沖縄ならではのエネルギーサービス グループ総力戦でCN実現に挑む
【沖縄電力】
沖縄電力はカーボンニュートラル実現に向け、環境に配慮したエネルギーサービスに取り組む。
リライアンスエナジー沖縄とエネルギーのベストミックスを提案して地域の脱炭素を支援する。
政府が掲げる2030年GHG(温室効果ガス)46%削減の目標値は、原子力発電を持たずゼロエミッション電源が限られる沖縄で換算すると、28%の削減率に相当する。沖縄電力ではその数値からさらに踏み込み、30%の削減を目標に据える。
沖電のカーボンニュートラル(CN)への取り組みは、①再エネ主力化、②火力電源のCO2排出削減―が柱だ。
①では、台風や塩害といった厳しい自然環境下で、メガソーラーの実証研究を実施してきたほか、再エネを主力とした来間島での地域マイクログリッド実証事業などに取り組んでいる。21年に開始した太陽光パネルと蓄電池を無償設置するPV―TPO事業「かりーるーふ」も好評で、順調に契約数を伸ばしている。
②では、クリーン燃料の利用拡大や非効率火力のフェードアウトに取り組む。バイオマス活用も進めており、県内の建築廃材を加工して具志川・金武火力で混焼。水素やアンモニアなどのクリーン燃料の活用に向けた検討にも力を入れ、50年のCNを目指している。
そのほか、吉の浦火力発電所を基点としたLNGの普及拡大を推進している。都市ガス導管網が整備されている那覇市近郊には、吉の浦発電所から県内の都市ガス事業者への卸供給などを通して供給する。導管が整備されていない地域にはタンクローリーでLNGを輸送し、サテライト設備を介して供給するほか、工業団地など複数の需要家には天然ガス供給センターを介した供給を行う。
15年の天然ガス供給開始時には年間で約1.3万tだった販売量も22年には約3万tを超え、利用の拡大が進んでいる。23年度内には、吉の浦発電所から本島中央部を通り本店近傍につながる、全長約14kmのガス導管が完成する予定で、天然ガスのさらなる普及拡大を図っていく考えだ。
ESP事業の推進 需要家ファーストの提案
電気とガスの両方を供給できる強みを生かし、グループが一体となってエネルギーサービスを展開している。
エネルギーコストの低減や省エネ機器の導入といったニーズをヒアリングし、エネルギー診断を行う。新たなエネルギーシステムを検討して、電気とガスの最適な組み合わせを提案。初期投資額などを試算し、補助金申請もサポートする。システムの設計から施工、導入後の効果検証や改善提案までを沖電がワンストップ窓口となり、グループ各社が特性を生かしてフォローする体制だ。

さらにサービスの一環として、エネルギーサービスプロバイダー(ESP)事業も開始した。
このESP事業を担うのは沖電グループのリライアンスエナジー沖縄(REO)だ。REOは17年に、沖縄電力と東京都市サービスの合弁で設立。翌18年には大阪ガスも加わって、電気と熱供給にガスのノウハウも活用できるようになった。商業施設や病院など8施設で採用されている。
REOの仲地毅技術営業部長は、「電力・ガス・熱供給事業者による事業体は全国でも珍しい。一つのエネルギーに偏らず、需要家ファーストで最適なエネルギーを提案できる。これが沖縄らしさ“沖縄Way”で、諸外国の文化を取り入れ独自文化を作り上げた沖縄の姿と重なる。エネルギー事業者の連携が、提案の大きな強みになっている」と胸を張る。
牧港エネセンター建設 省エネ大賞も受賞
22年4月、REOがESP事業者となり、沖電の本店敷地内に「牧港エリアエネルギーセンター」が完成。県内初となるエネルギーの面的供給が始まった。沖電新本館と、隣接するオフィスとホテルの複合型タワービル「ゆがふBizタワー浦添港川」などに電力と空調冷熱を供給している。
沖縄では年間を通して冷房を使用するため、インバーターターボ冷凍機、空冷ヒートポンプ、ジェネリンクを最適に組み合わせて冷熱をつくる。ジェネリンクはBCP(事業継続計画)としてガスだきにも対応している。ガスコージェネレーションシステムや、非常用発電機なども備える。

REOは今年、浦添市にある沖縄最大級の大型商業施設「サンエー浦添西海岸パルコシティ」でのESP事業において、22年度省エネ大賞の最高賞「経済産業大臣賞」を受賞。県内初の快挙となった。ヒアリングを担当した営業グループの町田智彦マネージャーは、「来店するお客さまの快適性を損なうことなく省エネを実践していかなければならないため、非常にハードルが高かった」と振り返る。
快適性を優先させながら、沖縄の気候や豊かな自然エネルギーを活用し、エネルギーのベストミックスで設備を導入して、一般的な商業施設よりも40%の省エネ、43%の省CO2を達成した。
今後沖縄では、基地の返還跡地を利用した大規模都市開発や、観光客の増加に伴うホテル建設、大型小売店舗の建設などが見込まれる。エネルギー需要の増加で、エネルギーサービスへのニーズも高まる。
沖電はこれからもグループ各社の強みを生かし、総合エネルギー事業者として「地域とともに、地域のために」のスローガンの下、地域一帯のCN実現に向け果敢に挑戦していく。
