【特集2】グリーン水素・CN都市ガスを導入 地域が主体の街づくりを支える

2022年11月1日

【西部ガス】

西部ガスグループはカーボンニュートラル(CN)の実現に向けて、「西部ガスグループ カーボンニュートラル2050」を2021年9月に策定。50年には、脱炭素化したガスや水素、再生可能エネルギーなどを適材適所に使い分けながらCNを実現すると宣言している。今年8月、西部ガスは福岡市と「地球温暖化対策に関する連携協定」を結んだ。続けて、同じ福岡県内の宗像市、北九州市とも協定を結び、地域の脱炭素化に向けた取り組みを進める。

福岡市でグリーン水素供給 宗像市では住民が主役のCN

西部ガスが自治体と地球温暖化対策に関する連携協定を結ぶのは、福岡市が初めてだ。福岡市は「2040年度温室効果ガス排出量実質ゼロ」を目指し、所有する施設の脱炭素化にいち早く取り組んでいる。新築のビルは全てZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化。協定締結後は、既存のビルのZEB化を加速する。

注目すべきは、福岡市水素ステーション(ST)の運営だ。福岡市は「水素リーダー都市」を掲げ、14年度から、国土交通省が実施する「下水道革新的技術実証事業(B―DASHプロジェクト)」に産学官で取り組んできた。生活排水などの下水を処理する過程で発生するバイオガスから水素をつくり、FCV(燃料電池自動車)に供給する世界初の水素STを運営してきた。研究は21年度末に終了したが、引き続きCNの実現に向けた水素の普及促進を目指すため、今年8月、福岡市と西部ガスなどが共同体を設立。9月に水素STの運営を再開した。下水バイオガス由来のグリーン水素の商用供給が始まっている。充填(じゅうてん)可能なグリーン水素は、1日当たり約290㎏(FCV約60台分)。都市リビング開発部の田中諭マネジャーは、「水素の活用は中長期的な目標であるものの、グリーン水素に価値を見出すユーザーが増えている。水素STを運営することでグリーン水素製造の知見を得て、FCVへの充填のほか、容器で供給するなど今後の普及促進を検討したい」と話す。水素リーダー都市、福岡市を力強く支援する構えだ。

世界初の下水由来の水素を供給(福岡市水素ST)

宗像市とも、西部ガス、東邦レオの3者で「『ゼロカーボンシティ』の実現に向けた連携協定」を結ぶ。西部ガスは20年から東邦レオやハウスメーカーなどと、日の里地区の団地再生事業に取り組んでおり、そこに脱炭素の視点を加えた協定になった。目指すのは地域の人が主役となる持続可能な街づくり。都市リビング開発部の今長谷大助マネジャーは、「CNという言葉から始めるのではなく、楽しみながら参加していたらCNにつながったという姿を目指している」と語る。コンポストを設置して、日の里団地の管理棟で作る地ビールの廃棄麦芽や、カフェの残飯などを堆肥化。団地の裏にファームをつくり、地域の人と一緒に野菜の苗を育てる。野菜は自由に収穫できる代わりに、ファームに生えている雑草を1本抜いて帰るのがルール。育てた野菜は団地内のカフェメニューにも登場する。域内の廃棄物で野菜を育て、地域の人が主体的に関わり、域内で消費するサイクルを作る。

「自治会や街づくりのNPOなど、地域のために頑張りたいと思っている人たちをつなげるのが企業の役割。生活に近いところでCNに取り組めるよう、一つひとつ丁寧にコミュニケーションを取りながら進めていきたい」(今長谷マネジャー)。住民や自治体、他業種とのつながりで、これまで見えなかった新たな領域が見えてくるという。ゼロカーボンシティの可能性が広がっている。

北九州市でCN都市ガスを提案 メタネーションでも協力体制

北九州市との「カーボンニュートラル実現に向けた連携協定」は、産業都市である地域性が現れた内容だ。工業地帯が広がる北九州市は、古くから環境への取り組みに注力してきた。「脱炭素先行地域」にも選定され、脱炭素化を加速させている。工業用途には電化が難しい高熱利用の需要があるため、ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスをCO2クレジットで相殺したCN都市ガスの導入を提案する。設備を更新することなく脱炭素化を実現できるのがメリット。「CN都市ガスはまだ認知度が低く、北九州市と協定を結ぶことで広くPRしていただける」とカーボンニュートラル推進部の石井直也マネジャーは話す。

同市若松区にある西部ガスグループのひびきLNG基地では、水素とCO2から都市ガス原料の主成分であるメタンを合成するメタネーションの実証に向けた検討も行っている。このため、北九州市との連携は一層心強い。「自治体は地元企業とつながりがあるので、メタネーションの原料となるCO2排出量が多い事業者や、CN都市ガスの利用に興味のある地元企業などをご紹介いただける。脱炭素化をより具体的に推進できる」(石井マネジャー)

西部ガスグループは、これまでのガス事業で培ったさまざまな技術やノウハウを結集し、顧客や行政、学術機関などと積極的に連携を図りながら、50年のCN実現に向けて取り組みを進めている。

ひびきLNG基地ではメタネーション実証を検討