【特集3】2022年度「レベル4」実現へ インフラ企業の課題解決に貢献


【インタビュー/伊藤貴紀:経済産業省製造産業局 産業機械課 次世代空モビリティ政策室室長補佐】

―経済産業省はドローン振興に向けどんな支援を行っていますか。

伊藤  経産省は国土交通省、総務省とも連携しながら、市街地など有人地帯での目視外飛行を認める「レベル4」を2022年度までに実現することを目標に進めています。当省は機体や関連技術などの研究開発支援や、ドローンの産業振興と利活用を促進する取り組みを行っています。

―具体的にどんな内容ですか。

伊藤  レベル4社会が実現すれば、市街地上空をさまざまな事業者が運用するドローンが飛び交うことになります。ドローン同士の衝突を防ぎ、空の安全を守るために事業者の機体情報やフライト情報を統合して管理する運航管理システムの研究支援などを行っています。

 現在、インフラ点検や物流、災害対応で、企業や自治体が独自に取り組んでいるケースが増えています。しかし、ドローンの社会実装をいち早く進めていくためには両者が連携し、地域住民にドローンがどういうものなのかを理解してもらわなければなりません。そのためには、自治体が各所をつなぐハブになることが重要です。

 利活用の推進に向けて、経産省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は6月4日に「全国自治体ドローン首長サミット」を開催して、ドローンを活用する自治体の首長の講演やディスカッションを行いました。先進事例を紹介するなどして、官民の取り組みを後押ししていきたいと考えています。

22年度から新制度開始 長期的な取り組みが重要

―22年度には有人地帯で目視外飛行が可能となる「レベル4」の開始が予定されています。

伊藤  これまでは人の目が届く目視内での飛行(レベル1、2)、山間部や、海上など無人地域での目視外飛行(レベル3)での利用にとどまっていました。しかし6月4日に改正航空法が成立し、市街地など有人地域での目視外飛行が可能になる「レベル4」利用が認められることで、各種制度が発足する予定です。

本改正によって、22年度から操縦者およびドローン機体には第一種、第二種のライセンス制度が設けられ、レベル4の運用を行うには、①機体の第一種認証、②操縦士が第一種免許を取得、③国交相の許可・承認―の3点を得る必要があります。

―レベル4になるメリットには何がありますか。

伊藤  有人地域で目視外飛行が可能になることで、物流や警備など、人手不足に悩む産業でのドローン利活用がさらに進み、大きな影響を与えるのは間違いありません。

また、これまでドローンを飛行させる場合はドローンの操縦士だけでなく、操縦士をサポートする運航補助者や地上監視員が必要でした。これがレベル4社会になり機体の性能が向上し、技術の向上とともに操縦士以外の人員が不要となっていけば、人件費を減らすことにもつながります。そのため、サービス全体のコストも安くすることができ、ドローンを現場に導入しやすくなるという大きなメリットもあります。

―今後の意気込みは。

伊藤  物流や警備と同様にインフラを保有している企業、インフラを点検する企業のいずれもが人手不足に苦しんでいます。これら課題は現場にドローンを導入することで、一足飛びに解決する問題ではありませんが、中長期的に取り組むことが課題解決の糸口になると考えています。

現在のドローン産業の市場規模は2000億円台といわれるまで成長しましたが、まだまだ拡大する余地はあります。われわれも課題解決と産業振興を両立する政策作りに取り組んでいきます。

伊藤貴紀氏