【東京ガス 笹山社長】安定供給を絶やさず CN社会への移行を 現実感を持ってリードする

2023年7月1日

ガスのカーボンニュートラル化へメタネーション技術の開発・実証を進める

志賀 社長就任を見据えた“笹山色”が色濃く出た中計だと受け止めました。実際どのような狙いが込められているのでしょうか。

笹山 今回の中計は、直近の外部環境変化や20~22中計の振り返りを踏まえて、特に23~25年の3カ年にフォーカスを当てて、期間中の主要戦略を具体化・定量化したものです。今後3年間を「従来のエネルギーの枠を超えたソリューションと事業群で社会の持続的発展、お客さまへの一層の価値提供を追求すべく、東京ガス自らがビジネスモデルを変革」する期間と位置づけ、人的資本を強化しながら、GX、DX、お客さまとのコミュニケーション変革(CX)を軸に三つの主要戦略を実行。「収益性」「成長性」「安定性」の視点から事業ポートフォリオマネジメントを強化し、新たな成長領域への経営資源のシフトを加速していく考えです。

 この3年間は、CO2ネット・ゼロに挑戦して脱炭素社会への移行をリードすることを宣言した経営ビジョン「Compass2030」を実現するためにも、非常に重要な期間です。50年のカーボンニュートラル(CN)実現へ、移行期間の重要性の認知が高まっていますし、エネルギーの安定供給を絶やさず、地に足の着いた現実感のあるCN社会への移行をリードしていきます。

志賀 22年度は非常に好決算でした。今期の見通しについてはいかがでしょうか。

笹山 前年度の好決算については、ロシアのウクライナ侵攻など地政学リスクが顕在化しLNG価格の高騰、原油高に加えて円安といった特殊要因が発生した中で、LNGバリューチェーンをフル活用して調達コストを下げ、安定供給に必要な量を長期計画で調達することができ、これが高い利益水準につながったと認識しています。

 一方、こうした社会・経済情勢の見通しは不確実な要素が多々あり、一過性の側面があります。引き続きボラティリティの高まりに対応できるよう、企業努力を続けていきます。23年度の業績見通しにつきましては、前年度のようなエネルギー価格の高騰を想定しておりませんので、その結果として減収減益となる見通しです。

LNGの高度利用推進 安定供給とCNを両立

志賀 大手電力会社は非常に苦しい経営状況にあり、東京電力エナジーパートナー(東電EP)を含む7社が6月使用分から低圧規制料金の値上げに踏み切りました。

笹山 電力の市場価格が高騰し、規制料金の燃料費調整制度の上限に到達したこともあり、大手電力各社は非常に苦しい決算となったと理解しています。今回の値上げにより、その苦境はある程度解消されると思いますし、燃調の構成が大きく変わったことも業績の好転に大きく寄与するはずです。当社も低圧料金の見直しを行っています。1か月当たりの使用量260kW時の標準家庭で、140円ほどの値上げとなりますが、お客さまへの影響に鑑み電気の使用量が多い夏場を避け、9月使用分から新たな料金単価を適用することにしています。

志賀 燃料や卸電力価格の高騰の余波で、電力市場競争はすっかり落ち着いてしまいました。今後の電力事業の在り方についてはどうお考えですか。

笹山 確かに、自由化当初のような活発な切り替えはありませんが、今後もある程度電化が進んでいくことは間違いなく、当社としても引き続きしっかりと電力事業に取り組んでいきます。

志賀 CN社会に向けたガス利用の今後については、どうお考えでしょうか。

笹山 非電力部門の電化が進むとはいっても、高温帯を中心に、まだまだエネルギー需要の多くを熱が占めているのが実態です。熱需要としてガスが必要とされる分野は残りますし、アジア諸国の中にはこれから天然ガスに転換していこうという国もあります。まずは、天然ガスを高度利用することで大幅にCO2を削減することが重要です。

 国内外でLNGの高度利用を一層推進し、CO2削減を図りながらその収益を洋上風力などの再生可能エネルギーやe-メタン、水素、アンモニアといった先進的な脱炭素分野に投入、順次事業化を図り、安定供給と脱炭素化の両立の実現を目指すことが現実的です。30年度都市ガスへのe-メタン1%混入を目指しており、それを徐々に拡大していきます。天然ガス火力のゼロエミ化も検討しており、そこではe-メタン、水素、アンモニアなどの中から最適な技術を選択していくことになります。

志賀 LNGの長期契約についてのお考えは?

笹山 当社のみならず、多くのバイヤーが30年ごろに契約更新のタイミングを迎えます。そこでどんな選択をするかが非常に大きな問題ですが、今回のロシアのウクライナ侵攻で明らかになった地政学リスクを踏まえると、一定程度長期契約を結んでおいた方がいいと考えています。ただし、30年から20年の長期契約を結ぶとなれば、契約の終了時はネット・ゼロ達成の目標に据えている50年です。ネット・ゼロに向けた不確実性にどう対応していくのか。長期契約を結ぶに当たっては、国に対し一定のリスク緩和策を求めていく必要があります。

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