【目安箱/12月26日】太陽光パネルは都市災害時に危険 東京都への警鐘

2022年12月26日

◆100年前の後藤新平の知恵「災害で逃げられる道路」

紅葉見物で賑わう神宮外苑の銀杏並木

東京都民の筆者は、神宮外苑の銀杏並木が好きで晩秋に毎年散策する。外苑前の道路は車道も歩道も幅広い。ここは1923年の関東大震災の後で、内務大臣と帝都復興院総裁を務めた後藤新平(1857-1929)が、新しい東京のモデル道路として作った。自動車化時代の到来と防災を意識し、道幅を広くし、長寿の銀杏を植えたという。大震災の際に、東京の入り組んだ道路が避難を遅らせて、被害を増やした反省により、後藤は「災害の時の逃げやすさへの配慮」を建設の際に指示したという。

ただし後藤の構想は経費がかかるため、世論や関係者に受け入れられず、道路の拡張は限定的だった。出典不明だが、昭和天皇が戦後外苑に来たときに、「後藤の言う通りにしていれば、戦災の規模も少しは小さくなったかもしれない」と、悔やんだという逸話があると聞いた。

100年経過しても、後藤の考えが東京の街づくりに活かされているとは思えない。筆者は東京東部のゼロメートル地域のマンションに住んでいる。周囲は埋立と以前は農地だった場所のようで、無計画に街が建設されたために、道路が入り組んでいる。仮に火災、洪水が起きた場合に、逃げられなくなるのか心配になる。

東京だけではない。日本のどの市街地も、防災や災害時の避難を意識して作られていないように思う。

◆太陽光パネル義務化政策、防災の配慮はあるのか

12月15日、東京都の進める新築住宅の太陽光パネルの義務化政策が、都議会で可決された。事前にそれほど話題になっていなかったので、唐突感がある。そして東京に住む人間として、防災面での心配がある。

筆者の住む東京東部のゼロメートル地帯では、数メートルの浸水の危険がある。また大規模火災、地震での避難の心配の破損がある。太陽光パネルが街中に増えたら、災害の際にどうなるのか。

以下、「メガソーラーが日本を救うの大嘘」(杉山大志編著、宝島社)を参考にした。東京の北部・東部を流れる荒川水系、南部を流れる多摩川水系の下流域は、河川と海に囲まれたゼロメートル地帯だ。

こうした水害の際に、太陽光パネルは危険だ。太陽光発電では、光があたれば発電をし続ける。特に水は通電性が高く、また破損時にそのような経路で電気が漏れるかわからないので、近寄ってはいけない。1システムで光があたれば300ボルト前後の電流を発生させる。これは数秒人間の体に通電すれば、心筋梗塞などをもたらして死ぬ可能性のある電流だ。

また太陽光パネルの表面はガラス製で、重さは1枚15キロ程度だ。強風や地震で屋根から外れて飛んだり、落下したりする危険がある。日本各地でパネルの手抜き工事で、その破損が伝えられている。

「屋根が電気を作ることを当たり前にしたい」。小池百合子都知事は、21年9月にこの政策を発表したときに語った。屋根に太陽光パネルを置くことが問題なのだ。筆者の住む場所の周りの屋根の上に、太陽光パネルが大量に設置される光景を想像してみた。水害の時には太陽光パネルによる感電のリスク、強風や地震の時には15キロを超えるガラスと金属の塊が住宅地に舞い、人にぶつかり移動を妨害する可能性があるだろう。とても危険だ。

太陽光発電を人里離れた場所でやるならともかく、なぜ東京のような人口密集地で行うのかわからない。

◆危険を考えていない東京都

東京都が2022年8月に「太陽光パネル解体新書」という政策説明パンフレットを作った。これを読むと、水没による感電については「過去に事故の事例は聞いていない」「専門家に対応を依頼してください」、破損リスクは「少ない」(同)と書いてある。(パンフ内Q&A18)

大水害の時に専門家を呼ぶ暇があるのだろうか。全国で太陽光発電の乱開発、パネルの破損問題が起きているのに、リスクは少ないのだろうか。あまりにも答えがいい加減すぎる。想定される人命リスクを無視すべきではない。

この政策は小池都知事の主導のようだ。(エネルギーフォーラム記事「【目安箱/12月12日】賛否渦巻く太陽光義務化 小池都知事はなぜ固執するのか」)東京都の事務方の方でも突如上から降りてきたために、政策をしっかり練っていないらしい。

そしてこれは東京都だけの問題ではない。京都市が大規模建物の太陽光パネル義務化を行い、群馬県も検討している。また神奈川県川崎市は新築住宅での義務化を検討している。防災の観点からリスクの大きな政策を遂行する不思議な動きが、日本各地にある。

太陽光発電を否定する意図は私にはない。しかし、どんな物事にも、場所や方法の適切なやり方への配慮がある。なんで都市に合わない太陽光発電の普及を、東京都や各自治体が進めるのか不思議だ。

冒頭の例を引用すれば、後藤新平が考えたような「災害時に逃げる」ための動く経路を、21世紀の都市計画で行政が考えていないのは、愚かで残念なことだと思う。太陽光パネル設置を都の条例は成立してしまった。2025年4月からの施行まで時間がある。この防災の面の懸念を払拭できない限り、筆者は都民として、この政策を支持できない。東京都を含め、各自治体は、過去を含めて知恵を絞り、その場に合い、効果があり、安全な環境・エネルギー対策を考えてほしい。