第43回 エネルギーフォーラム賞

2023年5月15日

山地憲治/地球環境産業技術研究機構理事長

2022年は、2月のロシア軍のウクライナ侵攻を契機としてエネルギー安全保障の重要性が再確認された年だった。政府は、GX実行会議を設置して、脱炭素とエネルギー安定供給を同時達成する政策方針を明確にした。再生可能エネルギーとともに原子力も最大限活用するなど、エネルギー・環境政策が本来持つべき総合的取り組みが具体的政策の姿として見えつつある。このような状況を反映したと思われるが、アンケート集計で上位に選ばれた著作には、カーボンニュートラルに関するものと、エネルギーの地政学や安全保障に関するものが目立った。

ただし、選考に当たっては、原則として4人以上の多数共著書は表彰対象にしないことになっている。アンケート上位には、この原則によって対象外となった作品が複数あった。また、過去の受賞者についても、重複した内容の場合には選考対象外にするという原則がある。そのため、実質的に選考対象となった著作は限定された。

優秀賞を受賞した小山堅氏の『エネルギーの地政学』は、エネルギー地政学を考える上で重要な視点を全てカバーし、事実に基づいて分かりやすく記述されている点を評価した。ほぼ同様の内容であった同氏の『激震走る国際エネルギー情勢』も選考対象作に残っていて選択に迷ったが、総合的視点から理路整然とまとめられていることから受賞となった。

普及啓発賞を受賞した市村健氏の『電力セキュリティ』は、エネルギー政策基本法成立を振り返りつつ、三つのE、特にエネルギー安全保障に焦点を絞って、わが国のエネルギー政策の課題を整理して将来を展望した秀作である。ただ、出版までに時間がかかる本の場合には仕方がないことであるが、2022年後半のGX実行会議での検討が含まれていないのが残念だった。

現在、わが国のエネルギー・環境政策は転換期にあるが、まだ方向性が見えている段階で、具体的な制度整備はこれからである。今後、エネルギーフォーラム賞を通して優れた論考が展開されることに期待したい。

原子力発電環境整備機構の近藤駿介理事長(右)と元日本開発銀行(現日本政策投資銀行)設備投資研究所長の飯倉穣氏

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