【特集2】新たな分散型リソースの活用 VPPやDRの積極運用へ

2023年5月3日

【インタビュー】石井英雄/早稲田大学スマート社会技術融合研究機構研究院教授

電力系統の安定化には、需要側のエネルギー消費機器を巻き込む必要がある。再エネ大量導入を見据えた新しい時代の分散型リソースの利活用とは何かを聞いた。

―従来、分散型とは発電設備としてのコージェネが一般的な認識でした。ただ、最近は再生可能エネルギーの推進や、需要側のエネルギー消費機器を分散型リソースとしてデマンドレスポンス(DR)へ活用するなど、分散型に対する認識が大きく変わってきています。

石井 昨年の省エネ法改正(エネルギー使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)の後押しも加わって、需要家側もDRやVPP(仮想発電所)に積極的に参画し始めています。需要家側のエネルギー消費機器を分散型リソースとして、火力発電の発電力や発電量の役割を担うわけです。火力発電でのkWやkW時の不足局面では、需要機器の消費を抑える。これはkWやkW時を確保することと同じです。逆もまたしかりです。

―電力系統の安定化を図る調整力ということですね。

石井 従来は火力発電がその役割を主体的に担っていました。しかし、電力自由化、システム改革、あるいは脱炭素の流れの中で大型火力発電所が閉鎖傾向にあります。そうした中で、コージェネや蓄電池などを含めた需要家側のリソース活用は大きな意義があります。

―再エネ発電を最大限に活用する「再エネ優先給電」の仕組みがあり、それにのっとって旧一般電気事業者は系統や火力発電所を苦労しながら運用しています。

石井 再エネ発電量が増え過ぎると季節・時間帯に応じて系統のバランスが崩れる局面が増えます。発電過剰時では火力発電の出力を抑えなくてはいけません。裏を返すと、需要側の電力消費を促す調整、つまり上げDRができれば、同等の効果を持ちます。火力発電の抑制が限界に達し、再エネ電気をも抑制する局面では、全発電において再エネ電気が主体となっています。そのため、省エネ法改正によって、CO2排出原単位を低く設定できるようになりました。

宮古島のVPP事例 エコキュートの新しい運用

―VPPに積極的に取り組んでいる事例などはありますか。

石井 個人的に最も素晴らしいと思うのは、沖縄県宮古島でネクステムズという会社が進めているVPPです。エコキュートが設置されている集合住宅に太陽光発電を設置し、太陽光発電の余剰のタイミングでは、ヒートポンプを動かして蓄熱する。これまで、エコキュートは割安な深夜電力で運用していましたが、宮古島での取り組みは全く逆です。こうしたエコキュートの活用は脱炭素に向けた取り組みにもつながります。ぜひ現地を見学するべきです。

 DRに関しては諸外国でも進んでいます。例えばオーストラリアでは、DRレディのエアコンでないと販売できないという取り組みを進めています。また米国カリフォルニア州では、グリッド・インタラクティブ・ビルという呼び方をして、新築ビルではDR対応が義務付けられています。今後、DRレディでないと建築物の不動産価値を認めない、あるいは新築を認めないという仕組みが広がるかもしれません。

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