【特集2】ZEBに対応した新本社ビル 環境性と防災性・職場環境が向上
【岡山ガス】
5月20日、岡山ガスの新本社ビルが完成した。同ビルは、快適な室内環境と建物のエネルギー使用量の収支ゼロを目指すZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の4分野のうち、外皮の断熱化や高効率な省エネ設備を備えた建物を評価する「ZEB Ready(ゼブレディ)」を取得。また、温室効果ガス排出ゼロを目指すオーナーが加盟する「ZEBリーディングオーナー」にも登録している。
旧本社ビルは1973年に建築され、耐震化を検討していた。その中で、BCP対策と省エネの両立が可能なZEB対応の新本社建設を立案。設計会社の丸川設計事務所、ZEBプランナーのパナソニック、コンサルタントの備前グリーンエネルギーに協力を仰いだ。
検討開始は2019年で、設計会社は複数社の企画案から適したものを採用するプロポーザル方式で選出。同時期にZEBリーディングオーナーの登録を準備し、設計案ができあがった20年8月に登録を完了した。21年1月にゼブレディを取得、2月に着工、22年5月末から業務を開始している。
ガス設備メインのZEB 働きやすさも重視
新本社ビルでは、ガスコージェネレーションシステムや廃熱回収型吸収式冷凍機、高効率GHP、太陽光発電、蓄電池などを運用している。加えてBEMSの導入で、エネルギー使用量を「見える化」した。計測した発電量は、外気温や室温などと併せて入口のサイネージに表示される仕組みだ。
一般的にZEBといえば電気を用いた建物が多い中、同ビルはガス設備を軸にZEBを構築。外壁断熱やLow―Eガラスなどで外皮性能を向上させ、コージェネなど空調設備の負荷設計を、建物の規模に対して従来設計で必要とされていたエネルギーの7割程度に抑えている。また、通常時はコージェネ1台と太陽光発電を中心に給電し、停電時には2台を追起動し、計3台で給電する。コージェネが起動しないことも想定し、非常用のディーゼル発電機も備え、さらなるレジリエンス向上も図る。

ゼブレディの基準を達成する設計は難航した。岡山ガスでは防災性・環境性に加え、働きやすさも重視。窓をつくると断熱性が落ちるなどの課題があった。総務部総務グループの宮脇雄一グループ長は「省エネに特化すれば基準はクリアできるが、快適とは言い難い。ゆくゆくはCASBEE(建築環境総合性能評価システム)ウェルネスオフィスの認証取得を目指しているので、働きやすさは欠かせない」と話す。また、一級河川の旭川と世界かんがい施設遺産の倉安川水系に隣接。建設工事には多くの制約があったが、旭川の景観と用水沿いの桜並木は社員に癒しを与えてくれているという。
現在、岡山ガスは新本社ビル見学の対応に追われている。ガス設備メインのZEB構築を手本としたい県や市などの自治体や、同業他社などから、多数の声が寄せられているのだ。エネルギー開発部環境エネルギーグループの山本雅生グループ長は「電気だけでなくガスでもZEBが構築できることをアピールしていきたい」と意気込みを見せる。今後、新本社ビル横の第2ビルにも、ZEB化の改修を行う予定。防災性、環境性、働きやすさの向上を追求していく。