【東京ガス 笹山社長】安定供給を絶やさず CN社会への移行を 現実感を持ってリードする

2023年7月1日

浮体式風力導入見据え 技術開発に注力

志賀 サハリン2については、引き続き安定調達先として期待できるのでしょうか。

笹山 現段階でただちにリスクがあるとは考えていませんが、ただし、不測の事態も考えられますので、国や上流権益を持つ商社と連携しながら対応していきます。日本全体でLNG需要の10%ほどをロシアに依存しており、たとえ日本が取引を停止したとしても余ったLNGを他国が買うことになればさらにロシアを利することになります。総合的に判断し、安定的に調達できる限りは調達するべきだと考えています。

志賀 再エネ事業への取り組み状況はいかがでしょうか。

笹山 30年までに国内外合わせて取扱量600万kWを目指しています。国内・国外の比率はほぼ半々です。国内においては、これまでは太陽光とバイオが中心でしたが、今後は最もポテンシャルの高い洋上風力にシフトしていくことになりますし、再エネ海域利用法に基づく洋上風力の入札にも出ていこうと考えています。

 日本は遠浅の海が少なく、数ラウンド先は浮体式が中心になっていくでしょう。浮体式の技術については、世界で最も実用化に近いと言われている米プリンシプル・パワーに出資し、国内でその技術を活用するために課題となるコストの抑制に向け、GI(グリーンイノベーション)基金を活用しながら海洋土木会社や造船会社と技術開発に取り組んでいます。また、近い将来、福島沖での実証も検討しているところです。

浮体式洋上風力の導入に向けた技術開発を急ぐ(出所:Principle Power Inc.)


志賀 エネルギー基本計画の見直しを視野に、エネルギー政策への期待と注文はありますか。

笹山 今後のエネルギー政策においても、S+3E(安全性、安定供給性、経済性、環境性)に従って、エネルギー安全保障とGXを両立させながら推進していくことが基本です。そうした中で、エネルギー自給率の低い日本にとって、LNGの安定調達はエネルギー安全保障の観点からも引き続き重要ですし、エネルギー基本計画では電源ミックスに注目されがちですが、民生部門の一次エネルギー消費の6割強を占める熱の脱炭素化に取り組む必要があります。

 LNGについては、5月に開催されたG7(主要7カ国首脳会議)でも上流投資への重要性が確認されたところですが、石炭、石油からの転換により着実にCO2を減らすため、安定供給およびGXの両面で欠かせないエネルギーです。次期エネルギー基本計画でも、その重要性についてしっかりと位置付けられることを期待しています。

 熱分野の脱炭素化は、一定の電化や水素の活用が考えられるとはいえ、当社としては、従来の消費機器やインフラをそのまま活用可能なe-メタンの社会実装に注力しているところです。今後、LNGの需要が拡大するアジアにおいても、LNGからシームレスな脱炭素化に寄与するe-メタンを日本がけん引することは、産業政策的にも意義のあることです。30年e-メタンの社会実装に当たっては、官民で連携してCO2カウントルールやコスト支援スキームなどの具体化を急いでおり、次期エネルギー基本計画に向けて、しっかりと進めていきます。

アジアの脱炭素化へ ソリューションが重要

志賀 アジア全体の脱炭素化を図りながら安定供給に貢献する会社になるということですね。

笹山 今後、グローバルな経済発展の中心はアジアにシフトしていくでしょう。アジアの国々とともにどう脱炭素化を目指していくかが重要であり、今天然ガスを導入しCO2排出量を削減しようとしている国々に対しても、その先の脱炭素のソリューションを提供できるような仕組みが求められます。LNGインフラ投資が無駄になることがないよう、e-メタンを含めそれらが活用される仕組みを考えていかなければなりません。

志賀 地域の都市ガス会社との連携にも力を入れていますね。

笹山 今後の脱炭素化の政策は地域全体で捉えることになりますので、自治体と連携しながらどうソリューションを展開していくかが問われています。現在、22の自治体と連携協定を結んでいますが、引き続き、当社の都市ガス卸先の地域ガス会社、さらには供給エリア内外のお客さまとの連携を深めていく必要があります。

志賀 新中計で示された新ブランドの投入についてはいつごろになりそうですか。

笹山 今秋には発表したいと考えています。いろいろなサービスをさまざまなブランド名で展開しており、分かりづらいところもありますので、脱炭素やレジリエンスなどといった軸でサービスを整理し統一したブランド名を付けたいと考えています。

志賀 次の一手に期待しています。本日はありがとうございました。

<対談を終えて>
大学で数理工学を専攻。デジタルやAIに明るい時代が求めるトップが誕生した。自ら、脱炭素社会への移行を宣言し、地に足の着いた現実感のあるCN社会への移行を目指す。そこで描く姿は、LNGの高度利用を一層推進しCO2削減を図りながら、その収益を洋上風力などの再エネやe-メタン、アンモニア・水素の先進的脱炭素分野に投入し、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立を目指すことが現実的―と明快。聡明さに大らかな人柄が重なり、語りに説得力がある。

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