【目安箱/12月12日】賛否渦巻く太陽光義務化 小池都知事はなぜ固執するのか

2022年12月12日

東京都の小池百合子都知事が新築住宅の太陽光パネル義務化の政策を進める。人権、経済性、防災など、多くの問題がある。多くの問題があるのにその批判を無視して、小池都知事がこの政策を自ら主導して突如進めるのは不思議だ。両論併記で、賛成反対のそれぞれの意見と解説は「記者通信」に書かれている。このコラムでは、なぜ小池都知事がこの政策を唐突に持ち出したのかを考えてみたい。彼女自身が詳細を語っていないので謎なのだ。もしかしたら、彼女のいつもの行動「目立つことに飛びつく」というのが主要な理由かもしれない。

◆国が断念した政策に飛びついた

小池百合子東京都知事は2021年9月に、この政策を突如発表した。そして21年12月から始まった都議会定例会で設置義務化を定める東京都環境確保条例の改正案が審議されている。成立すれば2025年4月から施行される。実施されれば、新築一戸建てでは日本初の条例となる。華やかなことを追求する小池氏の好きそうな話になる。

菅義偉政権では20年に、温室効果ガスの排出を50年までに実質ゼロにする「カーボンニュートラル目標」を決めた。それを受けて、21年3月に当時環境大臣だった小泉進次郎が、この政策を行いたいと急に打ち上げた。しかし世論の反発が強く、立ち消えになった。小泉氏の断念した思いつき政策に、なぜか小池氏は飛びついた。

関係者によれば、小池氏の脳裏には、環境大臣(2003-05年)の時に自らが主導した「クールビズ」キャンペーンが成功体験として残っているらしい。夏の軽装で冷房を抑制しようとする政策だ。冷房抑制の効果があったかは疑問だが、服の軽装化は進んだ。キャンペーンでは各所に彼女が有名人と共に登場し、流れを作った。彼女は環境に注目するようになっている。

小池氏は、ネット広報には詳しくなさそうだが、ニュースキャスターの経験を活かして、オールドメディアの操作は上手だと思う。絵になる画像を提供し、短くキャッチフレーズを繰り返す。実際にこの政策で12月1日までに寄せられた3714件のパブリックコメントでは、賛成が56%と反対の41%を上回る。

◆「唐突すぎる」都民ファースト関係者からの声

ただし広報だけでは現実は変えられない。新型コロナでも、小池都知事は広報には一生懸命だった。しかし東京都による現実の防疫体制づくりは後手に周り、その政策と実務の評価は今ひとつだった。この太陽光パネルの義務化政策でも、実行には問題が多く、エネルギー関係者からは懸念の声ばかりが聞こえる。

太陽光パネルの設置義務化政策が、なぜ浮上したのか。小池氏の都議会与党である都民ファーストの関係者に聞く機会があった。「唐突すぎる」と都議の多くは不思議がっているという。同会の意思決定はほぼ小池の独断で決まり、秘書出身の側近側近がたまに小池の意見を聞かれる程度だ。それ以外の議員には、小池の真意はなかなか分からない。それでも選挙に勝てるから、都議たちはしがみついているようなのだ。

「メガソーラーが日本を救うの大嘘」(宝島社)という本で、かつて小池と協力したが、今は袂を分かち、「地域政党自由を守る会」を立ち上げ活動する上田令子都議会議員の寄稿が掲載されていた。彼女も、突然の政策化を疑問に思っていた。そして筆者は、上田氏と懇談する機会があった。

上田氏の見立ては「深く考えずに決めたのではないか」という。この政策が、突然浮上した21年9月に、都民ファーストは批判を集めていた。21年7月に行われた東京都議会議員選挙では、同会はなんとか過半数を制した。ところが選挙期間中に同会の木下富美子議員が選挙後に無免許運転で交通事故を起こし、さらに免許停止処分を5回も受けていたことが発覚。彼女はその後も11月まで都議に居座り、彼女を統制できない同会が批判されていた。また当時は新型コロナ対策にとらわれて、都政も社会の動きも止まっていた。その新型コロナ封じ込め策も批判を集めていた。小池氏には、新鮮な施策を手掛けたい動機があった。

「この政策に小池さんが飛びついた理由は、はっきりとはわからない。彼女は記者会見の目玉テーマをいつも探している。都民の注意を逸らすため、深く考えずに、目新しいテーマに飛びついた可能性がある」と、上田氏は言う。

◆行き詰まりの今こそ議論を尽くす好機

小池氏の一貫性のない行動を考えると、上田氏が言うように、目立つことを重視して、小池氏が太陽光パネル義務化の政策に飛びついた可能性もあると筆者は思う。

ただし、それでも先行きが怪しくなり始めた。有識者が疑問を示し、ネットを中心に世論の批判が強まっている。都議会第二勢力の自民党は、小池氏が国の政策と連動した強調したため、これまで強く批判はしていなかった。しかし、問題点が次々に出てきたことで12月からの都議会では「慎重な審議を求める」と要求した。小池氏も12月の記者会見で、批判に配慮し始めたのか、「最新技術の開発促進、情報発信、人権尊重などSDGsに配慮したい」と、推進一辺倒から少し態度を変えた。

小池氏の独断だけでは、政策を遂行できなくなっている。この重要な政策が仮に「目立ちたい」という軽率な意図で推進されたら問題だ。行き詰まったこの機会を逆に生かし、都民、国民に問題を周知させ、議論を深めてほしい。