【特集2】地域のゼロカーボン実装を支援 PPA事業のアライアンス拡充へ

2023年5月3日

地域が脱炭素にコミットし始め、再エネPPA(電力購入契約)が大きく注目されるように。実績国内随一のアイ・グリッド・ソリューションズは、各地の事業化を支援するサービスを始めた。

【インタビュー】秋田智一/アイ・グリッド・ソリューションズ社長

あきた・ともかず 広告会社勤務を経て、2009年環境経営戦略総研(現アイ・グリッド・ソリューションズ)入社。主に新規事業開発責任者として太陽光発電事業、電力供給事業を推進。21年5月より現職。VPP Japan、アイ・グリッド・ラボの代表取締役を兼任。

―グループ全体で、分散型電源の建設から運用、そしてVPP(仮想発電所)構築、電力小売りやエネルギーマネジメントなど、CN(カーボンニュートラル)を見据えた多様なエネルギーサービスを手掛けています。再生可能エネルギー関連では2月から新たに、各地のPPA(電力購入契約)モデルを支援する「ソーラーアライアンス事業」を始めました。

秋田 当社はこれまで、流通小売りや物流施設などの屋根上を活用したオンサイトPPAモデルで、太陽光発電などの拡大を図ってきました。国内の再エネ発電事業としては珍しいPPA専業であり、オンサイトではトップの実績です。2017年度からPPA事業をスタートし、これまでの導入量は500超の施設で計10万kW程度となり、今後も年10万kW程度のペースで拡大していく計画です。

 また、PPAでは「余剰電力循環型」の独自スキームを確立しています。屋根上スペースを最大限活用しつつ、余剰分は当社が買い取り、他の需要家や地域新電力などに売電する事業を展開しています。他社にはないノウハウを生かして事業計画づくりから支援していくのがソーラーアライアンス事業であり、各地域がカーボンゼロを目指す上で多くの関心が寄せられています。


1日1施設建設のペース 独自ノウハウが評価


―自社のPPA事業については、今春、金融機関10社から103億円の追加資金調達を実施。累計で200億円超となりました。

秋田 金融機関もPPAへの関心を高めており、当社の計画がマネタイズできている点や、グループのVPPJapanが黒字化している点などが安心材料となっているようです。オフサイトPPAで百億円規模の資金調達に至るケースは珍しいと思います。

 再エネ事業は見通しを立てやすいとはいえ、計画を立案することと、期間内に実際に作り上げることは全く別物。1施設のPPAだけなら難しくはありませんが、年10万kWというペースは1日1カ所発電所を建設していく計算です。しかも今後は大規模開発ではなく一層の分散化が進み、生活圏に近い場所での事業も増えるでしょう。そんな環境下で数多くの事業開始に至るためには相当のノウハウが必要となります。

 その点、ソーラーアライアンス事業では、年間数百件着工できるだけの地点や人材の確保、営業力、計画管理、そして資材調達力といった当社のリソースやノウハウを、アライアンス先が活用できます。なお、資材調達に関しては中国リスクが付きまとうため、サプライチェーンを多様化してポートフォリオの安定化を図っています。

―各地のPPA事業を軌道に乗せる上でのポイントは?

秋田 地域の特色を出すことも重要ですが、その手前で肝要なのがいかに早く採算ベースに乗せるか。一口に屋根上といっても、効率が良い場所から優先して設置しなければ、採算ラインに乗りにくい。その点、AIで地点ごとのポテンシャルを把握しスクリーニングする当社独自のソフトを活用し、地域のステークホルダーが把握する情報と併せれば、地域内で効率的な事業計画が立てられます。

 自治体の取り組みではまず公共施設のPPAから始めがちですが、必ずしも効率性の面からは望ましいとは言えません。CO21t当たりの削減コストを抑えるためには民生施設をいかに巻き込むかが重要であり、この点は環境省の「脱炭素先行地域」でも評価されるポイントとなります。ただ、同時に自治体の悩みの種でもあり、そこで当社と地域の金融機関や企業が連携することで、課題解決につながると考えています。

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