【特集2】SAFを新方式で大規模生産 30年に50万㎘を供給へ

2023年8月3日

出光興産

「2030年までに当社国内の事業拠点で年間50万㎘のSAF(再生航空燃料)の生産体制を整えておきたい」。出光興産CNX戦略室の大沼安志バイオ・合成燃料事業課長は話す。

出光がSAFを生産する手法は、原料となるエタノールからジェット燃料を作り出す「ATJ(アルコールtoジェット)」プロセスを利用するもの。グリーンイノベーション基金(GI基金)を活用し、千葉事業所で実証生産設備(1号基)を構築して26年4月からまずは年間10万㎘を生産する計画だ。その後、千葉以外も含めた国内事業所に2号基、3号基の生産設備を構築し、30年につなげる。

廃食油由来や油脂由来など、SAFを生産する仕組みはいくつか存在するが、出光ではまずATJ方式を採用する。ATJとは、エタノールを脱水・重合化して製品を生産する工程のことだ。事業所で培った石油化学原料重合のノウハウを活用して生産する。貯蔵・輸送時において製油所内のタンク、桟橋などの既存インフラを有効に活用できる利点がある。またフィードストック(原料確保)の面でもこの方式は優位だという。

「10万㎘のSAFを生産するためには約18万㎘のエタノールが必要になり、これをブラジルなどの海外から調達する予定だ。こうしたATJプロセスの大規模生産は世界初となる」(大沼さん)。2号基以降の生産方式についても、今後決定していく。

CNXセンター化構想 北海道で合成燃料生産に期待

一方、CO2や水素を活用して人工的に作る合成燃料の取り組みはどうか。出光では「CNXセンター化」構想を掲げている。自社の事業拠点である北海道(北海道製油所)、関東(千葉事業所、京浜製油所)、中部(愛知事業所、四日市製油所)、中国(徳山事業所、山口製油所)の各地の特性や需要を生かしたカーボンニュートラル戦略を実行する構想だ。

SAFに加えて中国ではアンモニア、中部や関東では水素のサプライチェーンの構築などを目指している。そうした中、北海道で生産の可能性が見出されているのがe―フューエルなどの合成燃料だ。

北海道では再エネ導入のポテンシャルが多分にあり、グリーン水素の生産・活用に期待がかかっている。なおかつ、道内の苫小牧はCCS(CO2回収・貯留)の拠点である。近くには北海道電力の苫東厚真石炭火力発電所も存在する。「CCSのようにCO2を海底に埋めるだけではなく、合成燃料向けのCO2を、他社と連携した利用を計画中。30年よりも早く生産し、CN燃料として供給したい」(同課の鹿野祐介さん)

ただ、北海道での自社生産に先駆けて、「製品燃料」として海外から調達する計画も立てている。出光は、主に南米・北米・豪州で合成燃料を製造するチリのHIF社と連携し、現在、「海外プロジェクトからの合成燃料調達と日本国内への供給」「国内外における合成燃料製造設備への共同出資」「日本国内で回収したCO2の国際輸送と活用」―を協議中だ。いずれにせよ、これまで身近に存在していた液体燃料を取り巻く環境が、2020年代後半以降には生産方式含め大きく変わる。

チリHIF社の合成燃料