な節税にもつながる。さらに言うと、売主がLPガス事業以外の事業を営んでいたり、会社とオーナーが資産の持ち合いをしていたりする場合は、必ずしも卸先がその事業や資産を受けられるとは限らない。こうした場合は、複雑な会社分割スキームを要し、卸先以外の候補先の条件を見た方が結果的に満足のいくM&Aにつながる。

ほかにも、中小企業では、経営者やその一族など関連当事者との取引が多くあり、中立的な視点から条件をまとめる仲介者=アドバイザーがいなければM&A話を進めることが困難を極める。特に中小規模の会社では、経営者が会社の課題に対して全て一人で対応しているというケースも少なくない。 いざM&Aを進めるとなれば、煩雑で膨大な事務処理も発生する。それを経営者とともに判断し、処理していくアドバイザーの存在は、小規模企業であれば不可欠と言えるだろう。

なかはら・としお 慶應義塾大学経済学部卒。2010年みずほ銀行に入行。14年から日本M&Aセンターで事業承継問題に取り組む。中堅M&A仲介企業の取締役を経て22年8月にスピカコンサルティング設立。23年7月にGA technologiesと資本提携。

【再エネ】法案成立も課題山積 EEZでの洋上風力推進

【業界スクランブル/再エネ】

今国会でいわゆる「EEZ法案」が可決成立したことを受け、次の段階はJOGMECがEEZの中から特定海域を選定し、セントラル調査を行うことになる。その海域は国による入札海域になり、どの海域が選ばれるのか注目されている。EEZに大型発電所を設置するのは日本人にとって未体験の領域であるため高いハードルを乗り越えながら進むことになる。

第一のハードルはコストだ。浮体、電力ケーブル、洋上変電所、施工、メンテなど着床式に比べればかなり高価になると予想され、コスト低減のための技術開発や制度の仕組みなど知恵を絞らないといけない。第二に、EEZは領海と違って国際法が支配する公海である。経済的利益が沿岸国に帰属するに過ぎない。日本ができることは国際法に根拠があることだけである。

EEZの境界は、日本の国内法で中間線理論に基づき決めているが、中間線理論は海洋法に記述がなく判例である。中間線理論を認めない国もあり、またEEZの境界は国同士の条約で決めよと国際法にあるが日本はどの国とも条約を結んでいない。尖閣、竹島、沖ノ鳥島など領土の所有に関して日本とは異なる主張をする国があり、その領土が形成するEEZはとても危険だろう。

また国際法上対等な権利を持つ者、例えば科学的調査を行う中国公船などとは外務省を通じて政府間で調整しなければならない。国際法上対等な権利を持たない者は、最終的には海上保安庁に出動してもらい実力で排除する。共同漁業区域がないので、遠くから魚を取りに来る漁業者1人ひとりと個別に補償交渉しなければならない。などなど、解決すべき課題は多い(Ⅰ)

【火力】予備電源制度の迷走 委員らは本質無理解

【業界スクランブル/火力】

国が検討を進めている「予備電源制度」が迷走している。資源エネルギー庁は、応札上限価格を従来の2倍に引き上げる案を示し、清水の舞台から飛び降りるような覚悟を見せているが、制度設計の根幹にある本質的な課題には手が付けられていない。このままでは、発電事業者の理解は得られないだろう。

制度設計に携わるエネ庁や有識者の中には、「非常時にしか使われない予備電源が、常時稼働を前提とする容量市場の電源より高値で落札されるのはおかしい」との認識があるようだ。しかし、これは予備電源の本質を理解していない証左である。

予備電源とは、災害などによる電力需給のひっ迫に備え、平時には停めている設備を短期間で再稼働できるよう維持しておくものだ。稼働しないことでコストを抑える一方、実際に稼働することになれば、通常の設備より発電コストが高いので停めてあるのだ。さらに、長期間の休止に伴う不測の不具合による追加コストの発生リスクも不可避だ。

つまり予備電源は「いざという時の保険」であり、平時には費用を支払って待機させ、必要時には割高のコストでも稼働させるという〝二重構造〟を理解しない限り、妥当な制度設計は望めない。

ところが現行案では、制度の複雑化を避けるあまり事後清算を認めず、発電事業者にも需要家にもリスクばかりが目につく設計となっている。 上限価格を2倍にしても応札がなければ、「応札を強制する規制が必要」との声が上がる。実運用への無理解を棚に上げ、制度の不備を是正することなく強権的手段に頼ろうとする姿勢には、強い懸念を抱かざるを得ない。(N)