東電再生の鍵握る柏崎刈羽再稼働 花角知事が背負う重い「公約」

花角英世新潟県知事は、柏崎刈羽原発の再稼働について、「県民の信を問う」と公約し当選を果たした。しかし、具体的にどう信を問うかは示されず、次の知事選を前にして、公約が知事の肩に重くのしかかっている。

「(福島原発事故の原因、健康・生活への影響、避難計画の)検証結果は広く県民の皆さんと情報共有するとともに、県民の皆さんの評価をいただき、納得いただけるか見極めます。その上で、結論を得て〝県民の信を問う〟ことを考えます」―。

2018年の新潟県知事選。花角英世知事(自民・公明支持)は柏崎刈羽原発の再稼働についてこう公約し、再稼働阻止を訴えた池田千賀子氏(立憲民主・国民民主・共産・自由・社民推薦)との接戦を制した。

福島第一原発事故の後、東京電力の同型の原発が立地する新潟県には、原発への逆風が依然強く吹く。再稼働について明言を避け、「県民の信を問う」とした戦術が、勝利に大きく貢献したことは明らかだろう。

知事選から約2年半。花角知事は、その「信を問う」時期を迎えようとしている。再稼働の前提条件となる国、県による安全性などの検証、確認の作業が最終局面に入ったためだ。

柏崎刈羽6、7号機は原子力規制委員会による新規制基準の適合審査に「合格」し、今年に入り保安規定も了承された。7号機は設計・工事計画も認可されている。 知事が県民の評価を求めるとした県の三つの検証委員会(①県技術委、②健康・生活委、③避難委)も検討が進む。最も重要視される県技術委は9月、福島事故の原因などについて報告書案を了承。柏崎刈羽原発の安全性確認の作業を本格化させる。

来年の前半にも全ての検証結果が示され、再稼働に向けての課題が整理、提示される見通しだ。結果が出そろえば、残るステップは県、柏崎市、刈羽村の「地元同意」だけになる。

福島事故の賠償・廃炉の負担を抱える東電は、企業存続のために年5000億円の収益確保を目指す。柏崎刈羽の再稼働は、その大前提となる。また国にとっても、「原子力政策での最優先事項」(経済産業省幹部)。非効率石炭火力のフェードアウトなど低炭素化の政策を進めるうえで、柏崎刈羽の再稼働は、安定・低廉な電力供給に欠かせない。梶山弘志経産相も運転再開を重視し、自民党県連の小野峯生幹事長は、「この半年間で経産省の柏崎刈羽再稼働への力の入れようが、大きく変わった」と話す。

国土交通省出身の花角知事は二階俊博運輸相(当時)の秘書官を務め、今も与党、霞が関に太いパイプがある。知事は再稼働について、「検証結果が出てから議論を始める」と言葉を濁している。しかし、国の意向、中央政界との密接な関係、運転再開による経済効果などを考えると、既に再稼働の意向を固めたと考えるのが自然だろう。

どう信を問うのか 戸惑う県政界関係者

では、知事はどう具体的に信を問うのか―。県政界関係者は「分からない」と口をそろえる。だが、県政与党の自民党県連には、できるだけ避けたいことがある。再稼働が「ワンイシュー」になる選挙をしないことだ。

16年の知事選で、自民・公明党は長岡市長の森民夫氏を推薦した。これに対して、原発問題を争点化したい共産・自由・社民党などは米山隆一氏を擁立。再稼働容認の考えを示した森氏は、元建設省官僚、全国市長会長などの経歴、実績を掲げながら落選。連合新潟の支持も取り付けた森氏の敗北は、県政界に衝撃を与えた。「知事選で(再稼働が)ワンイシューになったら、結果が厳しくなることは分かっている」。小野幹事長はこう漏らす。

一方、東電関係者の胸中には再稼働のモデルケースがある。新潟県中越沖地震(07年7月)後の柏崎刈羽の運転再開だ。

最大震度6強のこの地震で、柏崎刈羽原発は設計時の想定を超える揺れを観測した。3号機変圧器が火災を起こし、使用済み燃料プールの水が漏れ、微量だが放射性物質が海に流出。県民の原発に対する不信感が一気に高まった。

東電は地震で受けた被害の修理や耐震補強工事を行い、県も独自に技術委員会を設け、安全性の検証、確認を実施。それら一連のプロセスを経て、再稼働の最終判断は泉田裕彦知事(当時)に一任されることに。

中越沖地震後の08年10月の知事選で、泉田氏は再稼働への言及を避けて再選を果たした。その泉田氏は、09年5月、次の知事選(12年10月)を待たずに県議会全員協議会で同意の考えを表明している。

花角知事が判断する時期が近づいている

柏崎市・刈羽村は容認 知事同意には反発も

櫻井雅浩柏崎市長、品田宏夫刈羽村長は、既に再稼働容認の意向を示している(11月15日に柏崎市長選があるが、櫻井氏の当選が確実視されている)。花角知事が県議会の了承を得て、首を縦に振れば、再稼働は実現する。

しかし、中越沖地震後の泉田氏のように、選挙を経ずに運転再開に同意すれば、「信を得ていない」と反発は避けられない。次期知事選(22年6月)での再選にも大きく影響するだろう。

自民党県連は、泉田知事、米山知事とはぎくしゃくした関係が続き、県政は停滞した。それだけに花角知事への信頼は、「ぜひ再選してほしい」(小林一大県連政調会長)と厚い。知事だけが再稼働判断の重荷を負わないよう、「場合によっては、われわれが盾になる」(同)とも考えている。

新潟県の抱える課題は柏崎刈羽だけではない。財政難は深刻で、またコロナ禍の不況が経済、暮らしを直撃している。

そこで、こんな案がある。東北電力が主体となり、東電が出資して電力小売り会社をつくる。そこに柏崎刈羽の電気を卸供給し、県内の企業・工場などに割安の価格で販売して経済の活性化を促す―というものだ。

県民の間には、再稼働しても電気は首都圏で使われ、リスクだけでメリットがないという不満がある。国、東電がこういったプランを多く示すことが、「同意」への反発を和らげるかもしれない。

【マーケット情報/10月30日原油急落、コロナウイルス感染再拡大で売り加速】

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み急落。新型コロナウイルス感染再拡大による需給緩和観が強まり、売りが加速した。

新型ウイルス感染拡大の第二波を受け、フランスが30日から、1か月のロックダウンを開始。ドイツも11月2日から移動制限を導入し、経済活動の縮小、および石油需要後退に対する懸念が、価格を一段と下押した。米国でも、ガソリン消費の中心地である中部で、感染者が急増している。

需要低迷の観測が強まるなか、リビアでは26日、El Feel油田のフォースマジュール解除を以って、全ての油田と輸出設備が再稼働となった。また、米国の石油サービス会社ベーカー・ヒューズが発表する国内石油ガス採掘リグの稼働数は、7週連続で増加。相場へのさらなる重荷となった。

【10月30日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=35.79ドル(前週比4.06ドル安)、ブレント先物(ICE)=37.46ドル(前週比4.31ドル安)、オマーン先物(DME)=37.65ドル(前週比4.68ドル安)、ドバイ現物(Argus)=37.17ドル(前週比4.45ドル安)

【北陸電力 金井社長】新たな価値を創造し 地域社会との共存共栄と課題解決に貢献する

地域の産業・生活の発展を支える北陸電力。再エネを含む最適な電源構成で低廉な料金水準を実現するとともに、多様なサービスを積極的に打ち出している。

かない・ゆたか
1977年東大工学部卒、北陸電力入社。2004年原子力部長、07年執行役員原子力部長、10年常務取締役、13年副社長、15年6月から現職。

志賀 新型コロナウイルス禍における電気の安定供給に向け、どのような対策を講じていますか。

金井 電気の安定供給は、当社の使命の一丁目一番地です。安定供給確保に必要な業務運営体制を確保しつつ、電力供給の要となる発電所の中央制御室、ネットワーク部門の中央給電指令所や総合制御所などの交替勤務の職場においては、従業員の立ち入りを必要最小限にとどめたり、交代要員を分散して執務させることでほかの班に所属する従業員同士が接触しないようにしたりと、対策を講じてきました。

一方、ほかの従業員には、通勤時の混雑回避のため時差出勤や在宅勤務を推進、交代勤務者を除き当社の約4割の従業員が在宅勤務に取り組みました。加えて、会議室を執務スペースにするなどし、事務所内でも従業員同士の距離を確保するなど、できる限りの対策を講じています。

志賀 ウィズコロナ時代に合わせた働き方改革が不可欠です。

金井 在宅勤務により、通勤時間を有効利用できることや、より業務に集中できるといったメリットが明確になり、その半面、通信環境のさらなる充実の必要性など課題も見つかりました。通信環境については現在、自宅から安全に社内システムへ接続する環境を構築中です。ウィズコロナ時代において在宅勤務の実践は不可欠であり、業務の在り方を大きく変えるチャンスでもあると認識しています。定着を図りながら、柔軟な働き方や労働生産性向上につなげていきたいと考えています。

北陸エリアの電力需要 産業用中心に減少

志賀 コロナ禍による経済活動の低迷で、電力需要にはどう影響したでしょうか。

金井 北陸地域は産業用需要の比重が高いのですが、当社をはじめとする小売事業者全体の北陸エリアにおける電力需要は、第1四半期(4~6月)の前年同期比5・6%減に対し、7月には9・0%減まで減少幅が拡大しており、地域経済の低迷の長期化を懸念しています。当社の小売り販売電力量だけを見れば、首都圏エリアで新規契約を順調に拡大していることもあり、北陸エリアほど悪くはない状況です。ただ、この先何が起きるか分かりませんので楽観視はしていません。

志賀 経済産業省が進めている非効率石炭火力のフェードアウト政策についてはどう受け止めていますか。

金井 既に第5次エネルギー基本計画でも非効率石炭火力のフェードアウト目標を掲げていましたが、突如として2030年と年限を切り、非効率石炭を「亜臨界圧(Sub-C)」「超臨界圧(SC)」と型式で定義されたことに大変驚きました。例えば当社の敦賀火力1号機は、外形上は「非効率石炭火力」に該当することになりますが、建設時の設計発電効率は42・2%と、当初から超々臨界圧(USC)とそん色ない水準です。その後も高中圧タービンの改造を実施し、21年度にはさらなる効率向上のため低圧タービン改造を予定し、改造後は43%程度まで上昇する見込みです。  電力会社の社会的使命として、CO2削減とともに、低廉で安定的に電力を供給することも重要です。石炭火力は、安定供給と電気料金の低位安定に非常に大きな役割を果たしていますので、効率の高いプラントについては残していただけると確信しています。 本政策の目的はあくまでCO2排出削減であることから、石炭火力単独で検討するのではなく、大きな効果を見込める原子力の再稼働の推進と事業環境の整備についても積極的に取り組まなければなりません。原子力の再稼働には不確実な点が多く、供給力確保に責任を負う立場からは、非効率火力の削減計画策定に当たってこのようなリスクも考慮する必要があると思います。

定期点検時のタービン取り替えによる石炭火力の高効率化も(七尾大田火力2号機)

【省エネ】需要家の義務 合理的な政策を

【業界スクランブル/省エネ】

米国の一部の州や欧州などの一部の国では、エネルギー供給事業者に「需要家の省エネ義務」を課す制度がある。1994年に英国が初めて実施した制度だが、電力・ガス料金に加算して、需要家から「エネルギー事業者が実施する需要家省エネ対策費用」を徴収する制度である。各エネルギー事業者は規制当局が定めた目標省エネ量を達成するために、高効率機器購入時や建物断熱改修時の補助金、省エネアドバイスプログラムなどを実施する。国内の再エネ電力固定価格買い取り制度(FIT)も再エネ電力購入時の追加買い取り費用を全需要家から徴収しており、その省エネ対策版と考えるとイメージしやすい。また、他事業者の需要側省エネ量を「ホワイト証書(再エネにより削減される削減量証明書がグリーン証書で、省エネにより削減される削減量証明書がホワイト証書)」として取引する制度を導入しているケースもある。

国内導入是非の論点としては、国民に対する省エネの推進実務を誰(例えば経産省・環境省、省エネルギーセンターのような団体、エネルギー小売り事業者など)が担うのか。また、「短期で投資回収可能な自立的普及状態の省エネ対策」や「規制により導入義務がある省エネ対策」以外は補助金などによる経済的な支援措置が必要となるが、この追加的な費用をどう徴収(例えば、石油石炭税などを値上げしてエネルギー対策特別会計から捻出、電力・ガス購入時の賦課金としてエネルギー事業者が追加徴収)するか。国の温暖化対策目標でも省エネは重要な位置付けを占めており、省エネの実質的な目的は温暖化対策であることから、「再エネ100%のグリーン電力メニューを購入している電化住宅+EV所有」と「燃焼式熱源を使うCO2排出量の多い住宅+ガソリン車所有」などのモデルケースを比較して負担金額がどう変わるか。当該負担の差は政策的に妥当・公平と言えるかを検討しながら、海外制度の導入是非を検討し、日本にとって、合理的で政策費用対効果の高い省エネ促進方策を実現する必要がある。(Y)

【住宅】RE100に加盟 事業内容との相性

【業界スクランブル/住宅】

環境貢献を社会にアピールできる国際環境イニシアチブ「RE100」の加盟企業は世界で250社を超え、うち日本企業は38社 (2020年9月時点)あるようだ。このうち少なくとも7社は大手企業を含む住宅企業であり、その比率は高いように見受けられる。この要因について2点を述べる。

住宅に関してはZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)という明確な環境政策があり、新築住宅における太陽光発電の搭載比率は拡大している。FIT法での10年買い取りを超えたユーザーの余剰電力を市場より高く自社で買い取ることでユーザーへの経済的なサービスを提供するとともに、再生可能エネルギーを自社の活動に利用してRE100も実現するという「一石二鳥」が当てはまる好例であろう。

製造の観点では、住宅企業は、部品を関係企業より調達し、これを現地で組み立てるのが事業の基本である。躯体(木造、鉄骨)、外装・屋根材、内装材、設備(キッチン、バス)、電設資材など、一部例外を除いて自社では製造せず外部から調達している。RE100では調達する部品の製造時エネルギーは評価の対象外となるので、住宅企業にとっては有利になると考える。RE100企業には製造業が少ないと思われるが、エネルギーを多く使って素材を製造するような企業にとってはRE100のルール自体が偏ったものに見えるのではないだろうか。

RE100に関しては、ややひねくれた私見であるが、RE100の住宅企業がもし調達コスト優先で、海外のエネルギー効率の悪い工場で製造され、長距離輸送された部品を利用したとしても、その会社はRE100を達成できる。

国の政策では、国内産業活性化のために製造業の国内回帰を促している。それであればRE100に偏重することなく、国内の製造業を正当に評価できるような制度も加えていき、ライフサイクルでの総合的な環境評価ができるようなシステムへと進化していくことを望む。(Z)

【太陽光】環境ガイドライン 地域への周知に重点

【業界スクランブル/太陽光】

2020年から太陽光発電所が環境影響評価の対象事業となった。これに伴い、地方公共団体による環境影響評価の条例化も広がっているとされる。また、法や条例の対象にならない規模の事業における環境配慮への取り組みに向け、環境省から「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」が公表されている。

このガイドラインは自主的な環境配慮の取り組みを促すものであり、その手順として、地域とのコミュニケーションの必要性、設計段階の環境配慮として事業の内容、立地場所や周辺環境について、チェックリスト形式でポイントが示されている。

特に、初めに地域とのコミュニケーションに関して多くの解説がなされている。市町村や都道府県などへの事前相談、地域住民などへの周知・説明についてなどだ。地域の自然環境に対する配慮内容を示すものと思い読み始めたが、まず地域の理解が必要であるという構成に納得した。

地域とのコミュニケーションが十分でない場合が多く散見されるのだろう。地域の文化や特有の動植物などの状況を知るには時間もかかるが、事業の立地検討段階での取り組みが重要であることがガイドラインから理解できる。一方、環境といえば、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた検討も具体的になってきており、FIP(フィードインプレミアム)制度の詳細な設計についても議論が進んでいる。その中には非化石電源で発電された電気に付随する価値である環境価値の取り扱いがある。

環境配慮ガイドラインの環境と、環境価値の環境を無理に関係付けるわけではないが、環境に配慮した取り組みがあっての環境価値ではないだろうか。辞書を引くと、「環境」とは「周りの世界」とある。周りの世界を広く捉えられるか、狭く捉えられるかによって、意識する「環境」は大きく異なる。地域への環境配慮が環境価値の創出を推し進め、地球全体への環境配慮とつながる貢献とはどういったものか、考えるきっかけとなった。(T)

【再エネ】帯水層蓄熱の活用 都心利用に可能性

【業界スクランブル/再エネ】

昨年から始まった国土交通省のスマートシティモデル事業は、先日追加公募の採択テーマが公表され、先行モデルプロジェクトと重点事業化推進プロジェクトが出そろった。交通の利便性、自然との共生、省エネ、資源循環などを目標に、新技術とデータを活用して都市・地域の課題を解決するプロジェクトである。

よく似た名前のコンセプトにスマートコミュニティがある。こちらは電気の有効利用に加え、熱や未利用エネルギーも含めたエネルギーの面的利用や地域の交通システムなどを複合的に組み合わせたエリア単位での次世代のエネルギー・社会システムである。

スマートシティでは、ほとんどのプロジェクトで交通・モビリティーが取り上げられているが、エネルギーを取り上げているのは全体の3分の1にすぎない。ここが資源エネルギー庁主導のスマコミと大きく違うところである。もちろん共通点はある。スマートシティはデータ活用を重視しているので、スマコミでのエネルギーマネジメントとは同じ方向性をもつ。この流れの中にあるのが「柏の葉スマートシティ」である。

それでは、再エネはどうだろう。残念ながら指で数えるほどしかない。その事例を見ていくと、宇都宮市でLRT(次世代型路面電車システム)やバイオマス発電、埼玉県毛呂山町で下水熱利用――と、どことなく国土交通省色が感じられる。

さて、大阪市がスマートシティで取り上げている再エネの中に、帯水層蓄熱という見慣れない言葉がある。調べてみると、大阪駅北側の再開発「うめきた2期」で取り上げられている。環境省プロジェクトで、地盤沈下を起こさないで地下水の熱を利用するために開発された技術である。CO2排出量の大幅な削減ができるが、東京・大阪の区域はビル用水法により規制されているため地下水利用ができない。そこで大阪市は国家戦略特別区域事業を申請し、2019年に国に認められた。大阪の国家戦略特区で成功すると、東京でも可能性が広がる。帯水層蓄熱はまだあまり知られていない再エネ技術だが、大化けするかもしれない。(S)

【コラム/10月26日】急速な電子化社会へ弱者はどうする

新井光雄/ジャーナリスト

いつごろだったろうか。デジタルデバイドなる言葉がはやった。直訳的には「情報格差」といったところで、分かり易くは、パソコンを使える人、使えない人の格差といったところだったかもしれない。さすがに、もうそんな記者は1人もいないと断言できるのだろうが、1990年代は職場にそんな記者がまだ残っていて、そんな記者のためにパンチャー、打つ担当の社員がまだいた。今や、パソコン哀史か。

このデジタルデバイドが目下、「二次デジタルデバイド時代」ではないかと思えてきた。やや大げさに言うと空前の急速な電子化社会。到底、追いついていけない人。駆使して余裕しゃくしゃくの人。その差が歴然という感じになってきている。正直、どこまで付いて行けばいいのか。この世のなかの関係を結ぶ電子、それに依存する社会はその過渡期にどんな現象を呼び起こすのか。不安が高まる。むろん、社会のデジタル化は世界の必然。なかで日本の遅れは一応、承知なのだが、この遅れている日本で、追いつけていない人が多いのも事実。

あるレストランに予約を入れた。ところがそのレストラン曰く、「ネットで予約すればドリンクのサービスがある」という。

確かにネット予約なら人件費が多少軽減できるのかもしれないが、ネット弱者はそれが面倒、出来ない場合も。そのうえに「ゴートイート」があるの、ないのと悔しいがどうしてよいのかり分からない。象徴的なのは銀行。いよいよ通帳の有料化が始まるらしい。近い将来の個人口座の電子化を促すものだという。コロナがらみの給付金などは大部分が電子化らしいが、また、それに対応できないためのトラブルやら犯罪も発生して、混乱の度は深まっている。ややこしい時代になってきた。

 一次デバイド時代はパソコンが出来る出来ない程度のことで損得、犯罪などに余り関連しなかった気がするが、二次デバイドは個人口座が簡単に絡んでくるような事件すら出てきている。悠長なことを言っていられない。電子化に伴う痛みなのだろうが、被害者的な立場に何時たつかもしれないという社会は生きにくい。多分、あと十年程度で日本全体が電子社会となって、一種の落ち着きを取り戻すのかもしれないが、その間、デジタル弱者は注意深い暮らしを迫られる。  心配なのはやはり犯罪だ。電子犯罪はアナログではないから、電子的な巨額の犯罪が成立する恐れが高いという。銀行口座がもう安心の場でなくなりつつある。しかし、電子化は避けられない。新政権の目玉政策が「デジタル庁」の新設。結構なことではあるが、出来れば、いや、是非、デジタル弱者への配慮を忘れないでほしい。 スマフォをつかえない知人が周囲にまだ いる。皮肉なことに安全なのかもしれないが。

 【プロフィール】 元読売新聞・編集委員。 エネルギー問題を専門的に担当。 現在、地球産業文化研究所・理事 日本エネルギー経済研究所・特別研究員、総合資源エネルギー調査会・臨時委員、原子力委員会・専門委員などを務めた。 著書に 「エネルギーが危ない」(中央公論新社)など。 東大文卒。栃木県日光市生まれ。

  

【マーケット情報/10月23日原油下落、需給緩和の観測強まる】

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み下落。新型ウイルスの感染再拡大と、生産増加の予測で需給緩和観が強まり、売りが優勢となった。

世界各地で新型コロナウイルス感染の第二波が到来し、欧州やイランではロックダウンが再開。経済活動がさらに低迷し、石油需要が減少するとの見方が広がった。

一方、OPECプラスは、来年1月から減産幅を縮小予定。また、リビアの生産量は、19日時点で日量52万5,000バレルまで回復しており、来月下旬頃には日量100万バレルを超える見通し。加えて、カナダ・アルバータ州は12月から、2019年1月以降課されていた減産措置を撤廃。産油量増加の見通しが強まった。

【10月23日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=39.85ドル(前週比1.03ドル安)、ブレント先物(ICE)=41.77ドル(前週比1.16ドル安)、オマーン先物(DME)=42.33ドル(前週比0.08ドル高)、ドバイ現物(Argus)=41.62ドル(前週比0.31ドル安)

【石炭】SDGsでの役割 五つの視点

【業界スクランブル/石炭】

「クリーン・コール」の語呂合わせから毎年9月5日は石炭の日だ。石炭をクリーンなエネルギーとするために努力していることをPRしている。この日を中心に、全国の火力発電所や石炭関連博物館の一般公開、国際会議などが行われてきた。本年はコロナ禍のため8~10日にオンラインで開催し、主要産炭国と消費国の関係者が一堂に会した。

エネルギー移行期におけるクリーンコールテクノロジー(CCT)の位置付けについて活発に議論し、会議後のステートは興味深かった。列記する。

一つ目は「石炭は世界のエネルギーミックスの重要な一翼を担う資源」だということ。国連が目標としているSDGs達成に向け、日本や世界のエネルギーセキュリティーの確保に欠かせない石炭の重要性は変わらないという点。二つ目はコロナ禍での指摘だ。世界全体のエネルギー需要は落ち込んだが、石炭の生産・需要は堅調に推移しており、社会の緊急時におけるレジリエンスとしての重要性が再認識された。

三つ目は「再生可能エネルギーとの共存」だ。再エネが主力電源の一翼を担う2050年ごろに向けて、負荷変動調整などで支える石炭火力発電の果たす役割は大きい。また鉄鋼、セメント、化学などの社会インフラの原料となる石炭の役割も忘れてはならない。四つ目が、今後も石炭利用が見込まれるアジアでCO2のローエミッション化に貢献するCCTの関連投資を積極的に推進する必要があるという点。その際、先進国から途上国へファイナンス面の政策支援が重要だという視点だ。

そして五つ目が「世界のエネルギーアクセス改善問題と気候変動問題の同時解決」だ。SDGsの「誰も置き去りにしない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のためには、途上国を含め全ての人々に「affordable」「reliable」「sustainable」「modern」なエネルギーへのアクセスを確保することが必要だと強調。CO2削減を進めることで、社会に対して成果を示すことが重要だとまとめている。(T)

【石油】迫る米大統領選 水圧破砕とEV

【業界スクランブル/石油】

共和党現職トランプ対民主党前副大統領バイデンの米国大統領選挙も残り1カ月となった。各種世論調査ではバイデンのリードが伝えられているが、トランプの追い上げもあり、専門家の予想は慎重である。隠れトランプ支持者の存在やテレビ討論、さらに、各州選挙人総取りという制度的バイアスもあることから、この段階で勝者を判断するのは早計であろう。

ただ、民主党が政権を奪回する場合、石油業界から見ると、パリ協定やイラン核合意への復帰の問題だけでなく、多くの懸念事項が出てくる。

まず気になるのは、水圧破砕技術の使用制限である。シェールオイル生産技術の中核である水圧破砕法は、地下水汚染の懸念があるとして民主党は一貫して反対している。カリフォルニア州やニューヨーク州では禁止、前回の大統領選の候補となったヒラリークリントンも禁止を公約としていた。

しかし、バイデン候補は、オバマ政権の副大統領時代も、今回の選挙戦でも、水圧破砕には何ら言及していない。シェール生産は米国の国際競争力の根源であり、外交上の武器でもある。バイデン候補のこうした現実的な姿勢、バランス感覚に期待する声は多いといわれている。

電気自動車(EV)の導入政策も懸念される問題である。EUでは、コロナ禍からの経済再建策として、「グリーンリカバリー」が提唱され、再生可能エネルギーや水素エネルギーの拡大がうたわれている。ドイツでは既存SS(サービスステーション)への充電設備の設置が義務付けられた。今後、米国でEVの普及政策がどのように展開されるか気になる。

EVの導入政策は、石油消費のピーク時期にも関わる大問題だ。また、どちらが勝利しても、対中政策は大きく変わらないといわれているが、中国が力を入れている蓄電池技術や次世代自動車技術は、情報通信と並ぶ世界の技術覇権に関わる問題であろう。こうした地球温暖化対策と対中政策が交錯する問題からも目が離せない。(H)

【火力】フェードアウト 穴だらけの議論

【業界スクランブル/火力】

非効率石炭火力のフェードアウトに関し、国の委員会での検討が始まった。

国からの説明によると、全部で140基ある石炭火力のうち114基が非効率石炭火力とされ、そのフェードアウトについてはエネルギー基本計画に明記されているという。確かにエネ基には「非効率な石炭火力発電(超臨界以下)のフェードアウトに向けて取り組んでいく」という記載がある。

2000年以降に建設されている大型設備は、ほぼ高効率の超々臨界圧発電(USC)となっており、「超臨界圧(SC)以下は非効率」という定義は、新設の規制としては分かりやすく、エネ基の「新設の制限」という文言にも合致している。しかし今回の検討で、この定義をいきなり既設にも当てはめようとしたことが大きな混乱の元となっている。

USCは、SCの中で蒸気温度が593℃以上のものを指すとJISで決められているが、両者にそれ以外の差異はない。実際、事業者からのヒアリングでも設備構成の違いや改造により熱効率が逆転する場合があると報告されており、国からも「非効率」石炭火力の定義を型式から熱効率ベースに見直すという方針が示された。この方針転換は、極めて妥当なものであるが、ではなぜ最初からそうしなかったのだろうか? 性能差はほとんどないにせよ、型式として区別されるSC20基余りを非効率とすることで「100基超フェードアウト」というインパクトを優先させたのではと邪推してしまう。

さて、指標を熱効率にしたとしても、バイオマスや副生ガスの混焼、熱の利用などをどのように補正するか、また再エネ拡大のための出力抑制による熱効率低下を正当に評価できるのかなどについて、以前から省エネ法の議論で指摘されていたにもかかわらず結論を出すに至っていない。

立ち止まらず前に進んで行けと言われても、過去の議論を蒸し返すばかりでルールすら決まらないのでは、事業者として対応のしようがない。 (M)

【原子力】特措法期限切れ 問われる本気度

【業界スクランブル/原子力】

来年、エネルギー基本計画の改定の年を迎えるが、最も行き詰まっているのが原子力政策である。2030年20~22%という原発ウエートも非現実化し、稼働率も低下傾向にあり、5兆円以上もの膨大な安全対策費をかけて将来的に原子力は成り立つのか、40年超運転問題も立法化をどうするか、など課題は多い。

原子力の一番安い利用方法は既設原発の長期運転であり、米国は既に80年超運転にかじを切っている。日本の原発低迷は、自由化の導入が原因といえる。自由化は原子力には決定的にマイナス要因であり、自由化市場の中では、原子力の長期投資は進まないのが世界の潮流だ。米英はその点をカバーするためにさまざまな補完策を設けているが、日本はまだ何もやっていない。

そうした中、原子力発電施設等立地地域の振興に関する特措法が、来年3月に期限切れになる。都道府県が原子力施設立地地域の避難道路の予算をきちんと付けておらず、その点をカバーするべく立法化されたものだ。

期限切れを前に今春から自民党が検討を重ね、地元への資金援助のかさ上げという案をまとめた。国庫負担率を50~55%に引き上げ、年8億円程度のかさ上げを目指す。既に、美浜・高浜・大飯の各町が特措法延長の要請を行った。原発立地の地元支援の象徴的なものであり、絶対に終わらせてはいけない。

しかし、その実現化が暗礁に乗り上げている。議員立法には野党の理解・協力が不可欠だ。しかし、野党は原発ゼロ基本法案という課題も持っており、むしろそちらの優先度の方が高く、同じ国会(恐らく通常国会)で、両法案を議論するのは論理的矛盾ともいえる。そこで、「閣法」で特措法を成立するという方法も考えられるが、これまでの政府反応ははかばかしくない。

次期自民党総裁に菅義偉氏が就任したが、どう対応するかは全くの未知数だ。来年3月までに立法が必須だが、もしそれが実現しないと、与党・政府の原子力に対する本気度が大きく問われることになる。(Q)

【LPガス】持続可能性確保へ 官民一体で議論を

【業界スクランブル/LPガス】

人口減少、過疎化が進み、さらには人手不足に伴う物流配送の困難化など、これからの家庭用LPガス販売事業を支えていく供給インフラの維持が徐々に困難になりつつある。2年前に開かれた経済産業省の「次世代燃料供給インフラ研究会」において、ガソリン・灯油を中心とした燃料供給のインフラの在り方が検討され、目指すべき将来像を記載した報告書がまとめられている。

さらにSS(サービスステーション)過疎化問題に関して、総務省消防庁が「過疎地域等における燃料供給インフラの維持に向けた安全対策の在り方に関する検討会」を開催し、SS維持に向けた規制緩和策の検討が行われている。

電力や都市ガスも次世代のインフラ事業の在り方に関する検討が始まっている。しかし、ほかのインフラ事業と比較してLPガス事業は労働集約的要素が最も強く、人手不足、厳しい労働環境(約90kgの充てん容器を運ぶ重労働であり、保安関係資格と知見・経験が必要)により、安定した供給インフラ維持が困難になる可能性が高いといえる。上記の「次世代燃料供給インフラ研究会」では、3回目の会合に全国LPガス協会が提出した「LPガス供給継続の課題と対応、地域への供給継続のための対応策」が課題まとめとして参考になる。

下流の物流供給議論と併せて、LPガスの長期視点に立った上流側の分野である日本LPガス協会がまとめた「LPガスが果たす環境・レジリエンス等への長期貢献について」に記述されている事柄の具現化の可能性とその実行プロセスなど、上流・下流の諸問題を論じ合える場を官民一体となって、学識者、事業者(元売り、卸売り、小売り)、消費者代表を交えて議論する研究会をつくったらどうだろうか。

今までそのような論議の場所がなかった。業界がインテグレーテッド・ユーティリティーとして存在意義を保てるか重要な岐路に立っている中、そのような場であるべき姿を語り合ってほしい。(D)

【新電力】緩やかに進む統廃合 経営環境への影響は

【業界スクランブル/新電力】

小売り電気事業者を買収したい。何か良い案件はないか―。最近、新電力からこのような声が多く聞こえるようになった。背景には、価格下落により法人需要の獲得が進んでいないこと、全面自由化から4年経ち、低圧需要の獲得ペースが鈍化していることもあるようだが、最も大きな要因として、低位で推移した5~7月のスポット価格の影響で新電力各社の収益が好調だったことにあるようだ。

経済産業省の有識者会議(7月28日)の資料では、小売り電気事業者の登録件数は2020年7月時点で662件だが、事業継承72件、事業廃止・解散件数25件と撤退する事業者が目立ち始めている。筆者はコロナ禍のロックダウン期間中に二つの事象に注目し、データ・情報を整理した。一つは戦前の日本における一般供給事業者数の推移、もう一つは現代の英国における小売り電気事業者数の推移である。

まず、戦前日本の一般供給事業者数について。戦前の日本では一般供給事業者数は関東大震災の翌年1924年に618社とピークを記録したが、その後は大正電力戦、昭和金融恐慌、昭和恐慌の影響で徐々に統合が進み、34年には527社まで減少するが、その減少スピードは緩やかであった。本格的な統廃合が進むのは二・二六事件後に成立した広田弘毅・挙国一致内閣で逓信大臣に電力国家統制を唱える頼母木桂吉が就任した後であり、37年470社、38年407社、39年には352社まで減少した。

一方で、現代の英国。2014年に開始された卸取引活性化策を背景に小売り電気事業者数は順調に増加。18年9月には70社を記録するが、その後プライスキャップ制度の導入により小売り電気事業者の収益性が悪化し、徐々に撤退事業者が目立ち、20年3月には58社まで減少した。

これら事例から鑑みるに、小売り電気事業者の統廃合は急激には進まない。緩やかな減少が続くのみであり、市場環境は急に好転しないものとして収益源を探る努力を続ける必要があると考えられる。(M)