分散型リソースの運用会社を設立 市場取引で電力安定供給に貢献

2023年7月6日

【関西電力】

関西電力は分散型エネルギーリソースの市場運用を担う新会社を設立した。

電気事業やVPP事業で培った知見を生かし顧客の設備を活用、需給の安定化を図る。

今年4月、国内で初めて分散型リソース(DER)の市場運用に特化した新会社「E―Flow(イーフロー)」が誕生した。関西電力のソリューション本部がVPP(仮想発電所)のアグリゲーター事業で培ってきたノウハウや実績を生かし独立した合同会社で、7月1日から30人体制で事業を開始している。

DERを所有する顧客に代わり、電力、供給力、調整力の各市場で最適な取引により収益化を図る。関西エリアにとどまらず、全国で事業を展開する。2030年度までにさまざまなDERを活用し、市場取引量250万kW、300億円の売り上げが目標だ。

関電のVPP事業を担う専門部署が立ち上がったのは18年。DERを活用した調整力公募への入札から事業をスタートした。リソース規模が拡大する中、20年に供給力を取引する容量市場のオークションが開始。21年には調整力を取引する需給調整市場が開設されるなど、DERを活用できる市場整備が進んだ。こうした中、関電はオリックスと共同で、22年から紀の川蓄電所(和歌山県)の建設を開始。24年度に蓄電所事業に参入すると発表した。さらに再生可能エネルギーについては、22年にFIT(固定価格買い取り)制度からFIP(市場連動価格買い取り)制度に移り、今後は発電事業者が自ら発電計画の策定などを行うことが求められる仕組みになった。このように、電力の市場取引の活発化が新会社設立の契機になったわけだ。

三つの事業を柱 AIを活用し収益拡大

E―Flowは、①VPP、②系統用蓄電池、③再エネアグリゲーション―の3事業が柱だ。AIを搭載した分散型サービスプラットフォーム「K―VIPs+(ケービップスプラス)」を活用して、これらリソースの市場取引を行う。

①では、企業や自治体が所有する生産設備や蓄電池、自家発電設備などを束ね一括で管理・制御することで、DR(デマンドレスポンス)として活用し、VPPを構築する。全国のDERを運用して、K―VIPs+を通じて容量市場、電力卸取引所、需給調整市場で取引する。各リソースの特徴を把握し、最大限の活用を図るとともに、今後拡大が見込まれるEVなど、小規模リソースの活用も見据える。

②では、K―VIPs+を活用し、市場入札から発電計画の提出、蓄電池の充放電制御などを行う。過去の取引実績や制度動向、アグリゲーターとしての知見を学習させたAIが日々、収益が最大になるよう入札計画を策定する。また、約定結果に基づき蓄電池を自動制御する。K―VIPs+は市場要件を満たすため、時間前市場も活用しながら、蓄電池残量が適正な水準となるように調整する。

E―Flowの川口公一社長は、「約定内容と蓄電池の残量をAIが自ら考えて、追加的に市場で取引する。それぞれの蓄電池の活用範囲や劣化を鑑みた制約を踏まえてAIが考え、運用するのはこのプラットフォームが初めてだ」と胸を張る。

蓄電池事業部の平木真野花部長は機械学習のAIは何を学習させるかが肝だとし、「今は電力事業の変革期。制度も変わっていく。AIにはさまざまな市場変動ケースなどを学習させ、最適な取引の予測が可能となるようにしている。市場参入に向けて、過去の取引実績を踏まえながら、電力事業の知見を盛り込んでいけるのが強み」と自信を見せる。

難しいのは、蓄電池はメーカーの仕様によって特性が異なる点だ。また、地域によって電力市場の約定傾向も異なる。現在、蓄電池を適切に制御できるようにシステムの仕様調整を行い、運用開始に向けた準備を着々と進めている。

③では、電気事業で培った再エネ予測技術に基づき、K―VIPs+が日々発電計画を作成し、市場入札、計画提出などもサポートする。FIP制度への移行により、市場取引をした際、発電予測と実績に誤差が生じるとインバランス料金が発生する。E―Flowはこのインバランスのリスクを負うため、いかに正確に、天候によって変動する再エネの発電量予測を行うかが重要になる。今後はAIを活用しながら、予測精度の向上を目指していく。

AIを搭載する分散型サービスプラットフォーム「K-VIPs+」

制度変更にも迅速に対応 顧客が安定供給に貢献

現行の第6次エネルギー基本計画では再エネのさらなる拡大とともに、DERの活用が掲げられている。今後増加する多種多様なDERをいかに多くつなぎ、市場取引をはじめとした活用ができるかが事業の鍵を握る。制度の変更にも迅速な対応が必須だ。

川口社長は、この対応ができるのはVPP事業に取り組んできた5年間のノウハウが大きいと強調する。「関電はいち早くVPP事業に取り組み、このところ毎年のように改正が行われる制度を熟知しているからこそ、市場取引に特化した事業ができる」

DERを市場で有効活用させることは顧客の経済的なメリットだけでなく、顧客自身がカーボンニュートラルの実現や再エネのさらなる導入、ひいては電力安定供給に貢献できる。30年代以降、卒FIT電源が増加した際の安定的な電力運用への大きな一助となっていくだろう。

E―Flowは3本柱の事業に取り組みながら、将来的にはこれらの事業から得たデータを活用した事業や、地域と連携した事業なども見据えている。

(左から)金子勝課長、平木部長、川口社長、椿本雄陽氏