「電力インフレ」の抑制に向けて何が課題となっているのか。3人の専門家が市場メカニズムの活用や、規制料金の在り方などについて議論した。
【出席者】
西村 陽(大阪大学招聘教授 公益事業学会政策研究会「電力」幹事)
小俣雅邦(U-POWER「USEN&U-NEXT GROUP」取締役 事業統括本部本部長)
山本英夫(DIVE COMPASS代表取締役)

─まずは、中長期的に電気料金はどのように推移すると考えられるか。それぞれの考えをお聞かせください。
西村 足元では、国際的な燃料市場が安定しないことが、電気料金に大きな影響を与えています。さらに今後は、長期脱炭素電源オークションの支援を受けた新規電源、特にLNG火力の導入が進みます。送配電網の維持・整備費用も、レベニューキャップ制度の下でインフレを反映した増加が見込まれます。小売り事業者が支払う容量拠出金に加え、安定供給を維持するためのコストも託送料金などを通じて需要家に転嫁されます。こうした要素を総合的に勘案すると、脱炭素電源オークションを最大の要因として、電気料金は2030年代半ばまでに現行の料金水準の2倍水準は覚悟しないといけないかもしれません。避けられない電力インフレを、いかに抑制していくかという課題に直面しています。
山本 欧州を見ると、再生可能エネルギーの増加によって、1kW時当たりの発電コストそのものは低下しています。一方で、系統費用や調整力など発電以外のコストが上昇している。日本でも同様に、電力そのものの価格と電力システムを維持・運用するためのコストを分けて考える必要があり、電力システム全体のコストが上昇することは避けられません。
─そうなると、今後燃料価格が下がったとしても電気料金は上がることになります。需要家の納得を得ることは難しそうです。
小俣 当社では、高圧・特別高圧契約の約半分程度が市場連動型です。市場連動は今や毎日20円を超える水準が続いており、顧客から「高い」という声が寄せられることもあります。燃料費も税金を含めて高止まりしている以上、変動費、固定費ともに上がり続け、当面は料金が下がる材料は乏しい。料金は確実に上昇の一途をたどるでしょう。小売り事業者としては、需要家に対して丁寧に説明していくしかありません。調達コストを転嫁すれば料金は上昇し、逆に転嫁しなければ事業は立ち行かなくなります。本当に難しいところだと感じています。「高いことが前提」となった今、国の補助金以外でどのように対応していくのか、料金戦略の軸足を移さなければ遠からず限界を迎えます。