コモディティ市場への理解を促進 第一線の実務家らが東京大学で講義
【東京大学】
東京大学経済学部の3・4年生の学生らを対象に、エネルギービジネスの最前線で活躍する実務家が、エネルギーやコモディティ市場について解説する「産業事情」の講義が始まった。
産業事情は、各産業界の現状、課題などを学ぶため、毎年度、各界の実務家を講師に招き行われている。2023~24年度は、「エネルギー/コモディティ市場」をテーマに、著しく価格が変動するエネルギー市場(電力、LNG、石油、排出権など)について、実践的な経験に基づいた講義を実施することになった。
東京商品取引所の石崎隆社長をはじめ、宮本慎次・三井物産商品市場部室長、安永崇伸・イーレックス常務らなどエネルギー企業幹部、総合商社の経営者、トレーディング責任者ら12人が、オムニバス形式で担当する。エネルギー/コモディティ市場の実務家らが、寄付講座ではなく一般講義として、大学生を対象に本格的に教えるのは初めての試みだという。講義は上期13コマを使って行われ、200人以上の学生が受講する予定だ。

取引市場の役割 石崎・東証取社長が概説
昨今、エネルギーや食料品の価格高騰が経済に大きな影響を及ぼしているが、これらの一次商品価格の多くは商品取引所を中心とするコモディティ市場で形成されている。講義では、商品ごとの生産、流通構造を踏まえたコモディティ市場の役割と、価格発見、リスクヘッジ、投資などの各機能について概説する。
経済の基本であるコモディティ市場は、本来は身近なものであるにもかかわらず、マーケットや価格メカニズムは経済学部生にとってさえ遠い存在になりがちだ。本講義は、学生のうちからマーケットの素養を培い社会に出てもらいたいと、東証取の石崎社長が同大の大橋弘副学長に働き掛けたことをきっかけに開講に至った。 4月5日の初回の講義では、その石崎社長が「コモディティ市場と先物取引」をテーマに教壇に立ち、「既存の出来上がった理論を勉強するというよりも、実際のビジネスを踏まえてのコモディティ市場の価格形成のメカニズムについて一緒に考えてもらいたい」と、本講義の狙いを語るとともに、「日本の技術力、ものづくりの力は世界でも最高レベルにあるが、市場取引については個別に優秀な人材がいても層が薄く、十分ではない。さまざまな分野で日本の経済を担っていく皆さんに、エネルギー・コモディティ市場に親しんでもらいたい」と訴えかけた。