【特集1】脱炭素と電力安定供給の両立へ 50年に向けた広域送電網の絵姿

2023年6月2日

50年CNに向けては、これらの系統整備を着実に進めていく必要がある。とはいえ、今回示されたのは、あくまでも将来の広域送電系統の「青写真」であり、これで最終決定というものではない。電源構成や技術革新の実現性などについては不確実性も高く、個別の計画の実施に当たっては、10年先の電源や需要の動向を精度高く予想した上でさらなる精緻な費用便益評価に基づき、タイミングを見極めながら適切な規模で進めていくことになる。

大きなビジネス機会に 漁業補償など課題も山積

広域機関が広域系統整備計画で策定する計画の事業実施主体となり得るのは、大手の送電事業者とされる。だが、その費用は、託送方式や賦課金方式によって広く全国から費用が回収されることになるため、事業のリスクはないに等しく、計画が具体化すれば新たなビジネスチャンスになり得ると期待する向きは多い。

商社やメーカーなどさまざまな企業が、この「特需」を逃すまいと虎視眈々と狙っているようだ。電力業界やサプライヤー、金融機関など、さまざまな関係者がどのようにこの大規模プロジェクトにかかわっていくのか、今後の動きが注目される。

事業化への期待が高まる一方で、系統整備計画の実施に当たっては、まだまだ課題が山積しているのも事実。前述の通り、費用回収については、全国調整スキームが整備されているものの、賦課金方式の適用範囲をどのように設定するのかなど、具体的な費用負担の在り方については引き続きの議論。それとは別に、系統整備に必要な資金調達環境の整備も急がれる。

さらには、HVDCの建設を進める上で、漁業者など地元理解をどう取り付けるかも高いハードルになりかねない。重要な送電線などの円滑な整備を目的とする経済産業相による重要送電線指定の制度などを活用し、いかに円滑に進めることができるか。

そして何よりも、水素製造やDAC(大気中のCO2直接回収)、CCS(CO2の回収・貯留)といった、足下では実現の見通しの立っていない技術の確立と社会実装の動向が、このマスタープランの実効性を大きく左右する。

そうした意味で今回のマスタープランは、CN社会実現へ日本がクリアすべき難題を浮き彫りにした格好だ。

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