【羅針盤】三井久明/国際開発センター SDGs室長・主任研究員
持続可能な開発目標(SDGs)を、長期的な経営戦略作りの指針として活用する企業が増えてきている。SDGsを経営に活用するには、まず持続可能な開発の意味を理解する必要がある。
コロナ禍で先行きが見えない今日、将来の社会の持続性を考えるツールとして、SDGsへの関心が高まってきている。このたび、SDGsとは何か、これを企業経営にどのように活用するかといった課題を整理し、拙著『SDGs経営の羅針盤』として刊行した。今回を含め3回に分けてこの書籍の内容を紹介する。第1回では、SDGsとは何か、「持続可能」はどういった意味か、について解説する。
国連サミットで提示 17のゴールから構成
SDGsとは、2015年の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた、国際的な開発目標のことである。世界の150カ国を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択された。貧困、飢餓、ジェンダー、教育、環境、経済成長、人権など、幅広いテーマをカバーしており、30年までの達成が目指されている。「誰一人取り残さないこと」が強調されている。

国連で合意された国際的な開発目標には、これまでもいくつもの枠組みがあった。SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)がその代表的なものである。従来は、こうした開発アジェンダは、国や国際機関やNGOなどが対処するものという考え方が一般的であった。だが、近年の環境や経済、社会課題は、地球規模で影響が拡大しており、政府や国際機関だけでは対処できなくなりつつある。企業、市民社会、メディア、教育機関などのさまざまな組織の積極的な関与が必要となっている。特に、企業は環境、社会、経済への影響力が大きく、ビジネスを通じてSDGsに取り組むことが期待されている。
SDGsは17のゴールから構成されている。各ゴールには、カラフルなアイコンがセットになっており、それぞれのアイコンに簡潔にゴール内容が表記されている。例えば、ゴール1は「貧困をなくそう」、ゴール2は「飢餓をゼロに」、ゴール3は「すべての人に健康と福祉を」、ゴール4は「質の高い教育をみんなに」といった具合である。
近年、本邦企業を対象としてSDGsに関する意識調査が各種実施されている。「どのSDGsゴールを重視するか」といった質問には、13(気候変動)、8(働きがい・雇用)、12(消費・生産)、3(健康と福祉)、7(エネルギー)、5(ジェンダー平等)といった回答が多い。やはり地球温暖化など気候変動は日本企業にとっても身近なテーマと受けとめられている。また、「働きがい・雇用」や「消費・生産」も民間セクターが深くかかわるゴールであり関心が高い。
SDGsという言葉は、徐々に日本社会に浸透しつつあるように見えるが、そもそも「持続可能な開発」とは何なのか。実は、1987年に発表された国連の委員会の報告書の中で明確な定義がある。持続可能な開発とは、「将来世代のニーズを満たす能力を損なうことがないような形で、現在の世代のニーズも満足させるような開発」と示されている。つまり、開発が持続可能かどうかの焦点は、将来の世代のニーズを損なうか損なわないかにある。現代の世代のニーズばかり追い求めることで、我々の子供や孫といった将来の世代の暮らしが、甚大な悪影響を受けるようであれば、その開発は持続的でないことになる。





