【中部電力 林社長】電力需要増に対応 産業集積地中部の持続的な発展に貢献

2026年1月1日

革新炉の技術動向注視 原子力活用への選択肢

井関 浜岡原子力発電所の再稼働に向けた審査状況をお聞かせください。

 23年9月の基準地震動に続き24年10月11日に基準津波もおおむね妥当な検討がなされたとの評価を受けたことにより開催された24年11月13日の意見交換会において、プラント審査の開始が決定し、24年12月24日以降、順次プラント審査が開催されています。審査は、おおむね想定通りの進ちょく状況にあり、再稼働に向け一歩ずつ前進していると認識しています。BWR(沸騰水型原子炉)プラントの他社先行実績では、プラント審査の開始から設置変更許可までの実績が2年程度と承知しています。引き続き新規制基準への適合性確認を早期にいただけるよう最大限努力し、地域をはじめ社会の皆さまに当社の取り組みを丁寧に説明していきます。

井関 浜岡原子力発電所の安全性向上対策工事を巡り、不適切な事案が発生していたことを25年11月に発表しました。今後の対応をお聞かせください。

 11年から実施している浜岡原子力発電所の安全性向上対策工事の一部で、原子力部門が、契約担当箇所である調達部門の関与なく取引先へ仕様変更を依頼し、正式な契約変更や精算手続を行っておらず、長期にわたる未精算が発生していることが判明しました。また、原子力部門の役員が、社内規程に反しこれらの事実を取締役会などに報告していませんでした。取引先に大変なご迷惑をおかけしたほか、原子力事業への信頼を損ねる事態となり心からおわび申し上げます。新たな執行体制の下、早期再稼働に向け内部統制システム、ガバナンスを適切に機能させ、皆さまから信頼される事業運営に努めていきます。

井関 次世代革新炉も含めた原子力の新規投資へのお考えは。

 既設の設備を有効活用することが大前提ですが、40年、ないし60年運転が原則ですから永遠に存在しているわけではありません。リプレースや新増設を検討するのであれば当然、より安全な次世代革新炉などが主流となっていくでしょう。次世代革新炉や核融合といった次世代技術については、エネルギー自給率の向上や脱炭素に寄与する原子力発電の最大限活用など、長期的な観点から非常に重要な取り組みであると考えています。

小型モジュール炉(SMR)に関しては、24年11月に、事業拡大の機運が高まる中で投資事業としてのリターンを期待するとともに、最先端の原子力技術情報にアクセスすることを目的に米NuScale社へ出資しました。SMRに関する新たな技術情報を得られるだけでなく、原子力事業の持続的な活用に向けた選択肢の確保など、将来的な国内電気事業におけるシナジーの創出(相互の利益創出)につながることを期待しています。

一方、核融合はまだ技術的課題が残っており、社会実装に向けては時間がかかります。とはいえ、今から具体的検討に着手しないと間に合いません。高市政権が核融合に関心を示されていることは、日本の将来にとって非常にプラスです。原子力発電の持続的な活用に向け、こうした技術の潮流をしっかりと見極めていきます。

井関 高市新政権に対する期待・要望をお聞かせください。

 高市総理は、わが国の国力を高めるという強い意志の下、物価高や安全保障などの諸課題に対する各種政策を掲げており、産業界としても大いに期待しています。エネルギー政策においても、原子力の再稼働や建て替えの着実な推進、次世代革新炉をはじめとする次世代技術の導入など、将来の安定供給に資する取り組みを推進する姿勢を示されており、大変心強く受け止めています。エネルギー政策は、国民生活や経済活動の基盤を支える国の根幹をなすものです。これまでの議論に則った一貫性のある政策を推進し、電源開発のリードタイムを見据えた実効性ある政策を実現していただくことを期待しています。

井関 電力の安定供給による日本の産業競争力強化への貢献に期待しています。本日はありがとうございました。


対談を終えて

早いもので、2020年4月の社長就任から間もなく6年。今年後半は、グループ会社シーテックが三菱商事と共同で取り組んでいた洋上風力発電事業の撤退劇に加え、浜岡原子力発電所の安全性向上対策工事を巡る問題が発覚するなど、厳しい事案が相次いだ。一方、DX/GX時代のエネルギービジネスにおいて、産業集積地である中部地区の潜在力の高さは特筆される。次期中計でどんな成長戦略が描かれるのか、要注目だ。(聞き手・井関晶)

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