【特集2】質量販売の30分ルール見直し レジャーやビジネスに活用へ
【インタビュー:山下宜範/経済産業省 ガス安全室長】
昨年7月、LPガスの質量販売の30分駆けつけルールを見直された。
これにより、用途開拓や問題解決に活用できる可能性が広がった。

―LPガス販売事業者に課せられている保安業務のうち、需要家の供給設備まで原則30分以内に到着し、バルブの閉止などを行う体制の確保を求める「30分ルール」があります。昨年7月、質量販売において同ルールが見直されました。背景を教えてください。
山下 これまで販売事業者・保安機関が質量販売を実施する上で、30分ルールがボトルネックだと言われていました。そこで需要家が「質量販売緊急時対応講習」を受講し、緊急時に必要な措置を自ら行う場合には30分ルールの対象から除くことにしました。
講習実施者は、ガス安全室の確認を受けた企業や団体です。講習ではLPガスの物性、設備の取り扱い方、緊急時の対処方法も含むカリキュラムで学びます。知識を備えた上で、レジャーやビジネスに生かしてもらえたらいいと思います。
―キャンピングカーなど移動して屋外で利用する以外にも緩和を求める声はあるのでしょうか。
山下 人口減少や過疎化が進む各地域では、販売事業者・保安機関の廃業などにより、30分ルールの遵守が困難になることが危惧されています。このような地域の特性に合わせて問題解決を図ることも重要だと考えています。
認定事業者件数が拡大 業務の合理化を促進
―認定LPガス販売事業者制度では、需要家の軒先に設置したマイコンメーターと無線回線で結ぶ集中監視システムの導入割合で保安業務の要件緩和などを実施しています。進捗状況はいかがですか。
山下 認定販売事業者の認定件数はここ最近増えています。デジタル・無線技術の進化によるコストダウンによって、集中監視システムの導入障壁が下がり、普及し始めました。事業者にとっては業務の合理化にもつながるので導入が後押しされています。
―人口減少や過疎化が進む地域で、事業継続の困難といった問題も出てきているとのことでしたが、集中監視システム導入は、そうした課題解決にもつながりそうです。
山下 設置要件を満たした需要家の割合が70%以上なら30分ルールは40km以内であれば要件に適合しているとみなされます。点検期間も延長され、頻度が減り業務を効率化できます。また、今後は各地の事情を踏まえた対応も必要ではないかと考えております。
―今後もデジタル化によって保安の効率化を図っていくことになりますか。
山下 そういった面はあります。デジタル化によって、点検のリモート化など、保安の効率化は図られていくでしょう。ただ、LPガスの事故件数は直近5年間で平均220件程度発生しており、どのように減らすかが課題です。まず、ガスを安全に取り扱うことを第一に考え、その上で合理化を進めていきたいと思います。