【特集2】LPガス配送・保安を高度に管理 「スペース蛍」が照らす最適解

2022年12月3日

【ニチガス】

全世帯数の4割強、約2200万件で利用されているLPガス。この供給インフラの高度利用から、業界が学ぶべきポイントはあるのだろうか。LPガス大手のニチガス(日本瓦斯)は、業界に先駆けて高度化に取り組んでおり、そうしたシステム構築から見えてくるのは「スマート化」の視点だ。

ニチガスの取り組みでカギを握るのが「スペース蛍」と呼ぶ、LPガス容器の配管部に、簡単に低コストで後付け設置できる手のひらサイズの端末だ。通信機能を持ち、原則1日1回、24コマのガス消費データをサーバーに飛ばす。電力業界のスマートメーターに相当するものだ。データを飛ばす頻度が常時ではなく、「1日1回」がミソだ。もちろん、需要と供給の同時同量を常に維持する必要がある電気とは性質が異なるため、電力スマメとは一概に、単純比較はできない。ただ、この頻度によって、端末の消費電力と通信費を抑えられる。また後付け方式なので、メーターそのものを変えることは不要で、導入費は安い。

では、この端末で何が可能になるか。まずは、容器内のガス残量把握だ。従来では容器交換のタイミングは配送員の予測に頼っていたが、この方式では残量をリアルタイムで把握しているため「A地点のユーザーの容器はあと4日以内に交換が必要」といった情報が日々デジタル処理される。交換回数は極限まで減らせる。一連の配送ルートはスマホ上に最適表示される。まさに、エネルギーを日用品のように管理して配送する「アマゾン配送」のようだ。

集中監視システムとの違い 都市ガス含め140万件導入

次に保安の視点はどうか。そもそも、地震などの有事の際や多量のガス漏れ時には、マイコンメーター自体の即遮断機能によって、大きな事故を防いでいる。問題は微小漏えいだ。スペース蛍では微小漏えいなどの情報も遠隔で取得でき、その情報に基づき現地に出向して保安を担保する。ただ、似たような仕組みの「集中監視システム(NCU)」とは、異なる点がある。「NCUのように、オペレーターが即開閉栓できる機能は備えていません。スペース蛍式で開閉栓できるのは1日1回です。即遮断機能はマイコンメーターが担えばよいと考えています」(吉田恵一専務)

実は、この違いが国の制度上のインセンティブ面で一つの課題をもたらしている。現在、LPガス業界のNCUの導入割合に応じて、緊急時対応要件の緩和など事業者にインセンティブを与えているが、ニチガス式は該当しないのだ。

「そもそも、スペース蛍式はNCUと比べて導入費が安く多くの事業者に採用いただく可能性があります。かつ保安についても、未整備の場合に比べて、高まることは自明です。それなりのインセンティブがあってもいいのではと国に要望を出しています」(同)

本方式は、昨年夏までにニチガスの全LPガスユーザーに整備され、さらに今年度中には東彩、東日本、北日本ガスといったニチガスグループの都市ガス会社の全需要家に導入する計画だ。その数は140万件を優に超える。スペース蛍が実現する業務高度化の最適解は、業界関係者の関心を集めそうだ。