世界最高水準の熱効率63%以上 脱炭素に寄与する火力発電所
【東北電力】
2022年12月、東北電力が建設を進めてきた上越火力発電所1号機が営業運転を開始した。
最新鋭の火力発電として、高い経済性と環境性を有する同機の果たす役割は非常に大きい。
上越火力発電所1号機の出力は57万2000kW。年間の発電電力量は、一般家庭約80万世帯が年間で使用する電力量に相当する。発電方式には、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「ガスコンバインドサイクル発電システム(一軸型)」を採用し、世界最高水準となる熱効率63%以上を達成。最新鋭の火力発電として、燃料消費量と運転に伴うCO2排出量の削減に貢献する。
エネルギーを取り巻く環境はここ数年で大きく変化し、火力発電には「燃料の高騰」や「脱炭素社会の実現」に向けた対応、さらには増加する再生可能エネルギーの出力変動に対応する調整力としての機能が必要不可欠だ。高い経済性と環境性を有し、刻々と変化する電力需要への追従性も高い同機には、大きな期待が寄せられている。

最新の技術や知見を導入 保守・点検の高度化も実現
上越火力発電所1号機は、東北電力で9カ所目の火力発電所となる。自社火力の経年化が進んでいる状況や競争環境の進展を踏まえ、計画的に経年火力を廃止し、コスト競争力のある最新鋭火力への置き換えを進める一環として、2019年5月から建設工事を進めてきたものだ。
随所に最新の技術や知見を導入しており、ガスタービンの冷却には、メーカーと共同開発した「強制空冷燃焼器システム」を採用。同システムは、18年度に「優秀省エネ機器・システム表彰」(主催=日本機械工業連合会)の最高位である「経済産業大臣賞」を受賞している。
ガスタービンの入口の燃焼ガスは1650℃と極めて高い温度に達する。同システムに加えて、燃焼器の遮熱コーティングやタービン翼の冷却の最適化を組み合わせることで、世界最高水準の熱効率を実現した。
また、タービンのクリアランスコントロール技術の採用などにより、発電出力の変化速度向上や最低出力の低減、プラント起動時間の短縮などが可能となり、再エネの出力変動に対応する調整力としての機能を高めた。
このほか、機器配置にも特徴がある。発電に使用した蒸気を冷やす「復水器」をタービンの横に配置し、発電所建屋の高さを抑えることで、建設コストを低減した。災害への備えとして、発電所周辺で想定される津波の最大高さよりも高い2階以上に電気盤や制御盤、各種の非常用設備を設置した。
さらに発電所の保守・点検の面でも、多彩な技術が導入されている。機器の保守・点検には、ロボットやドローンを活用。ロボットおよびドローンは、構内の決められたルートを自律移動しながら機器の画像を取得し、異常の有無を自動で判定する。ロボットは、同時に機器の振動データも取得し、過去のデータに照らして異常の有無を自動で判定する。判定の結果、異常を発見した場合は速やかに運転員に知らせる。こうした最新技術の導入により、トラブルの兆候を早期に検知することができ、保守・点検の精度の向上が図られるとともに、所員の負担軽減にも寄与する。

さらに、ウェアラブル端末を装着した所員が現場に向かうことで、現場から離れた中央制御室と機器の様子などをタイムリーに共有することも可能だ。
同社では今後も、東北電力グループ中長期ビジョン「よりそうnext」のもと、競争力の徹底強化や脱炭素社会実現に向けたさまざまな取り組みを加速していく。
1 2