【東京ガス 笹山社長】安定供給を絶やさず CN社会への移行を 現実感を持ってリードする
安定供給と脱炭素化という難しい課題に直面する中、4月1日に都市ガス最大手の社長に就任した。経済成長著しいアジアの脱炭素化も視野に、LNGからのシームレスな移行に貢献していく。
【インタビュー:笹山晋一/東京ガス代表執行役社長CEO】
【聞き手:志賀正利/本社社長】

志賀 まずは社長就任に当たっての抱負をお聞かせください。
笹山 守るべきものは守り、変えるべきことは変えていくということを徹底していきたいと考えています。守るべきものについては、安心・安全・信頼が当社の事業活動の基本ですから引き続きしっかりと取り組んでいきますし、需要家をはじめとするステークホルダーを大切にする姿勢が変わることもありません。
一方で、デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)といった社会の要請に適切に対応していくためには、躊躇することなく変革していくことも重要です。今年2月に2023年度から3か年の中期経営計画を公表しましたが、変革していくというメッセージを込めて「Compass Transformation 23-25」としました。
志賀 東京大学工学部卒とのことで、東京ガスとして戦後初の理系出身社長ですね。DXを推進するに当たっても、大きな強みとなるのではないでしょうか。
笹山 大学では数理工学を専攻し、数学の応用で統計や最適化問題を解いたり、今でいうところのAIを学んだりしました。そういう意味で、確かにデジタル分野に対する拒否反応はないかもしれません。セキュリティーについて万全を期すことが前提ではありますが、生成AIの活用にも大きな期待を寄せています。
経営資源のシフト加速 新たな成長領域を強化
志賀 デジタルや企画部門で大きな役割を果たされただけではなく、電力事業の立役者でもあります。これまでを振り返り、どのような会社員生活でしたか。
笹山 就職先を決める際、決してエネルギー業界に進みたいと思っていたわけではありませんでしたが、やりたいことをさせてもらえると思い、当社への入社を決めました。実際、これまでの間、わりとやりたい仕事をさせてもらえたと思います。
入社後は、主に四つの分野を経験しました。最初の10年はシステム部門でデータから会社経営を見るような業務に携わり、次に、営業の企画部門で都市ガスの販売計画のほか、エネルギーサービス事業の立ち上げや電力事業の立ち上げ、デリバティブ(金融派生商品)取引の導入など、当社としては少し変わった業務を手掛けました。
その後、エネルギー政策担当として電力や都市ガスの自由化やエネルギー基本計画などの政策全般を見ることになり、この間、産官学のさまざまな人脈を築くことができました。四つ目が総合企画部で、19年11月に公表した経営ビジョン「Compass2030」や現行の中計の策定にも関わっています。