食品廃棄物でバイオガスを生成 地区内のホテルで給湯用の熱源に

【JR東日本グループ】

JR東日本グループは、高輪ゲートウェイ駅を中心とする約10‌haにおよぶ再開発地区「高輪ゲートウェイシティ」で、バイオガスや水素などの再生可能エネルギーを活用したサステナブルな街づくりを推進している。

温水を作る屋上のボイラー

9月24日には、オフィスや国際会議場が入るツインタワー「ザ・リンクピラー1」の地下2、3階に設置するバイオガス施設を報道陣に公開した。同月12日に商業施設「ニュウマン高輪」が開業したことを受け、本格稼働。入居する飲食店などから出る食品残さを回収し発酵させ、発生するバイオガスをビル屋上に設置した温水ボイラーに送り、同地区内のホテルにお湯を供給する。来春同地区全体が開業すれば、1日当たり約4tの食品廃棄物を処理し、約760㎥のバイオガスが発生することになる。これにより、ホテルで必要な給湯の約1割を賄えるという。

温水ボイラーで効率的にお湯を沸かすためには、バイオガスが安定的に供給されることが重要だ。しかし実際の発生量は、投入する食品廃棄物の量により変動してしまう。そこで、冷やして水分を除去したバイオガスをいったんタンクで貯蔵し、ボイラーに送る工夫をしている。


水素の利活用を推進 地産地消の供給網構築も

JR東日本グループは同地区を「100年先の心豊かな暮らしのための実験場」とし、環境を新しい街づくりのコンセプトに掲げている。水素が大きな役割を担うこととしており、今後利活用を進めていく予定だ。

現在、同地区では、純水素型燃料電池を搭載した自動走行モビリティ「iino」を運行している。

最高時速5km、立ち乗り式で、複数人を同時に運ぶことができ、広い敷地内を快適に移動できる。当面は、水素吸蔵合金を採用したカセットを用いることで外部から水素を運び込み活用するが、将来的には再エネ由来の水素を街の中で製造することにより、サプライチェーン構築を実現させる計画だ。

純水素型燃料電池システム

経営戦略本部都市計画・エネルギー・企画ユニットの野田幸久マネージャーは「具体的な実装に取り組みながら、今後も脱炭素、CO2排出の少ない街づくりにチャレンジしていく」と力を込める。エネルギー自給自足型商業ビルのモデルケースとして、全国の注目を集める取り組みとなりそうだ。

便利の裏に潜む火種 バッテリーはなぜ燃えるのか

【今そこにある危機】所 千晴/早稲田大学創造理工学部教授

モバイルバッテリーなどを火元とする火災が相次いでいる。

利便性と安全性の両立に向けた歩みは道半ばだ。

リチウムイオン電池の火災がいま、世界各地で相次いでいる。家庭ごみ処理施設での発火、電動工具や小型家電の使用中の事故、さらにはEVや定置電池システム、電池工場における大規模火災まで、世界的にその事例は枚挙にいとまがない。近年では国内でも、家庭での充電中の出火や、飛行機・電車内での小火など、私たちに身近な事例も増えている。リチウムイオン電池は、便利で不可欠なエネルギーインフラとして社会に深く浸透したが、その一方で発火のリスクが現実の問題として顕在化している。

生活必需品となったリチウムイオン電池


生活に欠かせない存在 危険物という認識なく

もはや私たちは、電気を持ち運びながら暮らす存在と言ってよい。スマートフォンやイヤホン、パソコン、EVなど、日常のあらゆる場面でリチウムイオン電池を携帯し、充電しながら使う生活が当たり前になった。電池は機器内部に組み込まれていることが多く、意識する機会が少ないため、危険物という認識はほとんど持たれていない。

しかし、リチウムイオン電池は高いエネルギー密度を持ち、多量の化学的エネルギーを内部に蓄えている。正極と負極がセパレーターを介して向かい合う構造をとり、充放電の際にはリチウムイオンが両極間を行き来する。セパレーターが損傷したり、金属異物が混入したりすると、電極が直接接触して短絡を起こし、瞬時に発熱・温度上昇を招く。さらに、電解液として用いられる有機溶媒は可燃性が高く、発熱により分解・ガス化して圧力を上げ、発火や破裂を引き起こす危険がある。このように、衝撃や変形、過充電、内部短絡といったわずかな異常が「熱暴走」を誘発する要因となる。発熱が一度始まると自己反応的に進行し、消火が難しいことも大きな特徴である。こうした構造的リスクを理解しないまま気軽に使用・廃棄されていることが、火災事故の増加を招いているともいえる。

国内の電池工場を見学すると、その徹底した安全対策と品質管理には感心させられる。発火リスクを徹底的に排除するため、材料の選定から検査工程に至るまで、念には念を入れた設計と運用が行われている。手間を惜しまない管理の下で製造された電池は極めて安全であり、実際に重大事故を起こした例はこれまで報告されていない。その結果、製造には一定のコストと時間を要するが、安全性を最優先する姿勢が貫かれている。

一方で、電池や電池を搭載した製品は複雑な国際的サプライチェーンを経て流通しており、私たちの身の回りは、もはやどこでどのように製造されたのか分からない製品であふれている。世界的に見れば必ずしも同じ水準の品質管理が行われているわけではなく、低価格を優先した製品が市場に出回ることもある。サプライチェーンが入り組んでいるため、仮に製造者が不具合を把握してリコールを行っても、消費者に情報が届かないケースも少なくない。

さらに、取り扱い説明書がデジタル化され、バーコードを読み取らなければ閲覧できない形式が増えている。取り扱い方やリコール情報が記載されているものの、高齢者はアクセスが難しく、若者は手間を惜しんで読まない傾向がある。結果として、「安さの裏に潜むリスク」が社会に静かに入り込みつつある。

リスク管理とAI 金融とエネルギーの再融合を

【オピニオン】佐伯 隆/アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部データ&AIグループ マネジング・ディレクター

エネルギーに関連するボラティリティが増大しつつある。2015年ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)におけるヘンリーハブの天然ガスのボラティリティは46%から24年に80%へ、JKMも同様に23%から40%と拡大。価格そのものに加え、エネルギーに関するありとあらゆるボラティリティが増大している。紛争や政治的対立、脱炭素の取り組みや規制、出力制御が課題になるほどの再生可能エネルギーの普及、異常気象による災害の発生・設備毀損、年間1700万台超のEV販売による需要増―。さらに50兆パラメーター超のGPT5などを含むChatGPTのユーザー数は25年に7億人となり、莫大な電力を消費するAIデータセンター増などだ。

一方、こうした複合的な不確実性のリスクを定量化し、組み合わせ、数値に基づく意思決定の変革がシステムとして追いついているか。リスク定量化には時間を要し、猫の目のように変わる世界の状況変化にはなかなか追いつけない。世界の変化をパラメーターとして折り込みながらも、数値に基づいた意思決定を適宜スピーディに行うためには、状況の変化に応じリスク定量化を繰り返し、着地点を見据えつつ意思決定の見直しを行うアジャイル型の経営判断が必要になる。

先んじて多くのリスクを扱ってきた金融業界では一定の型が完成しつつある。1998年のロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破綻や2008年のリーマン・ショックを教訓に、1989年に制定されたバーゼルⅠ規制を、バーゼルⅡ(2007年、金融取引の多様化・複雑化やリスク管理手法の高度化、リスク計測手法の精緻化など)、バーゼルⅢ(13年、資本バッファー導入やレバレッジ比率規制・流動性規制の導入、リスク計測手法の見直しなど)へ進化させてきた。

生成AIも、信頼できる正確なデータのインプットがなければ、将来のリスクを考慮した現実性のあるシナリオを作ることはできないし、精緻なリスク定量化もしてはくれない。AIが「過去」の玉石混交のネット情報を学び、単純にそれらを正として意思決定を行えば、時として判断を誤るリスクは否めない。AIに正しいリスクをインプットし、正しい意思決定の基としていくためにも、金融業界のような技術を輸入してリスクを正しく定量化する仕組みを整え、包括的に対応するルールを作っていく段階に入ってきている。こういう話をするとエンロンを思い出される方もいるかもしれない。しかし当時と比較すれば規制もリスク管理の技術も計算資源も大きな発展を遂げている。いっそのこと日本がバーゼル規制を範にエネルギー版のリスク定量化の標準を作る、くらいの取り組みを始めていいのかもしれない。

さえき・たかし 2005年アクセンチュア入社。12年頃からデータ分析やAI活用に関わり、多数の企業でデータ活用による経営効果創出を支援。素材・エネルギー領域、銀行・保険・証券などの金融領域でDXを推進。

欧米で見直されるバイオメタン 天然ガス代替の「現実解」に

【脱炭素時代の経済評論 Vol.20】関口博之 /経済ジャーナリスト

食物の残りかすや家畜のふんなど農業廃棄物を発酵させて作るバイオガスは、以前からコージェネの燃料として発電や熱供給に使われてきた。主にメタンとCO2で構成されているが、これを精製・分離して取り出すのが「バイオメタン」。近年、欧米中心にバイオメタンへの関心が高まっている。天然ガスの主成分のメタンと同じ組成でガス導管に入れて使うこともできる。アップグレードのひと手間をかけても天然ガスの代替として脱炭素化に役立つのがメリットだ。

ランドフィルガスの井戸
出所:米国環境保護庁

代表的な導入国がデンマーク。
2023年には国内ガス消費の40%を既にバイオメタンで賄っている。デンマークは北海道ほどの広さの農業国で、バイオガスの90%は農業由来。国の政策支援も受け、最近のプラントの大半はバイオメタンの精製設備を持っているという。同国政府は30年には供給するガスを100%バイオメタンにする目標も立てている。

バイオメタンが見直される要因についてエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の篠澤康彦・調査部担当調査役は、欧州向けロシア産ガスの大幅減に加え、高温熱源としてガスを使わざるを得ない産業が残ること、さらに水素による脱炭素化もコストがネックで早期実現が難しく、「現実解としてのバイオメタンに期待が高まってきた」と分析する。

こうした中で米国も独自の展開を見せている。米国ではバイオメタンを「RNG」(リニューアブル・ナチュラル・ガス)、再生可能天然ガスと呼ぶ。米環境保護庁によればRNGの稼働済みプラントは23年に全米237カ所に上り、5年で3倍以上になった。生産量の7割を占めるのが「ランドフィルガス」と呼ばれるごみ埋め立て地から出るガスで、これが米国の特徴だ。ランドフィルガスでは微生物による発酵で地中に溜まったメタン成分を、井戸を掘って回収する。大気に放出されるとメタンはCO2の28倍もの温室効果があるため、回収して燃料として使う意義は大きい。

RNGの主な用途はトラックなどの輸送用燃料で60%以上を占める。さらなる導入拡大に向け、連邦政府は再生可能燃料基準を改定し、燃料事業者にRNGの販売義務を課している。一方、メタン精製設備などには税額控除の支援もある。トランプ政権で再エネには逆風が吹くが、RNG推進に巻き戻しの動きは見られないという。

ランドフィルガスの利点は価格。自然の発酵で生じたものを回収するのでコストが抑えられる。導管に接続しやすい立地条件であれば100万英国熱量単位当たり10ドル台で供給できるプラントもあるという。シェールガスよりは割高ではあるものの、脱炭素という環境価値も考慮すれば日本への輸入も視野に入ってくるかもしれない。

バイオメタンを日本国内で作る可能性はどうか。篠澤氏は「ごみの焼却前に発酵設備を使って作ることは可能。焼却場の建て替え時に発酵槽などを併設する方法もある」と話す。ただ、わざわざメタンに精製し直接ガスとして使おうとしても現状、国の助成などはない。利用拡大を支援する手立てを考え始める時ではないだろうか。

【コラム/11月14日】米国におけるデータセンター急増が突きつける系統と環境の課題

矢島正之/電力中央研究所名誉シニアアドバイザー

前々回のコラム(2025年9月12日)で、最近、米国東部の地域系統運用者であるPJMの管轄地域において、電気料金が大幅に上昇していることを取り上げた。その背景には、AI技術の急速な普及やデータセンターの新増設に伴う電力需要の急増がある。一方で、老朽化した火力発電所の閉鎖や、再生可能エネルギー電源の系統接続の遅れなどにより、供給力が需要の増加に追いついていない。さらに、こうした状況を受けて、PJMの容量市場における約定価格も高騰していることを指摘した。しかし、データセンター急増に伴う問題は、電力価格や電気料金の上昇にとどまらない。本コラムは、この点を掘り下げてみたい。

米国で争点となっているのは、まず、データセンターの増大に伴うインフラコストの増大は誰が負担するのかという問題である。米国の電力系統は老朽化が進んでおり、いずれにせよ一定の増強・更新は避けられない。しかし、AIの急速な普及やデータセンターの急増によって生じる想定を超えた規模とスピードでのインフラ整備が必要となっている現状では、その追加的なコストまで従来通り全需要家が等しく負担すべきかどうかが、改めて問われている。

データセンターの建設は、通常1年半から3年程度と比較的短期間で完了し、その間には一定の雇用を生むものの、長期的な雇用効果は限定的である。さらに、電力系統の増強が行われた場合、その設備が将来的にストランデットコスト(回収不能な投資)となる可能性があっても、住宅需要家を含むすべての需要家がその費用を等しく負担しなければならない。こうした状況の中で、AIバブルがいつ弾けても不思議ではないという懸念も根強い。米国の主要テクノロジー企業は、AI開発競争に今年すでに1,550億ドルを投じており、来年は4,000億ドルを超える設備投資を行う予定とのことである(ガーディアン、2025年8月2日)。しかし、MITの調査報告(2025年7月)によれば、生成AIに投資する企業の95%は、何らのリターンも得ていないという。

また、環境面への影響も争点となっている。データセンターは、比較的土地の取得費用が安い農村地域や低所得者層地域に設置される傾向にあるが、これらの地域における環境汚染が懸念されている。例えば、オンサイトの天然ガス火力発電による大気汚染、建設工事の騒音、貴重な水資源の大量利用、土地利用の変化などにより、地域に負の外部コストが発生する可能性がある。

現場に配慮した商品をラインアップ ガス検知器の点検を大幅に効率化

【理研計器】

理研計器はこれまで、現場の声を踏まえた商品開発を進めてきた。

検知器本体の機能向上に加え、点検業務を効率化する機器を展開している。

理研計器は、現場のニーズや要望を取り入れた開発を行い、さまざまな機器を展開している。その一例が、使用時の操作音にちなみ、「ピコピコ」の愛称でおなじみのポータブル型ガスリーク検知器「SP―230シリーズ」だ。同検知器は、従来機種の改良を重ね、操作性や作業性を向上させた。LEDライトや警報を鳴らすガス濃度などの設定は、片手でワンプッシュすれば変更が可能。測定記録を保存する機能が付いているほか、ブルートゥースでスマートフォンと連携させれば位置情報やガス濃度などのデータをメールで自動送信できる。これらの充実した機能が評価され、現場からは多くの支持を獲得している。

ワンタッチで点検作業完了

さらなる改良を模索する中、次に着目したのが点検業務だ。ガスリーク検知器は年に1回、メーカーによる定期点検が推奨されている。従来は検知器本体をメーカーに送って点検を行い、また送り返してもらうという手順を取っていた。要する期間は2週間ほど。この間の代替機や予備品の確保とともに、送付にかかる作業や送料の負担などが発生していた。


点検成績表を発行 結果をメーカーが保証

「利便性のさらなる向上を図るには、点検に関わる作業を軽減することが必要だと考えた」。第一営業部第3営業グループ営業三課の青木裕喜夫課長は開発の経緯をこう明かす。

同社は、そうした状況を踏まえ、SP―230を点検するための自動ガス調整器「SDM―230」を開発した。ラインアップした機種は、都市ガス用、LPガス用、都市ガス・LPガス併用の3タイプ。ボタン一つで検知器の情報の読み取りから点検結果の表示まで自動で行い、わずか5~10分程度で定期点検を終えられる。従来の方法に比べて、大幅な時間の短縮を実現した。

ガスリーク検知器「SP-230」

自動ガス調整器「SDM-230」

さらに、点検履歴などのデータ類は自社のパソコンに保存が可能。次回の点検日を把握するなど、検知器の管理がしやすくなった。

青木課長が「搭載するのに、かなり思い切った決断だった」と話すのが、メーカー保証付きの点検成績表が発行できる機能だ。メーカーがユーザーの点検を保証する仕組みは、他にはない同社独自のもの。「現場で使用するユーザーのことを第一に考える」という一貫したコンセプトがあったからこそ、搭載が実現した機能と言える。

さらに、点検の結果、もし不具合があった場合には、理研計器が販売するガスボンベの登録番号が記載されていることなどを条件に、点検日から3カ月以内であれば、SP―230本体の無償での修理が可能だ。いざという時には、メーカーが対応するバックアップ体制も整っている。


数分で動作確認が完了 日常業務での使用が可能

使用前点検(バンプテスト)といった日常業務で使用できる点もポイントだ。使い方は定期点検と同じで、所要時間は2~4分ほど。例えば、現場に向かう前のちょっとした時間を使って、ガス感度を確認できる。最大5台を連結して、同時に5台の点検も可能だ。また、災害時のBCP(事業継続計画)の観点においては、短時間で多くの検知器を一気に自主点検できれば、ガス導管の復旧や開栓作業が迅速に行える。

もう一つのポイントとしては、部品交換のしやすさが挙げられる。センサーやポンプなどの部品交換を現場で行った後、SDM―230を使えば、動作確認が行える。そこで問題がなければ、すぐに現場で使うことが可能になる。突然の故障があっても、現場ですぐに対応できるのは大きなメリットだ。

SDM―230は、単一ガス用タイプが30万円、都市ガス・LPガス併用タイプが36万円(いずれも税抜き価格)で販売されている。これまでのメーカーで点検する費用や機器の送料を考慮すると、「ガス検知器を20~30台以上で使用していれば、SDM―230の導入コストは数年ほどで回収できる」(青木課長)という。

今後の拡販に向け、意欲を見せる青木課長

万が一のガス漏れを検知するガス検知器は、都市ガスやLPガスの開栓、またガス導管の敷設工事などの現場の安全対策に欠かせない存在だ。そのため、ガス検知器の動作状況の点検は、必ず行うべき業務の一つ。その業務が効率化できれば、現場の負担が少なくなる。さらに、人件費の削減につながるケースも考えられる。

理研計器では現在、SP―230の既存ユーザーに対して、新たな付加価値となるSDM―230の提案を進めているところだ。さらに、新規ユーザーに対しては、二つの機器をセットにした販売を積極的に行っていく。ガスインフラの安全を陰ながら支える存在として、同機器の活用の場が広がっていきそうだ。

物流の脱炭素化に注力 配達拠点生かした戦略を展開

【エネルギービジネスのリーダー達】森下さえ子/ヤマトエナジーマネジメント代表取締役社長

再エネ電力の供給先は、グループ拠点に加え、車両を使用する事業者も視野に入れる。

運輸部門のEV化を後押しし、増加分の電力を賄うことで物流の脱炭素化を前進させる。

もりした・さえこ 2007年ヤマト運輸入社。ヤマトホールディングスの財務・経営戦略部門を経て昨年2月、ヤマト運輸のグリーンイノベーション開発部に異動。今年1月より現職。

「物流の脱炭素化を推進する」ヤマトホールディングス(HD)が1月に設立した新会社、ヤマトエナジーマネジメントの森下さえ子社長はこう語る。同社は6月に電力小売りライセンスを取得。今後はヤマトグループの拠点に加え、車両を使用する事業者への供給も視野に入れる。運輸部門のEV化を後押しし、内燃車からEVへの切り替えで増加する電力需要を、同社が調達した再生可能エネルギー由来の電力で賄うことで物流の脱炭素化を前進させたい考えだ。


多様な再エネを調達 水力・地熱に意欲

同社設立の契機は、ヤマトグループが掲げる温室効果ガス(GHG)削減目標にある。2030年までにGHG排出量を20年度比で48%削減する計画で、その実現に向けて集配車両のEV化を主要施策の一つに据える。

しかし、EV化によって自社のGHG排出量を示す「スコープ1」は減少する一方、電力消費などの間接的な排出量を示す「スコープ2」が増えるというジレンマが生じた。消費電力の増分を再エネで賄うため、全国に点在する拠点に太陽光発電設備の設置を進めてきたが、屋根上設置には限界がある。また、消費電力の不足分をオフサイトPPA(電力購入契約)によって補てんするだけでは、削減目標の達成が難しいとの見方もあった。そこで、発電事業者から相対取引で電力を調達できるメリットなどから、電力小売り事業の開始を決断した。

ヤマトグループは、30年までに消費電力のうち再エネの比率を70%に高める主要施策を掲げている。ヤマトエナジーマネジメントはその実現に向けて、グループ拠点に設置した太陽光にとどまらず、水力や地熱といった天候に左右されない再エネも相対契約などで確保していく考えだ。EVの充電は夜間に集中し、各都道府県にあるターミナル拠点は24時間稼働しているため、変動性再エネだけでは賄えない消費電力をカバーする。将来的には、365日カーボンフリー電力を100%供給する「24/7カーボンフリー」の実現を視野に入れる。また、不足する電力は日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場から調達するため、自社電源と相対契約の比率を増やすことは、インバランス価格の高騰などスポット市場におけるリスク回避にもつながる。

調達した電力は、ヤマトHDが独自に開発したエネルギーマネジメントシステム(EMS)で最適に運用する。太陽光、蓄電池、EV充電などの制御を統合的に管理できるのが特徴だ。計画値同時同量に基づく電力需給運用については、JERAクロスと協業体制を敷いた。


脱炭素潮流を商機に 同業他社のEV化推進

ヤマトHDは昨年、他社のEV導入を支援する「EVライフサイクルサービス」を開始し、脱炭素化の潮流を商機に変えている。これは、車両を使用する事業者のGHG削減計画の立案からEV・充電器の導入、EMSの提供までを一括支援するサービスだ。物流業界の中でも先駆けて、脱炭素化を進めてきたヤマトグループが、これまで培ったノウハウや知見を展開する。

ヤマトエナジーマネジメントは同サービスにおいて、EMSの運用と再エネ供給を担っている。森下氏は「物流部門のGHG排出量を減らすには電化が不可欠で、それに伴い電力のコントロールや再エネの活用も求められてくる。こうした取り組みを後押ししていきたい」と力を込める。

さらに、森下氏が意欲を示すのが電力の地産地消だ。ヤマトHDは電力事業を開始する以前から、地域新電力と連携し、地域で生み出された再エネ電力を物流拠点で消費する取り組みを進めてきた。これをヤマトエナジーマネジメントが継承する。森下氏は「ヤマトグループは宅急便ネットワークを毛細血管のように全国に張り巡らせている。再エネが増える中で分散型電源の重要性が高まっており、集配車両のEV化はその拡大に非常にマッチしている」と語り、地方で頻発する出力制御の抑制にも貢献したい考えを示す。

7月には、地域新電力のローカルエナジー(鳥取県米子市)と連携。同社が調達した地熱や消化ガス発電の電力を、中国地方のヤマト運輸の物流拠点に供給する取り組みを開始した。「地方新電力には、地元で発電した電力を地元で消費したいという思いがある。地域経済を回す一助になれば」(森下氏)と言い、この取り組みをさらに広げていく方針だ。

物流網の脱炭素化に加え、地域新電力の課題解決にも余念がない。森下氏は、新電力事業を他社と競うのではなく、物流全体の脱炭素化支援に軸足を置く。物流に特化した新電力会社として、その手腕が注目されている。

【コラム/11月13日】金融界〝脱炭素教〟の教祖が変節 日本企業に迫る方針転換

杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

ビル・ゲイツが気候変動に関する主張を大きく転換したレポートを公開したことが話題になっている。

https://www.gatesnotes.com/home/home-page-topic/reader/three-tough-truths-about-climate

一応、気候変動は深刻な問題だとは言うものの、「破局が訪れて人類が滅亡するなどということは起きない。最も貧しい人たちが最も被害を受けるが、彼らにとっても、気候変動は最も深刻な問題ではないし、今後もそうではない」と言っている。

これだけで、いわゆる気候危機論者を怒らせるのには十分である。気温は過去はほぼ一定で、近年になって急激に上昇した、といういわくつきの「ホッケースティック曲線」を発表したことで有名なマイケル・マンも猛烈に批判をしているという。

https://tilakdoshi.substack.com/p/bill-gatess-climate-u-turn-real-epiphany

そして、ビル・ゲイツは、最も貧しい人のための人間開発、つまり衛生や医療の向上などを図ることに国際社会は投資すべきだとしている。

かつてはCO2削減のために、世界全体で炭素税が必要だなどと主張をしていたが、これは取り下げた。これに変えて、安価なグリーン技術、つまりは化石燃料よりも安くCO2を排出しない技術の開発に投資することが大事だ、という主張に転換した。(グリーン技術については楽観的すぎる印象を筆者は持つけれども)。

ビル・ゲイツも、気候危機説やネットゼロ目標といった行き過ぎに対して、現実を見据えた軌道修正を図ったということだろう。


注目されたカナダ首相の手腕 環境政策を大幅見直し

さて、このビル・ゲイツ以上に、日本の企業にとっては驚天動地の方針転換が実はあった。ウォールストリート・ジャーナルが報道しているが、日本ではほとんど報道されていないようだ。

https://www.wsj.com/world/americas/mark-carneys-shift-from-climate-change-warrior-to-fossil-fuel-cheerleader-97d17782

マーク・カーニーは、かつてイングランド銀行総裁を務め、金融機関のネットゼロのためのネットワーク「GFANZ」を率いてきた中心人物であった。

このカーニーがカナダの首相になって、環境政策はどうなるのかと、筆者は固唾を呑んで見守っていた。

ところが起きたことは劇的な方針転換である。カーニーは、炭素税とEV義務化を廃止し、石油とガスの増産と輸出を積極的に進めているのだ。トランプ関税によって大きな打撃を受けているカナダ経済を、米国依存から多角化させることが大きな目的である。

GFANZとは、グラスゴー・ファイナンシャル・アライアンス・フォー・ネットゼロの略で、あらゆる金融機関を傘下に収めた、ネットゼロ達成のためのネットワークである。参加機関は、2050年ネットゼロを達成するよう、投資や融資などのポートフォリオを変更していく、というアライアンスであった。例えば銀行についてはネットゼロ・バンク・アライアンス(NZBA)などが結成されていた。

日本のメガバンクもこのアライアンスに属することになり、その影響で、ネットゼロ目標を達成する計画を無理やり作成し公表することになった日本企業も多かった。

ところがそのGFANZは、特にトランプが大統領に選出されて以来、反トラスト法に抵触するという批判が高まったこともあり、離脱する金融機関が相次ぎ、ほぼ活動停止状態になってしまっていた。

https://agora-web.jp/archives/251018061308.html

のみならず、このGFANZを率いていた教祖であるマーク・カーニー自身が大きく変節してしまっているのである(将来はCCS=CO2回収・貯留などによりCO2を出さないようにする、とは言っているが)。このような人物に率いられてきた教団に大きく影響を受けた日本の金融機関と企業は、これから一体どうするのだろうか? もとより、多くの企業にとってネットゼロは実現不可能であり、それを目指すというだけで膨大なコストがかかる。どのように方針転換を図るか考えるべきではなかろうか。


【プロフィール】1991年東京大学理学部卒。93年同大学院工学研究科物理工学修了後、電力中央研究所入所。電中研上席研究員などを経て、2017年キヤノングローバル戦略研究所入所。19年から現職。慶應義塾大学大学院特任教授も務める。近著に『データが語る気候変動問題のホントとウソ』(電気書院)。最近はYouTube「杉山大志_キヤノングローバル戦略研究所」での情報発信にも力を入れる。

立民は「原発ゼロ」を撤回できるか⁉ 政権担う意思あるなら党綱領修正を

【永田町便り】福島伸享/衆議院議員

本稿を書いているのは、自民党総裁選で高市早苗新総裁が選出され、公明党が政権離脱を表明し、高市総裁が公明党の抜けた与党少数の下で総理に指名されるか、立憲民主党・日本維新の会・国民民主党が玉木雄一郎氏で首班指名候補を統一して野党連合政権への交代が行われるか、五分五分の状況にある時だ。本号発売の頃には、新総理が誕生しているだろうが、それはさておき、ここまでの新総理選出を巡る駆け引きの中で感じたことを以下に述べる。

政治改革に対する高市氏の姿勢を理由として公明党が政権離脱したことで、衆院での自民党議席数は196議席、立憲民主党・日本維新の会・国民民主党の主要野党の議席を合わせれば210議席となり、野党連合政権誕生の可能性が現実のものとなった。二大政党制の理論によれば野党第一党党首の野田佳彦立民代表が総理候補となるはずだがなぜかそうした声は湧き起こらず、立民が「玉木国民代表も有力候補」と言うことで、玉木首班候補で野党がまとまれるかという状況になった。

首相に就任する千載一遇のチャンスを迎えやる気満々の気持ちを隠せない玉木氏は、それでも「基本政策の一致は不可欠だ。原発を含めたエネルギー政策や安全保障、憲法の考え方で立民とは開きがある」と第一に否定的な考えを示した。当然だと思う。エネルギー政策の面で見ても、立民の綱領には「原発ゼロ社会を一日も早く実現します」とある。綱領とは、それぞれの政党にとって絶対に曲げられない立場や理念を示したもの。今、国民のエネルギー価格負担が高騰し、洋上風力やメガソーラーなど再生可能エネルギーのさまざまな問題が噴出している中、物価高への対応と安定供給を実現する政策を、原発ゼロ社会を掲げる政党が実行するとは思えない。およそ、責任を持った政策はできまい。


政権に就ける立場だが… 有力な連立政党は現れず

かつて55年体制の一角を担った日本社会党は「自衛隊は憲法違反」「非武装中立」を党是としていたが、自社さ内閣の誕生で自党から村山首相を輩出するに至って、これを放棄した。今後しばらくは自民党が過半数を大きく割り込んだ状況が続く。立民は、いつでも政権に就ける立場にある。しかし、国家の基本であるエネルギー政策で綱領に「原発ゼロ」を掲げていては、有力政党は政権を共にしようとしないだろう。

立民の綱領には、「多様な価値観や生き方を認め」という文言もある。今後、政権を担う意思があるのであれば、党内に原発ゼロを目指す議員がいるのは構わないが、党の綱領からは「原発ゼロ」は外すべきである。

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ふくしま・のぶゆき 1995年東京大学農学部卒、通産省(現経産省)入省。電力・ガス・原子力政策などに携わり、2009年衆院選で初当選。21年秋の衆院選で無所属当選し「有志の会」を発足、現在に至る。

【フラッシュニュース】注目の「政策・ビジネス」情報(2025年11月号)

NEWS 01:革新炉WGが1年ぶりに再開 ロードマップの具体化に着手

次世代革新炉の開発に向けた政府の動きが活発化してきた。10月3日、総合資源エネルギー調査会革新炉ワーキンググループ(WG)が約1年ぶりに開催され、技術ロードマップの具体化への議論に着手したのだ。

同WGは「わが国の炉型開発に係る道筋を示す」ことを目的に、関係者へのヒアリングを通じて、研究開発を進める上での目標時期を設定する技術ロードマップの策定作業を進めていたが、第7次エネルギー基本計画の策定を前に一時停止していた。エネ基の内容や海外での小型軽水炉開発の進展などを踏まえ具体化に向けて再始動した形だ。

次世代炉の開発に道筋を付けられるか

この日は、次世代革新炉のうち実用化が近いとされる革新軽水炉と小型軽水炉に焦点を当て、開発を進める各メーカーが技術開発の進ちょくや今後の見通しを説明。三菱重工業はSRZ―1200について、基本設計がおおむね完了しており、立地が決まれば詳細設計に移行可能な段階にあることなどを報告した。

委員からは期待の声が寄せられた一方、5種類の革新炉は開発段階が異なるため、技術ロードマップの精密化が必要といった課題も指摘された。

関西電力が美浜原発の適地設置に向けた自主的な現地調査を再開したことで、業界の期待感は高まっている。こうした新設の機運を後押しするためにも、政府が次世代炉の開発に道筋を付けることが重要だ。


NEWS 02:ガス保安を巡る議論が再燃 新規参入側が課題提起

「ガス小売り全面自由化前にけりが付いた論点ではないのか」

10月7日に開催された総合資源エネルギー調査会ガス事業環境整備ワーキンググループ(WG)の第2回会合後、大手都市ガス会社の関係者はこう漏らした。新規事業者から、ガス保安に関する業務負担が参入伸び悩みの一因との意見が出たことを受けての発言だ。

同WGは、ガスシステム改革の検証を目的に、ガス小売り自由化を含む9項目について、各事業者へのヒアリングを実施することになっている。その初回の同日は、小売り全面自由化がテーマだった。既存事業者として大阪ガスと広島ガス、新規事業者として東京電力エナジーパートナー(EP)とENEOSパワーが参加した。

既存事業者は、燃料転換を後押しするための需要家設備投資支援や、導管・供給設備の新増設につながる環境整備の必要性を主張。一方、新規参入者側からは、保安体制の確保に関する意見が相次いだ。東電EPは、開栓作業や大規模災害対応に必要な要員の確保に苦慮していると説明。ENEOSパワーも、都市ガス小売り事業の参入者が約40社と、電力の約700社と比べ少ない実態を挙げ、保安要員や災害対応要員の確保の難しさが、参入のハードルの一因になっているとの見方を示した。

全面自由化前、「保安は参入障壁ではなく覚悟」と語った審議会委員がいた。実際、これまでに保安に関わる重大な事故は発生していない。新規事業者が保安責任を着実に果たしてきたためであることは明らかであり、これを制度改革の成果と評価することもできる。保安業務の負担の大きさから、参入者側は緩和を要求した形だが、WGでガス保安のあり方がどんな着地を迎えるか、注目される。


NEWS 03:火力の廃止ラッシュ 需要家は電源確保に危機感

火力発電事業者が老朽火力の廃止を立て続けに発表している。JERAは9月30日、5基合計325・4万kWの廃止を公表した。同社は新設・リプレースの実施状況を踏まえて廃止しており、電力安定供給への影響はないとしている。

ただ、排出量取引制度の開始で一層のCO2削減圧力がかかる中、データセンター(DC)などの需要増を満たすべく必要なエリアで必要な規模の設備投資がタイムリーに行われるか、見通せる状況とは言えない。

同社が廃止するのは千葉県の姉崎5・6号機(LNG)、袖ケ浦1号機(LNG)、愛知県の知多5号機(LNG)、福島県の広野2号機(石油)で運転開始から45~51年の設備だ。廃止と並行して2020年以降、731万kWの新設・リプレースを実施している。さらに29年度運開予定で知多7・8号機(約132万kW)を新設し、32年度以降の運開に向け袖ケ浦新1~3号機(約260万kW)の新設を検討している。いずれもLNG火力だ。

他社からも火力廃止の発表が相次ぐ。関西電力は26日、和歌山県にある石油火力の御坊1号機を来年6月末、2号機を今年10月末までに廃止すると発表した。合計で120万kWの設備が役目を終える。

そして東北電力は10月1日、新潟5号系列(天然ガス、10・9万kW)を28年3月に廃止予定と発表した。これで新潟火力は全設備がなくなり、地点としても廃止する見込みだ。

こうした状況下、最近ではDCなどの新規大口需要家が電力調達への危機感を示し、脱炭素電源に限らず、ガスエンジンなど自家発の検討の可能性を口にし始めている。日本でも需要家が電源新設にコミットする時代が近づいている。


NEWS 04:再エネ対応で省庁連絡会議 乱開発の歯止めとなるか

北海道釧路市などのメガソーラーを巡る乱開発が大きく報じられる中、さらなる地域共生と規律強化に向け、政府が新たに関係省庁連絡会議を設立した。幾度のFIT法改正を経ても一向にトラブルは収まらないが、新たな会議体は有効な手立てを示せるのか。

法令違反やグレーな案件は各地に存在する

9月24日に初会合を開いた。文部科学省・文化庁、農林水産省・林野庁、経済産業省・資源エネルギー庁、国土交通省、環境省の担当課・室長らが参加。環境省とエネ庁が事務局を務める。初回は、釧路の問題に関する現状や課題、環境省や文化庁、林野庁所管の法令での対応状況の報告があった。事務局からは、全国の太陽光発電事業に関する地域共生上の課題や、自治体での規制条例の策定、地域共生の取り組み状況を共有した上で、各省庁に対し法令での規律強化などの対応の検討を求めた。

浅尾慶一郎前環境相は26日の会見で、「しっかりと地域と共生しながら、促進するところは促進し、抑制すべきところは抑制することが重要であると考えており、制度的な対応の要否も含めて関係者間で速やかに議論してまいりたい」と意気込んだ。

太陽光トラブルに悩む自治体関係者からは「自然環境の改変を伴う開発は国が責任を持って禁止するほどの意気込みを見せてほしい」といった意見が出ている。こうした切実な声に今度こそ政府は応える必要がある。(覆面ホンネ座談会に関連記事)

重要性増す「電力と通信の融合」 異業界間つなぐ共通認識の形成が鍵

【電力中央研究所】

インタビュー:馬橋 義美津/電力中央研究所 グリッドイノベーション研究本部 研究統括室 上席

東京電力で系統計画業務などに従事後、電力・通信間でのシナジー創出に奔走してきた馬橋義美津氏。

ワット・ビット連携の概要や関連する次世代技術を分かりやすくまとめた新著の読みどころを聞いた。

─新著では、電力・通信の双方の視点からワット・ビット連携の論点を整理されています。

馬橋 本の執筆には、私の経歴が関係しています。1992年に東京電力に入社し、系統や電源投資に関する計画策定業務などに従事してきました。その後、東京電力ホールディングスとNTTが共同出資で設立したTNクロスに参画し、電力と通信を融合して次世代のビジネスを創出する取り組みを進めました。アサインされた2020年当時は、「電力」と「情報通信」が一緒に考えられていたわけではなかったですが、その先駆的な試みを現場で経験していたわけです。23年に電力中央研究所に入所し、現在に至ります。

TNクロス時代、NTT出身の方と共同で事業を推進するにあたり、業界間の文化や考え方の違いに何度も直面しました。同じ言葉を使っていても、業界が異なれば、意味や前提にズレが生じるということを痛感させられました。簡単な例を挙げると、電力側からすれば「ケーブル」は送電設備を指しますが、通信側は光ファイバーを想起します。このようなすれ違いも多く、用語の定義や前提をすり合わせ、共通認識を築くことが不可欠でした。本書はそうした経験を基に、誰でもわかりやすい内容にすることを心掛けました。

馬橋氏の新著『ワット・ビット連携』(電気書院)


通信で電力供給を最適化 岡本氏の構想が土台に

─改めて、ワット・ビット連携の概要とその考え方が急速に広まった背景を教えてください。

馬橋 AIの普及に伴い、それを支えるデータセンター(DC)の建設が世界的に拡大しています。その結果、今後は日本でも電力需要が大幅に増加すると想定され、供給力の確保が喫緊の課題となっています。

こうした状況下で、電力(ワット)を情報(ビット)の力で最適化するという発想が生まれました。地域ごとの需給や設備の稼働状況を通信技術で把握し、電力に余力のある場所へ消費を振り分ける。全体として供給力と需要のバランスをとるのが「ワット・ビット連携」の基本理念です。例えば、再生可能エネルギーの導入量が多い地域でDCを運用すれば、需要地系統への負荷軽減が期待できます。 岡本浩さん(東京電力パワーグリッド取締役副社長執行役員CTO)は以前から「Utility 3.0」という構想の中で、電化の進展と電力消費量の増大を主張してきました。AIの台頭により岡本さんの構想が一層現実味を帯びたことで、ワット・ビット連携のような考え方が求められるようになりました。

次世代エネ覇権を狙う中国 日欧は連携して巻き返しを

【論説室の窓】竹川正記/毎日新聞 論説委員

化石燃料に回帰する米国を尻目に、中国は再生可能エネルギーで優位を固める。

産業競争力上も脱炭素電源の重要性が増す中、日欧は巻き返しを図らなければならない。

「グリーンで低炭素のエネルギーへの移行は時代の潮流だ。一部の国は逆行する動きを見せているが、国際社会は正しい方向性を見失うべきではない」

国連が9月に開いた気候変動対策のイベント。中国の習近平国家主席はビデオ演説で、化石燃料の増産にまい進するトランプ米政権をこう皮肉った。

中国は今回、「パリ協定」に基づく新目標として、2035年までに温室効果ガス実質排出量をピーク時から7~10%削減する方針を公表。「世界最大の排出国として不十分」(環境団体)との厳しい見方も出たが、気候変動を「詐欺」と決めつけ、国際協調に背を向けるトランプ政権との姿勢の違いをアピールした形だ。

中国は戦略的に再エネを増やしている


用意周到な習近平政権 再エネ大国へ産業育成

一方、パリ協定離脱を表明したトランプ大統領は、過去の政権が講じてきた再生可能エネルギー産業育成策をことごとく覆している。米国が再エネ開発競争から脱落したことで、太陽光や風力設備の技術と供給網の構築で先行する中国は勢いづいている。習氏は米国の「敵失」に乗じて、次世代エネルギー覇権を握ろうと虎視眈々の体だ。

「エネルギーのご飯茶碗は自分の手で持たなければならない」。こう訴えてきた習氏は、再エネや原発など「自前の電源」を拡大してきた。根底には、石油や天然ガスの調達を中東などに依存する状況から脱し、エネルギー安全保障を確立したい思惑があった。有事になれば供給が途絶するリスクのある化石燃料に頼り続ければ、「強国路線」の足かせとなるからだ。シェール革命で米国が世界最大の産油・産ガス国になる中、習政権の脱・化石燃料政策は一層揺るぎないものとなった。

習政権は再エネ大国に向けて用意周到に準備してきた。
14年以降、巨額の補助金を投じて、太陽光や風力発電設備、蓄電池、電気自動車(EV)などの産業育成にまい進。中国メーカーは今では太陽光パネルや風車、風力タービン、蓄電池などあらゆる再エネ設備で世界の過半のシェアを握り、市場を席巻している。

注目すべきは、グローバルサウス各国で中国製の技術や設備を活用した再エネの導入が加速していることだ。米調査会社によると、アジアや中南米、アフリカ各国は、この5年間で再エネの発電量を年平均2割以上も伸ばし、1割にとどまった先進国を上回った。パキスタンは太陽光で電力需要の4分の1を賄い、ラオスは東南アジア最大の風力発電所を稼働させた。タイやフィリピンなど他の地域でも再エネ開発計画が目白押しで、日本製ガソリン車から中国製EVへの乗り換えも進む。

背景には、中国から供給される技術や安価な設備のおかげで、新興国における再エネ導入コストが劇的に下がったことがある。貴重な外貨を費やして石油・天然ガスを輸入し火力発電所を動かすよりも、太陽光や風力を導入した方が安上がりで済むようになった。中国は各国のエネルギー転換を支えることで、経済・外交の両面における影響力を強めている。

新興国向け輸出で潤った中国メーカーは近年、再エネ由来の電気で水を分解し水素を取り出すグリーン水素製造設備の開発・実用化にも注力するなど、存在感をさらに高めようとしている。

対照的に、欧州では資材・人件費高騰で洋上風力や水素発電の開発計画が相次ぎ頓挫。日本でも、洋上風力の公募第1弾で3海域を総取りした三菱商事が事業採算を見通せなくなり、全面撤退に追い込まれた。トランプ政権下の米国の再エネプロジェクトは、補助金や融資保証の打ち切りで死屍累々の状況だ。

深刻なのは、先進国の再エネ導入を支える供給網が弱体化していることである。デンマークの洋上風力世界最大手、オーステッドは2000人規模のリストラを発表。他の欧米メーカーも業績不振で最新鋭の大型風車の開発を断念するなど、中国勢との格差が開くばかりだ。

【覆面ホンネ座談会】いまだ続くFIT負の遺産 悪質事例の実態に迫る

テーマ:太陽光トラブルへの対処法

いまだに悪質な再生可能エネルギー開発の例が各地に存在する中、政府は新たに関係省庁の連絡会議を立ち上げた。地域や業界関係者はどのような問題意識を持っているのか。

〈出席者〉 A 地方自治体関係者 B 電力業界関係者 C 太陽光業界関係者

―FIT(固定価格買い取り)開始から13年。太陽光トラブルの現状をどう見ている?

A 乱開発は今も止まっていない。仙台市では東京ドーム130個分のメガソーラー建設計画があり、議会でも問題になっている。どうやら事業者は登記上沖縄にあるペーパーカンパニーのようで、まだ建設に着手できていないが動向を注視している。他にも北海道釧路市や福島市、千葉県鴨川市などのトラブルが最近報じられ、こうした流れはなかなか止まらないのではないかと危惧している。

地方自治体としては森林破壊を伴う大規模開発を止めようと規制や課税などの条例を制定しても、結局は手続き法でハードルを上げることしかできない。定めた手続きを踏んだ計画は問題があっても認めざるを得ない。

メガソーラー規制を巡るいたちごっこが続く

B 全国にはさまざまな違法案件があり、一例を紹介したい。まず先ほど出た釧路市の案件は非FITで、森林法違反かつ産廃法(産業廃棄物処理法)違反疑い。数度のFIT法改正で規制が強化された結果、皮肉にも採算が取れるならあえてFIT認定を取らないという事例が増えている。他方、FIT案件のトラブルもやはり多く、京都府八幡市では無届けで住宅近くの急斜面の森林を伐採。結局市が公費で業者から用地を購入した。最近話題の鴨川市は、林地開発許可制度に係る行政指導が58回にも及び、ようやく県知事が動き始めた。そして、岩手県遠野市の建設現場では泥水が大量流出し鮎養殖業が壊滅。市が広報誌で怒りを表明する異例の事態となった。

この他、異を唱えた住民へのスラップ訴訟、4法規に抵触する「違反のデパート」状態、他人の土地や町有地で勝手にFIT認定を取得、他人の土地に無断で道路を敷設、産廃業者が法令違反の土地を太陽光発電業者に転売―などなど枚挙に暇がない。こうした確信犯的な事業者との知恵比べに陥りつつある。地域に受け入れられる太陽光を増やすためには、国・業界を挙げて悪質な事業者に対応していくことが欠かせない。


法令違反は論外 法令順守のトラブルにどう対峙?

C その通り。今日本には太陽光発電所が約70万カ所あり、法令順守や地域共生は当たり前という真面目な事業者が大半だが、一部にけしからん案件がある。法令を所管する省庁や、自治体が条例に基づく対応を徹底し排除していくしかない。一方、森林伐採を伴う開発の話が出たが、新規のFIT買い取り価格は1kW時当たり9円以下まで下がり、多額の伐採費や造成費がかかる案件では大規模であっても採算が取れない。PPA(電力販売契約)でも売電価格は10数円程度だし、需要家からすれば住民が反対している発電所からわざわざ買わないだろう。

問題は、法令違反ではないが予期せぬことで住民から反対される事案。例えば、所有者が売りたがっている荒廃農地を買い法令を守り開発しようとしても、住民から反対されると事業者も困ってしまう。環境への影響を1地点でなく地域全体で評価する、ネガティブ・ポジティブゾーニング両方を強化する、といった対策が考えられる。太陽光発電全体が性悪説で捉えられる状況を変えていきたい。

A 仙台市では、法令を守りゴルフ場に設置されたパネルが火災を起こし、感電するため日没まで放水できず、鎮火に22時間かかった。3・75万㎡の下草とパネルが燃え、森林に隣接しており下手をすれば山火事に至る可能性があった。他にも土砂災害や景観悪化、有害物質の流出などにつながれば、住民にとっては迷惑施設となる。こうしたケースでは地域外から来た事業者と地元とのコミュニケーション不足がよく見受けられる。さらに、途中で倒産した場合に撤去まで責任を持つのか、懸念される。撤去費用の積立制度での義務化は売電期間の10年目以降で、制度そのものへの不信感もある。自治体から国への問題提起をしているが、13年間課題を放置してきた国会議員や官僚、大手メディアの責任は重い。ただ、ようやく各地域の点の動きが線になってきたと感じる。

C その点の認識は異なる。制度的にも業界的にも既に地域共生モードに切り替わっている。国は事業者に対し制度改正で厳しく改善を求め、買い取り価格も引き下げてきた。今、FITの年間認定量は住宅用1GWに対し、それ以外は数百MW程度。むしろこんなに手間暇がかかるなら辞めたいという事業者が多いが、脱炭素は目指さなければならない。

B 資金がなければ開発はできず、悪質な事業者にも貸し付けが行われていることは事実だ。資金提供側からすれば回収が目的であり、発電は二の次なのだろう。

C 銀行も以前より貸し渋るようになり、保険料は高く、ケーブルは盗難され、そして住民からのバッシングがある。これ以上悪質なトラブルの乱発は考えにくい。また70万カ所のうち地域に歓迎されている発電所も多いのに、それがほとんど報道されないのはつらい。

B ではどうするか。政府は長期安定適格事業者制度で望ましい事業者に発電所を集約し、FIT・FIP(市場連動買い取り)によらない事業を促す狙いもある。ただ、認定基準の一つに「地域の信頼を得られる責任ある主体」とあるが、抽象的すぎる。

C 同制度で悪い事業者を退出させ、優良な事業者に引き継ぎ地域主体型に変えていくことが重要だ。そうすれば地方の荒廃などの課題解決に資する可能性が出てくる。安い太陽光は自家消費する方が合理的で、各々身の丈に合った規模で活用し、同時に電化も進めるべきだ。また、運転期間が長期化した設備のリパワリングも重要で、13年前の変換効率は12%程度だったが、今はその倍になった。

A 理想的なビジョンを全否定したくはない。ただ、現実的に今起きている問題に対しては大至急対応を強化すべきだ。

北陸の電力史をたどる新拠点が開設 明治期からの歩みを未来につなぐ

【北陸電力】

北陸電力は北陸の電力史を紹介するアーカイブギャラリーを本店ビル1階に開設した。

地域と共に歩んできた先人の姿と、その絆を次世代へ紡いでいく。

富山・石川・福井県敦賀以北を主な供給エリアとする北陸電力は、9電力体制が確立される前、他地域ブロックへの統合が検討され、独立が危ぶまれた時期があった。しかし、地域ぐるみで築いてきた独自の産業や暮らしを守るため、地元が一体となって奮闘し、北陸ブロックの独立性を保ち続けてきた歴史がある。

こうした電気事業の歩みを紹介するPR施設「地域への想い北陸電力アーカイブギャラリー」が10月9日、同社本店ビル(富山市)1階に開設された。同日には経済産業省中部経済産業局の向野陽一郎北陸支局長のほか工事関係者らを招き、オープニングセレモニーを開催。

テープカットを行う松田光司社長(中央)ら
提供:北陸電力

松田光司社長は「当社は戦中・戦後の電力再編の中で地元の後押しを受けて、幾多の危機を乗り越え、他の地域に属することなく北陸の独立性を守り、共に発展してきた経緯がある。この『地域とともに発展する』という理念をわれわれのDNAとして、しっかり紡いでいくこと。さらに、このギャラリーに込めた『地域への想い』を地域の皆さまと共有し、過去・現在・未来をつなげる架け橋になることを期待している」とあいさつした。


明治期からの歩みを紹介 ブロック確立の歴史に注目

同施設開設のきっかけとなったのは、有峰ダム(富山市)の近くに設置されていたPR施設「アーカイブス有峰」が昨年閉館したことだ。同館では有峰水力開発に関する展示を行っていた。その後継のPR施設を模索する中で、アクセスの良い本店ビルでの開設が決まった。

アーカイブギャラリーは本店ビル1階の延べ約300㎡の空間を活用し、有峰水力開発のみならず、明治期に始まる電気事業の変遷から現代のカーボンニュートラルの取り組み、さらには昨年の能登半島地震などの災害対応に至るまで、パネルや展示品などを用いて紹介している。パネルは時系列に並べられており、来訪者は歩みを進めながら、北陸の電気事業が地域と手を取り発展してきた過程を知ることができる。施設の開設を担当した地域共創部の野﨑拓朗地域・エネルギー広報チーム統括課長は「北陸の電気事業の歴史を紹介する施設はこれまでになかった。過去から未来へと続く取り組みを一望できる施設を開設できたことは感慨深い」と力を込める。

電気事業の歩みを時系列順にたどれる
提供:北陸電力

一連の展示の中でも目を引くのが、二度にわたって北陸ブロックの独立を守り抜いた地域の奮闘を伝えるコーナーだ。一度目の危機は、太平洋戦争下の1941年に政府が発表した「配電事業統合要綱」に端を発する。

これは全国を八つのブロックに分け、配電事業を統合する方針を示した計画で、北陸は中部地区に組み込まれる予定だった。当時、北陸の電気事業者は、近代化の進む重化学工業の誘致に取り組み、地域と共に発展してきた経緯があった。こうした北陸の独自性を失わせまいと、日本海電気(旧富山電気)の山田昌作社長(当時)が立ち上がり、北陸の電力圏の独立を政府に訴え続けた経緯を紹介している。

二度目の危機はその直後に訪れる。戦後の49年、電気事業は連合国軍総司令部(GHQ)の主導で再編成されることになり、民営の電力会社を七つのブロックに分割し、北陸を関西に組み込む案が提出されたのだ。これに対し、北陸配電を中心に、政財界を挙げた「七ブロック反対運動」が繰り広げられた。ここでは、北陸ブロックの独立を求めた地元経済界からの陳情書などの実物が並んでいる。地域が一体となって電力圏を守ろうとした熱気が、展示品を通して感じられる。

電源開発の取り組みも見逃せない。北陸電力は電力編成による51年の発足直後から、大規模な水力発電の開発を次々と進めた。戦後に急増した電力需要に対応するためだ。発足から約10年間で新設した水力発電所は20カ所にのぼる。総出力は着実に積み上がり、供給力は発足時の3倍に増強された。

一連の開発の中核を成したのが、60年に完成した「常願寺川有峰発電計画」だ。有峰盆地を利用して重力式コンクリートダムを築き、七つの発電所を整備。計26万7600kWの出力を確保した。総工事資金は約372億円と、当時の同社資本金の7倍を超える規模。展示ブースでは、わずか3カ年でコンクリートの打設を完了した有峰ダムの工事風景の写真が並び、社運を賭けた開発の実態を具体的にたどることができる。地域共創部の佐藤安紗希地域・エネルギー広報チーム副課長は「当時の会社規模では到底考えられない挑戦。今の若手社員にとっても刺激となるだろう」と語る。


終盤には災害復旧の様子も 被災した実物設備を設置

ギャラリーの終盤では、能登半島地震における復旧・復興の様子が伝えられている。被災した碍子や電柱などの実物設備に加え、停電復旧に奔走する社員の姿を収めた写真も並ぶ。アーカイブギャラリーについて野﨑氏は「このギャラリーには、電力マンの使命感と責任感が凝縮されている。地域と共に歩み、安定供給を支え続けてきた北陸電力のDNAを感じてもらえるはずだ」と続ける。

アーカイブギャラリーは本店ビルの営業時間内(平日午前8時40分~午後5時20分)に自由に見学できる。パネルのほか、北陸電力初の石炭専用船「北陸丸」の模型や、時代ごとの作業服なども並び、見どころ満載だ。

地域と共に歩んできた北陸の電気事業。その想いを今に継承する場として、ギャラリーは重要な役割を担う。北陸電力は北陸地域と共に発展してきた先人の姿を伝えるとともに、地域との絆を次世代へつなぐ考えだ。

【イニシャルニュース】ENEOSお家騒動? 関係会社人事巡る憶測

ENEOSお家騒動? 関係会社人事巡る憶測

ENEOSホールディングスが9月下旬に発表した、関係会社で電気・ガスの販売を行うENEOSパワーと、再生可能エネルギー事業を展開するENEOSリニューアブル・エナジー(ERE)の運営一体化に伴うトップ人事を巡り、業界にさまざまな憶測が広がっている。

発表によると、小野田泰・ENEOS保険サービス社長が10月1日付でERE社長に就き、来年4月1日付でEパワー社長に就任する。ERE前社長の竹内一弘氏は特別理事に。またEパワー社長の香月有佐氏は、来年4月1日付で両社の副社長に就く。「(両社の)経営の実質的な一体運営体制への移行」が目的だ。

この人事については、旧日本石油系の勢力がENEOS内で弱まっているのを機に、旧東燃ゼネラル出身でENEOSHD社長の宮田知秀氏が東燃ゼネ勢力の復権を狙い巻き返しを図ってきたと見る向きがある。

「小野田氏は東燃ゼネ出身で、2016年には宮田氏と共に同社の専務を務めていた間柄。優秀な人物でコーポレート・経営企画部門に携わってきたが、19年にJXTGエネルギーの常務執行役米州総代表となり、23年に現在の保険サービス社長と本流から外されていた。それを今回、宮田氏が電力・再エネ事業のトップに据えたわけだ。自分の後継含みとの意味合いもあるかもしれない」(東燃ゼネOBのA氏)

一方で、別の東燃ゼネOBのB氏によると、小野田氏は日石と東燃ゼネが17年に合併しJXTGとなった際の橋渡し役を務めた経緯があり、日石側からも一定の評価を受けているという。「電力・ガス小売りや再エネを取り巻く環境が厳しさを増す中、小野田氏には東燃・JXTG時代の経験を生かし、日石出身の香月氏と二人三脚で事業の立て直しを図ってほしいということではないか」

果たして今回の人事は、ENEOSを巡るお家騒動の現れなのか、それとも事業再構築の一環なのか。今後の動向が注目される。


高市氏のエネ人脈 旧安倍派復権なるか

高市早苗氏が10月に自民党総裁に就任し、新首相に選出されるか、政局を絡めた攻防が繰り広げられている(10月中旬現在)。保守寄り、そして故・安倍晋三元首相の路線継承がその政治姿勢の特徴だ。そのために岸田、石破両政権下で冷遇された旧安倍派の政治家の復権の可能性が高まった。これが高市氏のエネルギー・原子力、安全保障の関心とともに、プラスの方向に働くかもしれない。

憲政史上初の女性首相が誕生

旧安倍派、つまり解散した清和政策研究会は、福田赳夫元首相の派閥に岸信介元首相の支持グループが合流してできた。メンバーには自民党内のタカ派が多かった。また福田氏が原子力を支援した影響が残り、原子力立地地域の議員もかなりいた。高市氏は2000年ごろに清和会に一時属し、派閥を離脱。しかし同会の森喜朗、安倍の各首相に評価され要職を歴任した。

こうした経緯から、人脈では原子力に詳しい議員が多い。落選中だが、新潟のH、T、茨城のI(無派閥)の元各議員だ。旧安倍派の大物では東京のH議員、埼玉のS議員が安倍内閣や党執行部で高市氏と関係が深く、エネルギー問題にも精通している。彼らは原発の再稼働と規制見直しにも積極的だった。旧安倍派議員らが復権すれば、原子力政策の推進に一段と弾みが付く可能性がある。