【特集2】ICTを活用し安全運転に貢献 火力ボイラーの適切な定検を支援

2022年12月3日

【IHI】

ベースロード電源として重要な役割を果たしている石炭火力発電。安定した運転が求められる一方、購入などの理由により石炭の質が異なると燃焼が変わり、ボイラー伝熱管の寿命に大きく影響する。そこでIHIは、火力発電所の定期点検時に行う検査や更新の対象範囲を的確に判断できるよう、「ボイラー保守技術高度化システム」を開発した。

ボイラーを構成する伝熱管は1万本近くに及ぶ。総延長は東京~広島の距離に相当するほどだ。一般的にボイラーは30年以上運転可能だが、高温・高圧にさらされることにより強度が低下していき、噴破が起こる可能性がある。1本でも噴破すると運転を止めざるを得なくなるため、発電所では定期点検時の伝熱管交換を、広範囲で実施する安全策を取ってきた。運転年数が増えると対象となる範囲が拡大していくことになる。「見落としなく適切に判断するため細かく知りたい」との声を受け、IHIは2015年、北海道電力苫東厚真発電所の協力の下、システムの開発に乗り出した。

センサーを増やし分布で表示 苫東厚真4号機に導入

600℃近くになる加熱部の伝熱管のメタル温度は非加熱部で計測し、当該データと熱伝導解析から予測している。北海道電力は、センサー(熱電対)を従来の10倍程度に増やして計測範囲を細分化。点で取得していた温度を分布で把握できるよう、設備増強に踏み切った。

運転中に取得するデータは、ICT(情報通信技術)の活用で、高速に収束計算される。常に高温にさらされる管や異常値がリアルタイムに反映され、画面上で刻々と変わる温度分布によって直感的にも把握できるようになった。

非加熱部(青)から加熱部(赤)の温度を即時計算。分布は刻々と変化する

さらに伝熱管の寿命評価の精度を高めるため、IHIはボイラー運開時からの運転・更新履歴、使用した燃料炭に至るまでを電算システムに入力。センサー増設前の状態を過去にさかのぼってデータ化した。こうして安全運転の向上に貢献する保守支援システムが完成した。

北海道電力は19年、苫東厚真発電所4号機にこのシステムを導入。補修計画の最適化を図っている。この取り組みは20年、経済産業省の「第4回インフラメンテナンス大賞 技術開発部門」で優秀賞を受賞。現在は同発電所の2号機にも導入している。 

カーボンソリューションSBUの福島仁技師長は、石炭火力はバイオマスやアンモニアの混焼でCO2を削減し今後も活用できるとした上で、「混焼すると灰の粘着性が上がることがある。また、ボイラーの特性が変化して、設備を変える必要が出てくるかもしれない。だがそのままで使いたいというニーズにも応えたい。ボイラーを熟知しているIHIの強みを生かし、火力発電の適切な定期点検に貢献していく」と展望を語った。