【おやおやマスコミ】井川陽次郎/工房YOIKA代表
原子力関連の会合でパネル討論に出た時のことだ。原子力発電所の再稼働に向けて理解を得るにはどうすべきか、と問われた。
「女性の活躍に期待する。ついては発電所長などリーダーに女性をどんどん登用すべきだ」と申し上げた。「再稼働が難航している今こそ」。そう強調した。
人に思いを伝えるコミュニケーション能力は、概して女性の方が高い。そう考えるからだ。
フィンランドを訪問した際に見かけた原子力関連の冊子にも、同じ趣旨の記述があった。同国は世界で初めて、使用済み核燃料の処分地を決めたことで知られる。どう対話を結実させたか。理由の一つとして、女性たちの積極的な役割が紹介されていた。
日本で、原子力発電所や関連企業、研究機関を女性が率いる例は聞かない。おっさんばかりだ。
ところが、である。女性パネリストから叱責された。「今は、どうせ発電所が止まっている。だから女性に任せとけばいい、というのか」。予想外のツッコミで、その後はシドロモドロになり、会場の失笑を買った。
朝日2月5日の一面トップ「五輪組織委、森会長、発言撤回し謝罪」「女性が多い会議、時間がかかる」に、当時を思い出した。
記事によると、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が3日の日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、「『女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言される』などと発言した」という。
「国際オリンピック委員会の広報担当者は、取材に『森会長は謝罪した。これで問題は終了したと考えている』とコメントした」とあるが、朝日は容赦しない。社会面で「撤回で終わり? 強まる逆風 性差別に『怒り』、海外メディア批判」と展開する。
前日の報道を見ると、実は、だいぶ雰囲気が違う。
問題の会議は記者たちに公開されており、読売4日朝刊は社会面ベタ記事。同日の朝日朝刊社会面「JOC会合、森氏『女性がたくさんいる会議、時間がかかる』」に至っては、発言に「評議員からは笑い声もあがった」である。
同日の毎日社会面「森会長が私見」には、「組織委の7人の女性理事にも言及し、『みなさんわきまえておられる。競技団体ご出身で、国際的に大きな場所を踏んでおられる方ばかり。話も的を射ており、役立っている』とも述べた」とある。
本当に、これは最重要のニュースなのだろうか。
森氏を袋だたきする紙面を横目に、例えば読売5日朝刊を見る。社説「車の半導体不足、『産業のコメ』確保に知恵絞れ」は「日本の半導体産業の再生も課題だ」と主張する。重要な視点である。
地味だが、同日の日経朝刊10面「LNG 日本へ初輸出 タイ石油公社」も見逃せない。
「タイ石油公社が火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)を初めて日本に輸出したことが4日、分かった。他国から輸入したLNGを再輸出した形。日本は冬季でエネルギー需給がひっ迫する一方、タイは比較的余裕がある」
電力供給が危機に陥った日本の今冬の状況を考えれば、ニュースの軽重は明らかだ。
そして、電力の安定供給に資するのは原子力発電所の再稼働である。出よ! 女性のリーダー、と書くと、炎上するだろうか。
いかわ・ようじろう デジタルハリウッド大学大学院修了。元読売新聞論説委員。















