撮影装置でコンクリート劣化診断 鉄塔基礎点検の負担を軽減

2023年2月10日

【四国電力送配電】

撮影装置を使い鉄塔の基礎コンクリートの劣化を診断する技術が開発された。

低コストかつ負担軽減の新手法は、開発チームの創意工夫が凝らされている。

四国電力送配電、四国総合研究所、テクノ・サクセスは、鉄塔コンクリート基礎診断にかかる負担を軽減し、手軽に点検できる撮影装置を開発した。従来のような大規模土木工事を伴わず、大幅なコスト削減も実現。この技術は「小口径空洞内撮影装置を用いたコンクリート基礎の劣化診断手法の開発」として、各方面から高い評価を得ている。

鉄塔の基礎部分は通常のコンクリート構造物と同様、コンクリート内のアルカリ成分と骨材中の成分がアルカリシリカ反応(ASR)を起こし、吸水膨張性を持つことでひび割れが発生する。その他にもアルカリ成分と二酸化炭素の反応による中性化、塩害による鉄筋腐食など、さまざまな劣化要因が挙げられる。あらゆる劣化要因に対するコンクリート基礎の状態把握は、設備保守の観点からも重要な要素となっている。

通常の点検では、地上の基礎表面部分からひび割れの進行具合を確認し、場合によっては土砂を掘削して基礎の一部を採取するなどの手法が取られている。しかし土砂掘削による調査では、地山崩壊防止のための大掛かりな土木工事が必要となる。また、一般的な圧縮強度確認のためのコンクリートコア(コア直径10㎝)を採取する場合、鉄塔基礎体に大きな影響を与えかねないなどコスト面、安全面に課題があった。

この問題を解決するため、四国電力送配電では2016年から鉄塔コンクリート劣化診断方法の見直しに着手した。高いボーリング技術を持つ地元企業と連携し、幅約50㎝の地上基礎部分から、コアの直径2・5㎝を、深さ5~7mほどくり抜く手法を取った。しかし、小口径のコアは採取の際に割れやすく、劣化が原因か採取時の破損か判断しにくいという欠点がある。

それを補うのが今回開発した「小口径空洞内撮影装置」だ。前面用と側面用の小型カメラ2台で穴の内部を撮影することで、コアの断面と合わせてひび割れや損傷、腐食による劣化の有無を確認することができる。

壁面を撮影する小口径空洞内撮影装置

装置開発に携わった四国電力送配電送変電部送電グループの藤川真人さんは「従来の技術に比べて、コンクリート基礎への負担が少ない。カメラ映像では0・1mmのひび割れも確認が可能だ」と話す。17年から実際に運用を開始し、現在まで33基の鉄塔基礎の検査に活用している。

創意工夫で編み出した装置 現在も改良を重ねて運用

この撮影装置は特別な機材を使っておらず、四国電力送配電と四国電力グループの四国総合研究所、テクノ・サクセスが協力し、創意工夫で編み出したという点が特徴だ。「カメラは家電量販店のものを使用している。2台のカメラで側面を撮影できるように鏡を内部に取り付けているが、鏡も歯科用ミラーを流用した」(藤川さん)。カメラを束ねるフレームについても、当初はプラスチックなどを代用し試行錯誤を重ね、最終的には軽量で耐久性の高い金属製フレームを使用した。

こうして運用にこぎ着けたが、実際に撮影したところ、掘削時の粉塵や泥水で視界が阻害されるというトラブルに見舞われた。注水して壁面を掃除しても水滴がライトに反射してしまい、撮影時に壁面が鮮明に映らなかったという。「本来なら乾燥させたかったが、孔内は通気が悪く水滴を取るまでに1日単位の手間がかかる」と藤川さんは当時の苦労を語る。

しかしここで「水滴が邪魔なら、水中で撮影してはどうか」と逆転の発想が生まれる。装置に注水する機能を取り付け撮影したところ、より鮮明な映像が撮影できるようになった。映像はパソコンに取り込みパノラマ写真に加工することで、ひび割れの範囲と位置を把握。これにより、発見が難しいとされたコンクリート基礎深部のひび割れを検知できた。

現在は改良を加え、撮影装置にモーターを設置、糸巻きの要領でカメラを等速で引き上げる手法を取っている。人力での引き上げによる速度のムラを抑え、パノラマ画像の合成精度の向上を狙っているという。

撮影装置を使った点検作業

メンテ部門で高い評価 鉄塔設備の早期改修に貢献

これらの技術開発が高い評価を受け、21年12月にインフラメンテナンスの優れた取り組みや技術開発を表彰する、第5回インフラメンテナンス大賞経済産業省部門の優秀賞を受賞した。藤川さんは「光栄なこと。これをきっかけに広くこの技術を紹介していただければ」と話す。

藤川さんは現在、診断結果を蓄積してASRによる基礎地上部のひび割れ状況と基礎構造物の耐力との関連性の評価検討に取り組んでいる。「データを集めていけば、ひび割れを確認することで基礎コンクリート深部の劣化状態を評価する技術につながる」。実現すれば、劣化診断調査の効率的な運用が見込めるという。

四国電力送配電は山の斜面や海岸に近い立地に鉄塔が多い関係上、鉄塔基礎部分の劣化問題に熱心に取り組んできた。今回の診断技術は劣化設備の適切な改修に貢献し、さらなる点検の効率化に寄与すると期待されている。このノウハウを蓄積し、将来的には基礎部分表面のひび割れから内部の劣化状況を推定できる技術開発を目指す。四国電力送配電の創意工夫はこれからも続いていく。