【論説室の窓】井伊重之/産経新聞 客員論説委員
米国ではトランプ政権の誕生でESG投資の見直し機運が高まっている。
国際的な脱炭素連合から米銀に加え、邦銀も脱退する動きが出てきた。
トランプ旋風が世界に吹き荒れる中で、米国の金融市場でESG(環境・社会・企業統治)投資の見直し機運が急速に高まり、日本にも波及してきた。三井住友フィナンシャルグループ(FG)と三菱UFJFG、野村ホールディングス(HD)が脱炭素を目指す国際的な金融連合「NZBA」(ネットゼロ・バンキング・アライアンス)から脱退し、他のメガバンクなどの国内金融機関も追随する方向で検討を始めた。
NZBAは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする目標を掲げ、融資先企業に厳しい気候変動対策を求めてきた。だが、バイデン前政権の脱炭素政策を強く批判してきたトランプ大統領が誕生し、米国の金融機関は一斉にESG投資に対する姿勢を転換。これに伴って、脱炭素を目指す資産運用会社の国際連合「NZAM」(ネットゼロ・アセットマネジャーズ・イニシアチブ)など脱炭素を促す国際金融連合からの脱退が相次いでいる。
このため、米国の金融市場で活動するに当たって、日本の金融機関の間にも「ESG連合に加盟していることが障害になりかねない」(大手銀行幹部)との懸念が強まり、三井住友FGは米国事業への影響を考慮し、邦銀として初めて脱退を決めた。教条的なESG投資が金融市場を席巻し、必要な電源投資に対する資金の確保が難しくなると問題視されているが、今回の脱退を適切な「トランジションファイナンス(移行金融)」の確立につなげたい。

実質的な活動中止に 適正な移行金融を確立せよ
トランプ大統領は1月の再就任日に、温室効果ガスの排出削減を目指す国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名し、脱炭素政策の転換を急いでいる。大統領選期間中から化石燃料への投資拡大を訴えてきたトランプ大統領は、米国産LNG(液化天然ガス)の輸出増を通じ、「エネルギードミナンス(支配)」を目指す姿勢を鮮明にしている。2月の日米首脳会談で、石破茂首相にアラスカ州のLNG開発を呼びかけたのも、こうしたエネルギー戦略の一環といえよう。
米国の政治体制が大きく変わる中で、これまで金融市場を席巻してきたESG投資への逆風も一気に強まっている。
米国のESG投資を主導してきたSEC(米証券取引委員会)のゲーリー・ゲンスラー委員長がトランプ大統領の就任と同時に任期半ばで退任。これとほぼ同時に、世界最大の資産運用会社として知られる米ブラックロックがNZAMからの離脱を決め、ゴールドマン・サックスやシティグループなど米大手金融機関も相次いで脱退し、NZAMは実質的な活動中止に追い込まれている。















