【記者通信/3月27日】東ガス・大ガス社長が同日会見 洋上風力やアラスカLNGへの見解は?


東京ガスの笹山晋一社長と大阪ガスの藤原正隆社長が3月26日、それぞれ都内で記者会見(大阪は懇談会形式)を行った。笹山氏は「持続的な企業価値向上に向けた取組方針」について説明し、資本効率改善に向けて自己資本利益率(ROE)8%のコミットメントと、2030年頃に10%以上を目指すことを改めて示した。藤原氏は2月に策定した「エネルギートランジョン2050」について動画を交えて紹介。偶然、同日に行われた会見で東西大手の共通課題や個社の課題に言及した。

企業価値向上への取り組みについて話す東京ガスの笹山社長
大阪ガスの藤原社長は記者懇談会でLNG転換の重要性を強調

両者に共通するのは、洋上風力やe-メタンなど再生可能エネルギーや新技術分野で厳しい投資環境に置かれていることだ。米国のe-メタン製造プロジェクトは「30年度1%の導管注入」を目指し、25年度に最終投資決定(FID)が求められる。両社は「単体ではLNGより高くなるのはやむを得ない。米国のインフレ抑制法や日本国内の支援策を見極めた上で投資決定することになる」(笹山氏)、「詳細設計をしっかりと行い、遅れてしまう可能性もあるが、30年に導管注入できるように最大限努力する」(藤原氏)と展望を語った。

大阪ガスは洋上風力の公募ラウンド2で、RWEなどと新潟県村上市、胎内市沖を落札した。ただ藤原氏は「コスト高に悩んでいる。2倍どころではなく、3倍になった見積り項目もある。事業継続のため、国への働きかけや顧客の獲得に向けて最大限の努力を行っている」と現状を説明。経済産業省のワーキンググループでは、三菱商事が総取りしたラウンド1など、すでに落札済みの事業で固定価格買い取り(FIT)制度から市場連動価格買い取り(FIP)制度への移行を認める方針が示された。同氏は「どうなんでしょうね」と疑義を呈した上で、「R2、R3のメンバーにも事業性を保てるような施策を官民で考えていくステージにある」と指摘。一方、東京ガスはラウンド3で英BPなどと山形県遊佐町沖を落札した。笹山社長は「長い目で見れば、日本にとってポテンシャルが高い事業。このマーケットが長期的に成長していくために必要な支援策が何かを議論しているところだ。政府の支援はありがたいが、われわれが努力すべき部分はしっかりとやらなければならない」との見解を示した。

一長一短のアラスカLNG 「物言う株主」にどう対応?

2月の日米首脳会談で言及があった米アラスカLNG事業について、藤原氏は「30年代半ば以降にも長期契約があり、急に『買え』と言われても受け入れるところはないのではないか」と指摘。また自社への影響に関しては「米国産の安いLNGが入ってくるとすれば、国内ビジネス的にはいい話だ。しかし、自社の米シェールガスプロジェクトでは、米国内LNG生産量が増えると価格が下がり、収益性が落ちる」と一長一短とがあるとの認識を示した。一方、笹山氏は「LNGの位置付けを高める意味合いがあると思っているが、今の段階では詳細設計や価格や条件がはっきりしていない」として言及を避けた。

東京ガスは昨年末、米ヘッジファンドのエリオット・インベストメント・マネジメントが株式の5%超を保有し、不動産資産の売却を迫ったことが明らかになった。こうした「物言う株主」について笹山氏は、特定株主への言及は避けながらも「長期の成長は1番重視しているが、短期的な経済性も一定程度追求しなければ、企業としてさまざまなステークホルダーの期待に応えられない」として、これまで以上に資本効率を重視する考えを強調した。

【目安箱/3月18日】エネルギーでもう一歩踏み込んでよかった日米首脳会談


石破茂首相が米国を訪問し、2月7日にトランプ米大統領と会談した。首相自ら、そして政府・自民党関係者は成功と繰り返す。ところが通訳を入れた会談時間は30分と報道され、あまり深い話し合いはできなかったようだ。そしてトランプ大統領が関心を示したエネルギー問題について、もう少し日本側は積極的に話し合ってもよかったのではないか。

公開されている「日米首脳共同声明」では米国から日本への液化天然ガス(LNG)の輸出が強調されていた。また原子力での提携も言及した。以下がその部分だ。

「両首脳は、米国の低廉で信頼できるエネルギー及び天然資源を解き放ち、双方に利のある形で、米国から日本への液化天然ガス輸出を増加することにより、エネルギー安全保障を強化する意図を発表した」

「先進的な小型モジュール炉及びその他の革新炉に係る技術の開発及び導入に関する協力の取組を歓迎した」

ただし両者の関心が少し違う。トランプ大統領は、天然ガスだけではなく石油もあり、アラスカの石油・ガスを開発すれば米国はサウジアラビアに匹敵する生産量になる、と言及した。

石破首相は、石油に特に触れず、天然ガスに加えて、アンモニアとエタノールの輸入があると言及した。これに対してトランプ大統領は、エタノールはアイオワ州の農家などが供給できると述べたが、アンモニアについては触れなかった。

また両首脳は、記者会見、共同声明で気候変動問題には触れなかった。米国は第二次トランプ政権になって気候変動対策の対策を各国に定めるパリ協定を脱退しているが、両国の政策が違うので、あえて触れなかったのだろう。

日本は米国に1兆ドルの投資をするとも石破首相は会見で述べた。もちろんこれは日本の民間を中心にする投資でどこまでできるか不透明だが、トランプ政権が化石燃料の採掘エネルギーシフトを鮮明にしている以上、エネルギーインフラ作りに使われるだろう。

◆日本の「成功した」との自称は本当か?

首脳会談ではトランプ大統領の石破首相へのよそよそしさが目立った。安倍晋三元首相とトランプ大統領は深い交際で知られた。それとは対照的だった。一般の人々の意見を映すネットの書き込みでは、そのために「うまくいかなかった」との評価もある。しかし日本側に大きな失点はなかったようにも思える。

ただしトランプ大統領が「エネルギー輸出に関心を持っているので、その話を盛り上げた方が良かった」と、筆者の周りのエネルギー関係者は残念がる。安倍政権から岸田政権まで、エネルギーに詳しい政治家や経産省関係者が政権の中心にいた。しかし石破政権にはそのような人が見つからない。そして石破首相は個人的に、エネルギー問題にそれほど関心ないようだ。

トランプ大統領は1月の大統領就任演説で、「エネルギー非常事態宣言」を行い、インフレを止めるために化石燃料の活用、さらに化石燃料を「地下に眠る黄金」と呼び、その採掘と活用、輸出による米国と米企業の利益確保を呼びかけた。それほどまでエネルギーにトランプ氏の関心があるのだから、石破首相は応じた対応をしてもよかった。

日本は今、政治的に不安定な中東にエネルギー輸入が偏在している。さらにその輸入は、日本と政治的に対立する中国が軍事的存在感を増す南シナ海、東シナ海を通る。もちろんエネルギーの輸入の増加は簡単にできるものではない。しかしこの問題で、将来の布石として、現在の米政権や米国民との関係強化の提案を行えたのではないか。米国からのエネルギー輸入を実現する調査や、また米国が増産に努める植物由来のエタノールの輸入や日本でのエネルギーへの導入などを話すべきだったと思う。

◆脱炭素か、米国産化石燃料の使用か

そして、ここで問題がある。日本のこれまでの脱炭素政策と、日本が米国産の化石燃料を利用する政策は明らかに矛盾を生じる。日本政府は第7次エネルギー基本計画を2月に閣議決定した。同案では2013年比で2035年にCO2を60%減、50年にCO2ゼロという脱炭素目標が書きこまれている。バイデン政権の時には、米国も2050年CO2ゼロと宣言していた。しかし、トランプ政権がその目標をなくしたため、日米は全く違う方向になっている。

ここで、日本は脱炭素・気候変動対策と、米国の化石燃料の使用という二つの政策の間の優先順位を決めなければならない。

実は答えもこの共同文書に事実上書き込まれている。今回の日米共同声明では、「自由で開かれたアジア太平洋」を護るための協力を深化することに、もっとも言及量を割いてあった。これは対中国への安全保障政策を、米国と日本は協調して進めるということだ。安倍晋三政権と第一次トランプ政権の方針を、石破政権も継承した、ということである。

当然、エネルギー政策も、その大きな戦略の中の一環になる。米国からの資源調達は、その同盟と協力関係を深めることになる。また米国からのエネルギー調達を増やせれば、日本の海上交通線の敵国からの攻撃リスクを減らすことになる。

その大きな決断をしたことを、石破首相と官僚たちは分かっているのだろうか。曖昧というのは賢明な態度と思っているのかもしれない。しかしそれは国策に将来矛盾になるかもしれない。

◆今すぐ、政策の矛盾を洗い出せ

イタリアのルネサンス期の思想家ニコロ・マキャベリは次のように中立政策を批判する。

「断言してもよいが、中立を保つことは、あまり有効な選択ではないと思う。中立でいると、勝者にとっては敵になるだけでなく、敗者にとっても助けてくれなかったということで敵視されるのがオチなのだ」

(「君主論」から、「マキャベリ語録」新潮社、塩野七生訳)

日本と米国は同盟という関係だが、その中のエネルギー問題への姿勢は「中立」といえるように曖昧さを残す。そのような態度は、米国からも、気候変動政策を強く進めるEU(の中の一部の国)とも、おかしな関係を生んでしまう可能性がある。

いうまでもないが、日本の今喫緊の課題は米国との協調によって、日本周辺の東アジアでの中国、その関係国であるロシアや北朝鮮の暴発を止めることである。そしてそれは日本国民の安全を確保し、大多数の国民から支持をされる政策だ。その中の一部としてのエネルギー政策を活用してほしい。日本に対してだけではなく、米国が世界中の同盟国・友好国に対してエネルギーを供給することは、中国に対抗する重要な手段となる。その値段が安く、安定供給されれば、日米共に利益になる。

石破政権はこの会談の結果について、「成功」と怪しげなPRをすることよりも、もっとするべきことがある。脱炭素政策と、米国のエネルギーを活用する政策の衝突点を洗い出し、安全保障の目的に則して政策を修正することだ。

そして米国の信頼を繋ぐために、日本の利益のために、もう一歩踏み込んだエネルギーの提案をするべきだった。今からでも新提案はできる。