【特集2】水素燃焼試験サービスを開始 サプライチェーン構築も推進

2023年3月3日

【東邦ガス】

企業のカーボンニュートラル(CN)への取り組みが活発になってきた。特に製造業では工場のCN化を求められる可能性が高く、対応策を検討する企業が増えている。こうした中、エネルギー事業者にもCNに対応するサービスや製品の展開が求められるようになってきた。


24年に水素供給を開始 知多緑浜工場を一大拠点に


東邦ガスは昨年3月に中期経営計画を発表、この中でCNの推進を掲げた。具体的な施策として、水素をガス・電気と並ぶエネルギーの軸として位置付け、サプライチェーン構築に向けた需要創出と供給体制整備の両面から取り組みを展開し、早期に水素サプライヤーとしての地位を確立するとしている。

水素サプライチェーンのイメージ図


供給面では、同社の知多緑浜工場内に2024年までに日産1・7tの能力を有するプラントを建設し、水素供給を開始する。その後、同地域の水素需要の拡大に合わせてプラントの規模を同5t程度まで拡充していく計画だ。水素製造時に発生するCO2は、当面はクレジットの活用により相殺しつつ、分離回収・利用することも計画している。
さらに、水素の輸送・供給や消費の分野で知見・ノウハウを持つ企業とのアライアンスを進め、水素の普及拡大に向けた基盤を構築し、将来的には、知多緑浜工場を海外輸入水素の受入拠点とすることを目指す。
需要創出では、21年4月に自動車や機械などの金属部品製造の熱処理工程で利用される都市ガス用シングルエンドラジアントチューブバーナーの水素燃焼技術を開発した。
水素燃焼は都市ガスに比べて火炎温度が高いことから、NOX(窒素酸化物)排出量の増加やバーナー部品の劣化が課題となっている。同製品は水素燃焼時の排ガスを再循環させることで、都市ガス燃焼時と同等のNOX排出量と耐久性を実現した。
さらに、循環する機構とバーナー本体部と脱着交換できる仕様になっており、都市ガスから水素に移行する際に、バーナー一式を交換するよりも手間やコストを抑えることができる。部品コストは同社の標準的なバーナー本体部の10分の1程度で済むとのことだ。

既存設備を有効利用 特性に合わせた運用法探る


製品開発に加え、21年10月からは水素燃焼試験サービスを開始した。同社技術研究所に顧客が生産現場で使用するバーナーや炉を持ち込んでもらい、水素燃焼試験を行うものだ。
「CNに向けて顧客の関心は高まっているものの、水素試験を自前で行うには、供給施設を新設するなどコストがかかる。従来と異なる火炎のコントロール、安全面への配慮なども必要になるため、これまで水素を取り扱っていない事業者にとってはハードルが高い。そこで、このサービスを利用すれば大きな費用負担なく、水素燃焼試験を実施できる」。産業エネルギー営業部営業推進グループの柘植紀慶係長は同サービスの特長をこう説明する。
試験には燃焼に関するノウハウを持った技術員が立ち会い、使用する供給設備などは水素の特性を考慮した安全対策が実施してある。
試験はまず顧客が持ち込んだバーナーが水素燃焼への対応が可能か不可能か、不明の場合は確認する。そして、①燃焼安定性、②火炎長・火炎温度、③ノズル・ボディ温度、④燃焼前後の外観、⑤排気組成―などを計測・確認していく。

水素を燃焼したサーモグラフィー写真
都市ガスを燃焼したサーモグラフィー写真


水素は燃焼速度が速く、火炎温度が高いという特徴がある。都市ガスバーナーで燃焼温度が12
00℃の場合、水素では1400℃に相当し、NOX排出量が増えてしまう。また、温度が高い分、バーナーの部品が劣化しやすい。さらに燃焼速度が早いため逆火が発生する恐れもある。
サーモグラフィーの写真(図1)は試験時の火炎の様子だ。都市ガスと比較して水素の火炎は中央部が薄い赤色をしている。これは水素が高温で燃焼していることを示す。NOX対策では、空気比(燃焼用の空気の割合)や出力を調整することで最適化を図っていく。
水素の火炎は都市ガスのように目視で確認できない(図2)。都市ガスでは炎を見て燃焼状態の調整が可能だが、水素ではそれができないため、排ガスの酸素濃度などを確認しながら調整する必要があるなど、運用面でも違いが出てくるとのことだ。

水素の火炎。目視で確認できない
都市ガスの火炎


長谷川順一マネジャーは「製造業を中心に10社以上が同サービスを利用している。水素への関心が高い顧客は、製造現場での検証に着手している。新規の問い合わせも増えてきた。今後さらに増えていきそうだ」と、手応えを感じている。
同サービスによって得た結果から、企業は水素導入に向けた具体的なシナリオを描くことができる。こうしたCNに向けたサービスは、一段と関心が高まりそうだ。

産業エネルギー営業部の長谷川氏(左)、柘植氏