第43回 エネルギーフォーラム賞

2023年5月15日

十市勉/日本エネルギー経済研究所客員研究員

今回は、ロシアのウクライナ危機で世界のエネルギー情勢が一変する中、カーボンニュートラルとエネルギー安全保障が最大のテーマとなり、共著者が多数の著作が散見される中、以下の著作を受賞候補に推薦した。

市村健氏の『電力セキュリティ』は、日本の電力セキュリティー問題に焦点を当て、わが国の特異性とファクトに基づく分析を行い、2050年のカーボンニュートラル実現とエネルギー安全保障の確保に向けて、理想と現実のバランスを図る提言を示す好著である。その背景には、著者が当時の加納時男・参議院議員の公設秘書としてエネルギー政策基本法の成立に関与した経験もあり、エネルギーの安定確保が国家安全保障の要であるとの強い思いが伝わってくる。

小山堅氏の『エネルギーの地政学』は、国際エネルギー情勢を主に地政学の視点から分析し、ウクライナ危機が世界の石油・天然ガス市場に及ぼす影響と今後の動向、日本の課題と対応策を示すなど、現在のエネルギー危機の背景と展望を考える上でタイムリーな著作である。ただし、ウクライナ危機と脱炭素化については触れられているが、近年注目されている「再生可能エネルギーの地政学」についても論じてほしかった。なお同氏による『激震走る国際エネルギー情勢』は、前述の著書と重複部分が多い点を指摘しておきたい。

談笑する東京電力ホールディングスの小早川智明社長(右)と東京ガスの笹山晋一社長

一方、野村総合研究所編の『カーボンニュートラル』は、カーボンニュートラルの基礎から技術や制度、各業界への影響と課題を体系的に理解するのに役立つ好著であり、また山地憲治氏監修の『カーボンニュートラル2050アウトルック』は、多様な脱炭素技術の最新動向と課題を簡潔にまとめた解説書であるが、両書とも共著者が多数で選考対象外となった。有馬純氏と岩田温氏の『エコファシズム』は、エネルギー・温暖化問題を政治・経済思想、国際関係や安全保障など幅広い視点から論じた刺激的な著書だが、対談本でもあり選考対象外となった。

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