第43回 エネルギーフォーラム賞
第43回「エネルギーフォーラム賞」の贈呈式がこのほど行われた。
ウクライナ危機を契機に地政学の視点から国際エネルギー情勢を取り上げた著作が優秀賞、
また、電力のセキュリティーを中心にエネルギー安全保障を論じた著作が普及啓発賞に輝いた。
<優秀賞>エネルギーの地政学/小山堅/朝日新聞出版

<普及啓発賞>電力セキュリティ エネルギー安全保障がゼロからわかる本/市村健/オーム社

わが国のエネルギー論壇の向上に資することを目的に、1981年に創設されたエネルギーフォーラム賞(エネルギーフォーラム主催)。今年で43回目を迎える同賞の贈呈式が3月31日、都内の経団連会館で開催された。今年は優秀賞が1作、普及啓発賞が1作選ばれたものの、大賞は選出されなかった。
受賞作の選考方法は、一昨年の12月から昨年の11月の1年間に刊行された日本人によるエネルギー・環境問題に関する著作を対象に、アンケート方式で有識者や業界関係者らから2作を推薦してもらい、エネルギーフォーラム賞事務局がアンケート結果上位の著作を選定。選考委員による厳正な審議を経て受賞作を決定している。
コロナ禍で4年ぶりとなった贈呈式では、京都大学名誉教授の佐和隆光・選考委員会委員長が選考の経緯を説明。その後、保坂伸・資源エネルギー庁長官が「小山堅氏の『エネルギーの地政学』と市村健氏の『電力セキュリティ』は、ともにウクライナ侵攻とエネルギーセキュリティーの重要性が語られた名著であり、われわれもGX(グリーントランスフォーメーション)という形で政策を打ち出し、原子力についても法律を提出した。その前提となるGX推進法では、脱炭素の中心となる再生可能エネルギーと原子力、安定供給について議論を行っている。また、世界に目を移せば、米国のインフレ抑制法(IRA)を筆頭に、グリーン成長戦略によって産業のぶんどり合いが激しさを増している。したがって、政府もGX移行債を発行し、将来的にはこれまでわれわれが反対してきたカーボン・プライシングも導入することも決意をし、法案を提出した。これらは『産業』という視点を含めて進めていく」と述べた上で乾杯の音頭をとった。
㊨選考結果を述べる佐和隆光・エネルギーフォーラム賞選考委員会委員長