【特集2】バイオ由来CO2でe―メタン製造 使用電力はLNG冷熱活用し発電
【東邦ガス】
50年のCN実現を目指し、都市ガス業界が力を入れるメタネーション。石炭や石油からの燃料転換やエネルギーの高度利用といった足元の取り組みの先にある「ガス自体の脱炭素化」に向けた革新技術の一つだ。
日本ガス協会は、メタネーションで製造したe―メタンを30年にガス販売量の1%、50年に同90%という高い目標を掲げている。
東邦ガスは3月31日、愛知県知多市と連携し、バイオガス由来のCO2を活用したe―メタン製造実証を開始した。製造方法は、すでに技術が確立しているサバティエ方式。水を電気分解して水素をつくり、CO2と反応(サバティエ反応)させてe―メタンを生成する。
実証が行われているのは、知多市南部浄化センターと隣接する知多LNG共同基地だ。浄化センターでは下水汚泥処理でメタンとCO2を主成分とするバイオガスが発生。東邦ガスは17年から、このバイオガスを精製して受け入れ、都市ガスの原料として利用している。
バイオガスの精製過程ではCO2を多く含むガス(オフガス)が発生するが、今回のe―メタン製造実証ではこのオフガスに含まれるCO2を原料として活用する。CO2を地域資源として活用する環境性の高い取り組みといえよう。
e―メタン製造に必要な水素の製造などにおいて電力を消費するが、今回の実証ではLNGの冷熱を利用した冷熱発電による電力を活用することで、実証試験全体での温室効果ガス(GHG)排出量を抑えられているという。
SHK制度への適用目指す 国内初の都市ガス原料に
GHG排出量の管理も徹底している。リアルタイムでのガス製造量などの遠隔監視に加え、排出量や炭素強度(CI)値を見える化するシステムをIHIと構築し、管理している。
また実証で製造したe―メタンの環境価値について、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)のSHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)で、需要家によるe―メタン利用時のCO2排出をゼロと扱うことも目指している。
東邦ガス技術研究所カーボンニュートラルグループの萩野卓朗課長は「環境価値などを適切に評価する取り組みにより、e―メタンの普及に向けて制度面でも貢献できたらいい」と意気込む。
今回の実証で製造したe―メタンは、国内で初めて都市ガス原料として利用される。自動車部品などを手掛けるアイシンとは、e―メタンを原料とする都市ガス供給について合意した。
東邦ガスは将来的なe―メタンの本格導入に向けて、実証で得られた成果や都市ガスとしての利用を通じて、製造設備の大規模化や低コスト化といった技術課題の解決につなげる考えだ。また普及拡大に必要な仕組みづくりにも貢献していくという。
都市ガスの未来を創る取り組みから目が離せない。