【気象データ活用術 Vol.3】加藤芳樹・史葉/WeatherDataScience合同会社共同代表
前回のコラムでは、再生可能エネルギー発電予測開発における時間軸の概念を紹介した。太陽光や風力といった自然変動電源の発電予測をするためには、未来の時間軸―すなわち、未来の日射量や風の予測データが必要となる。そこで今回は、再エネ発電予測で使われる気象庁の数値予報データについて解説したい。
数値予報とは、地球大気や海洋・陸地の状態の変化を、数値シミュレーションによって予測計算する技術だ。地球を細かい格子に分割して、それぞれの格子である時刻の気圧や気温、風や水蒸気量などの気象要素を表現する(図参照)。格子を細かくすると膨大な計算量が必要となるため、気象庁は高速な計算処理を行えるスパコンを導入して数値予報を運用している。

数値予報を行うためには、まず大気の初期状態を表すデータ=初期値を作成する必要がある。気象庁は日本国内だけでなく世界各国の観測データを収集し、さらに衛星観測やレーダー観測なども活用して大気の初期状態を解析し、初期値を作成する。この初期値からスタートし、大気の物理法則に基づいて各気象要素の時間変化を計算していくことで、未来の大気の状態を予測することができるという仕組みだ。
なお、数値予報は現代の天気予報において欠かせない存在だが、それだけで天気予報ができるわけではない。数値予報は気圧や気温などの気象要素で未来の大気の状態を表すにとどまるため、われわれが普段目にする天気や最高・最低気温などの天気予報を作るためには、数値予報の計算結果を天気予報に翻訳するという作業が必要となる。この作業を行うのが気象庁予報官の重要な仕事だ。また統計学やAIの技術も活用されており、これについては別途解説する機会を持ちたい。
話を戻して数値予報データは天気予報だけでなく、さまざまなビジネスや社会課題の解決のために活用されている、もしくは活用するポテンシャルがあるデータだ。気象庁が国土交通省の外局であることは周知の事実だが、やはり航空機や船舶の運航など交通分野では以前から数値予報データが活用されている。比較的最近の活用事例としては、食品の需要予測や飲食店の来客予測などがあげられる。そして再エネ発電予測も、こうした数値予報データの活用実績の一つに数えられる。
数値予報の予測技術は発達を続けており、予測精度も年々上がってきているが、それでも予測の不確実性が存在する。主な理由は二つあり、数値予報モデル自体が完全ではないこと、そして初期値が完全ではないことだ。初期値に含まれる誤差は予報時間が先になるにつれ非線形に大きくなることが知られており、日単位の天気予報は2週間先が限界だろうと言われている。ただし、この弱点を逆手に取ったアンサンブル予報という手法も開発されており、これも別の機会に紹介したい。 気象予測技術は、スパコンの進化やAI技術の応用により進歩を続けている。エネルギー産業にとっても強力な武器であり続けるだろう。














