【特集2】地の利を生かした酪農で水素製造 未開の地・北海道で普及に挑む
【しかおい水素ファーム】
再生可能エネルギーの導入ポテンシャルが多く存在する北海道。札幌市や石狩市、上士幌町とともに環境省の脱炭素先行地域に指定されている道東の鹿追町では、酪農産業が盛んな特長を生かして家畜糞尿を使い、固定価格買い取り制度(FIT)のもとバイオガス発電に取り組んできた。さらなる環境政策として目を付けたのが水素だった。2015年~22年度は家畜糞尿由来の水素製造と隣接する水素ステーションへの供給も含めた一連のサプライチェーンの構築に向け実証に取り組んできた。
実証を終えた現在では、エア・ウォーター北海道と鹿島建設が共同出資した「しかおい水素ファーム」が、鹿追町からの委託を受けて運営している。家畜糞尿由来による水素製造・供給を手掛ける国内唯一の企業である。
導入した設備は安定的な水素製造が可能で、主に燃料電池車(FCV)向けに使われている。月間計画を立てながら、需要と供給のバランスを確認して供給する。近隣の町営施設向けの燃料電池にも供給し、施設内の熱と電力の供給を支えている状況だ。
「これまでCO2フリー水素の営業を進めてきて、最近になってようやく産業用途への供給が見えてきました。現在、出荷準備を進めています」(しかおい水素ファームの粕谷智樹社長)
エア・ウォーターは産業ガスとして水素の販売を道内で手掛けていたが、エネルギーとしての水素普及はまさに未開である。CO2フリーの水素が製造できれば、道内の脱炭素化を推進できる。