敦賀2号機「不許可」は非科学的 規制委は専門家の意見反映を
【石川和男の白熱エネルギートーク】
敦賀2号機を巡り原子力規制委員会が近く、日本原電に対して「不許可」を通知するとみられる。
地震地質学が専門の奥村晃史・広島大学名誉教授は、規制委の判断を「非科学的」だと喝破した。
エネルギーフォーラムは9月24日、地震地質学が専門の奥村晃史・広島大学名誉教授、ジャーナリストの石井孝明氏を招き、オンライン番組「第25回石川和男の白熱エネルギートーク」を配信した。その一部を紹介する。
合理性無視した議論 規制委の〝伝家の宝刀〟
石川 ズバリ、敦賀2号機の審査における最大の問題は何でしょうか。
奥村 専門家の意見が反映されていないことです。審査書を見ると、「不確かさが多い」「複雑で分からない」「可能性は否定できない」といった文言が多用されている。科学者ではなく役人が書いた文章だとすぐに分かります。
石川 原子力規制委員会は専門家の集まりではないのですか。
奥村 地震・津波を担当した石渡明元規制委員は、地震や若い岩石の専門家ではありません。ほかのサイトでも誤った判断や間違った調査を指示していて、科学的な専門性はないと言わざるを得ません。また審査チームに地質調査の経験がある人はいても、断層や地震、若い地層について学識が豊かで科学的な判断ができる人はいないでしょう。
石川 ほかに問題はありますか。
奥村 設置許可基準規則(新規制基準)3条3項では将来活動する恐れのある断層(活断層)の上に、原子炉建屋など耐震重要施設の建設が認められていません。敦賀2号機は1982年の着工前に調査をして、当時の基準では問題がなかったから政府が設置を許可した。ところが、2013年に施行された新規制基準では不許可となる公算が大きい。これは法律的に不適切ではないですか。政府の誤った判断によって企業が損失を被れば、通常は企業が国を提訴する。しかし電力会社はそれができない。
石井 理不尽なことをされても、日本の電力会社の社員は「審査に向けて頑張ります」と意気込みます。ある社員に私が「なぜ怒らないのですか」と尋ねると、ポカンとしていました。電力マンは真面目でいい人たちばかり。「国や規制と戦う」という発想がないのでしょう。
石川 12万~13万年前以降に活動した断層は「活断層」とみなされるわけですが、将来活動する可能性はどのように判断するのでしょうか。
奥村 断層が地層を食い違わせる、これが地震です。一番シンプルな確認方法が上載地層法で、地震を起こした断層の上に載っている地層が12万~13万年前よりも古いかどうかを判断します。日本原子力発電は上載地層法で、焦点となったK断層が「12万~13万年前以降に活動していない」と主張しました。一方で規制委側は「活動した可能性を排除できない」と判断した。
石井 原電は地層の年代を推定するために光ルミネッセンス(OSL)年代測定という手法も用いました。すると、焦点となっている地層の作られた年代が「13・3万年(誤差±0・9万年)」という結果になった。しかし規制委は、誤差を考慮すれば13万年前より新しい時期に作られた地層の可能性があるとして突っぱねたのです。
奥村 地層の年代を推定するための個別データには、必ず不確かさが含まれています。「若い年代をとれば13万年前より新しい時期になるからアウト」というのは幼稚な議論。不確かな事実を集めて合理的な判断をするのが科学者です。
石川 なるほど。志賀2号機や東通1号機は「活断層論争」に終止符が打たれましたが、敦賀2号機との違いはどこにあるのでしょうか。
奥村 そこまで大きな違いはありません。「可能性が否定できない」という論法を使えば、不許可となっていた可能性があります。新規制基準3条3項は規制委にとっての〝伝家の宝刀〟ですよ。志賀や東通には刀を抜かなかっただけ、という見方もできる。
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