【特集2】脱炭素化を加速する最先端実証 CCS要素技術の気になる中身

2023年4月3日

【関西電力舞鶴発電所】

火力発電の脱炭素化に向けた有力技術の一つとして注目されるのがCCSだ。サプライチェーン構築に向けて、関西電力の舞鶴発電所で二つの実証が始まっている。

ベースロードとして、重要な役割を果たす石炭火力。この安定供給維持に欠かせない電源においても、2050年のカーボンニュートラル(CN)達成に向けては、CO2排出量削減を図る取り組みを進めていかなければならない。その有力候補の一つがCCS(CO2の分離・回収)だ。CCSはこの数年でCN達成に必要不可欠な技術であるとの認識が世界的に急速に広がりつつあり、日本においてもさまざまな実証が立ち上がっている。

二つのCCS実証が開始 コスト削減を進める

石炭火力におけるCCSの取り組みは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証事業「CO2固体吸収材の石炭燃焼排ガス適用性研究」と「CO2船舶輸送に関する技術開発および実証試験」がある。現在、二つの実証は関西電力の舞鶴発電所(出力180万kW)を舞台に展開中だ。

舞鶴発電所の固体吸収材実証プラント建設イメージ


固体吸収材を用いた実証は、川崎重工業と地球環境産業技術研究機構(RITE)が実施する。舞鶴発電所の敷地内に省エネルギー型CO2分離・回収システムのパイロット設備を建設。発電所の燃焼排ガスの一部を利用し、川崎重工の「KCC移動層システム」とRITEのCO2用固体吸収材を用いてCO2を分離・回収する。
分離・回収には、これまでアミン水溶液を用いた吸収法が採用されてきた。ただ、CO2を吸収したアミン水溶液からCO2を分離するには、110℃程度の処理熱が必要になる。これに対し、実証するRITEの固体吸収材では同60℃程度まで低減できる見込みだ。NEDO環境部次世代火力・CCUSグループの布川信主任研究員は「CCSの課題の一つにコスト低減がある。固体吸収材によって熱処理温度を大幅に下げることができればコスト削減につながる」と期待する。
固体吸収材はCO2を吸着する性質を持つアミンを含有した球型多孔質セラミック材料で、これをKCC移動層システムに入れ込む。同システムには三つの工程があり、吸収塔で固体吸収材を用いて排煙からCO2を回収し、再生塔で吸収材に蒸気を流してCO2を分離。乾燥塔で吸収材を乾かした後に吸収塔に戻して再利用する。これを循環させて行う。
今回、舞鶴発電所に建設する実証設備の処理能力は日量40t規模。実証ではシステムの運用性や信頼性の評価、さらに固体吸収材の製造やプロセスシミュレーションなど基盤技術を開発し、固体吸収材の適用性拡大を図る。
CO2船舶輸送実証は、日本CCS調査、エンジニアリング協会、伊藤忠商事、日本製鉄の4者が実施する。舞鶴発電所から排出されたCO2を液化して北海道苫小牧市まで専用船を使って、出荷・輸送から受け入れまで行い、一貫輸送システムの確立、船舶輸送の事業化調査を実施する。年間1万t規模の輸送を行う計画だ。
CO2船舶輸送においても低コスト技術の開発が鍵となる。「液化CO2を低温にすれば、輸送タンクへの圧力を低下でき、タンクの肉厚を薄くしコスト削減を図ることができる。最適な温度・圧力条件を探していく」(布川主任研究員)
輸送船は三菱造船が建造した。エンジニアリング協会が、船主である山友汽船から傭船、研究開発設備である液化CO2の舶用タンクシステムを搭載し運用する。
固体吸収材と輸送船の実証は連携しており、固体吸収材を使って回収したCO2を液化して、ローディングアームで輸送船に搭載して苫小牧市まで運んでいき、降ろして貯蔵タンクに入れる工程までを実証する。

液化CO2輸送試験船のイメージ図

90年代から取り組む関電 CCS実用化に期待

実証の場を提供する関西電力もCCS実用化に向けて取り組みを1990年代から進めてきた。CO2回収装置の研究を三菱重工エンジニアリングと共同で実施。南港発電所(大阪市)にパイロット設備を建設して、吸収液「KS1」を開発した。現在までに「KS21」まで更新され、回収設備は商用化されている。
昨年3月には、国の50年CN宣言を受けて「ゼロカーボンロードマップ」を発表。火力発電の脱炭素化に向けた手段として水素・アンモニア発電、CCSを挙げた。CCSは分離・回収、輸送、貯蔵のバリューチェーン全体に関わっていくことも含め検討を進めている。今年1月には、三井物産と貯留に関する事業性調査の覚書を締結。関西電力が運営する火力発電所から排出されるCO2を対象として、関西電力が回収、三井物産が輸送・貯留を主に担当し、バリューチェーンを一気通貫した事業性などを調査・検討する。
加えて、川崎汽船と液化CO2の船舶輸送に関する共同検討について覚書を締結しているほか、CCSバリューチェーンの事業性調査をエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から受託している。
「50年CN達成からバックキャストして検討を行う中で、あらゆる技術の進歩に期待している。CCSは実用化するにはコスト低減など課題はたくさんある。一つひとつ解消して実用化にこぎ着けたい。NEDOの実証では、バックアップする役割を担い、良い成果を上げることを願っている」。関西電力火力開発部門脱炭素技術グループの山本哲生チーフマネジャーはこう話す。
電力事業者から見れば、CCSをはじめとしたCN達成に向けたコストは追加でかかるものであり、前述のように可能な限り低減していく必要がある。元来、発電コストが安い石炭火力で、CCSを実現することへの期待は大きい。

(舞鶴発電所は3月14日に火災事故が発生したが、運用を再開。同社への取材は3月6日に行った)