【特集2】CO2を次世代エネルギー源へ 日立造船が挑む合成メタン

2023年5月3日

神奈川県小田原市

全国各地に点在し、日々の生活から発生するゴミを焼却処理する清掃センターで、分散型エネルギーの概念を大きく変え、そのポテンシャルを一気に広げる実証が進められてきた。

日立造船は神奈川県小田原市の環境事業センターで、環境省からの委託を受け「清掃工場から回収した二酸化炭素の資源化による炭素循環モデルの構築実証事業」を実施した。「炭素循環」とは、清掃工場から排出されるCO2を回収して再び利用する取り組みを指す。そして、この再利用が実証の最大のポイントだ。

「CO2を水素と人工的に合成させてメタンを生産するメタネーションに取り組んできた」。こう話すのは日立造船環境事業本部の大地佐智子開発センター長だ。

CO2と水素の合成はメタネーションのうちサバティエ反応と呼ばれるもので、技術的に確立されている。ただ大量の水素を必要とすることから、経済性の面で課題がある。それでも、都市ガス業界やメーカーがメタネーションに取り組むのは、LNG基地、都市ガス導管など既存の都市ガスインフラを有効に活用できるためだ。仮に「水素供給網」を新たに整備すると、多大なインフラ投資コストが新たに発生するため非現実的。そうした背景もあり、カーボンニュートラルの流れの中で、大手都市ガス会社を中心に、メタネーションの取り組みが加速しており、その合成メタンを「e―メタン」と呼称している。

長期計画でメタネーション 厳しい環境下でCO2回収

「メタネーションは、水素とCO2を効率よく反応させる触媒技術や反応器がカギを握る。当社が開発を手掛けてきた触媒は、ゴミ処理向けなど高い技術を持つ」(大地氏)

そんな日立造船の技術を用いた今回の実証は、2018年から22年までの長期計画で実施。清掃工場の排ガスからCO2を回収し、水素はLPガスを改質して取り出し、e―メタンをつくる。

清掃工場で実施する意義は何か。同部門の坂元真理子氏は次のように説明する。「一般的な産業施設に比べて、清掃工場の排ガス成分は複雑で日々変化し、CO2濃度も低い。そうした厳しい環境下でもしっかりとCO2を回収し利用できるように取り組んできた」

多くの技術的課題を乗り越えて製造するe―メタンの生産能力は125N㎥/時で、国内最大規模だ。清掃工場での実施例としては世界初だという。設備を使った実証は22年度までで成功裏に終わったが、さらに1年延長。既存の都市ガス導管に注入する際の課題抽出や、天然ガス車への利用展開など、都市ガス業界とも連携しながらe―メタンを普及させるための土台づくりを進めていく。

身近な工場から排出されるCO2を有効活用するメタネーションの仕組みは、CO2に対する考え方そのものを変え、分散型エネルギーとして利用するe―メタンの可能性を大きく広げるだろう。

小田原市での実証は成功裏に終わった