インドで原発開発加速 外資参入に向け法改正着手

【ワールドワイド/市場】

インド政府は2月、2025度予算案で、原子力発電の開発を加速させる方針を示した。同国では現在、24基(818万kW)の原子炉があり、建設中と政府承認済みの計画を加えると32年の合計の設備容量は2248万kW。これを47年までに1億kWへと引き上げる。また、「原子力エネルギー計画」として国産の小型モジュール炉(SMR)の研究開発に2000億ルピー(3300億円)を割り当て、33年までに少なくとも5基のSMRを建設する。

政府は国産技術の加圧重水型炉(PHWR)、輸入大型軽水炉、SMRなどあらゆる技術を採用する方針で、外資および民間セクターからの投資を呼び込むため、原子力法と原子力損害賠償法の改正を進める。1964年に制定された現行の原子力法は、原子力事業の担い手を国営企業に限定しており、現在、インドでは原子力発電公社(NPCIL)、発電公社(NTPC)、BHAVINIの3社が手掛けている。報道によると、アダニ、タタ、リライアンス、ジンダルなどが原子力事業への参入に関心を示している。IPP大手アダニ・パワーは既設の石炭火力発電所を順次原子力に置き換え原子力発電所を計3000万kW開発する計画だと報じられた。

外資の参入は、ロシアによるクダンクラム原子力(加圧水型軽水炉)の建設実績がある一方で、欧米企業は、10年に制定された原子力損害賠償法により、原子炉のサプライヤーが賠償責任を負う可能性があることへの懸念から進んでいない。政府は4月、この状況を打破するため、原子力法と原子力損害賠償法の改正に向けて、原子力庁、原子力規制委員会、Niti Aayog(政策委員会)および法務省で構成される委員会を設置した。廃棄物管理、廃炉、核セキュリティと保障措置などについて検討し、改正法案は早ければ7月の国会に提出される。

NTPCは今後20年間で原子力3000万kWの開発に620億ドルを投資する方針で、加圧水型炉(PWR)の開発目標を約1500万kWとした。3月下旬には、100万kW超の大型PWR技術の国産化と新設に向けて、グローバル企業に対して協力ベンダーの関心表明の募集を開始した。既設石炭火力をSMRに転換するため実現可能性調査の準備も進めている。同国ではSMR開発でも他国との協力しており米国ホルテックやロシアのロスアトムなどと関係者間で協議が進められている。

(栗林桂子/海外電力調査会・南アジアグループ)

【電力】米国で論争 併設負荷はどう考えるべきか

【業界スクランブル/電力】

最近米国で、大規模需要であるデータセンター(DC)が隣接する原子力発電所などから電力系統を介さずに共有を受ける併設負荷または共立地負荷の扱いを巡り、賛否両論が起きている。

送電事業者が、大規模需要と大規模電源が系統から離脱することによる信頼度・費用への悪影響を懸念している一方、発電事業者とDC事業者は系統増強費用の回避と早期の供給実現にメリットを感じているようだ。

日本に本件と同様の動きがあった時のことを想像してみるに、DC構内に発電所を設置するのであれば、通常の自家発設置と変わらないし、隣接地に発電所があるなら自営線を敷設すればよく、日本の制度上は止めることはできないように思える。

系統を介さない供給に対する歯止めの前例としては、都市ガスの二重導管規制がある。たとえ工場がLNG基地の隣接地に立地していても、一般ガス導管事業者の供給区域全体の導管利用コストが上昇する可能性を理由に、電力会社は自前の導管でガスを供給することができない。熱量調整不要と言っている需要家にとっては、オーバースペックで割高になってしまう。これと同じ理屈で日本版併設負荷をブロックするのは、一言でいえば格好悪い。

そもそも、特定の需要のために大規模な系統増強が必要となる状況は、送電網を需要全体で支えるコモンキャリアと位置付ける現在の電力システムの前提を逸脱しているようにも感じられる。ではどうするか、にわかに答えは出ないが、送電事業者も系統増強を極力回避する手段として併設負荷を前向きにとらえてもよいかもしれない。(V)

豪労働党が政権維持 国内ガス供給優先路線強まるか

【ワールドワイド/資源】

5月3日に実施された豪州連邦総選挙で、与党・労働党が勝利した。2022年の政権交代から続く与党の再選により、脱炭素を軸とした政策運営が今後も維持されることになるだろう。同時に、天然ガスについては「移行期に不可欠なエネルギー」としての位置付けは明確にしており、脱炭素とエネルギー安定供給を両立させるバランス路線を模索している。

しかし、再選後の政権には、より差し迫った課題が突きつけられている。それが、主に東海岸における国内ガス供給の不安定化である。

豪州では、人口の約8割が集中する東海岸地域において、既存ガス田の減産、新規開発の遅延、LNG輸出優先の体制などが重なり、国内供給がひっ迫する兆しが強まっている。

このような中で、労働党政権はすでにいくつかの制度改革を進めてきた。「豪州国内ガス安全保障制度(ADGSM)」は、国内で供給不足が見込まれる場合、輸出事業者に対して国内供給を優先させることを目的としている。労働党政権による23年4月の改正では、その発動検討の頻度が従来の年1回から四半期ごとに見直され、より迅速な対応が可能となった。また、同年7月からは東海岸のガス生産者に対して卸売価格の上限が設定されるなど、価格抑制策も導入されている。

今後3年間の政権運営において、国内供給優先の姿勢が強まる可能性は否定できない。むしろ東海岸におけるガス供給不足に対して、何らかの措置や判断を求められる可能性がある。LNG輸出への制限措置が検討される事態も十分に想定され、調達環境の観点から豪州のエネルギー政策を引き続き注視する必要があるだろう。ただし、グローバルなLNG市場全体では今後の供給拡大が見込まれることもあり、マーケットの状況によっては、仮に一時的な豪州の制限が生じても、それによってすぐに価格高騰に直結するとは限らない、とも考えられる。足元の市場環境や他国からの供給状況との兼ね合いを冷静に見極める姿勢が必要になる。

脱炭素とエネルギー安定供給を同時に追求しなければならない中で、今回の総選挙による豪州の政権選択と今後の政策運営は、日本にとっても決して対岸の出来事ではない。資源の安定供給と将来予見性というエネルギー安全保障の核心にかかわる論点として、今後の展開は丁寧に見ていきたい。

(芝 正啓/エネルギー・金属鉱物資源機構調査部)

新エネ・再エネ拡大に総力 次世代技術普及へ活動強化

【巻頭インタビュー】寺坂信昭/新エネルギー財団会長

新エネルギー・再生可能エネルギーの拡大は、国家的課題として対応が求められている。

産学官の結節点に当たる新エネルギー財団が果たすべき役割とは。寺坂信昭会長に聞いた。

てらさか・のぶあき 1976年通商産業省入省。資源エネルギー庁石炭・新エネルギー部計画課長、同電力ガス事業部長、原子力安全・保安院長などを経て2011年退官。その後、カケンテストセンター理事長などを経て、23年11月から現職。

―会長就任から約1年半が経過しました。今後、どのような取り組みに注力していく考えでしょうか。

寺坂 当財団は、新エネルギーと再生可能エネルギーの導入・普及拡大に向けて調査研究や政策提言、広報・啓発、人材育成などに取り組んでいます。今後は、新エネ・再エネの拡大がこれまで以上に国家的な課題として位置付けられ、社会的な要請も一層強くなると認識しています。産学官の結節点として、新エネ・再エネに関わる幅広い業界と接点を持つ財団の強みを生かし、活動をさらに充実させることで普及拡大へ一層、貢献していきます。また、今年度からは水素分野にも幅を広げ、調査研究や委員会活動を充実させていく方針です。

―2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画について、どのように評価されていますか。

寺坂 エネルギーは、水・食料・空気と並ぶ、われわれの生活に欠かせない存在です。国家運営の基盤としてのエネルギー政策という意識は、従前の計画からしっかり引き継がれていると認識しています。一方で、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、電力需要が増加に転じる見通しが示されたことは大きな変化です。2040年度における再エネ電源比率は4~5割とされ、22年度比で倍増させる必要があります。これは産学官の総力を挙げて取り組むべき課題であり、再エネの主力電源化が計画実現のカギを握ります。加えて、地域との共生や国民負担の抑制といった視点も重要であり、これらすべてが、第7次エネ基に盛り込まれている点を高く評価しています。

また、地球温暖化対策計画やGX2040ビジョンが同時に策定されたことも大きな特徴です。エネルギー政策に着目すれば、安定供給、脱炭素、経済成長という三つの目標を同時に達成するには、新エネ・再エネの拡大がこれまで以上に不可欠であることが、明確に示されたと受け止めています。

―3月に公表した「新エネルギーの導入促進に関する提言」のポイントは。

寺坂 24年度の提言では、第7次エネ基の内容を踏まえ、今後の具体的な制度設計を後押しすることを目的に、産業界をはじめ関係各界で構成する当財団の新エネルギー産業会議の委員の総意として取りまとめました。第7次エネ基で掲げられた「再エネ主力電源化の徹底」は、リスクを抱えることなく実現させることが困難であり、各分野が直面する課題を短期から中長期にわたって整理しています。その中で当面の課題として挙げたのが、諸環境変化に伴うコスト増による事業採算性の低下です。特に風力発電事業はその影響が大きく、洋上風力に限らず陸上風力にも共通する切迫した問題です。また、地域との共生は全ての電源に共通する重要な視点であり、それぞれの電源特性を踏まえた政策による支援が必要です。今後も、技術開発への支援や規制のあり方も含めた課題解決を後押しする提言を行っていきます。

世界でもまれなGX特化型組織 設立の背景に三つの源流

【オピニオン】梶川文博/脱炭素成長型経済構造移行推進機構理事

「脱炭素成長型経済構造移行推進機構」。このコラムの横幅の字数制限と同じ、暗号のような漢字16文字である。

2024年7月、政府と経済界が協力し、GX実現に特化した専門組織を立ち上げた。GX推進法に基づく経済産業大臣の認可法人であり、通称「GX推進機構」と名乗っている。内閣法制局との議論の結果、上記の16文字が法律上の正式名称である。

私は、経済産業省で設立の責任者を務め、組織設立とともにこの組織に移り、企画担当理事として、組織づくりに奮闘している。GX推進機構は、世界にもまれにみるGXに特化した専門組織であるが、設立に向けた源流は、大きく三つある。

一つは、22年1月から開催した「クライメイト・イノベーション・ダイアログ」にさかのぼる。GX投資の不確実性に対して、公的・民間資金を組み合わせて、官民投資をいかに増やしていくか、官民の金融機関関係者が集まり、タブー無しの議論を行った。最近の言葉でいえば、ブレンデッド・ファイナンスである。この対話から、大規模かつ長期でのリスク補完機能を持つ公的機関の必要性が参加者から認識された。ここでの議論なども踏まえて、GX推進法の中で、GX推進機構の業務として、債務保証などによる金融支援業務が位置付けられた。

もう一つは、自主的な排出量取引からの発展である。GXリーグでの試行期間が終わり、26年度からわが国で排出量取引が本格導入される。世界では、国の省庁とは別に、この制度を執行・運営する専門組織を設けて、専門的知見やデータを積み上げながら、効率的・効果的な政策執行を実施している。当機構は法律に基づきカーボンプライシング業務の実務面を担当する。韓国のK―ECO、豪州のCERといった専門機関とも既に交流を開始。100人規模の人員を抱えて、日々制度執行をしている海外機関から学びつつ、来年度に向けた準備を進めている。

これらの二つの源流に加えて、もう一つはGXハブ機能である。GX分野は、政策、ビジネス、金融が密接に結びつきながら、脱炭素と経済成長の二兎を追うことになるが、これらを一体的に推進する主体がなかった。経済界からは、GX関連情報の統一的な発信や、異なる産業間での連携の重要性を訴える声が多く届けられていた。こうしたニーズに応えるため、当機構の3大業務の一つと位置付けた。現在、セミナー、ネットワークイベントなどの企業間連携の取り組みを進めている。

GX推進機構は次の7月で業務開始1年となるが、まだまだヨチヨチ歩き状態。50年までの長い道のりの中で、多くの方に信頼されるパートナーとなるべく、組織の成長スピードをさらに上げていきたい。

かじかわ・ふみひろ 2002年早稲田大学法学部卒、経済産業省入省。08年米コロンビア大学ロースクールLL.M卒。18年経済産業政策局政策企画官、19年産業技術環境局環境経済室長、23年同局GX金融推進室長などを歴任。24年から現職。

AI普及で増大する電力需要 エネ効率を上げるには?

【脱炭素時代の経済評論 Vol.15】関口博之 /経済ジャーナリスト

われわれの身近にも急速に普及してきた生成AI。そのAIとエネルギーをテーマに国際エネルギー機関(IEA)が4月に出した報告はこう書く。「AIは世界中のデータセンターの電力需要を増やすと同時に、コスト削減・競争力強化・CO2排出削減の可能性を解き放つ」と。確かにプラス・マイナス両面から見るべきだが、今回はまず電力消費に着目してみる。

IEA報告書は2030年までに世界のデータセンターの電力消費量は今の2倍以上の約94・5GW時になると予測。これは日本の年間総電力消費をも上回るとしていて、急速な増大が想定されている。

AI時代の省エネの在り方とは……

エネルギー負荷がAIの課題として捉えられる中、AIにも家電製品のエネルギー性能を示す格付け(☆マーク)のような仕組みができないかと米AIベンチャーのHugging Faceは「AIエネルギー・スコア」なるものを考案した。同社はオープンソースのAI開発プラットフォームを提供しており、さまざまなAIモデルの消費電力を比較可能にすることでユーザーに選択肢を与え、開発者にもエネルギー効率を意識するよう促したいと狙いを説明する。

具体的には、質問応答・要約、自動音声認識、より高度なテキスト生成、テキストからの画像生成、画像のキャプション作成など10のタスクを設定、200以上のAIモデルにテストをして消費電力を計測したという。公平な評価のためハードはエヌビディアの同じGPUで実施された。

結果はエネルギー効率の最も良い5つ星から1つ星までの5段階で評価している。2月にウェブ上で公開し、今後もほぼ半年ごとに更新する予定だ。

そのテスト結果によると、シンプルな質問応答では1000回の質問を処理するのに0・1W時(白色電球を5分つける程度)の消費電力で済んだものがあった一方、画像生成では千枚の高解像度画像を作るのに1600W時を必要としたものもあったという。これはスマホを70回フル充電するのに等しい電力量。大規模言語モデルかどうかや用途で格段の違いがあるのがわかる。概して「画像」生成は「テキスト」のタスクより圧倒的に電力を使う。ただし留意すべきは今回の調査はあくまで各モデルの「推論」での消費電力を見ていて「学習」は対象外。こちらにかかる電力は依然、ブラックボックスだ。

AIとエネルギーに注目する日本エネルギー経済研究所の土井菜保子研究理事は「単なる機械学習レベルから生成AIまでを同列に論じるべきではない。単純な用途に高度な生成AIを使う必要はなくタスクに合わせ適切なモデルを充てるべき」と指摘する。鍵は〝適材適所〟ということになる。

IEAは冒頭に挙げた報告書を多くの関係者に読み込んでもらうため新しいAIエージェントをウェブ上に公開している。そこにある利用上の注意事項は「質問は明確で具体的に」「質問は一度に一つ、期待する答が得られない場合は言い換えるか、絞り込んで」「複雑な質問は処理時間がかかることも、それには忍耐を」。AIを使うビギナーはまずこの実践からかも。

【コラム/6月13日】電力供給システムの集中化と分散化

矢島正之/電力中央研究所名誉シニアアドバイザー

カーボンニュートラル(CN)の達成のために、内外で再生可能エネルギーが大量導入されているが、それはどのような電力供給システムをもたらすであろうか?集中化、分散化のいずれが進展するであろうか?分散化が進展するとしたら、従来の電力供給システムに特徴的な集中的な要素は重要性を失うことになるのであろうか?本コラムでは、このような問題について論じてみたい。

CNがもたらす電力供給システムについては、集中化、分散化のうち、どちらかというと分散化が進むとの考えが多いのではないだろうか?とくに、再生可能エネルギー推進派には、地産地消(または自給自立)、市民の選択、従来の電力供給からの独立などの観点から、再生可能エネルギー大量導入により分散型電力供給システムがもたらされるとの期待が高い。将来の電力供給システムが集中型か分散型かについての議論は、今後さらに活発になるだろう。しかし、このような議論は結論が得られず、徒労に終わることも少なくない。その理由は、集中型もしくは分散型について議論する者が抱いているイメージが明確でないため、議論が嚙み合わないためである。そのため、将来の電力供給システムが向かう方向性について議論する場合には、集中型および分散型の電力供給の概念をまず明確しておくことがスターティングポイントとなる。それ無しに議論しても、実りのある成果は得られない。そのため、ここではまず、集中型と分散型の概念を明確にしておく。

電力供給システムが集中型か分散型かは、発電所の規模、発電された電力がフィードインされる電力ネットワークの電圧レベル、電力貯蔵設備などのフレキシビリティや発電設備の消費者への近接性、需給調整のあり方など、いくつかのディメンションで判断される。典型的な集中型電力供給とは、大規模な洋上風力発電所や揚水発電所などが、需要地から遠く離れた場所で発電し、高圧で系統連系し、貯水池式・揚水式の水力発電 や融通電力などによりフレキシビリティを確保し、需給バランスは、中央の電力取引所や需給調整市場により確保する場合である。また典型的な分散型電力供給とは、小型の再生可能エネルギー電源などが、需要地で発電し、最小限の系統連系(極端な場合は、系統連系無し)で、フレキシビリティは需要側の蓄電池などで確保し、需給調整も需要地で行う場合である(図1)。このような典型的な集中型および分散型の電力供給の間に、比較的集中型、あるいは比較的分散型の様々な供給形態が存在する。

図1 集中型電力供給と分散型電力供給
出所:Nationale Akademie der Wissenschaften Leopoldina et al.(2020)などより筆者作成

注意を要するのは、現状では、典型的な分散型電力供給における厳密な「自給自足」は経済的な理由から難しいことである。小さな自給自足単位では、瞬時ごとに需給バランスを確保するコストは禁止的に高いからである。そのため、実際には、ほとんどすべての分散型電力供給システムでは、系統連系により、外部のフレキシビリティにもアクセス可能としている。例えば、既存の電力系統から独立して運転可能なオンサイト型電力供給システムであるマイクログリッドでは、通常は既存の電力系統と一点で連系されている。このような場合には、分散型電力供給システムといえども集中型電力供給システムの要素を部分的に有している。

再生可能エネルギー大量導入下の電力供給システムにおいては、分散的要素がさらに増大する可能性が高いが、集中的要素も欠かせない存在となることは確かである。例えば、再生可能エネルギー電源の大量導入下では大量のフレキシビリティが必要となるが、その効率的な確保のためには、遠隔地の揚水発電所や集中設置された蓄電設備、またはフレキシブルな集中型発電所を含む様々なエネルギーリソースからの提供を可能にしておく必要がある。それを可能にするのが系統の利用と増強であり、再生可能エネルギー電源の大量導入下でも集中的要素は必然的に組み込まれる。

電力供給システムは、様々な集中型と分散型の技術および調整メカニズム(需給バランス)を環境適合性、経済性、安全性、アクセプタンスの観点から最適に組み合わせることによって構築されなくてはならない。このことは、再生可能エネルギーが大量に導入される状況においても変わることはなく、電力供給システムは、必然的に集中的要素と分散的要素を併せ持ったものとなると考えられる。同電源が飛躍的に増大するドイツでも、この点に関しては専門家の間でコンセンサスが見られる(Nationale Akademie der Wissenschaften Leopoldina et al. 2020)。集中型か分散型かという単純な二項対立に焦点を当てる議論はあまり意味がないと言えるだろう。


【プロフィール】国際基督教大修士卒。電力中央研究所を経て、学習院大学経済学部特別客員教授、慶應義塾大学大学院特別招聘教授、東北電力経営アドバイザーなどを歴任。専門は公益事業論、電気事業経営論。著書に、「電力改革」「エネルギーセキュリティ」「電力政策再考」など。

空き家管理で地域の価値向上へ 暮らしのワンストップ企業に脱皮

【事業者探訪】日高都市ガス

団地の造成から数十年経つ中、地域の衰退を食い止めるため空き家管理を始めた。

エネルギーと暮らし・住まいの2軸で、ガス会社を超えた存在として地域への浸透を図る。

埼玉県南西部に位置する日高市には、秋の彼岸に咲き誇る曼殊沙華が見事な「巾着田」や、手軽な登山が楽しめる「日和田山」など、知る人ぞ知る名所が多い。県民にとっては、豊かな自然を生かした「遠足の聖地」としてなじみ深い存在だ。

日高都市ガスは、この地の市街化とともに発展し今年12月で創立55周年となる。現在はシナネンホールディングス(HD)グループ傘下だ。都市ガスは、高度成長期やバブル期に造成した2カ所の団地向けから始め、徐々にエリアを広げ、足元の需要家件数は7000戸ほど。原料ガスは武州ガスから調達する。またLPガスは600戸程度、電力は小売り全面自由化開始直後に取り扱いを始めた。

全国の団地に共通する問題として、開発から数十年後一気に衰退が進み、同市内の団地も例外ではない。そこで地域の衰退に歯止めをかけるべく始めた事業の一つが、空き家管理だ。


団地衰退に歯止めを 決断から1年で事業化

シナネンHD出身の塚越二喜男社長は、6年前の社長就任直後、ある団地の自治会長から空き家増加の懸念を聞かされた。当時、分譲戸建て約2200戸のうち空き家は150ほどで、全物件を確認したところ手入れが不十分な物件もあった。塚越氏は「団地は地域の象徴的な存在。このままでは町全体の資産価値まで毀損してしまう」と危機感を持った。急ピッチで空き家管理サービスのフランチャイズへの加盟や、宅地建物取引士(宅建士)資格保持者のリクルートを進め、事業化の決断から1年余りで開始に至った。なお、現在では社員25人中、塚越氏含め3人が宅建士の資格を持つ。

左から横田氏、塚越社長、水村氏

一番の売りが、管理作業の様子を動画で撮影し、顧客がWEB上で確認できることだ。通常は紙の報告書を用意するが、動画であればより分かりやすく安心感につながる。屋外のみ、あるいは屋内も含めさまざまな点検を行う3プランを用意する。同社は市の空き家対策協議会のメンバーにも選ばれている。

現在までの実績は12件で当初の見込み通りとはいかないが、「この事業でもうけるという考えではなく、エネルギー事業者だからこそできる地域の資産価値向上に資する取り組みだ」(塚越氏)と強調する。

空き家情報を把握する上で、かつては顧客からガスの閉栓の連絡が来る点に商機があると見ていたが、実際に顧客はそれ以前に管理委託や売買仲介を決めているケースが多い。閉栓の連絡が来たら社内で即情報共有することはもちろん、顧客からの連絡が来る前にどうアプローチするかが重要となる。そこで、5月下旬に市と連携し、初めて「空き家管理セミナー」を開催した。同社の横田敬二・経営企画室長は「居住中の段階から将来の住居管理を考えるきっかけになれば。地域や住民と連携して町の価値を上げる事業レベルにしたい」と語る。

今こそ選挙制度の抜本改革が必要 「ネオ55年体制」打破し骨太の政策を

【永田町便り】福島伸享/衆議院議員

石破政権発足直後の昨年10月の衆議院選挙で、与野党逆転の議席となった。少数与党のまま本予算案の審議を含む本格的な国会を迎えるのはわが国の憲政史上初めてであり、これまでにない緊張した国会となることが予想された。野党がまとまれば、政府提出のさまざまな法案を否決したり修正したりすることが可能で、熟議によって国会の形骸化した立法府機能が再生されることが期待された。

しかし、閉会を迎えつつある中そのようになってはいない。予算案を巡っては日本維新の会が教育無償化などと引き換えに賛成に回って順調に成立し、焦点の一つだった企業・団体献金禁止法案は国民民主党の抜け駆けによって(原稿執筆時点で)採決に至らず、本来賛成党派が過半数を占めている中で可決可能に思われた選択的夫婦別姓制度も今国会で実現する見込みはない。このような情けない野党の状況になっている根幹の原因に、小選挙区比例代表並立制の選挙制度がある。

この選挙制度は、英国のような政権交代可能な二大政党制を目指して導入されたものだが、実際にはそうならなかった。自民党は公明党の組織票も得ながら「永遠の与党」となり、野党は常に分裂して「永遠の野党」となる「ネオ55年体制」となってしまった。この選挙制度の下では、与党への批判は野党第一党に集まるから、たとえ支持率が低くても選挙では「野党第一党ボーナス」が付いて一定の議席が確保される。一方、それに不満の野党第二党・野党第三党は、政権に協力的にふるまって、野党第一党では成しえない野党の立場での政策実現を行って、野党第一党になろうとする。


後回しのエネ政策 日本の転落に危機感

しかし、そこには、「この国をどうするのか」という骨太の国家観や中長期的な国家戦略はない。支援者を満足させたり、浮動的な支援を得るための目先の選挙戦略しかない。一方の与党も、決して国民の期待や信頼を集めているわけではない。票の取れないエネルギー政策は、こうした政治状況の中では大きく取り上げられず、骨太の国家戦略構築は後回しになってしまっている。今、世界史的な大きな転換期が来る中で、このような日本の政治で日本の停滞と転落を止められるのか、とじくじたる思いになる。

本来、小選挙区制度を導入した目的は、政権交代を行うことによってダイナミックな政策展開を行えるようにすることであったが、導入後30数年たってみてそうならないことは明らかだ。今こそ選挙制度を抜本的に変えて「ネオ55年体制」を打破し、骨太な政策を実現できる政治体制を実現しなければならない。

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ふくしま・のぶゆき 1995年東京大学農学部卒、通産省(現経産省)入省。電力・ガス・原子力政策などに携わり、2009年衆院選で初当選。21年秋の衆院選で無所属当選し「有志の会」を発足、現在に至る。

【フラッシュニュース】注目の「政策・ビジネス」情報(2025年6月号)

NEWS 01:原発新設の動きが表面化 実現に資金と規制の壁

原発の新設を巡る動きが目立ってきた。九州電力は5月19日に公表した新たな経営計画で、次世代革新炉の開発・設置に向けた検討を進めると明らかにした。日本原子力発電も15日、中期経営方針に相当する「将来ビジョン」の策定を表明。敦賀3、4号機の建設予定地での新設が盛り込まれる可能性がある。

川内原発で次世代炉実現なるか

政府は2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画で、次世代革新炉への建て替え要件を緩和した。これまでは廃炉したサイトの敷地内に限定していたが、廃炉した事業者のサイト内であれば可能になった。九電の場合、玄海1、2号機の廃炉を決めており、川内原発の敷地で新設できる。

ただ、次世代炉建設はファイナンスや規制対応が足かせとなりかねない。長期脱炭素電源オークションはコストの回収が運転開始後となり、建設リードタイムが長い原発では資金調達面で課題が残る。そこで、発電前からリターンが得られる制度の導入や「民間資金の活用を考えるべき」(コンサル関係者)といった声が上がっている。審査面では規制庁とメーカーらの意見交換が行われたが、元規制関係者は「現在の規制庁には非常用炉心冷却設備(ECCS)の評価指針の改定をやるだけの人材も予算もない」と嘆く。

結局のところ、第7次エネ基を実現するため、国が本気になれるかに懸かっている。


NEWS 02:脱炭素先行地域が88件に 辞退や進捗遅れの課題も

今年度までに脱炭素先行地域100カ所選定の出口が見えてきた。環境省は5月9日、第6回で新たに7提案を選定したと発表。これで40道府県117市町村の88件となった。

次回で最終回となる可能性がある。ただ、これまでに2件の辞退があるなど、「30年度までに民生部門の電力消費をCO2実質ゼロ」というハードルの高さに、いよいよ直面する自治体も少なくない。

応募数は過去最少だったものの、評価委員会は回を重ねるごとに新たな観点を打ち出すのが難しくなる中、今回の7件は先進性やモデル性で際立っていたと評価した。具体的には、①山形県米沢市・飯豊町、②千葉県市川市、③福井県池田町、④鳥取県倉吉市、⑤広島県北広島町、⑥愛媛県今治市、⑦宮崎市―の7提案だ。

例えば②は、既存賃貸集合住宅などに断熱改修や屋根上太陽光を導入し脱炭素化を図りつつ、子育て世帯の定住を促す。また③では、融雪機能付き太陽光の導入や垂直型の営農型発電で、特別豪雪地帯が抱える課題の解決と脱炭素の同時達成を図る。こうした脱炭素化が難しい地域で成果が上がれば、同省が目指す「脱炭素ドミノ」を強く後押ししそうだ。

一方、初回選定から3年経つ中、計画通りにいかない事例も散見されるように。昨年、奈良県三郷町が事業の遅れのため、兵庫県姫路市は高額な費用を理由に辞退した。また今年2月、評価委が第1、2回選定者を対象に実施した中間評価では、進ちょくの遅れや実現への課題を抱えている例を複数確認し、計画見直しやスケジュールの再検討などを求めた。

これまでに約1925億円の予算を投じており、引き続き成果が厳しく精査されることは避けて通れない。


NEWS 03:議論の材料出そろったKK 7号再稼働は時間切れか

4月の県民投票条例否決以降、柏崎刈羽原発の再稼働議論は、本格的な県民意思の「見極め期間」に突入した。

5月に入り、新潟県は重大事故時の「緊急時対応」の原案を取りまとめ、重大事故時の被ばく線量シミュレーションを公表。安全対策が機能することが前提となっており、地元紙は福島事故のような「想定外」を考慮していないと反発するが、「国際原子力機関(IAEA)の基準を上回る被ばくを避けられる」と結論付けた。避難道路を巡っては、国費での整備が決まった幹線道路を巡る国と県の協議が動き出し、花角英世知事は国に対して交付金の対象拡充などを求める要望を行った。同氏は今後、こうした議論の材料を提示し、県議会の公聴会や首長との対話、県民の意識調査を通じて、再稼働の是非を判断する。

ただ、国や東京電力が目指す今夏の7号機再稼働は「時間切れ」との見方が大勢だ。同機は今夏に稼働したとしても、10月に特定重大事故等対処施設の設置期限を迎えて運転停止となる。そこで、関係者は1カ月だけでも動かした上で、10月に6号機へとリレーする構想を描いていた。「とにかく7号機が動いたという実績が重要だ」(中堅県議)。知事の再稼働容認後、6月の県議会で意見を集約し、7月の参院選前に再稼働を決めるという具体的なスケジュールを語る関係者もいたが、間に合いそうにない。

新潟県は1年後の来年6月に知事選を控える。昨年春、ある若手県議は「知事の判断は任期満了までもつれる気がしている」と漏らしたが、その可能性が現実味を帯びてきた。国や自民党は選挙での争点化を避けたいのが本音で、今夏の参院選と知事選のはざま、つまり「年内」の6号機再稼働が当面の目標か。


NEWS 04:ドイツ新政権が核融合に意欲 世界初の建設を政策目標に

ドイツの新政権が、核融合発電の分野で世界をリードする姿勢を明確にした。4月9日公表の連立協定には、世界で最初の核融合発電所の建設を目指す政策目標が盛り込まれた。

現在、ドイツでは四つの新興企業が核融合の実用化に向けて開発を進めている。プロキシマ・フュージョン、ガウス・フュージョン、マーベル・フュージョン、フォーカスト・エナジーの4社で、それぞれ異なる技術方式を採用している。

独新政権は核融合分野で覇権を握れるか

このうち、高温高圧プラズマを磁場に閉じ込める「磁場閉じ込め方式」には、プロキシマ社とガウス社が取り組む。プロキシマ社は、ステラレーターを採用し、早期の試験運転を目指している。一方、マーベル社とフォーカスト社は、レーザーを使って核融合を起こす「慣性閉じ込め方式」に取り組む。フォーカスト社は、2035年までに南西部ビブリスで核融合発電所を建設する計画で、レーザー機器大手トルンプ、RWE、ダルムシュタット工科大学、重イオン研究所GSIと連携してプロジェクトを進める構えだ。

核融合の建設には、プラズマ状態維持の実現など技術的な壁は高く、4社は30年代以前の試験開始は想定していない。一方で、中国は20年代中の実験炉稼働を目指しており、核融合技術を巡る覇権争いは激化の様相だ。独新政権が掲げる「最初の建設」へ、いかに開発競争を勝ち抜くかが問われる。

脱炭素と産業競争力の両立 日本は欧州の〝反省〟を教訓に

【論説室の窓】竹川正記/毎日新聞 論説委員

世界の脱炭素化をリードしてきた欧州が産業空洞化に直面し、軌道修正に動いている。

産業競争力との両立は日本にとっても大きな課題で、教訓をくみ取る必要がある。

欧州連合(EU)の脱炭素化目標は野心的で、短期的に(経済や企業に)追加コストをもたらしている。産業空洞化につながる場合、政治的な持続可能性が危うくなる恐れがある─。

EUの執行機関である欧州委員会の依頼を受け、イタリア前首相で欧州中央銀行(ECB)総裁を務めたマリオ・ドラギ氏は昨秋、「欧州の競争力の未来」と題した報告書を発表した。EUの産業競争力が米国や中国に比べて劣っていると分析。その要因として脱炭素化に関わる規制のコストの重さと、産業政策の拙さを挙げた。温暖化対策のけん引役が直面する厳しい現実を浮き彫りにした。

2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標の下、欧州各国は脱炭素化の推進を通じて経済成長を目指す包括的な戦略「欧州グリーンディール」を進めてきた。しかし、厳しい規制という「ムチ」に偏った脱炭素政策は鉄鋼や化学など域内のエネルギー集約型産業の重荷となり、国際競争力低下を招いたほか、再生可能エネルギーやEVなどの新産業も思うように育っていない。

一方で、域内の大企業は野心的な脱炭素目標の達成に向けた多額の投資を強いられた上、世界的なインフレによる生産コスト上昇に直撃され、経営苦境に陥っている。近年は製造拠点の閉鎖や大規模な人員削減などが目立ち、産業空洞化リスクが現実味を帯びている。

日本と似た課題を抱えるEU


「不都合な真実」を直視 エネ政策にも注文

ドラギレポートは、この「不都合な真実」を直視し、現状のままでは脱炭素化の取り組みも頓挫しかねないと警鐘を鳴らした。とりわけ欧州経済の屋台骨である自動車分野については、十分な産業政策を伴わないまま、国の介入で急激なEVシフトを進めようとしたことを「失敗例」と批判した。ガソリン車で優位だった独フォルクスワーゲンなどの域内メーカーは、次世代車への事業転換を円滑に進められなかった一方で、EV市場は価格競争力が高い中国メーカーや、デジタル技術との融合に優れた米テスラに席巻されたからだ。

注目すべきは、エネルギー政策にも注文を付けたこと。化石燃料全般を忌避するような考え方と一線を画し、水素など次世代エネルギーが実用化されるまでの「トランジション」としての天然ガスの重要性を強調した。火力発電の燃料として中長期的に活用することを前提に、ガスの共同調達などにより、エネルギーコストの低減に努めるよう促した。

脱炭素化を進めるに当たっても、特定の技術を排除せず、費用対効果の優れた方法を探るように求めた。欧州委はこれまで再エネ拡大と、一定程度の原子力活用を柱にエネルギー政策を組み立て、次世代エネルギーである水素の早期実用化につなぐシナリオを描いてきた。

【覆面ホンネ座談会】不透明な時代の主導役 大手電力・ガス人事の注目点

テーマ:電力・ガス人事と評価

大手電力・都市ガス業界では東北電力、九州電力、東邦ガスの3社がトップ交代。エネルギー情勢の先行き不透明な中で、現トップの経営判断が企業の命運を左右しかねない。今後の人事予想と経営評価について語り合った。

〈出席者〉 Aアナリスト B電力業界関係者 Cガス業界関係者

―まず大手電力会社から。東北電が樋口康二郎さんから石山一弘さんに社長交代し、九州電は6月に池辺和弘さんから常務の西山勝さんにバトンが渡る。サプライズのない順当なトップ人事と言われているが。

A 両社とも、数年前から予想されていた通りのトップ交代となった。九州に関しては実はもう一人社長が必要で、ホールディングス(HD)体制への移行と同時であれば取締役の中野隆さんが有力視されていた。ところが中野さんの退任が決まってしまった。HD化を来年以降に控え人事予想が不透明になってきた。

B 西山さんと中野さんがHDと新九電の社長と見られていたから、九電社内はショックもあるようだ。HD化のタイミングで中野さんが復帰することはあり得なくないけど、その目はほぼ消えたのかな。

C HD化のポイントは再エネ新社の立ち上げにあるが、それが遅れていると聞く。HD社長には池辺さんか、西山さんがスライドするかだろう。後者の場合、取締役への昇格が決まった中村典弘さんが次期社長候補に浮上してくる。

デジタル産業は電力経営にどのようなインパクトを与えるか

―新社長にとっての経営課題は。

B 石山さんにとっては、女川2号の再稼働後をどうかじ取りするかが非常に重い課題だ。審査では東通1号が先に進んでいるけど、地震や大津波への安全対策で時間もお金も相当かかるらしい。合理的に考えたら女川3号を優先するべきだけど、地元の納得を得るのが難しそう。青森県内だから中途半端に対応してしまうと、六ヶ所の核燃料サイクルにも影響しかねないしね。非常に難しい立ち回りが求められる。

A 西山さんにとっての経営課題は原子力の新設。ずばり川内3号をどうするかだ。廃炉を決めたサイトではなく、廃止を決めた電力会社の他サイトでも新規建設ができることになり、川内3号が意識されていてプレッシャーが高まったんじゃないかな。固定費回収の仕組みやファイナンス支援の制度が整っていないので具体的にはまだ先の話だが、いずれにしても新社長として矢面に立って調整していくことになる。

C 九電はHD化に合わせてグループ会社を整理統合しようとしていて、これに結構な時間と労力がかかっている。部門ごとに他社とのアライアンスを組みやすくするという狙いがあるのは確かだろうけど、池辺さんの問題意識は社長の業務の7割を原子力が占めてしまっていることにある。HD社長はグループ全体の事業を統括し、小売り・発電会社の社長が原子力を見る―とすみ分けをしたいのが本音のところだ。

B 東京電力HD、中部電力はそれができなくてHDが原子力を引き継いでしまった結果、社長が奔走せざるを得なくなったしね。同じ轍を踏みたくないという思いは理解できる。九州モデルがうまくいくと、各社に波及していくかもしれないね。

スペイン・ポルトガルで大停電 再エネ大量導入が主因か

4月28日、スペインとポルトガルで大規模な停電が発生した。欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO―E)によると、同日12時32分ごろ、スペイン南部で推定220万kWの大規模電源脱落が発生。イベリア半島の周波数が低下し、閾値である48・0Hzに達した。これにより、フランスとの交流連系線が遮断されたことで、ブラックアウト(全域停電)に陥った。

4月29日、スペインの首都マドリードのアトーチャ駅で列車を待つ乗客
提供:AFP/アフロ

発端となった電源脱落の原因は不明だが、専門家の間では全域停電に至ったのは、大量導入された太陽光発電が主因との見方が有力だ。スペインでは太陽光や風力といったインバーター電源が主力で、停電直前に再生可能エネルギーが発電量の約7割を担っていた。ポルトガルも、輸入への依存度が高く、自国内の系統柔軟性に乏しかった。イベリア半島ではかねてから、再エネ大量導入に伴う系統の脆弱性が指摘されていたにもかかわらず、対策を講じてこなかったことが、この事態を招いたと考えられる。

さまざまな憶測が飛び交う中、スペインの送電系統運用者であるレッド・エレクトリカ(REE)からは、いまだに明確な原因説明がない。学識者は「REEは経営幹部の大半を再エネ急進派が占めており、太陽光のせいにしたくないばかりに、情報が出てこない」と、公式発表の遅れの背景を推測する。

スペインでは現在、フランス間の連系線(220kW)の整備事業が2028年の運開を目指して進められている。その完成までの間に必要な対策を講じるためにも、早急な原因究明が求められる。

【イニシャルニュース 】上下水道で大幅値上げ 電気ガスと何が違う?

上下水道で大幅値上げ 電気ガスと何が違う?

外国人の不法滞在・就労問題で世間を騒がせているS県K市。去る3月の審議会で、上下水道料金の大幅値上げが全会一致で了承された。上げ幅は、水道料金が平均26・74%(1カ月20㎥使用の一般家庭で約948円)、下水道料金が27・16%(同約540円)で、合計約1500円になる。

燃料油、電気、ガスの各料金については政府が価格高騰対策の一環として、この3年間で10数兆円規模の巨額補助金を出すほど、料金抑制が国家的課題となる中で、上下水道料金値上げへの批判も高まるかと思いきや、「意外にも、市民の多くは冷静に受け止めているようだ」(K市A議員)。

その背景にあるのが、上下水道官の老朽化が原因とみられる破損事故が全国で相次いでいることだ。埼玉県八潮市では下水管の破損によって道路が陥没し、トラックの運転手が巻き添えに。京都市や大阪市では水道管が破裂し、周辺道路が冠水した。

「審議会では、市民生活に欠くことが出来ない社会インフラである水道・下水道を維持していくため、料金改定はやむを得ないとの判断になっている」(K市F議員)。市民にしても、上下水道事故の被害をニュースなどで目の当たりにしているだけに、値上げは受け入れざるを得ないと考えているようだ。

経年管対策は待ったなしだ

こうした状況に対し、複雑な思いを抱いているのが電力・ガス業界関係者だ。「インフラの老朽化という意味では、都市ガスも同様の課題を抱えている。しかし、その対策のために20%以上もの値上げが許されるとは思えない。そもそも、そうした事態にならないよう、経年管対策についてはかねてから計画的に取り組んできた。自治体を批判したくはないが、上下水道事業についても計画的な経年管対策を講じていれば、深刻な破損事故や突然の大幅値上げは未然に防ぐことができたと思う」(地方都市ガス会社幹部Ⅹ氏)

インフラの保守メンテ対策に継続的に取り組み、かつ小売り全面自由化の中で競争しながら料金低廉化にも力を入れている電力・ガス事業者。しかし政府からは、それでも料金が高いという理由で補助金が出されるありさまだ。「上下水道料金も生活に直結するものだが、物価高対策の一環として、その料金は国が支援しなくていいのだろうか」。Ⅹ氏が投げかける疑問はもっともだ。


変わる経産省のスタンス 東電再建への影響は?

経済産業省の目下の政策課題のひとつとして挙げられるのが、東京電力ホールディングスの経営再建問題だ。東日本大震災後の2012年に、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が実質国有化して以降、官僚を経営上層部に送り込み、福島第一原子力発電所事故後の賠償や廃炉、東電の経営改革を主導してきた。

かつて取締役として陣頭指揮を執った経産OBのS氏は、今も次世代半導体の国産化を目指すラピダスと原賠機構双方の顧問を務めており、東電経営問題に強く関与し影響力を持ち続けていると見られる。

では現役官僚はというと、どうか。大手エネルギー業界関係者のX氏は「現在取締役を務めるY氏の後任が、今の官僚の中にいるようには見えない」といぶかしむ。電力業界関係者のZ氏も、「むしろ、現役官僚は少しずつ東電問題から距離を置こうとしている雰囲気すら感じる。ひょっとすると、Y氏が最後になるのかもしれない」と予想を語る。

福島事故から11年が経過し、直後の修羅場をかいくぐった人物が省内にいなくなっていく中で、経産省の東電問題との向き合い方も変化しつつあるということなのだろう。

だが、かつてS氏は「東電問題は50年、100年かかる事業であり、歴史と向き合う事業。担当が変わったからじゃあよろしく、では済まない問題だ」と語っていたという。

柏崎刈羽原発の再稼働が遅々として進まず、経営再建の道筋が見通せない中で「第5次総合特別事業計画」の策定も延期せざるを得なかった。官僚のスタンスがどうであれ、1兆円もの国の資金を突っ込んでいる以上はグリップをきかせ続けるしかないのだ。

豪連邦選挙で現政権が圧勝 COP31誘致へ脱炭素に拍車

5月初旬に投開票された豪州の連邦総選挙は、現政権の労働党が過半数を大幅に上回る90議席超を獲得する圧勝に終わった。原子力発電所の導入などを公約に掲げて3年ぶりの政権奪還を狙った野党連合盟主の自由党は歴史的大敗を喫した。政権維持に成功したアルバニージー首相は選挙前とほぼ同じ布陣で新内閣を発足させ、2026年の国連気候変動枠組み条約第31回締約国会議(COP31)の誘致に取り組む。

下院選挙で勝利し、歓声を受ける豪州のアルバニージー首相
提供:共同通信社

定数150議席で争われた今回の選挙は、労働党が90議席超で改選前から15議席以上増やすことが確実。もともと強かった都市部に加え、保守の地盤である地方でも議席を伸ばした。一方の野党連合(自由党・国民党)は40議席の確保がやっとで、改選前から13議席以上失う計算だ。地盤だったクイーンズランド州で大幅に議席を減らし、自由党のダットン党首が落選するという憂き目に遭った。

アルバニージー政権はこの選挙結果を受けて、再エネを中心とする脱炭素政策を強力に推進していくとみられる。9月には35年以降の温室効果ガス国別削減目標(NDC)を国連に提出する予定だが、関係者は「来年のCOP31誘致を成功させるためにも、相当高い削減目標を示すのではないか」とみる。

改選前の現政権は日本企業に対し「脱炭素に積極姿勢が見られない」などと不満を漏らし、一部企業が冷遇されることがあった。豪州内に拠点を持つ大手企業の関係者は「世界の趨勢とは真逆になる豪州ではビジネスのメリットが見いだせなくなるかもしれない」と嘆息をつく。