エネ庁がガスシステム改革検証 地域インフラの課題解決が焦点に

「今後のガスシステム改革の検証で焦点となるのは、地域エネルギーインフラが直面する課題解決だ」。こう見解を示すのは、ガスシステム改革全体を検証する資源エネルギー庁の審議会「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」の下に新設された、「ガス事業環境整備ワーキンググループ(WG)」の座長を務める山内弘隆・武蔵野大学特任教授だ。

地域のエネルギーインフラをどう維持していくのか

ガスシステム改革は、①安定供給の確保、②ガス料金の最大限抑制、③需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大、④天然ガス利用方法の拡大―を目的に実施され、2017年の小売り全面自由化以降、首都圏や関西圏を中心とする都市部で新規参入が進んだ。一方、地方では人口減少や高齢化による担い手不足などの課題に直面。ガス事業者にとっては、老朽化した設備の維持やメンテナンス体制の確保が重要な経営課題となりつつある。また、地域に関連する政策議論は、「石破茂首相の関心を引きやすい」と見る向きがあり、今後の展開に追い風となる可能性もある。

WGは7月から本格的な議論を開始し、導管部門の法的分離から5年後に当たる27年3月までに検証をまとめる予定だ。なお、地域の課題解決に関心を示していたエネ庁ガス市場整備室の福田光紀室長が、7月1日付で異動。新室長の迫田英晴氏がかじ取りを行うことになる。

簡易ガスやLPガスなどを含め、事業者単独では維持が困難になりつつある地域のエネルギーインフラをどう支えていくのか。本来は自治体も絡めた総合的な議論が求められる。

e—メタン試験施設をスケールアップ カーボンニュートラル化へ前進

【大阪ガス】

大阪ガスはe―メタンの導入拡大に向け、SOECメタネーションの試験施設を竣工した。

軸となる電解装置やメタン合成プロセスでの課題を抽出し、30年度までの技術確立を目指す。

今使っている都市ガスがいつの間にかカーボンニュートラル化されていく―。そんな未来を実現する鍵となるのが、「e―メタン」の社会実装だ。大阪ガスではその実現に向けて、既存技術であり大規模化に取り組むサバティエ方式、下水汚泥や廃棄物などを活用するバイオ方式メタネーションの開発・実証を進めてきた。そして同社が並行して力を入れているのが、世界最高水準のエネルギー変換効率を実現するポテンシャルを秘めた「SOECメタネーション」の技術開発だ。

SOECの要となる電解装置

SOECメタネーションは、水やCO2を700~800℃の高温下で電気分解し、得られた水素やCO(一酸化炭素)からCH4(メタン)を製造する。サバティエなどの従来方式が水素生成とメタン合成を別々のプロセスとして行い、各プロセスでエネルギーロスが生じるのに対し、SOEC方式ではメタン合成で発生する排熱を前段の電解プロセスに再利用でき、システム全体のエネルギー効率を大幅に高められるのが特長だ。投入した再生可能エネルギーをどれだけメタンに変換できるかを示す変換効率は、従来方式が60%程度に留まるのに対し、SOEC方式では85~90%を実現できる可能性がある。


試験スケールは100倍に 電解・熱除去能力の向上へ

同社がSOECメタネーションの技術開発に本格的に乗り出したのは2022年。産業技術総合研究所とともに新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に採択されたことを受けたものだ。

ラボスケール、ベンチスケール、パイロットスケールの3段階で開発を進める計画で、30年度までの技術確立を目指している。昨年から実証していたラボスケールでの試験を終え、現在は製造規模が100倍となるベンチスケール段階に移行中。このほどベンチスケール試験施設が完成し、6月3日に竣工式が行われた。

竣工式の様子

ベンチスケールでの試験は27年度までを予定。この段階では水素生成とメタン合成の両工程において、高温下での制御やスケールアップに伴う課題の抽出が求められる。大阪ガス先端技術研究所SOECメタネーション開発室統括室長の大西久男氏は、具体的な技術課題として「高温電解装置の大型化」「メタン合成装置における熱除去能力の向上」の2点を挙げる。

今回のスケールアップにより、これまでは一般家庭2戸分であったe―メタン製造量は、200戸相当へと拡大する。このe―メタンのもととなる水素を生成する高温電解においては、固体酸化物を用いた電気分解素子(セル)を積層した「セルスタック」を複数設置し、電気分解を均一に行う必要がある。そのためには、原料の水蒸気などを安定的かつ均一に供給するシステムの構築が不可欠となる。

一方、メタン合成反応においては、発生する排熱を効率的に除去し、装置内の温度上昇を抑えながら、この熱を電解に有効利用する仕組みの開発が重要な検討項目となる。大西氏は、「製造規模が拡大しても、ラボ段階で得られた効果がそのまま再現できるか、しっかり検証していく必要がある」と強調する。

太陽光リサイクル法案の迷走 問題点を徹底解説

【業界紙の目】濱田一智/化学工業日報 編集局記者

環境省と経産省が、今国会への太陽光パネルリサイクル義務化に向けた法案の提出を見送った。

有識者会議が取りまとめた義務化の在り方について、内閣法制局が待ったをかけた顚末を解説する。

使用済み太陽光パネルのリサイクルを義務化するための法案が暗礁に乗り上げている。環境省と経済産業省は今年の通常国会への提出を念頭に、素案を練り上げパブリックコメント募集まで済ませていたものの、内閣法制局から「他のリサイクル法令との整合性が取れない」と物言いがついて5月半ばに断念。石破内閣は秋の臨時国会での成立を目指すが、法制局を説得できないと今回の二の舞になる。では整合性とは何を指すのか。

前提として、現行制度ではパネルをリサイクルする義務はない。業務用パネルの所有者(=発電事業者)には、廃棄物処理法により「適切な処理」が求められるが、コストを理由に大半が埋め立て処分される。ところが、このままではあと10年ほどで処理場がひっ迫し始める恐れがあり、パネルに含まれる有害物質が漏れ出す懸念も拭えない。そこで新法を制定し、パネルのリユースやリサイクルを推奨あるいは義務化すべきとの意見が続出。新法制定に向けた有識者会議が発足した。

有識者会議で挙がった論点は多岐にわたるが、とりあえず押さえておくべきは、①誰がリサイクルの義務を負うか、②義務化の対象となるパネルはどこまでか―という2点だ。最初に、論点①「リサイクル義務の主体」について、家電、自動車、容器包装(その典型がペットボトル)に関する各種法令と比較しながら検討する。

パネルのリサイクル義務化は急務だ


義務化の対象範囲 「既設までカバー」が物議

まず、家電や自動車では、メーカーが自らリサイクルを実施する必要がある。ただし、自動車なら購入時に、家電なら廃棄時に、所有者がリサイクル料金を支払う必要がある。以上が家電リサイクル法と自動車リサイクル法のルールだ。

一方、ペットボトルでは、飲料や容器のメーカーが自らリサイクルを実施する必要はない。その代わり、メーカーは日本容器包装リサイクル協会(容リ協)にリサイクル料金を支払う必要がある。リサイクルを実施するのは専門業者で、要リ協を介して業者へ料金が流れる仕組みとなる。以上が容器包装リサイクル法(容リ法)のルールだ。

つまり、家電と自動車についてメーカーはリサイクルを実施する責任(=物理的責任)を負い、ペットボトルについてメーカーはリサイクル料金を負担する責任(=金銭的責任)を負う。このように「メーカーが(生産・使用の段階だけでなく)廃棄・リサイクルの段階でも物理的または金銭的な責任を負う」という考え方を、環境経済学などの専門用語で拡大生産者責任(EPR)と呼ぶ。

EPRを正当化する根拠の一つが、「メーカーに環境配慮設計を促すから」という理屈だ。「最終的にリサイクルしなければならない圧力を与えられたメーカーは、最初からリサイクルしやすい製品をデザインすることになるだろう」と説明される。

LNG火力構内にDC検討 制度的課題は今後整理へ

データセンター(DC)の建設ラッシュを迎えている東京湾岸エリアで、新たなDCモデルの動きが浮上している。JERAのLNG火力発電所構内にさくらインターネットのDC新設を検討することで基本合意書を締結したと、両者が6月5日に発表した。

DCを巡る既存火力の活用が論点に浮上している(写真は五井火力)

ポイントは、JERAの火力構内の発電設備から系統を介さずにさくら社のDCに電力を直接供給すること。具体的な地点はまだ明かされていない。

DC向けの電力需要が急増中の千葉県印西市では系統増強が進みつつも、連系プロセスの混雑といった課題が表面化。その点、DCへの直接供給が実現すればこうした課題の解消につながり、増強費用や託送料金を負担せずに済む可能性がある。

ただ、制度的な障壁の整理は必要だ。米国では、DCが隣接する原発などから直接供給を受ける「併設負荷」を巡り、発電&DC側と、系統運用者との意見が対立。前者は先述のようなメリットを享受したい考えで、後者は系統信頼度や費用負担面での悪影響を指摘する。

JERAは制度上の障壁に関して、電力と通信の効果的連携の在り方を検討する「ワット・ビット連携官民懇談会」の動向を踏まえつつ、政府や東京電力パワーグリッドと議論するとしている。なお、同懇談会は6日に第一弾の取りまとめを提示。足元の需要に対応する上で、「系統余力・既設設備の有効活用」を掲げ、「電力系統余力があるエリアや発電所の隣接地など、早期に電力インフラが活用可能な場所へのDC立地促進」を提起している。

アジアの中核市場へ 急増する電力先物の取引量

【マーケットの潮流】高井裕之/国際ビジネスコンサルタント

テーマ:電力先物市場

電力価格の市場リスクの高まりを背景に、先物取引が活況を呈している。

今後、長期的な取引も可能に。事業者のリスクヘッジの選択肢がさらに広がろうとしている。

わが国の電力先物の取引量が急増している。筆者が日本法人の代表を務める欧州エネルギー取引所(EEX)が運営するJapan Power(日本のスポット電力市場の月間平均価格を参照して差金決済する金融商品)の出来高は、昨年1~12月合計で前年比4倍の73‌TW(1TW=10億kW)時、3月単月では過去最高の13・6TW時を記録するなど活況を呈している。

日本全体の電力消費量が月間平均約70‌TW時とすれば、5年弱で実需給の2割弱の規模に成長したことになる。取引所で売買される日本電力先物全体に占めるEEXのシェアは、24年合計で99%と極めて高く日本全体の市場規模が拡大していると言っても過言ではない。

Japan Powerの取引量の推移

電力自由化後、価格は需給に基づき事業者間の競争で決まることになり大きく変動するようになった。先物取引は、不確実な将来の価格をあらかじめ固定化することで経営を安定化させる効用がある。その急拡大には二つの要因がある。一つは、価格の不確実性の高まりだ。価格を左右する需給バランスは、地球温暖化に伴う天候の激化・不安定化と再生可能エネルギー普及による発電量の天候依存度の高まりによって加速度的に不安定になっている。

スポット電力市場(日本卸電力取引所:JEPX)の一日前市場(東京エリア)の価格を見ると、今年4月各日の午前9時から9時半までの30分だけを捉えても、1kW時当たり0・01円から20・42円までの振れ幅があった。同市場から電力を調達する小売事業者が相場変動を回避するには、販売価格を市場に連動させて最終需要家にリスクを転嫁するか、調達価格が高騰してもマージンが残るような高い販売価格を設定せざるを得ない(その場合には販売競争に負けることもある)。しかし、電力先物を買うことであらかじめ調達価格を安く確定することができれば、その価格を基準に販売価格を設定することで経営を安定させるとともに、競合に対して優位に立つことができる。


活況の要因の一つ リスクテイカーの思恵とは

もう一つの要因は、取引参加者の多様性、特にリスクテイカーの存在だ。EEXの日本電力先物市場には、国内の電力事業者に加え、海外の石油ガスメジャー・資源系商社・金融プレイヤー、そして欧州などの電力事業者が多数参加している。海外勢の多くは、国内で発電したり現物の電力を販売したりする実需筋ではなく、市場でリスクを取りながら「ペーパー電力」を収益化すべく売買するリスクテイカーである。一見、彼らの利益追求と捉えられがちだが、実は国内市場にとっても少なからぬ恩恵をもたらしている。

発電事業者であれば発電原価、小売事業者であれば最終需要家に対する販売価格が先物価格の妥当性を判断する主な基準となる一方、リスクテイカーは発電燃料などの先物価格との相関性や精度の高い天候データ分析に基づく需要予測など、実需筋とは異なる観点から妥当性を判断して売買する。

先に小売事業者が先物を活用する例を挙げたが、取引が成立するのは、彼らが安いと思った価格を逆に高いと考え、売り手に回る相手がいるからである。この場合の取引相手は同じ目線を持つ小売事業者ではなく、発電事業者であったり、リスクテイカーであったりする。一般的にリスクテイカーには投機筋を連想させるネガティブな印象がつきまとうが、株式でも為替でも市場が活性化して流動性が生まれるにはその存在が不可欠であり、彼らが取引相手になるからこそ、実需筋が先物によるリスクヘッジを行うことができる。

加えて、多様な参加者が加わることで市場価格がより透明性のある指標として機能しやすくなる。価格の質の向上は、小売事業者の調達コストや発電事業者の売電収入に見通しを与え、結果として最終需要家への価格安定や発電投資の最適化にも寄与する。グローバル資本の参入が、巡り巡って日本の家庭や企業の電気代に間接的な安定効果をもたらし得る。

50年ビジョンを策定し具体策明示 顧客目線で都市ガス業界の未来像描く

【日本ガス協会】

2050年の都市ガス業界のビジョン、その実現に向けた30年までのアクションプランを策定した。

S+3Eを重視しつつ、顧客にとって最適なソリューションを提供する姿を明確にした。

日本ガス協会は6月3日、2050年に向けた都市ガス業界の長期ビジョン「ガスビジョン2050」を公表した。サブタイトルに「お客さまにとっての最適なソリューション提供を目指して」を掲げ、顧客目線を重視するとともに、中小を含む全ての都市ガス事業者が主体的に取り組めるよう意識。20年11月策定の長期ビジョン「カーボンニュートラル(CN)チャレンジ2050」がCN化に焦点を当てていたのに対して、今回はS+3E(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)とのバランスをより考慮している。

ビジョンとアクションプランの概要
出典:日本ガス協会


多様な手段でCN達成 技術進展などに応じ変更も

新たにビジョンを策定した背景には、地政学リスクの顕在化などの環境変化を踏まえて、政府がエネルギー政策の方向性を見直したことがある。2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、S+3Eの観点をこれまで以上に重視し、天然ガスをCN実現後も重要なエネルギー源として位置付けた。そして、50年の都市ガスCN化へ、e―メタンやバイオガスの導入など、さまざまな手段を組み合わせて実現を図ることを明記した。こうした政策動向に歩調を合わせた形だ。

ガスビジョンは、①災害に屈しない社会・産業・地域の構築に尽力する、②お客さまに選ばれ続けるソリューションを提供する、③お客さま・地域のCN化実現に貢献する―の三つの

個別ビジョンで構成している。具体的に①では、レジリエンス(強靭性)を確立するために事業者設備の完全耐震化を目指すとともに、次世代スマートメーターなどのセンサーネットワークを活用した予知保全により、事故ゼロを追求。合わせて、設備の経年劣化に備える計画的な設備改修などを継続して推進し、「変わらぬ安心」を提供する。また、エネルギーセキュリティの向上を図るため、エネルギーの安定調達に加え、ガスと電力のベストミックスにより、柔軟かつ強靭なエネルギーインフラの構築を目指す。

②では、コージェネや再生可能エネルギーなど多様なリソースと、AI・DXを活用した高度な制御技術により、エネルギーシステム全体の進化を図る。さらに、e―メタンやバイオガスの供給、地産地消の取り組みなどを通じて地域のCN化を推進するほか、地方創生や地域経済の循環に貢献する仕組みを構築する。また、既存インフラや設備を最大限活用するとともに、CN関連技術のコスト低減を図り、経済的かつ安定的な供給を実現する。

③では、50年のガスのCN化実現とその手段として、e―メタンとバイオガスで90~50%程度と幅を持たせ、残る10~50%程度はCCUS(CO2回収・貯留・利用)やDAC(直接空気回収)、カーボン・オフセットなどを組み合わせた天然ガスで対応。残る数%程度は水素直接供給を想定している。日本ガス協会の内田高史会長は「CN達成に向けて、その時々の最適な手段を組み合わせるのが基本的な考え方だ。各比率は技術開発の進展度合いなどによって変わっていく」と説明した。

イスラエル・イランの12日間戦争 米国の核施設攻撃受け停戦

12日間にわたって続いたイスラエルとイランの軍事衝突が6月24日、米国によるイラン核施設3か所(フォルドー、ナタンツ、イスファハン)への攻撃を契機に終結した。米軍が地下貫通爆弾(バンカーバスター)で攻撃したフォルドーは山をくりぬいた地中奥深くにウラン濃縮施設がある。これまでのイスラエル軍による空爆では破壊できていなかった。米軍はB2ステルス爆撃機を6機出撃、バンカーバスターを14発投下した。他の2施設には、中東海域に展開中の原子力潜水艦が、トマホーク巡航ミサイルをあわせて30発を撃ち込んだ。

イランの攻撃を受けたイスラエル中部ヘルツリーヤ(6月17日)。米国の参戦によるホルムズ封鎖懸念などで一時はエネルギー供給への不安が強まった

「一部報道などによれば、攻撃によって破壊されたウラン濃縮施設については、復旧までに数年はかかるとみられている。トランプ氏は25日、オランダ・ハーグで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議閉幕後の会見で、「核兵器は不要だ」とイランに核開発を断念させる考えを表明し、対イラン制裁を緩和する可能性も示唆した。一方、イラン政府側は、核開発の断念を拒否する構えを見せており、対立の火種は依然くすぶっている。


イラン核武装が間近に? 米国が参戦した背景

国際原子力機関(IAEA)によると、イランは5月17日時点で、408・8㎏の60%濃縮ウランを保有。これを90%にまで濃縮すれば、核爆弾10発分に相当する。爆弾の組み立ても「3週間程度」で十分と見られており、核武装が間近に迫っているというのがイスラエルや米国側の見立てだ。

ただハメネイ師は、核兵器の製造や取得を禁じる宗教令を2003年に発出している。米情報機関もこれを根拠に、現時点では「イランは核兵器を開発していないし、持っていない」と見ており、両国の見解は「前のめり」気味と言える。03年のイラク戦争時は終結後に同国の核保有が確認されなかった。

IAEAのグロッシ事務局長によると、ナタンツはイスラエルの空爆で「深刻な被害」を受けた。一方、2264機の遠心分離機が稼働し、毎月、核爆弾1発分に相当する60%濃縮ウランを製造するフォルドーは破壊に至らず、イスラエル側は米国に参戦を働きかけていた。

トランプ氏は当初、「米兵にミサイルを撃ってほしくない」と述べるなど慎重な姿勢を示していた。だが、イスラエルがイランのミサイル基地をことごとく破壊し制空権を握ったことに加え、急派した2隻目の米空母も中東海域に入り準備が整った。また、ネタニヤフ首相が「歴史に名を残すのは、あなただ」などとトランプ氏の虚栄心をくすぐり続けたことも影響し、参戦に動いたとの見方もある。

こうした情勢下、WTIの原油価格は米国のイラン攻撃後に75ドルを突破。万が一ホルムズ封鎖となれば、100ドルを突破するとの観測もあったが27日現在は65ドル前後で推移している。

電力システム再構築へ議論始動 産業政策との一体的推進が必要に

検証で課題とされた安定供給の確保に向け、具体的な検討項目が示された。

DX・GXで電力需要増加が見込まれる中、システムを立て直すことはできるか。

約1年にわたる検証を経て、資源エネルギー庁は電力システム改革に関する議論を再始動させた。エネ庁は新たに、総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電力・ガス事業分科会の下に、「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会」を設置(委員長=大橋弘・東京大学副学長)。その下に、制度設計の詳細を検討する「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ(WG)」を立ち上げ、6月13日に第1回会合を開いた。

改革の目的だった「安定供給の確保」「電気料金の最大限抑制」「需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大」のうち、需要家の選択肢と事業機会の拡大では一定の成果があったものの、国際情勢や社会環境の変化に伴い、市場価格や需給の予見可能性の低下などを巡るさまざまな課題が顕在化した。今後は、AI活用やデジタルトランスフォーメーション(DX)に伴う電力需要の増加などに柔軟に対応できる、次世代のエネルギーシステムの構築が急務だ。

次世代のシステム構築に着手した


電源投資の予見性低下 国の支援策の行方は?

特にこの10年の間、電源投資は停滞の一途をたどってきた。2016年の小売り全面自由化以降、小売り電気事業者には供給力確保義務が課されたものの、実際の調達は限界費用ベースの短期市場(JEPXスポット市場)に偏重。FIT(固定価格買い取り制度)による再生可能エネルギーの拡大もあり、燃料調達の予見性が著しく損なわれたほか、稼働率の低下で既存火力が不採算化。その結果、多くの電源が市場から退出する事態を招いた。

昨年には供給力(kW)を確保する仕組みとして容量市場の実需給期間が始まったが、新規の電源投資はおろか、退出に歯止めをかける効果すら不確かだ。原子力を含め大型電源の建設や運営には、長期的な資金調達が必要であり、その予見可能性がファイナンスに大きな影響を与える。原発を巡る規制リスク、そして脱炭素化社会への移行と経済性の低下という火力を巡る不透明感が増す中で、ファイナンスの観点からも電源投資環境は厳しさを増す。

WGでは、安定供給と脱炭素化の両立を目指し、電源投資環境の整備を検討事項の柱の一つに据えている。具体的には、燃料調達の予見性を高めるため、先物市場や先渡し市場、相対卸取引などによる中長期取引を活性化することや、さらには電力投資に対するファイナンスを円滑化するための支援などが検討されることになる。

これまで市場依存を許容してきた小売り事業者に対しても、より長期の契約期間の取引を求めるなどの規律を強めていく方向だ。だがこの効果の程については、小売り事業者側から懐疑的な声が聞こえてくる。

【東邦ガス 山碕社長】ガス事業を主軸に新事業への投資を加速 将来の成長への礎築く

新たな中期経営計画のスタートと時を同じくして4月1日に東邦ガス社長に就任した。

奇をてらわず、地道に愚直に仕事に向き合う姿勢を貫き、将来にわたって顧客の信頼を獲得し得る企業風土を醸成し成長し続けるための礎を築く。

【インタビュー:山碕聡志/東邦ガス社長】

やまざき・さとし 1986年名古屋大学経済学部卒、東邦ガス入社。2107年執行役員、20年常務執行役員、22年取締役専務執行役員などを経て25年4月から現職。

井関 4月1日付で社長に就任しました。どのような打診があったのでしょうか。

山碕 1月上旬に冨成義郎・前会長(現相談役)と増田信之・前社長(現会長)に呼ばれまして、「そういうことで、よろしく頼む」という話がありました。突然のことでしたし、私としては覚悟を固める時間が必要でしたので「ちょっと考えさせてもらいたい」と返答し、翌日「改めてよろしくお願いします」と承諾の意向を伝えました。

井関 東邦ガスに入社した経緯をお聞かせください。

山碕 経済学部を卒業し、技術的な素養があったわけではないので、最初からガス会社に就職しようと決めていたわけではありませんでした。「BtoB」の企業は何をしているのかあまりイメージできなかったので、金融機関やガス会社など一般消費者向けにサービスを提供している企業を中心に活動していました。最終的な決め手は、地元への愛着とこの地域の発展に貢献したいという気持ちであったと記憶していますが、その思いは今も変わりません。

井関 入社後はどのようなキャリアを歩んできましたか。

山碕 事務系の社員はまず、営業現場に配属されることが多く、私もそうでした。その後は企画、財務、営業と三つの部門に籍を置くことが多かったです。若い頃には、日本エネルギー経済研究所に出向したり、研修として10カ月ほどアメリカに滞在したりといった時期もありました。


実直に取り組む大切さ 最初の配属先で痛感

井関 会社人生で最も印象深かった仕事や出来事はありますか。

山碕 何と言っても入社直後に営業部門に配属され、社員として初めてお客さまと接点を持った時ですね。東邦ガスという会社がどのように見られているのか肌で実感し、まっとうに仕事に取り組んでいかなければならないと決意を新たにする機会となりました。

井関 それは、公益事業者としての責任感が芽生えたということでしょうか。

山碕 それももちろんありますし、決められたことに実直に取り組むということが当社の社風であるということを実感したことが大きいですね。仕事を進める上で問題が起きたとしても、テレビドラマのような奇想天外な解決策などはありません。日々の仕事にしっかりと取り組むこと、そしてお客さまに真摯に向き合うことの重要性など、当たり前のことに地道に愚直に取り組む大切さを感じました。

知多火力の完成予想図。同社初の大型電源となる

井関 カーボンニュートラル(CN)やエネルギーの自由化など、事業環境は目まぐるしく変わってきましたが、安定供給の大切さが改めて認識され、都市ガス会社にとっては天然ガスの普及拡大が、引き続き重要な取り組みとなりそうです。

山碕 その通りですね。当社に与えられている社会課題といいますか、求められている期待はさまざまあります。その時その時で比重の軽重はありますが、これまでも安全・安心、安定供給性、経済性、直近ではCNへの貢献を評価されてきたのですから、今後もどれか一つに偏るのではなく、多角的な視点を持ち、S+3E(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合)のバランスを常に意識しながら取り組んでいかなければならないと思います。

少し前までは、水素や太陽光だけでCNを実現できるという風潮がありましたが、手掛けている側からすればそう簡単なことではありません。CNに向けた世の中の動向が読み切れず、ガスや火力発電への投資を決定しにくい時期もありました。今は国の政策、米国や欧州の情勢を見ても、一時のCN一辺倒から様相は変わってきたという印象です。とはいえ、50年を見据えていろいろ手を打っていかなければならないことに変わりありません。一足飛びにCNを目指そうとすると、S+3Eのバランスを損なうマイナスの事象が起きてしまいますので、その移行期に何にどう取り組むかの議論が引き続き重要だと考えています。

【中国電力 中川社長】脱炭素化をリードし産業立地を促進しつつ 地域活性化に貢献する

需要家の脱炭素化ニーズの高まりや、将来の電力需要見通しが増加に転じるなど、事業を取り巻く環境は大きく変化している。

この変化をチャンスと捉え、エネルギー事業者として地域の活性化に貢献する。

【インタビュー:中川賢剛/中国電力社長】

なかがわ・けんごう 1985年東京大学工学部卒、中国電力入社。2017年執行役員・経営企画部門部長兼原子力強化プロジェクト担当部長、21年常務執行役員・需給・トレーディング部門長などを経て23年6月から現職。

志賀 2024年度の通期連結決算について、どう受け止めていますか。

中川 24年度決算については、売上高は総販売電力量の減少および燃料価格の低下に伴う燃料費調整額の減少などが影響し、前年度に比べ減収、経常利益も燃料費調整制度の期ずれ差益の大幅な縮小などにより減益となりました。一方で、燃料価格の低下、原子力発電所の再稼働、投資の抑制や経営全般にわたる効率化への取り組みにより、当初想定を上回る利益を計上したことで、目標としていた連結自己資本比率15%以上への回復を1年前倒しで達成することができました。しかし、有利子負債は増加しており、著しく毀損した財務基盤の立て直しにさらに一層、取り組む必要があると認識しています。

志賀 高い利益水準の要因には、昨年12月23日に島根原子力発電所2号機が再稼働した影響もありますか。

中川 24年度決算では、島根2号機の再稼働により原料費が減少した半面、減価償却費などが増加しましたが、結果的に利益は90億円増加しました。この島根2号機は、電力の安定的な供給に寄与するとともに、燃料価格変動の影響が緩和できることから業績の安定化・財務基盤の強化につながるほか、カーボンニュートラル(CN)に向けても非常に重要な電源だと認識しています。

志賀 25年度の業績見通しについては。

中川 今年度は、市場価格の低下に伴う卸・小売の競争進展や送配電事業の利益の減少によって、二期連続の減益を見込んでいますが、島根2号機の稼働増加により一定の利益水準を確保できる見通しです。とはいえ、足元の競争に加えて、物価上昇に伴う資機材の調達費用の増加や、米国の関税措置による経済活動への影響の懸念など、先行きに対する不透明感が増しています。引き続き、安定した利益の確保と財務基盤の回復を果たすべく、安全の確保を大前提とした島根2号機の安定稼働をはじめ、電力卸・小売販売事業の収益力強化と市場リスク管理の高度化、およびグループ一体となった経営全般にわたる効率化に取り組んでいきます。


3・11後初の新設基 島根3号機を早期に稼働

志賀 島根3号機の審査状況について教えてください。

中川 今年2月6日の審査会合において、今年度中に原子炉設置変更許可申請に係る一通りの説明を終える予定であること、島根3号機の審査の特徴として、島根2号機を含む先行例を踏襲しているため、現時点では大きな論点はないと考えていることを説明しました。今後、2号機の特重施設(特定重大事故等対処施設)および所内電源(3系統目)の審査に並行して、3号機の審査に対応していきたいと考えています。3号機の運転開始は、脱炭素化の観点でも非常に重要な課題ですし、3・11後、新設では初めて稼働することになりますので、大きなチャレンジだと考えています。

島根原子力発電所の外観

志賀 山口県上関町での中間貯蔵施設に係る立地可能性調査の進ちょくはいかがですか。

中川 島根原子力発電所を運転すれば、自ずと使用済燃料が発生します。同発電所の長期安定運転を維持するためには、再処理施設に搬出するまでの間、使用済燃料を安全に保管することが必要であり、中間貯蔵施設は、使用済燃料貯蔵対策に万全を期すための方策として有効であると考えています。また、中間貯蔵施設の設置検討は、「使用済燃料の貯蔵能力の拡大」というわが国のエネルギー政策にも合致しています。

山口県上関町での調査については、昨年11月に現地でのボーリング作業を終え、現在、ボーリングにより採取した試料を用いて各種分析を行っています。分析結果により調査に要する期間が変わるため、現時点で具体的な終了時期をお示しする状況にはありませんが、慎重に分析を進めていきます。

最新の被害想定を公表 津波で電力・ガスへの影響甚大

【今そこにある危機】林 能成/関西大学社会安全学部教授

いつ起きてもおかしくない南海トラフ地震の対策は進んでいない。

防災強化に向けては、常に「想定外」を考慮し続ける必要がある。

3月31日、政府は南海トラフ地震の新しい被害想定を公表した。最悪の条件では29万8000人が死亡するという大きな被害が示されたが、社会へのインパクトはあまり大きなものとはならなかった。南海トラフ地震という言葉や想定被害の大きさが飽きられてきたと感じる専門家も少なくない。

今回の被害想定は、2011年の東日本大震災の「想定外」を受けて、約10年前の13年5月に試算されたものをアップデートしたという位置付けである。13年に示された被害は死者32万3000人、経済被害214兆円という途方もない大きさであったが、あわせて今後10年で被害を8割減少させるという目標が掲げられた。

しかし今回の推定では死者の減少は1割程度にとどまり、経済被害270兆円へと増加する結果になった。対策が十分には進んでいないことが示されたといえよう。

南海トラフ地震の発生履歴
筆者作成


インフラ復旧長期化か 二次、三次被害への懸念も

南海トラフ地震への社会の関心が高いのは、工場などの集積が進んでいる西日本全域で人的・経済的な被害が大きくなることが懸念されるためである。そして必ず津波をともなう地震となるため、沿岸部に重要施設が立地する電力、ガスのライフラインへの影響も顕著である。これらライフラインが大きく被災して長期間復旧できなければ、被害の連鎖で二次、三次の被害も懸念される。

南海トラフ地震は数百年以内には必ず起こる。これは古文書や地層に残された痕跡から明らかにされた事実である。左頁の表に示すように歴史記録に残る地震で飛鳥時代の西暦684年までさかのぼることができる。南海トラフ地震は紀伊半島沖から駿河湾にかけての領域で起こる「東海地震」と、四国沖の領域で起こる「南海地震」の二つを含む。表に示された南海トラフ地震の発生パターンを見ると、いくつかの特徴的な傾向が見られる。まず、東海地震と南海地震の二つに分かれて起こる例が多い。そして、数年以内に連続して両地震が発生すると、その後は長い間地震が起きないという性質もある。南海トラフ全体で見た地震の発生間隔は短い場合で90年、長い場合では260年以上となっている。

次の地震が前の地震の90年後と仮定すれば、現時点で準備に残された時間は10年しかない。先例よりも短くなる可能性もあると考えれば、「いつ起きてもおかしくない」状態である。 一方、前の地震の260年後であるならば、次の地震は西暦2200年前半となる。これほど先のことであれば、地震対策を最優先と考える人はいない。南海トラフ地震に限らず、地震対策の難しさは、いつ起こるか分からない中で取り組まねばならないことに尽きる。明日起きるかもしれない地震に備える応急対策ではとても防ぎきれない被害でも、数十年先を見据えた施設の移転などの本質的な対策をすれば容易に防げる事例はいくらでもあろう。

磁場予測にAI手法を導入 マイクロ秒への対応も視野に

【技術革新の扉】核融合装置のプラズマ磁場予測/QST/NTT

近年、核融合技術の早期実用化に向けた動きが世界的に加速している。

日本では、研究機関と民間による異色タッグが開発をけん引する。

尽きることのない資源から、安全に巨大エネルギーを創出する技術─。この、夢のような技術は単なる絵空事ではない。海水中に豊富に存在する重水素と三重水素(トリチウム)を原料に、燃料1gで石油8t分に相当するエネルギーを生み出す核融合は、まさに究極の次世代エネルギーだ。1958年にジュネーブ(スイス)で行われた米ソ首脳会談で、それまで軍事機密であった核融合技術が公表されたことをきっかけに、国際的協力体制の下で研究は飛躍的に進展した。

単一・混合モデルでの精度比較

2007年に日米欧やロシア、中国など7つの国・地域が加わる世界最大規模の熱核融合実験炉「ITER(イーター)」がフランスで正式に着工されると、国際的に早期実用化に向けた動きが加速。米国や中国では30年代中の実験炉稼働を表明するなど、核融合技術の覇権争いが激化している。

日本においては、核融合研究の最先端機関である「QST(量子科学技術研究開発機構)」は、欧州との共同開発による超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」(茨城県那珂市)での先進的な実証を重ねており、イーターにも主要な貢献をしてきた実績がある。これらで培った知見は世界最高水準だ。


磁場再構築に時間的課題 複数モデルで可能性拓く

現在核融合炉で主流となりつつある「トカマク方式」では、燃料を加熱して1億℃を超えるプラズマ状態にし、真空容器に直接触れることなく、空中に形成した磁場内に閉じ込める必要がある。QSTはこの磁場を生成するための超電導コイルの設計・製造に加え、コイルによって浮かせたプラズマの制御も担っている。ただ、超高温のプラズマに直接触れて制御することは困難だ。

そこで用いるのが、「プラズマ閉じ込め磁場の再構築」という手法で、真空容器に設置された計測器の信号から位置や形状、プラズマ閉じ込め磁場を高精度で推定する。だが、この手法では、制御に求められる時間と再構築にかかる計算時間の間にギャップが生じる。これまで再構築は物理法則に基づく複雑な方程式を解く解析的手法によって行われていたため、数百ミリ秒の計算時間が必要で、遅くとも数十ミリ秒単位で変化するプラズマ内部の閉じ込め磁場構造の把握には対応できないからだ。

こうした課題に対しQSTは、物理モデルではなくAIによる磁場予測モデルの導入を模索。20年には最先端の光・情報通信技術を持つNTTと連携協定を締結し、プラズマ閉じ込め磁場予測技術と最先端AI技術を融合することで、数ミリ秒単位での磁場予測を可能にする独自AI手法の確立にこぎつけた。

磁場制御と混合専門家モデルの概要


この過程には文化や専門性の違いを乗り越える地道な調整があった。QST那珂フュージョン科学技術研究所先進プラズマ研究部次長の浦野創氏は「国の研究機関と企業法人の共同研究であり、専門分野も異なるため、密な打ち合わせを通じて共通理解を築いていった」と振り返る。

AIモデルの構築にも紆余曲折があった。当初は単一モデルでの磁場予測を目指したが、温度や位置、形状が絶えず変化するプラズマには対応できず、複数モデルによる「MoE(混合専門家モデル)」の導入にかじを切った経緯がある。 こうした試行錯誤が実を結び、現在の計測情報から、これまで把握が困難であったプラズマの「内部」を高精度に捉える技術的見通しが立った。さらに、過去のデータを統合して先の不安定さを予見できるようになったことで、マイクロ秒(1秒の百万分の一)単位で変化する電流や圧力分布の予測も視界に入ってきた。


実証終え次フェーズへ 不安定性制御の高度化に力

今年3月には、「JT-60SA」での実証に成功しており、AIモデルによる数ミリ秒単位のリアルタイム予測に基づき、プラズマの位置・形状を高精度で再現した初の事例となった。核融合の実現に向け、着実に歩みを進めている形だ。   

今後に関しては、「JT-60SAでの加熱実験を継続し、プラズマの電力分布などの予測により、短いタイムスケールで成長するプラズマの不安定性に対応できるよう技術開発を進めていく」(浦野氏)方針。「できるだけ早期に、商用化を見据えた原型炉(DEMO)に必要な予測精度を達成する」と意気込む。究極の次世代エネルギーを巡る国際競争が激化する中で、両機関の異色タッグによる最先端研究の存在感は一層際立っている。

【小林鷹之 自民党 衆議院議員】「電力は最も重要な産業」

こばやし・たかゆき 1974年千葉県生まれ。99年東大法学部卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。2003年ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。12年の衆院選で千葉2区から初当選。経済安全保障担当相などを歴任。24年の自民党総裁選では9人中5位に。当選5回。

経済安全保障担当相などを務め、当選4回ながら昨年10月の自民党総裁選に出馬した。

日本の経済力を高めるべく、現実を直視した戦略的なエネルギー政策を訴える。

千葉県市川市生まれ。父は商社マン、母は専業主婦というサラリーマン家庭で育った。学校から帰ったらランドセルを放り投げ、日が暮れるまで遊ぶわんぱく少年だった。

開成中学・高校に進学し、バスケ部に所属。中学時代には生徒会長を務めた。運動会の棒倒しでは敗れたクラスの生徒が丸刈りになる伝統があり、初めて坊主になった。社交的なタイプで、開成の男子校らしいバンカラな雰囲気を満喫した。

とはいえ、一つだけ心残りがあった。「進学校なので、高2の秋でバスケ部を引退した。不完全燃焼だったので、スポーツで勝ちたいという気持ちが残った」。そんな中で心をひかれたのが、全国トップクラスの実力を誇る東京大学ボート部だった。1年浪人後の合格発表では各部が胴上げのために寄ってきたが、自らボート部に近づき「合宿所に入れてほしい」と頼み込んだ。日本一にはなれなかったが、4年時にはキャプテンとしてチームをけん引した。

強い達成感を得たものの、本気でボートに打ち込んだ代償があった。就職浪人を避けられなかったのだ。「朝から晩まで練習の毎日。8人乗りのボートに乗っていたが、1人いないとバランスが崩れるので練習にならない。昼間に就活に行くこともできなかった」。4年秋に引退してから、翌年の公務員試験に向けて猛勉強。同級生に1年遅れて財務省に入省し、教育係は高校の後輩だった。

政治家を志すまでには、二つの転機があった。一つはハーバード大学ケネディスクール留学中の経験だ。発展途上国のリーダーが頻繁に演説に訪れたが、ペルーのトレド大統領の演説が印象に残った。「愛する母国を貧困から助け出す、という強烈な使命感に衝撃を受けた」。もう一つは、日本の地位低下だ。小泉純一郎政権以降、毎年首相が変わり、世界での存在感は失われていた。2009年には政権交代となり、日米関係は極度に悪化。強い危機感を覚え、当時の自民党・谷垣禎一総裁に手紙を送り、次期衆院選での立候補を決めた。「結構長い手紙だった。後に谷垣さんからは『巻紙だったよね』と言われた」と笑顔を見せる。

日米関税交渉で再浮上 アラスカLNGは有望か

【多事争論】話題:アラスカLNGプロジェクト

米政府はこれまで、日本にアラスカLNG参画を強く呼びかけてきた。

政情と利害が複雑に絡む中、どのような関わり方が最適解となるのか。

コスト増&政策変動リスク大 現時点での参画判断は困難

視点A:柳沢崇文/日本エネルギー経済研究所研究主幹

米国側の構想は、アラスカ州北部のガス田から南部に縦断する約1300㎞のパイプラインと、同州南部に液化基地を新設するものである。液化能力は年間2000万t、稼働開始は2030年代初頭、事業費は基本設計前の金額として440億ドルを見込む。同金額は、パイプラインの建設費を必要としない米国における他のLNGプロジェクトの2倍超にも及ぶ。アラスカ州では原油用の縦断パイプラインが1970年代から稼働しているが、新たにガス用のパイプラインを建設する計画となっている。また、凍土の溶解防止のための特殊な鋼材や、生態系保護の観点から陸から浮かして敷設することなどが求められ、その分コストも高くなる見込みである。

トランプ大統領は3月の施政方針演説の中で、日本と韓国がアラスカ州のガスパイプライン事業で提携を希望している旨を発言したが、真偽が定かでないことに加え、基本設計が提示されない段階での検討は困難である。なお、北部のガス田付近に液化基地を建設する案ではなく、南部への縦断パイプラインを建設する案を米国が主張する背景には、ガスの一部を州最大の人口を誇るアンカレッジなど南部の都市向けに輸送したい意図がある。

仮にトランプ政権後に民主党政権となり、環境規制を強化した場合、対策コストが増加し、事業停滞リスクがあるほか、巨額の事業費が今後の基本設計次第でさらに膨らむリスクもある。たしかにアラスカLNGに対する輸出許可は、民主党バイデン政権下の2023年に出されたが、作年に同政権が(アラスカLNGを含めた許可済み案件は対象外としつつも)輸出許可の一時停止措置を行ったことを踏まえると、民主党政権になった場合、環境規制の強化が行われてもおかしくはない。


メリットより不透明さが先行 求められる政治的確約

このような不透明性の高い案件に対し、日本企業が事業性に基づく参画判断を行うのは現時点で困難である。また北極圏のガス開発に対しては、日本の一部の銀行を含めて自主制限しているところも多く、ファイナンスのハードルも高い。日本企業としては、既にテキサス州やルイジアナ州において推進しているLNG事業を優先したいと考えるのが自然である。また米国の他のLNG事業者にとっても、トランプ政権が未開発のアラスカLNGを優先的に主張する現状は販売先確保といった点でも必ずしも好ましくはないだろう。

一方で、アラスカLNGにも輸送面でのメリットはある。現在、テキサス州やルイジアナ州からのLNGを日本向けに輸出する場合は、パナマ運河経由では約30日、喜望峰周りでは約40日かかるが、アラスカからは10日弱での輸送が可能と言われている。ただ、日本は既にカナダ西部からアラスカと同程度の輸送日数のLNGを年内に輸入開始予定であり、輸送面のメリットのみで未開発のアラスカLNGへの参画を決断するのは難しい。

このように商業的な観点では、現時点で日本企業がアラスカLNGへの積極的な関与を決断できる状況にない。そのため、米国側から基本設計に基づく事業性に関する精緻なデータやさらなる利点が提示される必要がある。

一方、政治的な観点では、アラスカLNGを促進する政府・企業関係者のトランプ政権に対する影響力は大きいと言われている。実際にトランプ氏は1月の再就任初日にアラスカLNGの開発促進を掲げる大統領令に署名し、2月の日米首脳会談でもアラスカのガス開発に言及している。また、台湾の政府系企業が3月にアラスカLNGに対する投資及びLNG購入に関する意向表明書に署名したが、その背景には、米国からの防衛支援を期待する面もあるのではないかと指摘される。ただし、それでも現段階では拘束力のある署名にはなっていない点に注意する必要がある。

仮に日本も米国との間の「政治案件」としてアラスカLNGを推進するとなった場合は、日本企業のみが巨額の資金及びリスクを負担するのではなく、JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)の開発支援やJBIC(国際協力銀行)によるファイナンス支援といった日本政府の支援も必要になる。

それでもなお、米国の政権交代に伴う環境規制の強化といった政策変更リスクは残る。「アラスカLNGは既存案件として今後の政策変更の対象外とする」といった米国側からの政治的な確約が欲しいところだが、現実的には難しいだろう。

このようにアラスカLNGは不透明性が高く、仮に非関税障壁の見直しへの交渉カードになるとしても、現時点では開発参入の決断は困難であると言わざるを得ない。

やなぎさわ・たかふみ 2009年に三井物産入社、LNG事業等に従事後、21年に日本エネルギー経済研究所入所。22年に日本の資源外交に関する研究にて東京大学より博士号(学術)。著書に『現代日本の資源外交』(芙蓉書房出版)。

【エネルギーのそこが知りたい】数々の疑問に専門家が回答(2025年6月号)

LPガスの補助金制度/東京都の無電柱化

Q 電気・都市ガスと同様に、LPガス料金への補助金制度はありますか。

A LPガス料金高騰対策支援金事業は、電気や都市ガスの料金支援より遅れて始まりました。電気・都市ガスは、2022年10月に策定された総合経済対策に負担を直接的に軽減する対策が盛り込まれ、23年1月に小売り事業者を通じた料金支援が始まったのに対し、LPガスは配送合理化補助金で販売事業者の業務効率化を図り、間接的に料金値下げを促す形式でした。

理由について当時の西村康稔経済産業相は、LPガスの値上がり幅が電気・都市ガスと比べて低いことや、LPガス販売事業者の大半が中小零細事業者であるため、直接支援の実施には事務負担が大きいことを指摘しています。しかし世論の高まりや政治的な圧力もあって政府は方針を転換。22年11月に地方創生臨時交付金をLPガス料金支援に活用できるようにしました。23年3月には同交付金の増額に伴い、支援対象として明確に位置付けました。その後は電気・都市ガスと同様の支援が定着しています。料金支援は基本的に都道府県の事業として実施され、一部市町村でも事業化しています。

自治体ごとに事業の実施期間、割引額などに違いはありますが、料金の値引きを行うLPガス販売事業者に値引き分の支援金を支給するのが一般的です。例えば神奈川県では、昨年までに5回実施しており、直近の第5期事業は、対象期間を昨年8~10月の3カ月に設定。支援額は、一般消費者1件当たり一律1500円(500円×3か月)でした。また販売事業者に15万円の事務経費を支給しました。物価高に悩む消費者にメリットがある料金支援ですが、自治体ごとに申請書類や手続きが異なるため複数地域で事業を展開する販売業者にとって事務負担となっています。

回答者:志村 強/月刊LPガス編集長


Q 東京都の無電柱化の取り組みの進ちょく状況を教えてください。

A 東京都では、「都市防災機能の強化」「安全で快適な歩行空間の確保」「良好な都市景観の創出」を目的に1986年度から無電柱化に関する計画を策定し事業を進めています。

政治・経済・文化の中心的な役割を担うセンター・コア・エリア内(おおむね首都高速中央環状線の内側エリア)の都道はおおむね整備が完了し、現在、2021年6月に策定した「東京都無電柱化計画(改定)」に基づき、第一次緊急輸送道路や環状七号線の内側エリアなどで重点的に整備を進めています。

整備対象となっている計画幅員で完成した歩道幅員2.5m以上の都道における地中化率は、23年度末に47%となっています。

無電柱化事業は、設計・手続きなどの現況調査、電線共同溝本体の設置工事、ケーブルの入線と引込管工事、電線・電柱の撤去、舗装の復旧工事という順序で進めます。既に水道管、ガス管などが埋設されている道路空間内に電線共同溝を設置するため、さまざまな調整が必要となることから、道路延長400mで一般的に約7年程度を要します。東京都では、昨年度から、地下埋設物の位置や設計の3Dデータ化に取り組んでおり、これらを活用し、設計段階から埋設企業者などとの間で情報を共有することで、施工・調整の効率化を図っています。 また、コスト縮減に向けた技術検討会を設置し、新たな管路材料の採用による材料費の削減・施工性の向上や特殊部の小型化などの検討を進め、低コスト化を図っています。  

引き続き、安全・安心で魅力ある東京の早期実現に向け、都内全域の無電柱化を着実に推進していきます。

回答者:東京都 建設局道路管理部安全施設課