【特集2】目指すはエネルギー最適利用 ユーザーメリットの追及へ
家庭用のエネルギー価格が上がっていく中、ニチガスはどう挑むのか。新しく社長に就任した柏谷邦彦社長に現状認識と今後の展望を聞いた。
【インタビュー】柏谷邦彦/日本瓦斯社長
―ハイブリッド給湯器が好調だ。
柏谷 第二四半期となる9月までの販売台数は230台程だったが、ガス展を実施した11月の単月だけで、380台近く販売した。自分でも利用している。季節や時間帯に合わせてAIが電気・ガスの最適利用を実施してくれることが体感できた。ユーザーには大きなメリットがある。通常のエコジョーズ単品に比べて初期投資はかかるが、ランニング費の経済性や環境負荷の低減が、エネルギー価格上昇・脱炭素へのトレンドを背景に受け入れられていると思う。
―販売面での工夫は。
柏谷 競争力のある価格で販売できるように当社ならではの企業努力を進めている。独自に開発したBtoB向けの「タノミマスター」という受発注システムを活用することで、メーカーからの調達価格を抑えスピーディーに調達できる。結果的にハイブリッド器を含む当社が販売するガス機器は競争力のある価格で、納期も早くなっていると自負している。
―ガス機器不足の影響は。
柏谷 メーカーが部品調達のリスクヘッジなどで、徐々に解消に向かっている。当社は極力在庫を持たないようにしているが、例年よりも在庫量を増やして対応中だ。
エネ価格上昇中の対応策 蓄電池で多様な価値提供へ
―エネルギー価格が上昇中だ。
柏谷 短期と中長期で分けて考える必要がある。例えばハイブリッド給湯器を利用すれば、短期的にはランニング費を削減する。中長期的には、状況に応じて電気とガスの利用をシフトし合う仕組みが対応策になっていくと思う。電力の需給ひっ迫時には、ガスを主体にガス機器を動かして制御するイメージだ。その意味でハイブリッド給湯器は電力ピークの緩和に貢献し、社会的に意義のある商材だと思う。逆のケースでもしかりだ。
こうした需要側の機器を制御する仕組みはエネルギーマネジメントシステムが肝だ。当社は国内最大の簡易ガス事業者で、いま特定のエリアで配電ライセンスの取得を目指し、スマートコミュニティーの構築を進めている。
―蓄電池も扱う予定だ。
柏谷 ベンチャー系の蓄電池メーカー、PowerX社に出資し業務提携を決めた。同社は電気自動車向け充電用の蓄電池を今年から国内で量産化する。家庭用の小規模タイプも近い将来量産する。EV向けに超急速で充電できることが最大の特長だ。夜間に蓄電池に電気をためておけば6台程のEVに充電できる。当社でも複数の事業所で蓄電池を今年導入する。
これとは別に大型蓄電池を活用し、簡易ガス団地のスマートコミュニティーでバックアップ用電源、分散型電源として活用できないか検討している。電力市場におけるアービトラージ(裁定取引)に活用できるよう、システム技術を磨き、ひいてはエネルギーの最適利用を実現して、安定供給・経済性・環境の面でお客さまに価値を提供していきたい。

かしわや・くにひこ Ernst & Young LLP(New York)、オリックスなどを経て日本瓦斯入社。22年5月に社長執行役員に就任。