【特集2】これからの街づくりで強み発揮 自治体の取り組みをサポート
【インタビュー】松原浩司/日本熱供給事業協会 専務理事
脱炭素に向けてCO2排出量低減に寄与する熱供給が注目を集める。日本熱供給事業協会も普及に向けて自治体のサポートに注力する。
―長期ビジョン発表から3年が経過しましたが、公表後、どのような動きがありましたか。
松原 カーボンニュートラル(CN)への対応として「温室効果ガス算定・報告・公表制度(SHK制度)」における熱供給事業者別排出係数制度の導入に向けた取り組みを行っています。これにより、熱供給事業者自身がCO2排出の少ない熱を製造する取り組みを助長するとともに、カーボンオフセットされた熱を需要家へ供給できるようになります。国は今年度中の導入を目指しています。
未利用エネルギーの活用 個別では困難な省エネ実現
―制度の導入で熱分野のCO2削減につながりそうですか。
松原 熱供給事業者が未利用エネルギーを有効利用するなど、CO2排出の少ない熱を需要家に供給し始めることで、地域全体のCO2削減につながるものと考えます。
―再生可能エネルギー大量導入について、地域熱供給との親和性や共存のメリットはありますか。
松原 地域熱供給は、地中熱、河川熱など、個別建物では使いづらい未利用熱の活用が可能です。エネルギー需要が集約する地域では、建物に熱源を持つよりも、導管で冷・温水を地域全体に送る方が、省エネ・脱炭素につながります。東京の田町駅東口北地区では、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を用いて、天候や施設のエネルギー使用状況などのデータを基に効率的な運転が行われています。地域全体でエネルギーを管理するので、デマンドレスポンス(DR)にも対応できます。
―BCP対策にも寄与しますか。
松原 2018年9月に発生した北海道胆振東部地震のときは強みを発揮しました。エネルギーセンターから供給を受けていた「さっぽろ創世スクエア」ではブラックアウトの中、熱と電気の供給を継続しました。観光客や帰宅困難者に空調の効いた避難場所を提供でき、災害状況の情報発信やスマートフォンの電源提供ができました。地域熱供給の導入は、不動産の価値や自治体の企業誘致力の向上にもつながると考えます。
―自治体との連携についてお聞かせください。
松原 再開発・街づくりにおいて地域熱供給の導入を必ず検討していただきたいです。協会主催の研修会などを通じて、地域熱供給への理解を深めてもらい、ゼロカーボンシティ宣言や脱炭素先行地域の取り組みにどのように貢献できるのか、自治体の皆さまと一緒に考えていきたいと思っています。
―協会として50年に向けた展望はありますか。
松原 地域総合サービス事業(DTS)への進化を目標としています。省エネや脱炭素の課題解決はもちろん、エネルギー以外でも、地域密着型のサービスの展開を通じて、各地域になくてはならない会員企業を増やしていきたいです。
