【特集2】産業とともに進展する保安 人材不足など新たな課題に対応
保安は日本の産業発展を追いかけるように、さまざまな変遷を経て高度化してきた。2020年代の大きな目玉はAIやドローンなど新たなツールを活用したものだ。
産業界に保安が登場したのは高度経済成長期の1960年代だ。東名阪を中心にコンビナートが建設され、エネルギーを大量に消費して多くの産業を生み出してきた。生産技術の発展とともに、設備や施設が大型化していき、事故発生時には被害も甚大なものとなった。こうした事故や災害に対応するため、設備の安全技術向上が図られ、事故の発生確率が抑制された。
80年代~2000年代は、さらに事故を低減するため安全マネジメントシステムが導入された。製造事業所ではTQC(統合的品質管理)、TQM(総合的品質管理)など、現場での品質や安全を現場主導で行う取り組みが普及した。また、品質マネジメントシステム「ISO9001」が普及し、継続的な改善が進んだ。
00年代は人的・組織的要因の統合の取り組みが進んだ。事故の人的要因を考えるようなシステム構築や、企業組織としての風土や文化が事故要因につながらないか改めて検証する取り組みだ。
こうした取り組みによって、産業界の保安体制は高度経済成長期と比較して飛躍的に向上している。

AIやドローンの活用 作業補助と効率化
20年以降は、さらなる安全向上に加え、人材不足への対応が課題となってきた。そうした中、注目を集めているのがドローンやロボットの活用だ。エネルギー業界でも、煙突や送電線、風力発電設備など、高所作業、遠隔地の点検作業に導入され、実証が進み実用化される用途も出てきている。
また、通信機能を保安設備に搭載し、現場の作業員と管理者がメンテナンス情報を双方向通信で交換したり、遠隔地からの操作などが行われるようになってきた。
さらに、部品やコンポーネントをはじめ発電所などプラントそのものをバーチャル化して、同じものを机上につくり、AIによる点検や寿命予測などが行われている。
こうした新技術の活用した保安は「スマート保安」と呼ばれている。大きな可能性を秘めているが、裏を返せば未知の部分があるということでもある。懸念事項を一つひとつ払拭していき、さらなる安全と効率化、人材不足解消に資することが保安には求められている。