【需要家】米国は電力供給戦略を転換 日本が取るべき策は

【業界スクランブル/需要家】

「安価で安定的な電力を潤沢に供給できることが21世紀の国家繁栄の前提条件」。3月に開かれた世界最大のエネルギーイベントCERAWeekの底流に流れるメッセージだ。

基調パネルで主催者のダニエル・ヤーギンと対談した世界最大の投資ファンド、ブラックロックCEOのラリー・フィンク氏は、急増するDC・AI向けの電力需要を満たす供給拡大について「4年前には再エネ電力が必要と言われたが、2年前には再エネが望ましいとなり、今や何でも良いからもっと多くの電力を……に変わった」と様変わりを指摘。さらにエネルギーは現実的なアプローチで、コスト低減と安定供給の確保が必要だとし、天然ガスは少なくとも向こう50年以上必要で、原発新設を進める中国と対抗する上で米国も確固とした原子力戦略が必要と発言した。

日本でも北海道でDCや半導体工場の建設が相次ぐが、全て稼働すると現状の電力供給能力では足りず、先日安全審査に事実上合格した泊原発3号基が予定通り2027年に稼働して、何とか供給が間に合うという綱渡りの状況である。北海道でDCを建設中のソフトバンク1社だけでも将来的に受電容量を1GWまで増やす構想というが、泊3号基(0・9GW)の総出力を充てても足りない計算となり、さらなる安価・安定電力供給の確保が至上命題になる。

米国が言うように電力の安価・安定供給確保が21世紀の国力の源泉になるとしたら、100GWもの原発新設計画を進める中国との国際競争に負けないために日本が取るべき戦略について、国を挙げて真剣な議論を始める必要があるのではないだろうか。(T)

FIP転と蓄電池併設で業界先駆け 成功例生かした横展開に意欲

【エネルギービジネスのリーダー達】小林直子/CO2OS代表取締役社長

社名の末尾「S」に、荒野のような太陽光O&M業界で強く生き残る覚悟を込めた。

多角的で安定した戦略を描く小林社長が狙うのは、FIP転換と蓄電池併設事業の拡大だ。

こばやし・なおこ 京都府出身。2003年、立命館大学文学部哲学科卒業。外国語教室や広告代理店での営業職を経て、12年に中国系太陽光モジュールメーカー大手・インリー・グリーンエナジー日本法人に入社し、法人営業を担当。15年、CO2Oに入社。23年5月にCO2OSへ転籍、同年10月より現職。

再生可能エネルギー投資を手がける大和証券グループの大和エナジー・インフラがCO2Oの事業を承継し、2023年5月に発足させたCO2OS。北は宮城県から西は宮崎県まで、全国15の市町に電気主任技術者や電気・土木施工管理士などの有資格者を配備した拠点を構え、太陽光発電所の設計施工から運営までを一貫して担う体制を築いている。陣頭指揮を執るのは、営業畑を長く歩んできた小林直子社長だ。「ストック型のO&M(運営・保守)やアセットマネジメントと、スポット型の工事やデューデリジェンス(DD)の両輪で経営していく」と語り、多角的で安定した収益モデルの確立に注力している。


多業種で営業力磨く 再エネの可能性見出す

技術力を売りとするCO2OSの経営陣にあって、小林氏の経歴はやや異色だ。大学では哲学を専攻し、03年の卒業後は外国語教室に就職。滋賀県のスクールで店舗運営を任された後、営業成績が評価され東京都内のエリア責任者に就任したが、会社が倒産。07年には広告代理店に転じ、法人営業を経験した。

エネルギー業界の門を叩いたのは12年。中国系太陽光モジュールメーカー大手インリー・グリーンエナジーの日本法人に入社し、法人向け営業に従事した。「FIT(固定価格買い取り)制度の導入直後で、再エネビジネスの成長性を肌で感じた」と振り返る。大手企業を中心に営業を展開し、製造現場へ足を運ぶ中で、「工場監査では温度管理など細かい質問を受けることも多く、技術的なバックボーンの重要性を痛感した」と語る。

15年には、インリー社と関係の深かったCO2Oに創業メンバーとして参画した。「FIT価格は将来的に下がり、パネル販売量は落ちる。一方、O&Mの需要は高まっていく」。そうした見通しを描いていた創立者が小林氏の営業力に注目し声をかけたという。

しかし、当時の太陽光O&M事業は市場が未成熟で、創業間もない同社の受注は困難だった。そこで、収益の安定化を図るべく、単発対応が可能なDD事業に着目した。DDは、施工前や完工時に、発電所のリスクや技術的要素などを調査し、資産価値を評価する。投資家側からは、プロジェクトファイナンスを組むに当たり、発電所の健全性や事業の継続性について、第三者の立場から評価する需要が高まっていた。「当社は、単にリスクを洗い出して評価を終えるのではなく、その改善策までアドバイスしている。設計施工から運用までを一貫して手がけているからこそ、発電所の課題を抽出し、投資家に対して同じ目線で説明できる」と強みを語る。

草刈り一つとっても、放置すれば発電量の低下につながる重要な作業であり、事業計画上の必要コストに含めるべき項目だ。業界外からは見落とされがちな点を、投資家に丁寧に伝える橋渡し役を担っている。DDによる評価診断の実績は、23年7月時点で累計5・5GWに達した。こうした信頼の積み重ねが、本命と位置づけていたO&Mの受注増加へとつながり、全体の業績を押し上げている。

今後の戦略として小林氏が見据えるのは、FITからFIP(市場連動価格買い取り)制度へ転換し、蓄電池を併設する関連事業の展開だ。CO2OSはこの分野にいち早く着目し、23年には東芝エネルギーシステムズなどと3社共同で、「さつまグリーン電力2号太陽光発電所」(鹿児島県さつま町)のFIP転換と蓄電池併設を実施。案件開発から施工までを手がけた。FIP転換と蓄電池併設の実例がない中、プロジェクトマネージャーとして事業を推進したのが小林氏だった。「収益面でベースシナリオとワーストシナリオを試算した。赤字にはならないと判断し、実験的に始めて成功事例をつくり、横展開していく方針を3社で共有できた」と話す。同発電所の蓄電池のO&Mも担っており、今後は他設備での実績を積むため、O&Mの体制を整備するととともにDD事業にも取り組む。


強く生き残る企業に 自らの思いSに込める

同社の設立に当たり、社名の末尾に付けられた「S」には3つの理念が込められている。①Second Stage(次なる成長ステージ)、②Self Standing(自立した運営)、③Synergy(グループ間シナジー)―だ。社長に抜擢された小林氏は、就任時に自らの想いを込めた言葉として「Survive Strongly」を掲げた。「O&M業界は競争が激しく、荒野のような状況に立たされている。だからこそ強く生き残ろうという意味を込めた」という。

座右の銘は「成功か、大成功しかない」―。柔らかな語り口で親しみやすい人柄と、併せ持った芯の強さで業界をけん引していく。

【再エネ】廃棄パネル大量発生へ 安全対策は万全か

【業界スクランブル/再エネ】

再エネの代名詞ともいえる太陽光発電は、東日本大震災以降、分散型電源のニーズの高まりやFIT創設による価格メリットなどを背景に着実に増加してきた。太陽光パネルの寿命は一般的に20~30年といわれ(税制上の耐用年数は17年)、2030年以降に大量のパネルの廃棄が発生すると見込まれている。

リサイクル方法はメーカーや型式により異なり、近年普及が進む中国製品は特に複雑な処理を要する場合がある。政府はこうした太陽光パネルのさまざまなリサイクル技術の普及に向けてガイドライン作成や補助金交付を行っているものの、依然としてリサイクル事業者数は不足している。加えて、10‌kW以上の使用済太陽光パネルについては処分費用の積み立て制度が設けられた一方で、10‌kW未満の太陽光パネルは設置者に処分が委ねられている状況だ。

パネルが劣化する要因には配線の腐食やパネルの汚れ、周囲の建物の影響による高温化などがあり、最悪の場合は火災に発展する可能性もある。既にメガソーラーでの火災発生時に感電の危険性から消火作業が思うように進まない事例も報告されている。木造で密集する住宅エリアで、その安全対策を各家庭に委ねるだけで大丈夫だろうか。

長く安全に利用するためには、定期的な点検、発電データの記録による異常検知と適切なメンテナンスが欠かせないが、PPAで導入した設備を期間満了後に処分しないケースも多いだろう。空き家は年々増加しており、今後さらに管理者が不在になる住居も増える。今後大量に発生するパネル劣化に備えて、リスクや安全対策の徹底がなされるべきだ。(K)

正念場を迎えた核開発交渉 軍事衝突は回避できるのか!?

【原子力の世紀】晴山 望/国際政治ジャーナリスト

イランの核開発を巡る米国との交渉が正念場を迎えている。

イスラエルによる軍事攻撃の脅威も高まる中、残された時間は少ない。

トランプ米大統領は3月初旬、イランに核開発での交渉を呼びかけた際に、交渉期間を「2カ月間」と区切り、成果が出ない場合は軍事攻撃も辞さない構えを示した。交渉は、米国とイランを仲介した中東の小国・オマーンの首都マスカットで4月12日に実施されたのを皮切りに、ローマで第2回会合、再びマスカット会合と続いた。だが米国は、交渉中もイランに追加経済制裁を科すなど「最大限の圧力」を続けた。それにイランが反発し、4回目の会合が流れるなど迷走気味だ。

米国の狙いは、イランの核兵器取得を防ぐことにある。イランはすでに核爆弾6~7発分に相当する高濃縮ウランを保有。濃縮度は60%にとどめているが、これを兵器級の90%台に引き上げるのは、わずか1週間の作業で足りる。核兵器取得には、この高濃縮ウランを爆弾に加工する作業がさらに必要となる。米国は第二次世界大戦中の1945年、高濃縮ウランを取得してから9日間で核爆弾を組み立てた実績がある。多くの専門家は、イランも1カ月あれば核爆弾の製造が可能と見ている。

イランはこれまで「核兵器開発を目指していない」と重ねて説明してきた。ウソをついているようにも見える。だが、米情報機関トップのギャバード国家情報長官は3月末にあった米議会上院公聴会で「イランは核兵器を開発していない。最高指導者のハメネイ師がそれを認めていない」と述べ、イランの主張に「お墨付き」を与えた。

原子力マークのあるイランのリヤル紙幣


裏付けられた秘密核開発 米国は軍事行動に慎重姿勢

米情報機関がそう考えるのは、ハメネイ師が2003年に核兵器開発を禁じる「ファトワ(宗教令)」を出したからだ。それ以前のイランは、大規模な核兵器開発計画に取り組んでいた。

だが、反体制派が02年に暴露し、「核の番人」と呼ばれる国際原子力機関が03年2月からイランで徹底的な核査察を開始、秘密核開発の存在が裏付けられた。その翌月、ブッシュ(子)米政権はイラクへの軍事攻撃を始め、フセイン政権を倒す。ブッシュ氏は、イランをイラク、北朝鮮とともに「悪の枢軸」と呼び、敵視した人物だ。イラクの次はイランではないか。そんな危機感が高まる中、ファトワが発せられた。ハメネイ師(86)の存命中は効力を持ち続ける。

イランは79年のイスラム革命以後、イスラエルなど周辺諸国からの攻撃を防ぐため「前線防衛」に力を注いできた。レバノンのイスラム組織「ヒズボラ」、パレスチナ自治区ガザのイスラム組織「ハマス」、そしてシリアのアサド政権などだ。だが、頼りとするこれらの勢力は24年、イスラエルからの攻撃などにより大幅に勢力を落としたり、瓦解したりした。

イラン自身も傷ついた。昨年4月と10月に二度にわたり弾道ミサイルやドローンでイスラエルを攻撃したものの、多くは撃墜され、思ったような成果を得られなかった。さらに、イスラエルの報復攻撃により、防衛網がいとも簡単に破られてしまう屈辱を味わった。

イスラエルは、何度となくイランは核兵器取得に向けた「ルビコン川を渡った」と批判し、攻撃する構えを示してきた。1981年にはイラクのオシラク原発、2007年にはシリアの原発を空爆して破壊した実績もあり、次はイランだと見定めた。だが、米国は後述するさまざまな理由から強く反対、見送ってきた。

昨年、二度にわたる報復攻撃でイランに「圧勝」を納めたイスラエルでは、またも軍事攻撃の機運が高まっている。米紙ニューヨーク・タイムズによると、特殊部隊の投入や大規模空爆で、核施設を徹底的に破壊する案を練り、米国に協力を要請した。

だがトランプ政権は、現時点という限定付きながら、軍事行動よりコストの安い交渉を選んだ。一方で軍事攻撃の選択肢も温存、3月末からイランに近いインド洋のディエゴガルシア島に爆撃機6機を配備し、直ちに空爆できる態勢を整えている。


人混みに隠す濃縮施設 現実的な落としどころは?

イランは、アラグチ外相を4月半ば以後、ロシアと中国に派遣し、両国から「軍事行動反対」という言葉を引き出すなど外交努力を続ける。さらに、攻撃を受けても、早期に立ち直れるための手も打つ。ウラン濃縮施設があるイラン中部ナタンツに、新たな地下核施設を整える動きなどがその代表例だ。

濃縮施設は、イスラエルが空爆して破壊したイラクなどの原子炉のような大型施設と違い、町工場並みの小型施設だ。偵察衛星の目を欺くには、監視の厳しいナタンツのような既存の核施設周辺ではなく、首都テヘランなどの「人混みの中に隠す」手もある。

イランと米国の交渉が難航しているのは、交渉を重ねるにつれ、米国側が要求をつり上げていることも一因とされる。米国は当初、レッドラインを「核兵器取得」に置いていた。だが、ルビオ国務長官など政府高官が「ウラン濃縮の全面禁止」「(イスラエルに届く)長距離ミサイルの廃棄」などを求め始めた。

いずれもイランが絶対にのめない要求だ。核開発はイランのプライドそのもので、濃縮はその象徴だ。高額紙幣には原子力のマークが印刷されている(写真参照)。強硬発言は、米国内に多いイラン嫌い勢力向けのポーズである可能性や、ブラフだとの見方もある。バンス副大統領などが、現実的な落としどころを探っているとの分析もある。

米国がイランへの軍事攻撃を避けてきた理由は二つある。一つ目は、イランはすでに多様な核技術を習得済みで、核施設を破壊しても早期に回復できる可能性が高いこと。二つ目は、核武装の正統性をイランに与えてしまう「やぶ蛇」になるとの考えだ。核施設を破壊しても根本的な解決には至らず、かえって事態を悪化させると考えている。

「バザール商法」に例えられるイランの巧みな外交術が勝利を収めるか。それとも、トランプ氏の「最大限の圧力」が功を奏するか。軍事衝突も含め、結果が出るのはもうすぐだ。

【火力】供給力不足への懸念 実態に即した冷静な議論を

【業界スクランブル/火力】

2025年度の供給計画と経産大臣への意見書は、供給力不足への懸念や制度上の課題に言及する内容となっている。しかし、こうした問題は、10年前から発電事業者の間で懸念されていたことを制度設計に反映してこなかった故であり、今さら「新発見」のように語られているようでは、今後の電力システム改革の修正議論にあまり期待を持つことができない。

具体的な話としては、需給バランス全体への責任所在が曖昧なままでは、効果的な対策は講じにくい。例えば近年、端境期に補修調整が集中する傾向が見られるが、大元の原因として自然変動電源の拡大による発電計画の不確実性がある。補修の適切な計画と調整は、発電事業者自身が責任を持って取り組むべき領域だが、根本的な問題解決には、市場全体を見通した制度の修正が不可欠だ。

また、需要家と送配電事業者の連携強化が強調されているが、その前段として、小売事業者が両者の橋渡し役として責任ある対応を果たす必要がある。現行では、広域機関が発電・小売事業者と直接関わろうとせず、一送を介する形となっているため、現場との距離が広がり、当事者意識の希薄さが懸念される。国も制度設計の主導権を握りながら実際の供給責任を民間に委ねる形が続いている。こうした構図の下で、再生可能エネルギーの拡大が供給力の不安定要因になっているにもかかわらず、その是正に踏み込まない姿勢も気にかかる。

今のままでは、再エネ推進と市場化こそ善という固定観念にとらわれ、安定供給という大前提が損なわれかねない。今こそ実態に即した冷静な制度見直しが求められる。(N)

新エネ巡る熱狂は急冷 米国駐在で見た3年の変化

【リレーコラム】竹原 優/丸紅米国会社ヒューストン支店長

米国の中でもエネルギー産業が最も盛んなヒューストンに赴任してから3年が経つ。この間に新エネルギーとして注目されている水素やアンモニアを巡る米国の環境は、めまぐるしく変化してきた。


IRA法が脱炭素の怒涛の流れ生む

赴任した2022年当時は世の中が脱炭素に向けて大きく動いていた頃で、米国も例外ではなく、輸出用のみならず地産地消型のプロジェクトが山のように存在していた。米国のエネルギー産業は上流、中流、下流に細分化されており、各分野を専門とする数多くの企業が大手から中小に至るまでひしめきあっているが、当時は上流、下流、大小を問わず多くの企業が新エネルギー分野に踏み出そうとしており、業界全体の熱気が感じられた。

22年8月に総額4300億ドルにも上るインフレ抑制法案が成立したことでさらにボルテージが高まり、いよいよ多くのプロジェクトが実現段階に入ると目され、この頃の一連の流れは怒涛のような激しさがあった。中には他社に遅れを取らないようにFID(最終投資決定)を待たずに長期リード資材の発注を行う企業も見られた。ところがその後、各社が検討を進めていくにつれ、米国の高いインフレによりプロジェクトコストが当初の見込みよりも大幅に上振れすること、具体的な需要がまだまだ追い付かず将来の見通しが立てられないなど、多くのプロジェクトが中断または撤退となり、新エネルギーを巡る熱狂は急速に冷めていった感がある。もちろん現在でも着実に開発が進められているものもあるが、3年前とは比較にならないほど数が減った。この3年間はまさにジェットコースターのような激しい浮き沈みだった。

話は変わるが、この冬にカナダの国立公園バンフに旅行した際、カナディアンロッキーに鎮座するコロンビア氷河の雄大な景色を観てきた。氷河の末端(最下流)から遠ざかる向きに断続的に立て看板がいくつか設置されていたので中身を見てみると、それぞれの看板は年代ごとの氷河の末端の位置を表していた。つまり、かつて氷河は今よりもっと遠くまで伸びていたことを表しており、過去70年で1㎞ほど氷河が溶けて後退していることが目視できるようになっている。バンフの凍てつくような寒空の下、あらためて地球温暖化の影響を考えさせられた。

トランプ大統領の就任で米国はその時の政権によって政策が大きく変わることを肌で感じているが、長期的に見れば気候変動対策としての脱炭素の流れは変わらないだろう。今後も新エネルギー分野の動きを注視していく。

たけはら・まさる 1995年京都大学卒業、丸紅株式会社入社。財務や原子燃料事業等を担当した後、2022年からヒューストン駐在。

※次回はCOSMO E&P USAの河口光康さんです。

【原子力】最終処分地の選定プロセス 国主導に改めるべき

【業界スクランブル/原子力】

高レベル放射性廃棄物の最終処分場を巡り、NUMOが調査地点の公募を開始してから23年が経つ。最初の高知県東洋町の応募は町長選を経て取り下げとなったが、知事の反対表明が議論を激化させた。2020年には北海道寿都町と神恵内村で文献調査が始まった。既に報告書がまとまったが、知事は現時点で反対の立場を崩していない。23年には長崎県の対馬市議会が調査受け入れの請願を採択したが、市長が市民の理解を得られないとして拒否した。昨年には佐賀県玄海町が国の申し入れを受諾し文献調査が始まったが、知事は新たな負担は受け入れられないと表明している。

最終処分は国の重要課題だが、その選定プロセスで首長に実質的な決定を委ねているのは道理に合わない。調査段階からの交付金も、地方から手を挙げさせようとの意図が見える。関係自治体の首長らは「国が主導すべき」と訴えている。

そこで、国が調査地点を数カ所選び、3段階の調査を絞っていくべきではないか。あくまで調査なので、自治体の同意は必要としない。もちろん首長の意見表明は自由で、特に反対の場合はその理由を十分に尊重して以後の調査活動に反映する。ただ知事が反対なら次の段階に進まないとするのは、国のエネルギー安全保障を危機に陥れ、将来世代に負担を強いる。交付金は、早くても3段階目の精密調査段階から、本来なら建設地点の決定後に支給するべきだ。建設地の最終選定は、国会が法律で定めるとしてはどうか。

選定までの全国的な理解活動は重要で、特に電力の大消費地からの謝意表明、目に見える行動が欠かせない。(T)

【シン・メディア放談】風車落下と大規模停電 再エネ再考にはつながらず?

〈エネルギー人編〉電力・石油・ガス

インパクトが大きいニュースが続いたが、日本のメディアは淡白な報道が目立った。

─秋田市新屋町の海浜公園で風力発電設備から羽根が落下。近くにいた81歳の男性が亡くなった。

石油 これは相当揉めるだろうね。ブレードはFRP樹脂という素材を使用しているが、見た目では劣化が分かりにくいようだ。温度変化や風雪などで、目視や打音では感知できない可能性もある。発電所には、同じ風車がずらっと並んでいる。20mくらいの風で折れたら、周辺住民は不安で仕方がないだろう。風車の落下事故は過去にも何回か起きているが、死者が出たのは初めて。とにかく、原因究明が急務だ。

ガス 死者が出たというのは重たい事実だ。もしかすると、既設風力の規制が変わるかもしれない。例えば、風車から一定距離が立ち入り禁止区域になれば、用地確保などが大変だ。周辺には風車見学が人気の公園がある。

電力 メディアは事故直後こそ盛んに報じたが、すぐ下火になった。今は秋田のローカル局や地元紙だけが追いかけている感じだ。それにしても、原子力で死亡事故が起きれば脱原発だと騒ぎ立てるだろうに、風車で人が亡くなっても「再エネ政策の見直しを!」とはならない。あくまで事故原因の追究という枠に収まっている。

石油 再エネよりも原発関連のニュースの方が書きやすいのだろう。事業者や原子力規制委員会からしっかりとリリースが出るからね。

ガス これまで風力に対する反対理由は、主に景観維持と野鳥保護の二つだった。今回の事故で、安全性が新たに加わることになる。再エネ主力化に向けてはネガティブな要因だ。

電力 役所が原因究明のワーキンググループなどを作ったとしても、再エネ主力化にブレーキがかからない結論に終わるだろう。政策全体に影響を及ぼすことはなさそうだ。


イベリア半島特有の事情 日本で起きる可能性は

─スペインとポルトガルで発生した大規模停電も驚いた。

電力 これも日本では、停電発生と復旧の事実を淡々と伝えただけだった。原因は究明中だが、再エネが原因だという説が根強い。スペインは風力と太陽光が供給全体の70%余りを占める。急激に太陽光の出力が落ち、周波数に悪影響を及ぼしたのではないか。さらにイベリア半島と欧州の他地域の電力相互接続容量の割合は、わずか2%だという。「陸の孤島」となっていて、急激な変化に対応できなかったのだろう。

ガス 停電が起きた日は、日中の出力の7割程度が太陽光だったようだ。そして前日の市場価格はネガティブプライス。発電事業者が、お金を払ってでも発電した電力を引き取ってもらう状況で、需給バランスが大きく乱れていた。毎度のことだが、脱炭素目標があるにせよ、変動性が大きい電源にどこまで依存するのかは真剣に考えた方がいい。でも、日本で起きる可能性を探るような記事が読めずに残念だった。

電力 私も詳細な情報は「フォーブス」などの海外メディアで読んだからね。

石油 日本もすでに電力の需給バランスが崩れかけている地域がある。遠い国の出来事では済まされないよ。


エネ補助金の垂れ流し BS―TBSは厳しく批判

─ガソリン補助金が形を変えて継続し、夏には電気・ガス料金支援が復活する。

石油 足元のガソリン価格は落ち着いていて、OPECプラスの増産やトランプ関税による先行き不安で需給は緩む。ただ暫定税率を巡る交渉で、自公と国民民主の幹事長が6月から年度末まで価格を引き下げると約束していた。暫定税率は地方税収に大きな影響を与えるので、自民としては下げずに逃げ切りたいのだろうが……。

電力 バラマキに対する批判としてよく見聞きするのが、「困窮者に対象を絞った支援を」というものだ。その手段としては住民税非課税世帯向けの直接給付があるが、自治体に手間をかけるし、非課税世帯には資産を持つ高齢者がそれなりに含まれる。でも電気・ガス料金なら、事業者に補助金を渡せば短期間で実行できてしまう。政治家が手っ取り早く使えるカードになってしまった。

ガス これまでエネルギー補助に投じた額は12兆円超だ。これだけの国費を、料金値下げという一過性の政策に使っていいのか。もっと持続性のある使途があるだろう。極端な話、太陽光パネルを全国民に無料設置すれば、20年くらいは使い続けられる。省エネ設備への買い替え、建物の断熱改修支援の強化などいくらでも方法はあった。

石油 マスコミは消費減税には社説を使って批判しているが、エネ補助金はそこまで熱を入れて報じていない。これだけの額になったのだから、本腰を入れてその是非を追及してほしいね。

ガス テレビも街角インタビューばかりで物足りない。「電気代高いですか」と聞けば、「高いので下げてほしい」と答えるに決まっている。もう飽きたよ。

石油 そんな中で、BS―TBSの「報道1930」(5月8日)が取り上げた会計検査院の田中弥生前院長のインタビューが良かった。効果があったのか分からない補助金を続けるのは問題。補正ありき、減税ありきではなく、落ち着いて考えてほしいと言っていた。ぐうの音も出ない正論だね。

─消費減税は自民が見送ったが、エネ補助金は参院選の争点にすらならない。

【石油】選挙を意識した ガソリン補助の新たな仕組み

【業界スクランブル/石油】

5月22日に燃料油価格激変緩和補助金(いわゆるガソリン補助金)の制度が変更、定額化された。従来、目標価格(全国平均ガソリン小売価格)を固定し、その金額になるような補助額を毎週変動させていたものを、補助金を固定化し、補助相当額の小売価格引き下げを図る。ガソリン・軽油は1ℓ当たり10円、灯油・重油は同5円、ジェット燃料は同4円の定額支給で、当初は半額で開始し、ガソリン10円補助となるまでは原油価格などの状況に応じて支給額を調整する。10円に達した後の小売価格は、補助金支給開始以前のように、その時点の原油価格・為替レート次第で変動することになろう。

このまま、原油価格は軟化、円高が進行すれば、補助相当額以上の値下がりが期待できる。逆に原油価格が上昇・円安になっても、値下がり幅は小さくなるものの、10円程度は確実に下がる。一定水準への抑制(値上がり防止)を目的としていた補助金は、段階的に小売価格の値下げを図る仕組みとなる。同時に、補助金は「旧暫定税率の扱いについて結論を得て実施するまで」実施するとされた。しかも、ガソリン10円の補助上限額に達する7月3日までは、確実に小売価格は値下がりが続く。原油価格上昇・円安になっても、最初は5円程度、次週からは1円程度ずつ、値下がっていく仕組みになっている。明らかに、選挙を意識した政策だ。

今回の定額化で、補助金効果は国民に可視化され、最大4000憶円近く支出していた月間補助金支給総額は、700億~800億円程度に固定される。原油安・円高も進みそうなので、値下げ効果は期待できそうだ。(H)

【コラム/6月20日】経済財政運営と改革の基本方針2025を考える~賃上げ一本とは

飯倉 穣/エコノミスト

1、持続的成長願望ながら

トランプ関税協議、米高騰・備蓄米放出や物価対策に話題が集中する下で、選挙対策の野党の消費税引下げ発言や与党の慎重姿勢が交錯した。今年も経済運営と改革の基本方針(以下基本方針という)の公表があった(25年6月13日)。新しい資本主義の実現を掲げ、賃上げこそが成長戦略の要と述べた。

報道もあった。「骨太方針 減税より賃上げ 閣議決定 選挙前野党と一線」(朝日同14日)。「骨太方針 減税より賃上げ 実質1%上昇 方策乏しく」(日経同)。

基本方針は、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を掲げる。手法は、物価上昇を上回る賃上げ要請である。適切な価格転嫁や生産性向上、経営基盤強化となる事業承継・M&Aを後押しなど、賃上げの環境整備に施策を総動員という。その姿勢は、徒労に終わることを厭わないようである。現状認識の錯覚は、果たして効を奏するか。今回の基本方針の掲げる成長戦略と経済運営を考える。


2、現在の物価上昇要因を直視せず、目玉は賃上げ

「賃上げこそが成長戦略の要」と強調する。持続的・安定的な物価上昇の下、1%程度の実質賃金上昇の定着で、生産性を向上させる。つまり賃上げ、消費(需要)増、投資増、生産性上昇、賃上げ増の経路を狙う。現実の物価上昇要因と経済成長の状況から、飛躍していないか。

24年の経済成長率は、実質0.2%、名目3.1%(23年夫々1.4%、5.5%)だった。輸入物価が落ち着き、企業物価上昇もやや安定(24年前年比2.3%)の後、25年Q1に4.2%、4月4.0%と上昇している。この傾向は何を示しているか。現在の物価上昇は、輸入インフレの後、物価見合い賃上げや企業収益の状況から見て、企業の価格引上げ(含む便乗値上げ)が原因と推量される。円安要因というよりコストプッシュ型インフレである。それが消費者物価上昇(コア前年同月比4月3.0%)も牽引している。このような物価上昇は、需要を減少させ、実質経済の縮小をもたらす。

基本方針は、もう一つ願望を述べている。「投資立国」及び「資産運用立国」による将来の賃金・所得の増加である。投資目標で、2030年度135兆円、2040年度200兆円を見込む(24年名目105兆円、実質92兆円)。この実現のため賃金や金融所得・資産の増加を資金の流れでつくるという。つまり家計の現預金が投資に向かい、官民一体で国内投資を加速し、企業価値向上を目論む。その具体化で、従来からGXの推進、DXの推進、フロンティアの開拓、先端科学技術の推進、スタートアップへの支援、海外活力の取り込み、資産運用立国の実現を例示している。かけ声は、素晴らしいが実際はどうか。近時の民間企業設備投資(24年実質1.3%増)の現実から、浮き上がって見える。政府の取組みは、所詮将来のこと故なのであろう。


3、それは実現可能か

途中経過の資料の中には、経産省の打ち上げ花火もあった。積極的な政策強化を前提に、潮目の変化と同様の国内投資拡大(官民目標2040年200兆円)を継続すれば、賃上げは春季労使交渉5%相当の名目3%が継続し、名目GDPは約1000兆円(新機軸ケース、名目975兆円、実質750兆円)に達するという(5月26日)。その後内閣も乗る事態になった(総理発言6月9日)。原案で、直ちに数字の意味が、呑み込めなかった。果たして実現性はどうだろうか。

物価を上回る賃上げ期待は、繰言だが、逆転の発想というより成長現象の見誤りである。過去の成長の結果、得られた数値(雇用・資本ストック)を数式化したソローモデルを思い出す。左辺は成長率、右辺は労働力、資本、TFP(全要素生産性)である。その式を見て、投入資本や労働投入すれば成長可能と計算する。あるいはGDP恒等式を見て、財政出動や減税で消費を喚起すれば成長軌道に乗せることが可能という。この種の経済論の継続に危惧するばかりである。これらの成長期待論は、これまでの経済推移を見れば、一目瞭然である。誤りだった。

経済成長とは何か。一般の理解では、技術革新・企業化あれば、設備投資増、雇用増、製品単価低下、賃金上昇の現象を垣間見ることが出来る。マクロ的には、実質経済成長率上昇、企業物価安定、消費者物価やや上昇の姿となる。つまり民間企業行動と設備投資の中身(独立投資)にすべて帰着する。現実直視が第一である。

世界の分断と大国の思惑〈下〉 トランプ2.0と中東情勢

【ワールドワイド/コラム】国際政治とエネルギー問題

第2次トランプ政権が導入した相互関税が世界経済を揺さぶる中で、外交的には中東情勢が大きく変動している。ウクライナ戦争の停戦交渉に進展は見られず、パレスチナ情勢は再び悪化する中で、シリア情勢に一定の進展はあるものの、最大の焦点は米国・イラン核協議の進展、イスラエルの対イラン攻撃の可能性の評価に移った。

トランプ政権は4月、イラン側と交渉を始めた。ウィトコフ米中東担当特使とイランのアラグチ外相が4月12日に初めてオマーンで協議したのに続き、19日にローマ、26日にオマーンでの協議を経て5月11日オマーンで第4回協議を行った。

オバマ政権はイランに歩み寄り2015年に米英仏独中露の6カ国とEUがJCPOA(包括的共同作業計画:イラン核合意)の枠組みをイランと合意した。その内容は、イランが核開発を制限すれば、国際社会は対イラン経済制裁解除を進めるというもので、イスラエルや米国共和党は核開発の制限は不十分であるとしてそれを批判し、第1次トランプ政権は18年、JCPOAから一方的に離脱した。21年バイデン政権は合意復活を目指したが、イランは再度離脱しない保証を求めたので、交渉は進展を見なかった。

昨年には、4月と10月にイランとイスラエルは軍事攻撃を応酬したが、そのことは核兵器製造までの時間は切迫し、新たな対応が迫られていることを物語っている。

4月以前の展開では、トランプ政権はイランへの制裁強化の可能性を強調し、これに対し、イランはトランプ政権との交渉には応じないとの立場をとってきたが、4月に入って対応は一変した。その背景には、イスラエルが5月にもイランの核施設を攻撃する計画を立てたと報じられたことが挙げられる。

イスラエルは、昨年10月8日の攻撃によりイランの防空システムを大きく破壊した。その点からイスラエルは、今はイランの核施設を直接攻撃できる好機であるとしている。攻撃計画をイスラエルは米国に提示したが、4月17日の記者会見でトランプ大統領は「私は急いではいない」とし、イランとの協議を優先する考えを示した。

トランプ大統領は世界各地の戦争から米国を切り離す一方、米国の経済的利益の確保を優先する。4月、対米交渉に入る直前、イランのペゼシュキアン大統領が、米国の対イラン投資に言及したことは重要である。今後の協議で米国企業の投資を認められることになれば、米国企業にとっても大きなビジネスチャンスになる。

協議の着地点に関して、イスラエルは核開発の放棄(リビア方式)を最善とするが、イランにとってはカダフィ政権を崩壊に導いた核開発の放棄は論外であり、核開発を放棄する選択肢はない。イラン側は遠心分離機の廃棄・濃縮の完全停止などの排除を求めているが、交渉の焦点は、核開発の継続を前提に、IAEA(国際原子力機関)の査察の実効性の確保に置かれる公算が大きい。

(須藤 繁/エネルギーアナリスト)

エネ政策の修正迫られる米民主党

【ワールドワイド/コラム】海外メディアを読む

米トランプ政権の乱脈な諸政策が世界を混乱させている。特に、野放図な関税の乱発は、国際供給網を混乱させ、世界経済を失速させている。各国とも対策に追われるが、この理不尽な措置で打撃を被るのは何より米国自身だ。食品、衣料、自動車などの必需品の高騰は低・中産層の家計を直撃する。

その不安を受け止め、政策の非を正す役割を負うのは野党・民主党だ。トランプ政権の支持率も低下しており、党勢を挽回すべき局面。しかしここに一つの問題がある。それは民主党の教条的なエネルギー政策だ。

4月25日付ウォールストリート・ジャーナル紙が、民主党の有力な次期大統領候補とも目されるニューサム・カリフォルニア(加)州知事を批判。その矛先は石油精製企業に対する加州の政策に向けられている。大気浄化法の特例措置を利して、同州が一方的に脱炭素政策を進める結果、精製企業が撤退に追い込まれている、としている。

4月半ばに米精製大手バレロ・エナジーがサンフランシスコ製油所の1年内の休止ないし閉鎖を発表。既にフィリップス66も今年の第4四半期のロサンゼルス製油所閉鎖を決めており、合わせて加州の精製能力の2割弱が失われる。地勢的に加州はメキシコ湾岸の精製センターと隔絶し、その厳しい品質規格も相まって、石油製品供給を地場の製油所に依存する。しかし加州当局が非現実的な炭素集約度低下目標をさらに厳格化する中で、精製企業が事業継続を不可と判断しつつある。

加州が自滅的な石油危機に陥る事態となれば、民主党の経済運営への不信を高め、米政権交代の道のりは険しくなる。エネルギー政策は、依然として民主党の鬼門である。

(小山正篤/石油市場アナリスト)

【ガス】出口見えないエネ補助金の評価 AIに聞いてみた

【業界スクランブル/ガス】

政府はガソリンや電気・ガス代への補助を再開する予定だが、参院選を見据えた「バラマキ」と苦言を呈さずにはいられない。ガソリン補助金は3カ月間限定で2022年1月に開始したが、3年以上も延長を繰り返し、昨今の原油安・円高の進行で今年4月ようやくゼロになった。また、電気・ガス補助金も23年1月に始め24年5月でいったん打ち切ったが、「酷暑乗り切り緊急支援」と名を変えるなど延長を繰り返し、ようやく3月に終了。その矢先の残念な決定である。

一連の支出は既に計12兆円を超えた。最大の問題は、この予算が一過性に終わっている点だ。その場しのぎの補助金ではなく、省エネ機器や再エネ設備への「バラマキ」などに使っていたら、今後10年以上はその恩恵を受けられたはずだ。

試しに生成AIを使用し、「物価対策・ダメな施策」と調べてみた(以下AI回答)。「短期的には効果があるように見えても、長期的には副作用や逆効果をもたらす可能性がある政策。①補助金や価格統制による市場の歪み(ガソリンや電気料金に対する一律補助金など)、②短期的な減税の乱用(特に消費税減税)、③為替介入のみに頼る対応、④供給側の制約を無視した需要刺激策―。こうした施策は、国民の「その場しのぎの満足感」にはつながるかもしれないが、根本的な物価上昇の抑制にはつながらず、経済全体にとってはマイナスになることがある。必要なのは、エネルギー効率の向上、サプライチェーンの強靭化、賃上げと生産性の両立など、根本的かつ中長期的な対応です」―。政府も生成AIを参考にしてはどうだろう。(Y)

「掘りまくれ」に黄信号? 石油各社が米貿易政策に懸念

【ワールドワイド/環境】

トランプ大統領は就任100日目の4月29日にミシガン州で演説し、「われわれの国の歴史上、最も成功した政権の最初の100日間を祝うためにここにいる。毎週、不法移民の流入を終わらせ、雇用を取り戻している」と成果をアピールした。

同日、リーヴィット報道官、ベッセント財務長官が記者会見で100日の成果をPR。エネルギーについては「ジョー・バイデン氏の無謀なエネルギーと化石燃料への攻撃を終了し、アメリカのエネルギー優位性を回復した。この大胆なアプローチにより、石油と天然ガスの価格は大幅に下落している。ガソリン価格は7%下落している。内務省はアメリカ湾での石油生産を1日当たり10万バレル増加させる新たなオフショア掘削政策を発表した」としている。

確かにガソリン価格はここ数年来で最も下がっているが、これはトランプ大統領が推進する「Drill, Baby, Drill」 によって国内エネルギー生産が増大し価格が下がったというものではない。むしろトランプ関税が国内生産増大を阻害する可能性がある。

トランプ関税が世界経済の減速をもたらすとの懸念からWTIの先物価格は4月中に13ドル低下した。この下落幅は2021年11月のCOVID変異株拡大の時以来だ。石油会社はトランプ大統領の規制緩和や石油・ガス掘削のコスト削減・簡素化方針を歓迎してきたが、最近は貿易政策に対し深刻な懸念を表明しはじめている。

シェール石油企業が利益を出すにはWTIが少なくとも65ドルが必要であるとされ、60ドル台前半になれば掘削を縮小する企業が増える。実際テキサスにおけるシェールのリグ数は昨年3月の376から3月には290に低下した。クリス・ライトエネルギー長官がCEOを務めたリバティ・エナジーの株価もトランプ政権発足後、40%も下落した。石油価格はトランプ関税以外にも地政学的緊張、OPECプラスの動向などにも影響を受けるが、現在の価格水準ではガソリン価格低下につながっても「Drill, Baby, Drill」にはとてもつながりそうにない。関税により世界経済へのマイナスの影響が拡大すればCOVID19のように世界の温室効果ガスが低下するかもしれない。トランプ大統領は温暖化防止に冷淡なのに皮肉なことである。

(有馬 純/東京大学公共政策大学院客員教授)

【新電力】電力市場拡大局面で 存在感希薄な新電力

【業界スクランブル/新電力】

蓄電池とDC―。電力業界に流行語大賞なるものが存在するのであれば、両者は間違いなく、今年の大賞候補だろう。電力業界における久々の市場拡大チャンス到来である。電力小売全面自由化という市場拡大の潮流に乗った新電力ではあるが、今回の市場拡大チャンスでの存在感は、一部大手を除き、やや希薄な印象を受ける。

新電力は従来、従量料金単価が比較的高く負荷率の低い低圧・高圧の需要家を主たるターゲットにしてきた。利益の源泉は主に基本料金である。負荷率が極めて高く、従量料金部分では逆ザヤリスクのある特別高圧が大多数を占めるDCは、従来の顧客ターゲットからは外れる。逆に、系統用蓄電池は負荷率が低く既存料金下で極めて魅力的な顧客であるため、競争激化=基本料金ダンピングの果ての逆ザヤリスクを警戒しているのかもしれない。

ただ、足元の状況として、原発稼働率低下を主要因とする旧一電の値上げにより、特別高圧料金は新電力にも対抗できる水準になりつつある。

基本料金ダンピングにしても、そもそも小売に特化している新電力が容量拠出金や託送料などインフラ整備に必要な費用を別途顧客に請求しているのであれば、基本料金の存在理由がもはや「?」である。蓄電所特化新料金メニューによる競争があっても良い。

また、このコラムでは批判の対象とされがちな規制当局ではあるが、試行錯誤を経て電力システム改革は着実な成果を上げている点は評価したい。新電力にとって、もはや特に不利な環境とは言い難い。

こうした環境を生かし、新電力各社にはさらなる存在感を発揮してもらいたい。(S)