米国で高まる「反ESG」 日本勢も脱炭素連合から脱退

【論説室の窓】井伊重之/産経新聞 客員論説委員

米国ではトランプ政権の誕生でESG投資の見直し機運が高まっている。

国際的な脱炭素連合から米銀に加え、邦銀も脱退する動きが出てきた。

トランプ旋風が世界に吹き荒れる中で、米国の金融市場でESG(環境・社会・企業統治)投資の見直し機運が急速に高まり、日本にも波及してきた。三井住友フィナンシャルグループ(FG)と三菱UFJFG、野村ホールディングス(HD)が脱炭素を目指す国際的な金融連合「NZBA」(ネットゼロ・バンキング・アライアンス)から脱退し、他のメガバンクなどの国内金融機関も追随する方向で検討を始めた。

NZBAは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする目標を掲げ、融資先企業に厳しい気候変動対策を求めてきた。だが、バイデン前政権の脱炭素政策を強く批判してきたトランプ大統領が誕生し、米国の金融機関は一斉にESG投資に対する姿勢を転換。これに伴って、脱炭素を目指す資産運用会社の国際連合「NZAM」(ネットゼロ・アセットマネジャーズ・イニシアチブ)など脱炭素を促す国際金融連合からの脱退が相次いでいる。

このため、米国の金融市場で活動するに当たって、日本の金融機関の間にも「ESG連合に加盟していることが障害になりかねない」(大手銀行幹部)との懸念が強まり、三井住友FGは米国事業への影響を考慮し、邦銀として初めて脱退を決めた。教条的なESG投資が金融市場を席巻し、必要な電源投資に対する資金の確保が難しくなると問題視されているが、今回の脱退を適切な「トランジションファイナンス(移行金融)」の確立につなげたい。

三井住友FGはNZBAから脱退した

実質的な活動中止に 適正な移行金融を確立せよ

トランプ大統領は1月の再就任日に、温室効果ガスの排出削減を目指す国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名し、脱炭素政策の転換を急いでいる。大統領選期間中から化石燃料への投資拡大を訴えてきたトランプ大統領は、米国産LNG(液化天然ガス)の輸出増を通じ、「エネルギードミナンス(支配)」を目指す姿勢を鮮明にしている。2月の日米首脳会談で、石破茂首相にアラスカ州のLNG開発を呼びかけたのも、こうしたエネルギー戦略の一環といえよう。

米国の政治体制が大きく変わる中で、これまで金融市場を席巻してきたESG投資への逆風も一気に強まっている。

米国のESG投資を主導してきたSEC(米証券取引委員会)のゲーリー・ゲンスラー委員長がトランプ大統領の就任と同時に任期半ばで退任。これとほぼ同時に、世界最大の資産運用会社として知られる米ブラックロックがNZAMからの離脱を決め、ゴールドマン・サックスやシティグループなど米大手金融機関も相次いで脱退し、NZAMは実質的な活動中止に追い込まれている。

rDME混合LPガスでWG設置 業界一体で30年本格導入を目指す

【グリーンLPガス】

カーボンニュートラル(CN)なLPガスの社会実装を目指す、グリーンLPガス推進官民検討会(座長=橘川武郎・国際大学学長)が3月3日、都内で第8回会合を開いた。事務局を務める日本LPガス協会は、rDME(リニューアブル・ジメチルエーテル)を混合した低炭素LPガスの実用化に向け、新たに設置したワーキンググループ(WG)の活動を4月に開始し、本格導入の目標を2030年とする方針を示した。

検討会ではLPガスグリーン化の指針が示された

冒頭、あいさつした資源エネルギー庁燃料流通政策室の日置純子室長は、グリーンLPガスが第7次エネルギー基本計画に次世代エネルギーとして位置付けられたことを紹介。バイオ由来のrDME混合を含めたグリーン化への取り組み支援が盛り込まれたことに触れ、「協会が一丸となってCN対応に取り組めるよう、政府として後押ししていきたい」と強調した。

WGでは、大阪大学大学院工学研究科の赤松史光教授を座長に、品質検討、出荷設備、環境評価、渉外の4部会体制で課題を検討する。日本ガス機器検査協会(JIA)や、国内で唯一DME製造プラントを有する三菱ガス化学などと連携し、卸売事業者や需要家といったオフテーカーにも参画を促す。

当面の重点活動として、品質検討部会の下で、燃料電池や家庭用コンロを用いた燃料試験による混合割合の上限値の設定を検討するほか、ゴム配管への安全対策、新たな品質基準に基づくJIS(日本産業規格)およびISO(国際標準化機構)規格の改定作業に着手する。

30年の実用化に向けたロードマップでは、26~28年にJISやISO規格を改定するほか、出荷基地や流通・配送面での検証などに取り組むことで、28~29年には小規模での実証試験を開始する計画だ。


WLGAが成果を発表 混合率20%で検証進む

会合ではこのほか、世界リキッドガス協会(WLGA)が既存インフラに影響を与えずに混合できる「ドロップインブレンド」の検証結果を報告した。すでに混合率12%までは問題がないことを確認し、現在は最大20%混合のLPガスによる運転試験を実施している。暖房機を用いた試験では機器の運転に支障は生じず、一酸化炭素や窒素酸化物の排出量が減少した。今年は、経年機器やガスエンジンなどに対象機器を広げ試験を行う予定だ。

今回示したrDME混合利用に関する明確な指針を下地に、業界が一体となって、LPガスのCN化に向けた動きを加速させる方針だ。

【覆面ホンネ座談会】現実味を欠くHVDC 巨額投資に見合う効果は?

テーマ:海底直流送電の意義

政府肝いりの北海道~本州間海底直流送電(HVDC)事業に、東京電力パワーグリッドなど4社連合が有資格者として選ばれた。

改めて、その意義と現実性を議論してもらう。

〈出席者〉A送配電事業関係者 B学識者 Cメーカー関係者

条件次第で撤退も示唆しているようだ。

A 建設コストが1・5兆~1・8兆円というのは、あまりに巨額だ。海洋環境への影響や漁業関係者との調整も無視できず、投資回収をどう担保するかも明確になっていない。民間企業だけで負いきれるリスクではなく、国の関与が相当必要になると思うよ。電力広域的運営推進機関は、北海道~東北~東京におけるHVDCの費用便益比(B/C)を0・63~ 1・72と評価しているが、仮にその数値が妥当だとしても同じ効果を得るのに他の選択肢がないのか疑問。この費用を別の電力インフラ投資に振り向ければ、より高い効果を得る方法があるのではないか。

B そもそも、洋上風力の適地である北海道では吸収しきれない再生可能エネルギー由来の電気を本州に運ぶことが整備の前提。ところが今や、風力発電事業そのものが資材費高騰の逆風を受けて先行き不透明だ。それに北海道は蓄電池の有力な投資先で、需要を制御できる余地がある。地域内で需要を創出し、蓄電池によるバランシングを図るといった発想を取り入れるべきではないだろうか。

C 二人の主張は理解できる。ただ、メーカーの立場からすれば、世界最先端の技術を日本のマーケットに入れていく視点も必要だ。目の前の課題に慌てるのではなく、どっしり構えて取り組んでほしい。30~40年は使えるはずだから、長期的に見れば有効活用できると思うし、国内のエネルギー供給のレジリエンス向上にも貢献する。それに、優秀な人材を業界が獲得するための一つの呼び水にもなる。日本で導入事例のない最先端の技術に携われるとなれば、エンジニアたちは目を輝かせて挑むはずだ。一つ念押ししておきたいのは、この技術を日本国内にとどめておいては無意味だということ。日本の技術を海外展開することを視野に開発する意気込みが求められる。そのためには、国際的に戦えるコスト水準で設備を作ることが前提となるし、国際規格で開発を進めなければならない。

B 新技術への挑戦は、確かに重要なポイントだな。イノベーションのない業界に若者は興味を持たないだろうから。

技術・資金面で壁は高く、HVDC整備は容易ではない


外資参入で浮かぶ課題 財務以外で双方にメリット薄く

―応募資格審査では、イギリスで送配電事業を手掛けるフロンティア・パワーを含む3社連合の参画を認めなかった。理由はオープンにされていないが、背景にはどういう思惑があったのだろうか。

C 憶測だが、外資規制の強化が影響している可能性はある。資格検査の発表直前の2月初旬に、財務省が今春、外為法の政令を改正し、基幹インフラへの外資規制を厳格化する方針との報道があった。タイミング的に無関係とは思えないし、基幹インフラの情報漏えいリスクが指摘される中、安全保障の観点から排除されても不思議ではない。

B こちらはあくまでも聞いた話だけど、資源エネルギー庁はスーパー連系線やチャレンジング連系線の資金調達の仕組みとして、財政投融資に近い政府保証付きのファイナンスを検討しているようだ。HVDCは一般送配電事業者ではなく、あくまでも参画した事業者が送電ライセンスを取得して実施する。政府がファイナンス面で深く関与するのであれば、外資系企業を有資格者として認めるのは難しいという判断かもしれない。HVDC事業から外資を排除するというより、このような事情が大きく影響したと理解している。

次世代技術が一堂に 商談活況で実用化に期待

【スマートエネルギーWEEK】

世界最大級のエネルギー総合展示会「スマートエネルギーWEEK春2025」(RX Japan主催)が2月19~21日、東京ビックサイトで開かれた。世界各国から人と情報が集まる大型イベントで、エネルギービジネスを加速させる展示会として業界で定評がある。3日間で約7万人が来場した。

23回目となる今回は「水素・燃料電池展」「太陽光発電展」「二次電池展」「スマートグリッド展」「風力発電展」「バイオマス展」「ゼロエミッション火力発EXPO」の7エリアで構成。特別企画として、ペロブスカイトなどの最先端太陽電池に特化し展示する「建材一体型太陽光発電ワールド」を設けた。

イベント会場は大いににぎわった
提供:SMART ENERGY WEEK


最先端蓄電池に高い関心 安全面の課題にも対応

産業用・住宅用それぞれの最先端蓄電池を展示したファーウェイのブースには、多くの来場者が詰め掛けていた。中でも注目されていたのが、中規模産業用「LUNA2000―215―2S11」だ。環境温度の違いに応じて水冷、空冷、廃熱の利用を最適化する「ハイブリッド冷却蓄電システム」を新たに搭載。高温時には水冷・空冷モジュールが同時に稼働することでセルの急速冷凍を行い、低温時には廃熱を利用し消費電力を抑える。これにより、トータルで30%以上の消費電力を抑えることができる。

その横のブースでは、電池パックの容量を拡大した住宅用蓄電池「LUNA2000―7/14/21―NHS1」が存在感を放っていた。

従来型の5kW時から7kW時に容量を増やした電池パックを連結することで、7、14、21‌kW時とシーンに合わせた利用が可能となる。火災時に消化ガスを噴出し沈下するモジュールを採用。火災リスクを低減する燃焼防止機能を搭載するなど、安全面も高めている。

同時開催された脱炭素経営EXPOでは、京セラコミュニケーションシステムが昨年10月に開所したゼロエミッション・データセンター石狩(ZED)を紹介していた。建設地である北海道石狩市の良好な風況と広大な土地を活用して製造した再エネ由来の電気を独自の電力需給制御システムで管理することで、24時間再エネのみで稼働する。ブースには各種ディスプレイやジオラマなどを設置し、同DCの特徴をアピールしていた

次世代技術が一堂に会したイベント会場では、ほかにもさまざまな企業が、自社が誇る最先端技術を展示。来場者が出展者の説明に熱心に耳を傾ける様子が各所で見られた。脱炭素社会の実現へ、新たなビジネスチャンス創出への期待がかかる。

【イニシャルニュース 】首相の10万円商品券問題 報道ぶりに批判の声も

首相の10万円商品券問題 報道ぶりに批判の声も

3月13日、にわかに浮上した石破茂首相の商品券配布問題。3日に首相が自民党衆院1期生との会食を開いた際、首相の事務所関係者が「おみやげ」として1人当たり10万円分の商品券を配布していた。

参院での新年度予算案審議の最中であることから、メディアは「政権への打撃は必至」として13日夜、一斉に報道。同日深夜に石破首相が急きょ会見を開き、自らの指示で配布したと説明した上で、「私自身のポケットマネーで用意した」「政治活動に関する寄付ではない」「法的には問題がないと認識している」などと弁明した。

どうやら今回の件は「A派の新人議員M氏がもらしたようだ」(メディア関係者)。既に自民党内から現政権では夏の参院選を戦えないとの声が上がる中でのさらなる燃料投下に、石破降ろしの風がますます吹きすさびそうだ。

政治とカネの問題はいつまで続く?

また16日には、赤沢亮正・経済再生担当相(衆院鳥取2区)が自身の選挙区にあるガス会社Y社から約230万円の個人献金を受けていたことが、政治資金収支報告書から発覚。一部メディアでは、〈15年を除いて会長らは同じ日付で献金し、最も多い年で8人が名を連ねた。金額も1回3万~5万円と近接し、岩井奉信・日本大名誉教授は「事実上の企業献金と見なされても仕方がない」と指摘する〉と報道した。

赤沢氏は「政治資金規正法にのっとり対応している」と述べ、問題はないとの認識を示したものの、国民民主党の玉木雄一郎代表は、SNS上で「企業献金はNG、個人献金はOKとしても企業献金を社長らの個人献金に振り替えれば簡単に企業献金NG規制を潜脱できる。だからこそ形式的な『出し手』規制ではなく実効的な『受け手』規制が必要だ」とつづった。

永田町筋によると、「自民党の政治とカネを巡る問題は、まだまだ明るみに出る可能性がある」という。その一方で、エネルギー関係者からは「激動する世界情勢を背景に、日本が国難に直面しているときに、そんなさまつな話を、大ニュースとして取り上げている場合か」(新電力幹部H氏)との声も聞こえる。

エネルギーも食料も自給率の低さなどの課題を放置した結果、国民生活に大きな影響が出始めており、根本的な解決に向けた対応は待ったなし。先の衆院選が「政治とカネ」に終始したことの再来となりそうな状況に嘆息しつつ、「真にシステム改革が必要なのは政治ではないか」と冷ややかに見ている。


関係修復なるか? 石破首相と元経産相

支持率が伸びない中、なぜか倒れない石破政権。エネルギー関係者の嘆きは、石破首相がエネルギー問題にそれほど関心がなく、側近にエネルギーに詳しい人がいないということだ。

そこで、経済産業大臣を務め、首相側近だった自民党衆議院議員のS氏と、首相の関係修復を期待する声がある。

石破首相はこれまで5回自民党総裁戦に出馬して、その5回目でようやく実現した。その間21年の総裁選では出馬を断念したことも。その際に、S氏らが派閥を破る気配を見せたことが、決断のきっかけになったという。その際、S氏は近い人に「私は五稜郭まで共にした。もういいだろう」と述べたという。五稜郭は幕末、旧幕府軍が最後まで立てこもった北海道函館の要塞で、歴史好きのS氏らしいコメントだ。

石破氏が勝った昨年の総裁選でも、S氏は出馬を模索した。それが二人のしこりになっているようだ。石破政権では、S氏は政府の役職についていない。

ところが二人を結びつけようという予想外の動きが出た。出版人の角川春樹氏が現在、書店文化の衰退に危機感を持ち、書店支援のさまざまなプロジェクトを進めている。角川氏の呼びかけに本好きの石破首相も、S氏も賛同。S氏は書店支援の議員連盟の中心人物だ。角川氏は「書店文化維持のためなら2人を結びつける」と各所で表明している。7月の参議院選挙前に、内閣改造がささやかれる。この内閣が続くなら、ここで二人が復縁したら本屋だけでなく、さまざまなプラスの変化が引き起こされると思うがどうだろうか。

福島事故の強制起訴裁判 東電旧副社長の無罪が確定

東日本大震災から14年となった3月11日、福島第一事故を巡って強制起訴された東京電力の元副社長2人の無罪が確定した。勝俣恒久元会長は昨年10月に死去し、起訴が取り消されている。

福島事故を受けて東電や旧経営陣が被告となった裁判は、①刑事裁判、②株主代表訴訟、③集団訴訟──の三つに分けられる。今回、無罪が確定したのは①で、検察審査会の議決に基づく強制起訴で始まったものだ。

検察官役の指定弁護士は「不当な判断」だと主張するが……

争点となったのは国の地震予測「長期評価」の信頼性だ。1審、2審ともに、首相を長とする中央防災会議の報告に盛り込まれなかったことなどから、東電側が10mを超える津波を予測できなかったとして無罪となっていた。

6月6日には旧経営陣の民事上の責任を問う②の高裁判決が言い渡される見通しだ。2022年7月の地裁判決は「疑わしきは罰せず」が原則の刑事訴訟と異なり、津波の予見可能性と対策の不備を認定。旧経営陣4人に13兆3210億円の支払いを命じた。高裁判決では同様の判断が示されるのか、賠償額や責任範囲が変更されるのか、それとも1審判決を破棄するのか──。

住民が国や東電に賠償を求める③では、22年6月に最高裁が国の責任を認めないとする判断を示した。一方、事業者としての責任は原子力損害賠償法上の無過失・無限責任によって免れず、東電に多額の賠償を命じる判決が相次ぐ。14年が経ってもなお続く一連の訴訟が、原子力事故の社会的影響の大きさを物語っている。

気象予測を応用 電力消費や購買行動を先読み

【気象データ活用術 Vol.1】加藤芳樹・史葉/WeatherDataScience合同会社共同代表

「気象データを活用することで不確実性をマネジメントできる」―。気象予測により、未来の気象状態を科学的に予見することは可能だ。予測は外れることがあるものの、この外れ具合さえも科学的手法に基づいた情報が存在することが気象データの特筆すべき点である。

「不確実性のマネジメント」という言葉は、私たちの先輩である冨山芳幸気象予報士が提唱したものであり、「気象に不確実性が内在することを受け入れつつ、不確実性情報も活用することで、予測外れによる影響をマネジメントする機能を予測機能と両輪で走らせる」ことを意味する。気象データのビジネス利活用の在るべき理想型をシンプルに表現していると共感し、当連載コラムのメインタイトルにした。

国交省が発信する気象ビジネスのイメージ
提供:国土交通省

私たちは気象予報士データサイエンティスト夫婦で、気象に影響を受けるビジネスやサービスに対し、気象データを活用したソリューションを提供しながらクライアントと共に課題解決のため伴走することを仕事としている。

ソリューションを提供するに当たって最も大きな土台となっているのが、気象情報会社であるウェザーニューズでの予報業務経験だ。他にも航空会社での航務業務、そしてエネルギー総合サービス業のエナリスでの勤務がある。電力業界のビジネスが気象に左右されることは読者の皆様が知る通りで、航空業界もしかり。つまり、予報を提供する側も、予報を活用する事業側も、どちらも経験があり、それが礎となっている。

独立・起業してから現在に至るまでで最も多い依頼は、再生可能エネルギーの発電予測AI開発や電力需要分析など、電力ビジネスに関する業務である。他にも、コインランドリーの需要予測AI開発、フェージング(気象条件でテレビ電波が乱れる現象)発生を予測するAI開発、フードデリバリーのデータ分析などの実績がある。気象データの利活用事例については、おいおい詳しく述べていきたい。

ところで、ビジネス生産性の向上に気象データを活用することを国が後押ししていることをご存知だろうか。国土交通省が政策として『生産性革命プロジェクト』をスタートしたのが2016年。これに準じて、同省の外局である気象庁が、産学官連携組織『WXBC気象ビジネス推進コンソーシアム』を立ち上げ、新たな気象ビジネス市場の創出・活性化を推進している。当コンソーシアムの会員数は24年2月時点で1509に達した。

エネルギーや脱炭素に関わるビジネスは、気象データを活用することでさらなる発展や革新の余地がある。なぜならば、人々の電力消費や購買行動は、気象の影響を受けた上での判断の結果であると言える部分があり、気象予測データを活用してその行動を予測し先回りするようなサービスで待ち構えることができるのであれば、社会にとって「望ましい状態」の実現に近づけるはずだからである。いろいろな可能性を秘めた気象データに興味を持っていただければ幸いだ。

かとう・よしき/ふみよ 気象データアナリスト。ウェザーニューズで気象予報業務や予測技術開発に従事。エナリスでの太陽光発電予測開発などの経験を生かし、2018年から「Weather Data Science」として活動。

東電再建計画「上書き」で対応 KK再稼働は見通せず

東京電力は3月17日、2021年に策定した再建計画「第4次総合特別事業計画」(4次総特)の改定版を公表した。5次総特は昨年策定する予定だったが、柏崎刈羽原発の再稼働が見通せずに延期となっていた。再建に向けた改革の本丸は次期総特に任せ、今回は一部を先取り「上書き」した形だ。

国からの資金援助額は1・9兆円積み増し、15・4兆円とした。原発再稼働の前提は最大3基から1基に変更。一方、火力燃料費の高騰により、1基当たりの収支改善効果を500億円から1000億円に倍増した。

武藤経産相と面会する東電HD首脳

4次総特の策定以降、ALPS処理水の海洋放出や燃料デブリの試験的取り出しなど、「福島への責任」の貫徹に向けては前進した。だが、再建の先行きは不透明だ。原発未稼働や小売自由化で「稼ぐ力」は失われた。安全対策費や送配電網の増強はすぐに投資回収できず、円安とインフレが拍車をかけた。自由に使える資金を示す「フリーキャッシュフロー」は18年度から赤字で、賠償・廃炉費用の年間5000億円確保や、売却益で除染費用を賄うための株価引き上げに向けて足踏みが続く。資金繰りへの懸念が強まる中、小早川智明社長は武藤容治経済産業相との面会後の囲み取材で「再稼働の状況にかかわらず、責任を果たせるようにあらゆる手を講じていきたい」と述べた。

次期総特では東電エナジーパートナーの売却など事業構成の見直しや、原子力の共同事業化といった大胆な再建プランに踏み込めるかが焦点だ。まずは新潟県からの〝吉報〟が届くといいのだが。

日本の「脱原発」は論外! エネ安保の確立へ冷静な議論を【石川和男×近本一彦】

【日本エヌ・ユー・エス】

第7次エネ基が閣議決定したが、日本のエネルギー安全保障の確立は一筋縄ではいかない。

社会保障経済研究所代表の石川和男氏と日本エヌ・ユー・エスの近本一彦社長が語り合った。

近本 今日は石川さんとお話しできるということで、楽しみにしてきました。

石川 こちらこそ。社名の一部になっているエヌ・ユー・エス社というのは、もともとアメリカの会社ですよね。

近本 そうなんです。1960~70年代、日本が原子力の活用に向けて動き出した頃、商用炉を始めるのに十分な知見がありませんでした。そこでアメリカの原子力専門企業だったエヌ・ユー・エス社の総合代理店として、日揮とエヌ・ユー・エス社が45%、東京電力が10%出資をして71年に設立しました。97年には日揮が全株式を買い取り、日本企業となりました。

石川 アメリカの原子力規制委員会(NRC)など海外の原子力の動向を調査しています。

石川和男/社会保障経済研究所代表

近本 原子力規制に限らず、エネルギー・環境に関するあらゆる情報提供やビジネス支援などのサービスを行っています。NRCではどういう審査や検査が行われているのかといった情報を、日本の事業者に提供するのも仕事の一つです。

石川 政府は2月、原子力を最大限活用する方針にかじを切った第7次エネルギー基本計画を閣議決定しました。御社の役割がますます高まりそうです。


「再エネ主力電源化」削除を 石炭火力は極めて重要

近本 その第7次エネ基ですが、どうご覧になりましたか。

石川 今の情勢を考えれば、「再エネの主力電源化」以外は高く評価できます。特に原子力はほぼ満点でしたね。気が早いですが、第8次エネ基は再エネ主力化を削除して、堂々と「火力が主力」と書けばいい。そうせざるを得ないんですから。

近本 それが本当の現実路線ですね。

石川 アメリカのトランプ大統領がパリ協定からの再離脱を表明しました。再エネの限界をアナウンスする効果としては絶大です。日本はこれを「悪用」しなければなりません。2050年カーボンニュートラルを金科玉条にせず、政策転換に向けて動き出すべきです。

近本 特にASEAN(東南アジア諸国連合)などの新興国は石炭火力に頼らざるを得ません。AZEC(アジアゼロエミッション共同体)などの枠組みを活用して、日本が誇る高効率の石炭火力技術を生かすべきです。当社は国際協力銀行の案件でASEANでの環境アセスメントなどに携わっています。ただ、石炭火力はESG(環境、社会、企業統治)投資の観点で金融機関の融資を受けにくい。

近本一彦/日本エヌ・ユー・エス社長

石川 でも3月に入り、三井住友フィナンシャルグループ(FG)と三菱UFJFG、野村ホールディングスが脱炭素を目指す国際的な金融機関連合NZBA(ネットゼロ・バンキング・アライアンス)からの離脱を表明しました。「遅い!」と言いたいところですが、CN政策の転換期であることは間違いありません。

近本 日本がアジアの経済成長と低炭素化に果たせる役割はとても大きいので、そうした動きを歓迎します。

石川 大体、GHG(温室効果ガス)を削減できなかったからといって、一部の国から叩かれるだけです。経済制裁を食らうわけではありません。逆に言えば、日本がオントラックでGHGを削減しても、「すごいですね」と褒められておしまい。賞金はもらえません(笑)。


オイルショック時と同じ 経済安保から見た原子力

近本 厳しいエネルギー安全保障環境下でGHG削減を目指すのは、オイルショックの時と状況が似ています。まず無駄にエネルギーを使わないように省エネを実施し、石油の調達先の多元化を目指した。さらに石油代替エネルギーの研究開発として、純国産エネルギーである原子力、天然ガス、再エネの導入を打ち出しました。

石川 ムーンライト計画やサンシャイン計画ですね。

近本 でも、再エネはエネルギー変換効率が悪く、思ったほどの効果を上げられなかった。

石川 再エネを過度に推進する人たちは「原子力より再エネの方が簡単」とよく言います。でも系統に乗らない太陽光は、いくら敷き詰めても安定電源にはなりません。そこで蓄電池の必要性が強調されるのですが、第7次エネ基には「再生可能エネルギー及び蓄電池によって火力を完全に代替することは難しい」と書いてあります。

規制委の判断は国際基準に逆行 〝原子力基本法違反〟状態か

【論点】敦賀2号機の「不許可」/岡本孝司・東京大学大学院教授

断層の活動性や連続性が「否定できない」というあいまいな判断が下された敦賀2号機。

東京大学大学院の岡本孝司教授は日本の規制のガラパゴス化を指摘する。

昨年11月、原子力規制委員会は敦賀発電所2号機の審査に関して、トレンチ調査で見つかったK断層なるものが原子炉の地盤の直下を通っているかもしれない、という極めてあいまいな判断を下した。そして、初となる「不許可」を決定してしまった。だが直下の割れ目は、Kとは別のG断層(D―1破砕帯)であることが科学的に分かっているので、Kと無関係であることは十分な確度で証明されている。また科学的に論理を積み上げれば、地震や津波などと比べても十分に小さいリスクであることは確認できる。世界では断層の変位(ずれ)に関してリスクを用いて評価を行っているのに対し、ガラパゴス日本では科学的事実を考慮することなく、思い込みで判断しているのだ。

規制委が入る六本木ファーストビル


合理的な米国の規制 NRCも地元説明に参加

地球の表面には厚さ30㎞の地殻があり、この地殻が割れたりずれたりすると断層が生まれる。断層は地表面から3㎞程度の深さの位置に多数存在しており、その中でも比較的大きなものが地表に露出する。また地震の副産物として地表に「割れ」ができることもある。これは「副断層」とも呼ばれるが、自発的には動かない。ただ断層ではあるので、地盤が上下左右にずれることはある。こうした断層によるリスクは定量的に評価するのが国際基準となっている。

米カリフォルニア州の都市サンフランシスコから200㎞ほど南の太平洋沿岸に、2基の加圧水型軽水炉(PWR)を有するディアブロキャニオン原子力発電所がある。カリフォルニア州では日本と同様に地震が多く発生する。同発電所の沖合にもホスグリ断層と呼ばれる大きな断層があり、この断層に起因する地震や津波対策が講じられている。

一方、運転開始後、敷地の海岸部分にショアライン断層と呼ばれる小さな断層が見つかった。この断層による発電所への影響については、リスクを用いた評価が行われた。米国では断層が変位する確率や大きな断層からの距離などをパラメータとして、リスクを評価する手法が確立されている。発電所を運営する電力会社はこの手法に基づき、1年間にどれくらいの確率で断層が変位するかを示す年超過確率を求め、十分に許容できるリスクであると評価した。

米国の原子力規制委員会(NRC)も、電力会社とは別に独自にリスク評価を実施し、十分にリスクが小さいことを確認して運転継続を許可した。継続するという意思決定の前には、地元住民に対して電力会社が何回も説明を行ったが、NRCも参加して断層に関するリスクについて地元住民と議論を行った。

ディアブロキャニオン原子力発電所は、40年運転が終了した段階で運転を停止する予定だった。しかし、脱炭素電源としての有効性が再確認され、カリフォルニア州が支援をすることになり、60年の運転延長許可申請を行った。民主党が強いカリフォルニア州だが、安全な脱炭素電源である原子力発電所の活用を州政府が積極的に推進しているのだ。


IAEAガイドとの比較 国益を損ねる規制

国際原子力機関(IAEA)「SSG―9(2010) 立地における地震評価」という安全ガイドがあり、この中に断層に対する考え方がまとめられている。建設前の地盤調査の他に、敦賀2号機のようなすでに建設された発電所に対しての記述も見られる。

既設の発電所で新たに考慮すべき断層が見つかり、変位発生の可能性が否定できない場合、まずは決定論的な評価で検討を行う。しかし、それでも断層変位の可能性が否定できない場合には、確率論的手法を用いるという内容だ。これは22年発行の最新版でも変わらない。

具体的には、断層変位に対する年超過確率を求め、それらが他のリスクと比較して優位かどうかを検討する。他のリスクとは、例えば早期に格納容器が破損して、放射性物質が拡散されるリスクなどだ。ディアブロキャニオンの審査では、IAEAの安全ガイドと同じ手法で評価が行われたといえる。

さて、日本の規制委は敦賀2号機を不許可とした審査書案のパブリックコメントに対する回答の中で、IAEAの安全ガイドについて触れている。そこでは、規制委規則を作った時にはリスクについて評価を行うことが困難だったと書かれているが、それは〝言い訳〟に過ぎない。規則を随時更新すればいいからだ。13年に原子力安全推進協会がIAEAの安全ガイドを参照した上で、リスク情報を活用した断層変位のリスクについて報告書をまとめているからだ。さらに同協会は、万が一、断層変位が起きた時の建物・構造物の健全性に関しても、定量的な議論を行っている。

規則の制定や報告書から10年以上がたったが、規制委がIAEAの安全ガイドを完全に無視するのは行政の不作為だ。この状況は「安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ……」と明記された原子力基本法第二条に違反した状態といえる。パブコメでも不作為と基本法違反が指摘されているが、規制委は一切回答していない。おそらく、自らが違法状態にあることを自覚しているのではないか。

この10年の間に、世界の原子力発電所はリスク情報を活用した結果、安全性が高まっている。ところが、日本の規制は改善もできずに時計の針が10年以上前から止まったままだ。こうして十分に安全な脱炭素電源を科学的技術を考慮することなく、思い込みで動かさず、国益を毀損しているのだ。

おかもと・こうじ 1961年神奈川県生まれ。東京大学工学部原子力工学科、同大学院工学系研究科原子力工学専門課程修士課程修了後、東京大学工学部助手、同大学院工学系研究科教授などを経て、2011年4月より現職。

洋上風力R1の「FIP転」 政府が認める方針を提示

三菱商事が522億円の減損損失を計上した洋上風力公募ラウンド1(R1)の3海域の計画を巡り、動きがあった。3月10日に開かれた総合資源エネルギー調査会のワーキンググループと交通政策審議会小委員会の合同会議で、FIT(固定価格買い取り)からFIP(市場連動買い取り)制度への移行を認めるとしたのだ。商事陣営が窮地を脱する数少ない手段がこの「FIP転」だった。

FIP転が認められ各計画にどう影響するのか(写真は秋田県能代市)

経済産業省と国土交通省が各海域の公募占用指針の改定素案を提示。このうち秋田県能代・三種・男鹿、同県由利本荘、千葉県銚子、そして長崎県五島市沖について、「FIP制度への移行」という項目を追記した。FIP転に関する計画の変更が認められた場合の基準価格は、変更前の計画に記載した調達・供給価格と同額となる。

現在、政府は再エネの自立化に向けFIP転を促進しており、他電源では既に認められている。加えて事務局は今回の件について「制度変更ではなく運用の明確化」と説明した。

委員からは、「入札ルールの事後的な変更は慎重であるべきだが、事業実施の確実性を高める環境整備の一環として、R1の落札者に対してFIPへの移行を認めることは、入札の公平性に問題を生じさせるものではないと整理できそうに思う」(桑原聡子・外苑法律事務所パートナー弁護士)などの意見が出た。

一部報道では今回の改定について「商事救済策」といった論調もみられる。ただ、逆に、これで商事陣営が事業の中止を決断することは極めて難しくなったともいえる。

セメント分野で進むCN技術開発 カーボンネガティブの可能性も

【業界紙の目】佐藤大蔵/セメント新聞社 編集部記者

CO2多排出産業の一角であるセメント分野ではここ数年、脱炭素化の技術開発が盛んだ。

NEDO事業などを活用し複数の実証が進む中、気になる現在地の状況とは―。

政府は2020年に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、50年までに温室効果ガスの排出を全体でゼロにする目標を掲げた。この目標は従来の政府方針を大幅に前倒しするもので、実現のためにはエネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションなど現行の取り組みを大きく加速させる必要がある。

このため、経済産業省は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に総額2億円の基金を造成。官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、経営課題として取り組む企業などを研究開発段階から社会実装まで10年間継続して支援する「グリーンイノベーション基金事業」を立ち上げた。


NEDO案件が複数進行中 炭素大幅固定への期待

NEDOは22年1月、同事業の一環として「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」に着手したと発表した。同プロジェクトは総額550億円の支援規模。コンクリート製造時におけるCO2排出量の削減・固定量の増大とコスト低減を両立する技術の開発、セメント製造過程での効率的なCO2分離・回収技術の開発、回収したCO2のセメント原料化に向けた一体的な技術開発を推進し、社会実装モデルの構築を目指すものだ。コンクリートやセメントへのCO2利用は、CO2を大幅に固定できる可能性があることや生成物が安定しているなどの理由により、早期の社会実装に向けて日本を始め世界各国で研究開発・実証が進められている。しかし、実用化には用途の拡大や低コスト化などの課題を解決する必要がある。このためNEDOは同プロジェクトの公募を行い、4テーマを採択した。

実施テーマは、コンクリート分野が「CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの開発」(研究開発項目1)、「CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの品質管理・固定量評価手法に関する技術開発」(同2)、セメント分野が「製造プロセスにおけるCO2回収技術の設計・実証」(同3)、「多様なカルシウム源を用いた炭酸塩化技術の確立」(同4)。セメントメーカー、生コンメーカー、材料メーカー、ゼネコンなど幅広い分野の関係企業や大学・研究機関が主体となり、同項目に合致する技術開発が推進されている。

これらの事業期間は30年までと設定している。コンクリート分野では、項目1、2を実施する、「革新的カーボンネガティブコンクリートの材料・施工技術および品質評価技術の開発」(幹事・鹿島)、「CO2を高度利用したCARBON POOLコンクリートの開発と舗装および構造物への実装」(幹事・安藤ハザマ)、項目2を実施する「コンクリートにおけるCO2固定量評価の標準化に関する研究開発」(東京大学)が展開されている。セメント分野においては、項目3、4を実施する「CO2回収型セメント製造プロセスの開発」(幹事・太平洋セメント)が進められている。昨年2月に開催されたNEDOの技術・社会実装推進委員会においては、プロジェクト全体が計画通り進捗していることを確認している。

LNG火力建設ラッシュへ 問われる脱炭素とのバランス

電力需要拡大の見通しや、エネルギー基本計画で2040年まではLNG需要が拡大する可能性が示されたことを背景に、LNG火力の建設ラッシュが始まろうとしている。

北陸電力は2月27日、富山新港火力発電所でLNG2号機建設の検討を始めると発表した。約60万kWの最新鋭高効率コンバインドサイクルで、33年度の運転開始を予定。高経年化が進む石炭2号機と休止中の1号機(石油)の廃止に合わせた計画だ。

富山新港火力ではLNG2号機の建設を検討中だ

同時に北陸電は、18年に運開した同発電所LNG1号機の導入に伴い、24年度をめどとしていた石炭1号機の廃止時期を28年度に再延長することも明らかにした。同機の廃止は当初17年度を予定したが、厳しい電力需給状況を踏まえ24年度に一度変更。同社は廃止までの間、稼働抑制を計画的に実施し、CO2排出量を削減するとしている。

浅尾慶一郎環境相は翌日の閣議後会見でこの件にコメント。能登半島地震からの復興に万全を期し、北陸の安定供給を確保する必要性があるという事情に理解を示しつつも、「24年度末までに廃止されないことは大変遺憾」「稼働延長によって生じるCO2排出の増加を、北陸電力全体の取り組みの中で相殺させる必要がある」と注文した。 3月7日には、大阪ガスが日本政策投資銀行など3社と共同で姫路天然ガス発電所3号機を建設すると発表した。今後もLNG火力の建設計画が続く可能性がある中、安定供給の確保は第一とはいえ、カーボンニュートラルとのバランスも無視できず、こうしたジレンマがさまざまな場面で表面化しそうだ。

電気とセットでより“お得”に 東京・大阪で都市ガス取次ぎ開始

【NTTドコモ】

NTTドコモが6月、東京・大阪エリアで都市ガスの取次ぎ販売を開始する。

2022年に参入した電気と合わせ、ポイント還元による“お得感”を打ち出し契約獲得を目指す。

大手携帯キャリアのNTTドコモは、満を持して都市ガス小売りビジネスに参入することを決めた。

サービス名は「ドコモ ガス」。6月に東京、大阪の大手都市ガス2社の取次ぎとして、まずは両エリアでサービスに着手し、ニーズに応じて他エリアへの進出を検討する。2022年3月に参入した電力小売り事業と合わせ、家庭向けエネルギー供給に一層注力していく考えだ。

競合するKDDIとソフトバンクが、すでに電気と合わせて都市ガス販売を手掛けているが、取り扱っているガスのメニューは標準的な一メニューのみ。同社が取り次ぐのは、床暖プランなどを含む大手ガス2社が展開する料金メニューで、支払い額に応じて「dポイント」を貯めることができる。

エネルギー戦略について語る小島氏


豊富な料金プラン 経済圏強化で囲い込み狙う

「電力小売りに参入した当初から、競合他社に対抗するためにはガスへの参入は不可欠と考えていた」と語るのは、コンシューマーサービスカンパニー・エネルギーサービス部の小島慶太部長だ。22~23年に燃料費高騰という逆風に見舞われ参入のタイミングを模索していた中、「大手2社にドコモ経済圏に魅力を感じていただけたことで、協業が実現した。参入は遅れたが、大手都市ガス会社とほぼ同じメニューを取り扱えることは、大きな差別化要素になる」と自信を見せる。

また、「ドコモでんき」や「dカード」との組み合わせで、ポイント還元率がアップする仕組みを用意。ドコモでんきでは、対象回線プランの利用者がドコモガスを利用し、dカードで料金を支払うことで、還元率は最大2%アップする。最大還元率は東京エリアで14%、大阪エリアで22%となり、東京に住む4人家族の場合、ドコモでんきとドコモガスの還元を合わせると、年間で2万3000円相当のポイントが付与される計算だ。

“お得感”を訴求することで、ドコモでんきの既契約者のセット契約、電気とガス同時の新規契約を獲得し早期に10万件達成を目指す。「事前予約は開始1週間で1万件を超えた」(小島氏)と言い、2月25日のサービス開始発表後の反応は上々のようだ。

貯めたポイントは、加盟店での買い物の支払いなどに使えるほか、ドコモ光、ドコモでんきなど、同社サービスの毎月の料金の支払いに充当できる。7月以降は、あらかじめ設定したポイント数を毎月自動で充当する機能が追加される。提供サービスの多様化、ポイントの貯めやすさの追求、そして使い道の選択肢拡充により「ドコモ経済圏」を強化し、長期でのユーザーの囲い込みを狙う。

同社は、21年9月に「2030年カーボンニュートラル(CN)」宣言を公表し、事業活動での温室効果ガス排出量を30年までに実質ゼロにするとともに、経済活動を通じて社会全体のCNに貢献する方針を打ち出した。ドコモでんきのスタートはその一環であり、家庭のエネルギーのCN化後押しを目指している。

実際、ポイントサービスに魅力を感じて契約する人が多い一方、60万超の契約者の約半数が再生可能エネルギー由来の電気を供給する「ドコモでんき Green」を選択している。「ただ料金が安いわけではなく、ユーザーには電力購入するだけで社会貢献するという選択肢を提供できている」(小島氏)

「引き潮合戦」の様相呈す洋上風力 コスト高に加え脱炭素の潮目変わる

脱炭素化の成否を握る洋上風力発電事業の大型案件に暗雲が立ち込めている。

522億円の減損を出した三菱商事以外の事業関係者も続々と難しさを口にし始めた。

「ゼロベースで計画を見直す」。三菱商事の中西勝也社長は2月6日、急遽出席した決算会見で、厳しい表情を浮かべながらプロジェクトの巨額損失について説明した。同社は入札した国内3海域の洋上風力発電プロジェクトで522億円の減損を計上した。三菱商事を中心とする企業連合は2021年12月、政府が公募した事業の第1ラウンドで秋田県、千葉県の計3海域の事業を落札して総なめした。

入札で三菱商事が出した売電価格は、1kW時当たり11・99〜16・49円。入札上限の29円を何とか下回り、20円台をギリギリ割らない程度で応札していた事業者からは、驚嘆の声が漏れた。あまりの事態に経済産業省が入札条件の変更をするなど、業界では「商事ショック」とささやかれていた。

洋上風力に逆風が吹き荒れるか


インフレ、円安…… 負のループに陥る

中西社長は巨額減損の理由を「世界的なインフレの加速、円安など地政学リスクによる事業環境の変化だ」と説明した。確かに入札時にはロシアによるウクライナ侵攻は想定外だった。長引く戦火も予測不能だった。そしてインフレと資材高騰と次から次へと負のループに陥った。

特に打撃を与えたのは資材の高騰だ。鉄鋼価格は入札時と比べ約2倍、風車の調達価格も約1・5倍に膨れ上がっている。

風力はほぼ全て海外産に依存しており、長引く円安も追い打ちをかけた。他の大型プロジェクトを入札したある事業者は「三菱商事の案件の大きさから言って522億円の減損ではすまないはずだ。少なくとも1000億規模の損失になるだろう」と語る。「撤退」という言葉もよぎるが、中西社長は「予断を許さず総合的に判断する」と述べるにとどまった。というより自身の責任問題にも発展しかねない事態だけに、そう答えるのがやっとといったところだ。

現実問題、三菱商事の売電はFIT(固定価格買い取り)制度だ。状況が変わったからといって買い取り価格の値上げはできない。資材の他に人手不足による人件費の高騰、沖合で作業をするために必要な専用船のSEP船の不足によるリース料の高止まりといった要素も加わり、「撤退の条件がむしろそろっている」(エネルギー関係者)。

もっとも鋼材価格の上昇など一連の採算性悪化は三菱商事のプロジェクトだけではない。三井物産や住友商事、東北電力などが落札した第2ラウンド、JERAや丸紅が担う第3ラウンドの事業者も同じ悩みを抱えている。ある落札事業者は「三菱商事の動きを注視している。そもそも陸上風力よりも高くつく洋上風力は採算性確保が難しい事業だ。そこへきてのコスト上昇は追い打ちだ」と話す。