【特集2】海外複数拠点で事業立ち上げ検討 30年の輸出開始を目指す

2023年8月3日

【大阪ガス】

e-メタンの社会実装に向けては、メタネーションを大規模化・高効率化するための技術開発に加え、国内外における製造から輸送、利用までのサプライチェーン構築も欠かせない。大阪ガスは、地政学リスクを低減しつつ、安定・安価なe-メタンの製造・調達を可能にするべく、海外からの大規模調達を視野に、北米、南米、豪州、中東、東南アジアなど複数の拠点でメタネーション事業の検討を進めている。

検討中の主な海外e-メタンプロジェクト

中でも、より詳細な検討が進みつつあるのが、①米国テキサス州・ルイジアナ州、②米国中西部、③オーストラリア、④ペルー、⑤マレーシア―の五つのプロジェクト。2025年度の最終投資決定(FID)を目指しており、30年都市ガスへのe-メタン1%導入への足掛かりとしたい考えだ。

水素とCO2を安価に調達 既存の基地利用でコスト抑制

水素とCO2から合成するe-メタンは現行の都市ガスとほぼ同じ成分であり、既存インフラをそのまま活用することで大幅にコストを抑えられることが、水素やアンモニアといった他の新燃料にはない大きな強み。それを最大限に生かし、既存燃料とのコスト差をできる限り縮小しながら導入するためには、e-メタンの製造場所がLNG液化基地や天然ガスパイプラインの近傍であることや、水素の原料である再エネ電気と水、CO2を安価かつ大量に調達できることがプロジェクトを進める上での絶対の条件となる。

「海外で大規模なe-メタンを安定的に製造・供給するためには、国内に加え海外のパートナーとも協力しながら事業化を目指す必要がある」と語るのは、資源・カーボンニュートラル(CN)事業開発部CN事業推進チームの川崎浩司ゼネラルマネジャーだ。その言葉の通り、米国テキサス州・ルイジアナ州のプロジェクトでは、三菱商事、東京ガス、東邦ガスと日本勢で臨むが、そのほかの四つのプロジェクトについては、いずれも現地企業が参画している。

米国中西部のプロジェクトでタッグを組むのは、天然ガス・石油パイプラインを運営するTallgrass社と、バイオエタノール燃料を製造・販売するGreen Plains社。産業由来のCO2ではなく、バイオエタノール燃料の製造過程で排出されるCO2を利用するのが特徴で、天然ガスから改質したブルー水素(水素を製造時に排出されるCO2は地下貯留)と合成する。

製造したe-メタンは、既設の天然ガスパイプラインを利用してフリーポートLNG基地に送り、日本に輸出することを想定。最大製造能力は年間20万tで、実現すれば30年1%の目標を大きく超える4%を調達できる見込みだ。

オーストラリアでは、天然ガス・石油事業者であるSantos社と共同でプロジェクトを検討している。工業分野の排ガスやLNG液化プラント由来のCO2と、再エネ由来のグリーン水素を原料に、同社の都市ガス販売量の1%強に相当する年間6万tを製造し、既設のガスパイプラインを通じてSantos社が運営するクイーンズランド州東海岸のグラッドストーンLNG液化基地から輸出する。

Santos社が保有するグラッドストーンLNG基地

水力を中心に再エネを安価に調達できる南米ペルーでは、液化天然ガス事業者であるペルーLNG社と丸紅と共に、LNG液化プラント由来のCO2とグリーン水素を原料に、年間6万tのe-メタンを製造するプロジェクトを検討中。製造したe-メタンは、ペルーLNG液化基地から輸出する。

マレーシアの国営ガス・石油事業者ペトロナスとIHIと共に検討を進めているのは、他の四つとは異なるスキームのe-メタン製造プロジェクト。未利用森林資源や農業残渣などを原料に、バイオマスガス化技術で取り出した一酸化炭素(CO)と水素でe-メタンを製造、ペトロナス所有のLNG液化基地から出荷する。将来は、副産物のCO2の地下貯留も検討しており、実現すればネガティブエミッションの達成も可能となる。

カウントルールや原料調達 社会実装にはハードルも

とはいえ、どのプロジェクトにも一長一短がある。

例えば、産業由来のCO2を原料とする米国テキサス州・ルイジアナ州、オーストラリア、ペルーのプロジェクトは、安定的なe-メタン製造が期待できる代わりに、利用する国(日本)側が排出ゼロとなるようなCO2カウントルールの整理が高いハードルとなるかもしれない。

他方、米国中西部やマレーシアのプロジェクトでは、バイオマス由来の原料であるためにカウントルールについては議論のハードルが低いものの、原料の賦存量が限定的で調達の面に課題が生じ得る―など、プロジェクトによって乗り越えるべき問題は大きく異なるのだ。

いずれにしても、世界でも前例のない挑戦となるだけにさまざまなリスクが予想され、1%を賄う事業を仮に複数同時に進めたとしても、確実に目標を達成できる保証はない。そのため、FIDに向け、今後は安定的に製造できるプロジェクトを取捨選択していくことになるが、「五つのプロジェクトから1件に絞ることになるのか、複数案件になるかは未定だ」(川崎氏)という。

22年4月に資源・CN事業開発部が発足した当初は、海外ではe-メタンを製造するメタネーションの知名度はほとんどなかったが、既存インフラを活用しながらCNへの対応にシフトできるとあって、認知度とともに期待感も着実に高まりつつある。現地のパートナー企業にとっては、長期的にe-メタンを製造、供給することで燃料供給事業の安定化を図れる上に、LNG基地の稼働率向上やCO2の有効活用という点でも大きなメリットがある。

川崎氏は、「e-メタンは、水素・アンモニアと並んでCN社会を実現するための有効な手段の一つであることは間違いない。社会実装にはさまざまなハードルが立ちはだかるが、パートナーとの協力や政策面での支援などを得ながら、全社一丸となって50年CN社会を実現するために取り組んでいきたい」と強い意欲を見せる。