【特集2】世界各地でCNビジネスを探索 e-メタンで海外連携を強化

2023年3月3日

【大阪ガス】

2050年カーボンニュートラル(CN)実現に向け、都市ガスの脱炭素化の鍵を握る技術として期待されるメタネーション。Daigasグループは30年度に、都市ガスの1%にメタネーションによって生成される「e-methane(e-メタン、合成メタン)」を導入するほか、LNG火力発電の代替や、ローカル水素ネットワークの構築によるコンビナートなどへの供給といった水素直接利用を見据え、取り組みを加速させている。

水素を直接利用するには、今あるLNG基地やガス導管、ガス機器といったインフラの改修や新設が必要となるケースが考えられるが、水素とCO2から合成するe-メタンは現在の都市ガスとほぼ同じ成分であり、既存インフラを活用できるのが大きな利点だ。

とはいえ、e-メタンや水素を社会実装するためには、技術を確立することはもちろんのこと、クリーンな水素を安価に大量に調達できるかどうかが重要な鍵となる。国内のみでは限界があり、海外の事業者との協力関係が欠かせない。

e-メタンの製造に必要なクリーンな水素、CO2の調達を含め、海外におけるCN事業推進の中心的役割を担っているのが、資源・海外事業部の「資源・CN事業開発部」だ。同部は、上流液化事業部に各部署が手掛けていた脱炭素の取り組みを集約し、22年4月に発足。米国、豪州、シンガポール、英国の海外4拠点とも連携しながら、「e-メタン」「新エネルギー(水素、アンモニア・バイオガス)」「CCS(CO2の回収・貯留)・カーボンクレジット」の三つのカテゴリーを重点分野に、世界中でさまざまなビジネスチャンスを模索している。

e-メタン事業化へ 25年のFID目指す

e-メタン事業成立の鍵は、既存のLNG出荷基地へのアクセス・活用、安価な再エネや原料となる水、CO2の調達・確保ができること。そこで同社は現在、米国、豪州、ペルーなどにおいて事業化調査(FS)を実施しており、FSを通じて、再エネやCO2の調達、水素や合成メタンの製造、液化・輸送までのサプライチェーン構築に向けた検討を進めており、25年の初号案件の最終投資決定(FID)を目指している。

日本では都市ガスの脱炭素化を目指し社会実装に向けた議論が始まっているが、海外ではまだまだこれから。資源・CN事業開発部CN事業推進チームの川崎浩司・ゼネラルマネジャーは、「生産国でも脱炭素化に向けた有望なソリューションとして認めてもらえるよう、パートナー企業と各国政府への働きかけを始めている」として、国際的な制度化を目指した活動にも注力していると明かす。同チームの中島崇副課長も、「LNG生産国では、日本向けには輸送の観点でe-メタンに強みがあるという認識が広がりつつある。今後は、アジアの他のLNG輸入国にも働きかけていきたい」と語る。

地産地消ビジネスで知見獲得 世界のCO2削減に貢献

一方、新エネルギー分野については、まずは海外での普及促進を目指し、水素、アンモニア、バイオガスの地産地消型ビジネスモデルの実現性を探っている段階だ。

例えば豪州では、現地の総合エネルギー事業最大手のAGL社がニューサウスウェールズ州などで検討を進めているグリーン水素ハブ構想のFSに参画中だ。同事業は、AGL社が保有している石炭・ガス火力発電の敷地内で、再エネ由来のグリーン水素を製造し、地域の工業地帯に供給するもので、中長期的には輸出も視野に入れる。

AGL社がニューサウスウェールズ州ハンターバレーに保有する火力発電設備
提供:Antony Evans, AGL Energy employee.

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