【特集2】業界最小クラスのコンパクトモデル 時短施工、軽商用車に搭載可能


パロマ

9月1日、ガス機器メーカーのパロマがハイブリッド給湯器市場に参入した。ガス機器大手3社で最後発ながら、業界最小の23ℓタンクをヒートポンプユニットと一体化し、業界初のコンパクトかつ2ユニット構成を実現した。

これにより設置工事を約3時間に短縮。軽商用車に積載可能なサイズに収めるなど、施工現場の負担も軽減している。新商品「ハイブリッドプラス」の開発にあたり、パロマはなぜコンパクト設計にこだわったのか。背景には世帯人数の減少と、それに伴う温水使用量の減少があるそうだ。

同社によると、1995年に42%だった2人以下世帯は2025年に57%へ拡大した。「そうした現状を踏まえ、実使用に基づいたタンク容量のハイブリッド給湯器を開発した」と製品企画部温水製品企画室の坂口周室長は話す。

従来のハイブリッド給湯器のタンク容量は最低でも70ℓ。貯めたお湯の放熱ロスを抑えるためにも、よりエネルギーを無駄なく使うことのできるタンク容量を目指したという。

誕生から約15年を経たハイブリッド給湯器だが、普及拡大にはいくつかの課題があり、その一つにタンクサイズの問題があった。特に、都市部の住宅では物理的に設置できないところが多い。そこをクリアすることを重視し、23ℓのタンク容量がベストと判断した。

具体的には「ヒートポンプユニットとタンクユニットを一体化して熱源機との2ユニット構成にし、今までにないコンパクトなハイブリッド給湯器を実現した」(同)

ヒートポンプタンクユニットの設置面積はわずかA3用紙2枚分。集合住宅のバルコニーに設置することも可能だという。

電源工事も基礎工事も不要 3時間程度で設置できる

もう一つの特徴は、施工のしやすさだ。ヒートポンプユニットと熱源機をつなぐ配管は1本で済み、ヒートポンプ用の専用電源工事は不要である。基礎工事も必要ないため、通常の給湯器とほぼ同じ3時間程度で設置できる。

「工事の担い手不足、高齢化が進む中、設置に丸1日がかりで2〜3人必要といった提案は難しくなっている。ハイブリッドプラスなら午前中に設置を終え、午後にビルトインコンロや通常の給湯器の設置に行くといったスケジュールを組むことも可能になる」(同)

デマンドレスポンス(DR)に関しては、関連する技術開発動向を踏まえながら「DRと親和性が高いタンク容量を見極めつつ、将来的に対応していく」(同)考えだ。

小型で可搬性に優れる

【特集2】DRreadyの本格普及へ 自立型の事業モデル確立を


住宅の新基準適用で太陽光発電(PV)の増加が見込まれる。エコキュートが果たす役割についての展望と課題を聞いた。

インタビュー/水谷 傑・住環境計画研究所 副主席研究員

―デマンドレスポンス(DR)へのエコキュートの活用についてどうお考えですか。

水谷 国の住宅トップランナー基準に設置目標が課された太陽光発電(PV)が今後増えます。そうした中、エコキュートはPVの余剰電力の活用や電力系統の安定化を支えると思います。DR活用には需給状況に応じた稼働が必要です。翌日の天気を予測し、DR機能を搭載したエコキュートの稼働時間を制御することで貢献できるでしょう。

 また、昼間のPVの余剰電力活用として発売されているおひさまエコキュートは、逆潮流が減るため系統の安定化に寄与します。ただ、新規購入の費用がかかります。そこで、例えばFIT(固定価格買い取り)期間を終えたPVを所有し、かつ既存のエコキュートのユーザー向けに「昼間沸き上げプラン」といった料金メニューを作るのも一案です。売電以外の選択肢が増えることで、自家消費の拡大につながります。

―電力需給に応じてガス給湯が使えるハイブリッド給湯器とDRの親和性は。

水谷 「上げDR」や「下げDR」にも活用できて親和性がありますし、省エネ性も高く注目しています。100Vコンセントで設置でき貯湯槽も小型で、これまでエコキュートが設置できなかった集合住宅に導入される可能性があり市場は拡大すると思います。

ZEH新基準で条件が厳格化 「ハイブリッド」が選択肢の一つに

―エネルギー会社の理解も鍵です。

水谷 2027年度から適用されるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)新基準(GX ZEH)では、一次エネルギー消費量削減率が35%と厳しくなります。エコジョーズのみでの対応は難しく、ガス会社はハイブリッド給湯+床暖房といった提案が必要になります。電力会社も集合住宅に導入する際の選択肢になるでしょう。一方、経済産業省の公表資料では、新基準の条件を満たした初期投資が最も安いのはエコキュートです。設置場所や耐荷重などの制約がない戸建て住宅では、引き続き優位になると思います。

―現在、給湯器のDRready化に向け技術要件などの検討が行われています。

水谷 DRreadyスペックの設備が今後、本格的に市場に出ますが、DRに活用されなければ意味がありません。DRによるベネフィットが得られ、機器の価格上昇分がランニングコストで回収できるような「自立型のビジネスモデル」の確立が求められます。

水谷 傑(住環境計画研究所 副主席研究員)
みずたに・すぐる 専門は建築環境工学。家庭用エネルギーや自治体のGHG排出量に関する調査研究、住宅の省エネルギー基準の策定に係る支援業務などに従事。その他、NEDOの委員なども務める。

【特集2】知見を基に公平・中立を維持 鋭い視点を合わせた誌面作成を


木藤俊一/石油連盟会長

このたび、「エネルギーフォーラム」が、創刊70周年を迎えられましたことを心よりお喜び申し上げます。

貴誌の前身である「電力新報」が、創刊25周年を機にエネルギーフォーラムに改題されてから半世紀近くが経ちます。この間、人々の生活に欠かせない石油を含めたエネルギー全般について的確に報じられたことに敬意を表します。

平時・有事問わず安定供給 変わらぬ液体燃料の重要性

奇しくも、私ども石油連盟も、貴誌とともに歩み続け、今年で創立70周年を迎えます。この間、平時・有事を問わず、一貫して消費者の皆様にとって必要とされるエネルギーの安定供給に努めてまいりました。可搬性・貯蔵性に優れ、エネルギー密度が高い液体燃料である石油の重要性・有用性は、今後も変わることはありません。石油業界は、エネルギー供給の担い手として、液体燃料が将来の長きにわたって消費者の皆様に選ばれるよう、既存の製油所を、カーボンニュートラル燃料を製造する拠点に転換していくことなどを目指しています。貴誌には、このような石油業界の取り組みについて繰り返し報道いただき、改めて深謝しております。

今年は、2月に「GX2040ビジョン」「地球温暖化対策計画」「第7次エネルギー基本計画」といったエネルギーの重要政策が閣議決定されました。

エネルギー基本計画にも記載されている通り、無資源国である日本にとっては「S+3E」がエネルギー政策の基本です。第7次計画の策定にあたり、エネルギーのベストミックスなど様々な議論が尽くされました。石油は一次エネルギー供給の3割以上を占めていますが、2040年度においても一定のシェアを維持する見通しが示されました。一方、50年カーボンニュートラル社会の実現に向けては、再生可能エネルギーの多様化、国際的な資源獲得競争、革新的な技術開発など、エネルギー分野に影響を及ぼすさまざまな不確定要素があり、事業者側の投資予見性を高めることや、国民理解を醸成することが必要です。国民にとっての関心も一段と高まることが想定される中、これらを調査・分析し、的確に情報発信する報道機関としての「エネルギーフォーラム」の役割は、より一層強まるものと拝察いたします。

引き続き、エネルギー全般の専門誌の先駆者として、70年にわたり築き上げられた知見を基に、メディアとして公平・中立な報道と、貴誌ならではの鋭い視点がベストミックスされた誌面作成を大いに期待しています。

今後の貴誌のますますのご発展を祈念申し上げますとともに、エネルギー産業のさらなる発展に向けて今後ともご尽力賜りますようお願い申し上げます。

【特集2】正面からエネ問題に向き合う 国民一人ひとりの理解を醸成


林 欣吾/電気事業連合会会長

このたび、エネルギーフォーラム社が本年5月をもって、創立70周年を迎えられたことに、心よりお慶び申し上げます。

これまで、貴誌はエネルギー産業のオピニオンリーダーとして、電力・ガス・石油をはじめとするエネルギー問題について、価値ある情報収集と深い分析に基づき、70年の長きにわたり、充実した報道を続けられてきたことに深く敬意を表します。

現在、わが国は国内投資が伸び悩み、世界における経済的地位も残念ながら後退しております。こうした状況を打破し、高い付加価値を生み出す産業構造を構築するためには、その基盤となる強靭なエネルギー供給の整備を、早期に実現していくことが必要です。

また、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、世界規模での資源争奪戦や燃料価格の高騰が起こり、エネルギーを取り巻く状況は一変しました。

資源に乏しいわが国において、エネルギーセキュリティーを確保しつつ、50年カーボンニュートラルを実現していくことが求められる中で、「S+3E」、すなわち、「エネルギーの安定供給」、「経済効率性」、「環境への適合」を同時に達成していくことが必要です。

50年は「すぐ先の未来」 実効性ある施策を速やかに

このような課題認識の下で、今年、「第7次エネルギー基本計画」が成立しました。安定供給が第一であることが示され、さらにエネルギー安全保障の概念が明確化されました。将来の脱炭素化も見据え、特定の電源や燃料に依存するのではなく、再生可能エネルギーと原子力を、共に最大限活用していく方向性が示された点は大変意義のあるものと考えております。

一方で、エネルギーインフラの更新に必要なリードタイムを考慮すると、50年は「すぐ先の未来」です。残された時間は極めて少ない状況にあり、今回の方針が実効あるものとなるよう、速やかに具体的な施策として落とし込んでいかなければなりません。

貴誌は、激変するエネルギーの問題に正面から向き合い、国民一人ひとりの理解醸成に向けて、長きにわたり取り組まれてこられました。これからの重要局面においても、国民の暮らしと産業を守るエネルギー政策の実現に向けて、貴誌の役割は、ますます重要さを増していくものと思います。

貴誌のさらなるご発展を祈念するとともに、大いなる期待を込めて、お祝いの言葉とさせていただきます。

【特集2】長期的視点での主張と問題提起 識見の高い編集姿勢を貫く


内田高史/日本ガス協会会長

このたび、「エネルギーフォーラム」が創刊70周年を迎えられましたことを、心からお祝い申し上げます。

貴誌は、70年の長きにわたり、総合エネルギー専門誌として、わが国のエネルギー産業の在り方について多面的に論じてこられました。長期的展望に立ち主張や問題提起を行う識見の高い編集姿勢を貫き、価値ある情報発信を継続されてきたことにより、今日までのエネルギー産業の健全な発展に多大なる貢献を果たされました。関係者の皆さまのたゆまぬご努力に深く敬意を表したいと存じます。

社会情勢に応じた燃料転換 産業・社会の発展に貢献

この70年を振り返りますと、わが国は社会構造の変革を繰り返し、成長・発展を遂げてきました。われわれ都市ガス業界も、都市ガス需要の急増、深刻化する公害問題、激甚化する自然災害などを背景に、当初原料としていた石炭・石油から熱量が高く大気汚染の少ない天然ガスへの転換という変革を進めてまいりました。

安全で安定した供給体制を構築するとともに、天然ガスの高度利用や省エネに資する技術を磨き商品を開発することを通じて、お客さまの暮らしやわが国の産業・社会の発展に貢献することができたと考えます。

本年2月には、「第7次エネルギー基本計画」が策定され、バランスのとれたS+3Eの実現を基本的視点に据えつつ、40年のNDC(温室効果ガス削減の国別目標)達成と50年のカーボンニュートラル社会実現を目指す方針が示されました。その中で天然ガスは、トランジション期だけではなくカーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源であり、脱炭素化された電源による電化と合わせて天然ガスへの燃料転換もカーボンニュートラル化の手段として位置づけられ、その重要性はこれまで以上に増すと考えます。

都市ガス業界では、まず足元の対策として、即効性があり確実なCO2削減につながる天然ガスへの燃料転換や高効率ガスシステムの導入促進などによりNDC達成に貢献するとともに、50年に向けては、社会コストを抑えたe―メタンへのシームレスな移行を中心に、多様な道筋でガスのカーボンニュートラル化の実現を目指す取り組みを、業界一丸となって加速してまいります。

貴誌には、こうした都市ガス業界の取り組みを広く社会に伝えていただくとともに、エネルギー産業を取り巻く情勢や課題について多角的に分析し卓越した提言を続けていただくことを期待したいと存じます。

最後に、「エネルギーフォーラム」の創刊70周年を機に、貴社のますますのご発展を心から祈念申し上げ、お祝いといたします。